萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Short Scene Talk ふたり暮らしact.21 ―Aesculapius act.31

2014-02-02 22:31:14 | short scene talk
二人生活@birthplace5
Aesculapius第2章act.20と21の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.21 ―Aesculapius act.31

「ばあちゃん、昼飯の手伝いするねっ(御機嫌笑顔)(雅樹さんに旨いもん食わせてあげたいね)」
「ありがとね光一、じゃあ畑の野菜みつくろってきて?食べたいの採ってきてちょうだいな(雅樹くんに美味しいものって考えてるわね光一ほんと健気可愛いわねえ笑)」
「うんっ、じゃあ雅樹さんと見てくるね、雅樹さん畑デートしよ?(極上笑顔)(雅樹さん野良姿もカッコいいからね嬉)」
「で…照(畑デートってなんか照って僕また何考えてるんだ照困)うん、行こう?」
「雅樹くん、いつも悪いわねえ、お願いね(笑顔)(ほんといつもだものね笑ありがたいわー)」
「はい、行ってきます(笑顔)」
「ばあちゃん行ってくるねっ(御機嫌笑顔)雅樹さん、何食いたい?」
「今の時季だと新じゃがとアスパラが良いよね、じゃがいも丸ごと炒め煮とかいいな(光一の得意料理なんだよね僕の好物で照萌)」
「うんっ、俺それ担当して作るねっ(御機嫌笑顔)(俺それ得意料理だもんね雅樹さんの好きなヤツだからねっ)」
「ありがとう(笑顔)(ああご機嫌な笑顔してくれる可愛いな萌)」
「あ、雅樹さん、蓮華草が咲いてるよ?キレイ可愛いね(幸笑顔)(今年も咲いたんだね)」
「ほんとだ、今年も咲いたんだね(笑顔)(ああこの笑顔ほんと好きだ僕ほんと光一こそ綺麗で可愛い萌幸)」
「ね、雅樹さん、もんであげるね(笑顔)(じゃがいものと合うからね)」
「も…照(もんであげるってソレって青Xになっちゃうよ光一そういうのしてみたいのかなドコで知ったんだろそんな照)」
「ね、良いキャベツだね?コレ塩でもんだら旨いよ、さっぱり塩味が甘辛じゃがいもと合うねっ(御機嫌笑顔)」
「あ、照(キャベツ塩でもむんだそうだよね落胆残念って僕なに考えてるんだホント僕ちょっと欲求不満気味なのかな不謹慎だ照困)」




Aesculapius第2章act.20と21の幕間、
国村家居間→畑のワンシーン、雅樹の照れ喜び×悶々8です、笑

第73話「暫像5」加筆校正Ver貼りました、読み直し校正したら校了です。
ソレ終わったらAesculapiusか短編連載を書きたいなと。

取り急ぎ、




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第73話 暫像act.5―another,side story「陽はまた昇る」

2014-02-02 20:04:51 | 陽はまた昇るanother,side story
And harmony of music 調和の端緒



第73話 暫像act.5―another,side story「陽はまた昇る」

暗い空、けれど月はっきり見えている。

それでも摩天楼に遮られて空は狭い、けれど大切な人の居場所に近い空。
近くて、だけど遠い場所への方角を仰いで佇んだ背後、冷静な声が周太を呼んだ。

「湯原、行くぞ、」
「はい、」

声に振り向いて、すこし新鮮な気持ちにさせられる。
このスーツ姿は初めて見るな?そんな感想と歩きながら首傾げてしまう。

―本当に伊達さん、ごはん行くつもりなのかな?

庁舎からアスファルトへ踏みだす革靴が規則正しくソールを鳴らす。
端正な姿勢は職場や訓練場の貌と変わらない、だから不思議になる。

―なんか…伊達さんが街中を歩いてるって不思議だね?

並んで歩いてゆく横顔は精悍に整う、その顔立ちは古風というわけではない。
けれど表情の謹厳な物堅さは少し近寄りがたくて、この3日ずっと言葉も最低限でいる。
それが伊達の「普通」なのだろうか?それとも別の貌があるのだろうか?そんな思案に訊かれた。

「何を食いたい?」
「え、」

だしぬけな質問に詰って、隣見てしまう。
目線すこし高いけど大差ない、その眼差しが微かに笑った。

「まだ決められんのか?まったく、」

ほんの僅か、けれど謹厳すこし優しさ零れだす。
この初めて見る貌に知人を見て周太はつい呟いた。

「黒木さん、」
「は?」

即答に訊き返されて、その瞳が怪訝に問いかけてくる。
それは誰だ?そう問われる視線に詫びと答えた。

「すみません、七機の先輩と伊達さんがすこし似てるなって思って。失礼しました、」

物堅い謹厳に寡黙、けれど面倒見いい優しさは不器用でも温かい。
そんな空気感が懐かしいまま頭下げた隣、落着いた声が尋ねてくれた。

「七機、山岳レンジャーの黒木さんのことか?」
「あ、ご存知ですか?」

訊き返して少し驚かされて、けれど納得できる。
いま同じ部署にいるなら似たような配属経歴だろう?その予想に低音の声すこし笑った。

「銃器対策にいるとき少しな、2ヶ月程度だが、」

2ヶ月、その短期間も自分と似ている。
この類似にため息隠しながら周太は微笑んだ。

「それなら箭野さんのこともご存知ですか?」
「ああ、俺は第2だったけどな、」

アスファルトの道ソール鳴らしながら、スーツの脚きちんと歩いてゆく。
どこまでも姿勢の良い男、そんな先輩は今すこし近くなる距離から訊いてくれた。

「何か決まったか?」
「え?」

何を決めるのだろう?
解らなくて訊き返した先、二重瞼シャープな瞳がほころんだ。

「ははっ、夕飯だってさっきから言ってるだろ?湯原は何食いたいんだ?」

伊達が笑った?

その笑顔にまた途惑ってしまう。
こんなふう優しい貌で笑うだなんて予想外だ?

―黒木さんも笑うと優しいけど伊達さんがこんな貌するって…なんか、英二のとき以来のびっくりだね?

黒木が笑うと優しかった事は予想通りだった、それくらい黒木は頼もしい兄と言った空気がある。
英二は最初のころ作り笑顔に想えて嫌いだった、それが綺麗な笑顔になっていく過程をリアルタイムで見ている。
けれど今、あの訓練場や職場で3日間を共にした貌からは予想外すぎて途惑う、それでも周太は答え押し出した。

「あの、ラーメン?」

ああ僕ったら何て進歩の無い答えだろう?

こんな自問よぎって記憶から首すじ逆上せだす。
似たような応答を1年前、去年の夏から秋に幾度も繰り返していた。

『湯原、何食いたい?』

ほら低くて綺麗な声が記憶で笑ってくれる、
そして自分の声がぶっきらぼうに答えて微笑む。

『ラーメン、』
『またかよ?』

何食いたい?ラーメン。またかよ?

訊かれて答えて、そのたび楽しそうに笑ってくれる。
そんな問答を幾度も繰り返してくれた、あの頃の笑顔と呼名から今が遠すぎて懐かしくて、瞳あふれた。

「…ぁ、」

ぽとん、

雫ひとつ零れてアスファルトに落ちてゆく。
こんな場所で泣いてしまっている?そんな自分への途惑いごと拭った視界を二重瞼の瞳が笑った。

「旨いトコ連れてってやる、」

さらっと笑って精悍な貌は前を向き、ぽん、大きな手ひとつ周太の背中そっと敲いた。

「ぁ、」

声こぼれて温もり一つ、そっと鼓動ふれて溢れだす。
大きな優しい手、その贈られる感覚が遠くと近い記憶を呼んでしまう。
こんな相手だから「似ている」と想ったのだろうか?そんな想いごと周太は微笑んだ。

「はい、ありがとうございます、」
「ああ、」

さらり頷いて、けれど視線は前向いたままでいてくれる。
敢えてこちらを見ない瞳、その寡黙な優しさが今は嬉しい。

―僕が泣いてるところ見ないでくれてる、ね…

男は泣顔を晒したくない、そんな意固地がプライドにある。
だからこそ泣いてしまえる相手は貴重で、けれど余程の相手じゃ無ければ泣顔など見せたくない。
そんな想いごと対等な男として隣歩いてくれている、その眼差しは真直ぐ前を見たままの横顔に温かい。

―すごく優しくて懐が深い人なのかもしれない、だから今日も誘ってくれた、ね?

こんな貌が伊達の素顔なのかもしれない?

この3日間に見ていた伊達の貌はSAT狙撃手で警察官だった。
それは物堅くて謹直で厳しくて、冷たいよう想えて気詰まりですらいる。
けれど今この隣を歩いてくれるスーツ姿は温かい、その横顔に並んだまま一軒の暖簾を潜った。

「へい、いらっしゃい、」

塩辛声が笑って迎えてくれる、その声から匂いごと温かい。
そんな温もり懐かしいまま入った店内、カウンター向うの笑顔ほころんだ。

「いつもの席空いとるよ、」
「ありがとう、」

礼に笑った精悍な貌が穏やかに温かい。
その空気感も大好きな俤どこか似ているようで瞳の底、また溢れそうで瞬いた。

―いけない、こんな泣いてばかりなんて…どうしたのかな僕、

自問しながら呼吸ひとつ、瞳の温もりごと飲下す。
いま泣虫な素顔が起きてしまう、こんな自分に途惑いながらカウンターの片隅ふたり座った。

「ほい、どうぞ、」

塩辛声からコップ2つカウンターに置かれて、おしぼり渡してくれる。
素直に手を差し出して、その手へ2つくれると店主が笑った。

「初来店のサービスだよ、」

笑って渡してくれる手は分厚くて、小さな火傷の痕がある。
たくさん働いてきた手、そんな手に懐かしい場所と時間が映りこんだ。

『はい、いつものですよ、』

新宿の片隅の小さな店、あの笑顔に一年間の想い織られてしまう。
あのカウンターに大切な人と座り、独りでも座り、友達とも並んで座った。
あの場所で父の死と夢に向きあった、恩師との出逢いも植物学の再会もあの店だった。
喜びも悲しみも憎悪すら見つめて幸福を笑いあえた、そんな場所は父の軌跡から今に在る。

―おやじさんがお父さんと出会ったから、あのお店の時間があるんだ…その全てがもしかしたら、

優しい感謝への想い、そこから廻りだして今日の思案が起きあがる。
祖父の書き残した小説と現実の符号の思案、それが事実として異国の言葉から問う。

“Mon pistolet”

私の拳銃、そう祖父が記した拳銃の行方は何処だろう?
あの拳銃が実存するなら小説に描かれた束縛と死は、きっと父の殉職にも結晶する。

―あの拳銃は本当にうちの地下に埋まってたんだ、炉の真下にきっと、

“souterrain”

地下室、奈落。
そう祖父が記したのは茶室に穿たれた炉の真下だろう。
あの場所の土は確かに掘り返されていた、そして朽ちた革の欠片が落ちていた。
だから解かってしまった、あの場所に祖父の拳銃は埋められていた、けれど持ち去られた。

『今から一年以内に周太を辞職させて療養させる。もう、始まったんだ、』

今朝の夢に笑ってくれた言葉、あの言葉は祖父の拳銃と関わっている。
そんなふう想えるから今日一日ずっと気がつけば思案は廻りだす。

英二は祖父の拳銃をどこかに隠している、その目的は何?

「湯原、何にするんだ?」

え?

「えっ、」

思案から声振り向いた隣、二重瞼あざやかな瞳が笑っている。
ただ可笑しい、そんな眼差し温かいまま低い声が訊いてくれた。

「注文、どのラーメンにしたいんだ?」
「あ…ラーメンでお願いします、」

いつも通りの選択をした隣、可笑しそうに笑っている。
楽しげな貌はカウンター越し注文してくれると大きな手におしぼり広げ、言ってくれた。

「お先、」

一言に笑った顔へおしぼり一つ、ぱっと被せて伊達は拭きだした。
そんな仕草は寛がす空気に温かい、その倣い周太も自分の手へ広げ顔ぬぐった。

―あったかい、ね、

温もり穏やかに顔からふれて、ゆっくり寛ぐまま呼吸ほどかれてゆく。
熱いタオルと瞳のはざま雫また滲んで、けれど今なら隠れたまま泣ける。

―このためにおじさん二つくれたんだね、伊達さんも、

店主も伊達も何も言わない、けれど泣かせてくれる。
優しい言葉あるわけじゃない、それでも穏やかな受容は温もり包んでくれる。
こういう場所へ伊達が連れて来てくれた、それが素直に嬉しいまま掌から顔あげて周太は笑った。

「このお店、伊達さんの行きつけなんですか?」
「ああ、よく来る、」

肯い笑ってくれる瞳が3日間の印象ゆっくり覆す、それが温かくて不思議で、今なんだか嬉しい。






(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

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