萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

soliloquy 時雨月、声―another,side story

2014-10-08 22:00:00 | soliloquy 陽はまた昇る
雨彩の聲
周太某日



soliloquy 時雨月、声―another,side story

雨音は好き、静かになれる。

はたり、はたたっ、硝子窓はじく音やわらかい。
リズミカルな音にページ繰りながら仰いだ先、天窓の雫紋様ひろがらす。
あの雨だれに色んな想像が楽しかった、その隣にいてくれた笑顔ふわり呼んでくれる。

『じっと見ててごらん周、雨のクラウンが見られるよ?』

ほら父の声が笑って指さしてくれる。
あの指は器用でいつも台所に魔法かけていた、その記憶は甘い香やわらかい。

『今日はクッキー焼こうか、周が好きな形にしてあげるよ?』

日々の忙しい仕事の合間、休日に父は菓子まで手作りしてくれた。
そんな父の横顔は台所でいつも楽しそうで、そして茶を飲みながら本読む貌は幸せだった。

『今日はこの本を読んでみるよ、周が好きだと良いな?』

やわらかに深い声が微笑んでページ捲ってくれる。
そこに綴られるのは異国の言葉たち、そのままと日本語でも読んでくれた。
そうして教えられた言葉と言語たちに今は独りでも本を読める、けれど今も懐かしいまま周太は微笑んだ。

「お父さんの朗読、すごく好きだよ…今も聴けたらいいのにね、」

願い微笑んで、けれど声は帰って来ない。
それでも父の友人が教えてくれた、母も言ってくれる、だから唇開いた。

「The day is come when I again repose…」

The day is come when I again repose 
Here, under this dark sycamore, and view 
These plots of cottage-ground, these orchard-trufts, 
Which at this season, with their unripe fruits,
Are clad in one green hue, and lose themselves 
‘Mid groves and copses. Once again I see

再び安らげる時が来た日
ここ、楓の木下闇に佇んで、そして見渡せば
草葺小屋の地が描かすもの、果樹園に実れる房、
この季節にあって何れも、まだ熟さぬ木々の果実たちは、
緑ひとつの色調を纏い、そしてひと時に消えて移ろいゆく
木々と森の中深くから。今また見えるのは

父が愛した英国の詩を自分の声が読む、この声は父譲りだと誰も言う。
けれど自分の声だと似ているのか解らなくて、それでも父の声だろう。

『今の詩はね、周?楓の木のことを謳っているんだよ、あの窓からも見えるね、』

書斎で、庭のベンチで、そしてこの屋根裏の小部屋。
いろんな場所で父は朗読してくれた、あの笑顔のまま今あの窓に楓は見える。
あの幸せだった時間と同じ本を開いて同じはずの声に読んで、階下からオーブンの香があまい。

だから今この詩に声はきっと懐かしい、幸福な時間のままに。

心温まる生活27ブログトーナメント

 


【引用詩文:William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」】

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山岳点景:時雨月の山―大菩薩嶺

2014-10-08 21:34:15 | 写真:山岳点景
墨彩、時雨に描く



山岳点景:時雨月の山―大菩薩嶺

先週末の大菩薩嶺@山梨県にて、車道から仰いだ雨景です。
あわい紅葉の始まりだした山は時雨に暈かされて、閑寂の風光でした。

けれど山の紅い点に行くとこんな↓秋の木の葉が見られます。



雨だと自分は原則登りません、水の染みだし&増水などアレコレ悪路になるので。
でも危険個所にならないコースまでなら歩いたりもします、雨は雨のきれいなとこ撮れて好きなんですよね、笑

第12回旅行記総合トーナメントブログトーナメント



Aesculapius「Chiron27」まだ加筆します、雅樹と光一@国村家にて親族との時間。
第79話「交点1」読み直したら校了です、宮田と国村の対話@第七機動隊山岳レンジャー指揮車
校正ほかの合間に短編なんかUPするかもしれません、

取り急ぎ、





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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚233

2014-10-08 00:10:00 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚233

「明日また夕方とか電話する、あと田中さんにありがとうって伝えておいて?おまえが電話かけるの許してくれてありがとって、」

なんて言葉で御曹司クンが〆た電話の後@3月金曜の自宅、
映画を観ている花サンにワイン注いであげたら笑ってくれた、

「電話、巻きこんでくれてありがとね?なんか嬉しかった、」
「そ?笑」

笑って自分もコップでワイン呑んで、そしたら花サンが言った、

「ホントは電話ちょっと寂しかったからね、出る?って声かけてくれて楽しかったよ、」

やっぱり寂しがらせてたんだな思った、
アレコレメンドウなってる男と友達が電話している、そんな状況は楽しいもんじゃないだろう、
それでも架けろと気を遣ってくれた彼女に教えた、

「御曹司クンから花サンに伝言だよ、電話かけるの許してくれてありがとうってさ、笑」

こういうこと気づける御曹司クンなんだけど、それは彼自身がどうしようもなく寂しがりな証拠かもしれない?
なんてこと考えてたら花サンがちょっと笑った、

「電話するのは本人の自由なのにねーでもソンナこと言うなんて私に遠慮してくれてるのかな?」
「ま、遠慮はするだろね?笑」

それはするだろう?
で、それも逆に言えばコウイウコトだろ思ったから言った、

「逆に言えば御曹司クンが一緒にいるときは他に電話とかされたくないってコトだろね、自分は大晦日にヤラカシたクセにさ?だから今、花サンが電話させてくれたのは驚いたし嬉しかったんじゃない?笑」

ま、自分勝手ワガママクンなんだよね、笑
でもワガママだからこそ気づける優しさとかあるんだろう、で、その優しいひとは言った、

「あのひと、私にもすこしは感謝してくれてるって思っていいのかな?」
「それは思っていいだろ?笑」

答えながら思った、この二人はもしかして上手くいくのかもしれない?
でもソレには御曹司クンが恋愛対象の一番として花サンを見ないとダメだろう、
そうしないとまたドッカの男にフラついてオカシナ事態に陥るキケンが高い、だったらどうすべき?

そろそろホントに御曹司クンと離れるときが来たのかもしれないな?

ソンナこと思いながら花サンと映画に笑いながらワイン呑んで、
のんびり週末の夜更かしの後は寒いからベッドで眠って、朝が来て、朝ごはんしてから出掛けた。

第34回 過去記事で参加ブログトーナメント

目次を新装しました+第79話「交点1」加筆校正まだします、でも眠いです、笑
そんなわけで短いですけどバナー押して頂いたのでUPして寝ます、
この雑談or小説ほか面白かったらバナーorコメントお願いします、続けるかのバロメーターにもしてるので、笑

取り急ぎ、



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