雪中談話

secret talk22 氷月の午―dead of night
空が蒼い、この涯に君はいるけど遠い。
そんなこと考えてしまう空に白銀まばゆく聳える。
登山靴にゲイター履いた足元も白い、吐息も凍えて白く空融ける。
雪と空、それだけの狭間は3時間前から遠くて、この距離ただ見つめる想いに呼ばれた。
「宮田、ちょっと良いか?」
呼ばれた声に驚かされる、なぜ今ここにいるのだろう?
なにより「声」が意外で英二は振り向いた。
「黒木さん?今日は寝てろって言われましたよね、っていうか声なんで戻ってるんですか?」
今朝、新宿から戻って来たとき黒木の声は潰れていた。
それほど昨日から扁桃腺炎が酷かったはず、けれど普段通りの声は言った。
「朝飯食って薬飲んだら治った、治ったら休む理由なんか無いだろ?」
いつもの沈毅で低い透る声は澱まない。
こんな即効性の「薬」ひとつ思い当たって笑いかけた。
「国村さんの診察が良かったみたいですね?あーんして診てもらって、朝飯も国村さんが選んだんでしょう?」
あの笑顔が薬になったとか?
そんな推測に端正な顔すぐ真赤になった。
「あーんはしていないかんけいないだろ宮田おかしなこと言うな、」
関係あるって顔が言っちゃってますよ?
そう言い返したくなる、こんなに狼狽えるなんて滅多にないから揄いたい。
―ほんとに黒木さんって光一のこと意識してるのかな?
真っ赤な顔を見ながら考えてしまう、そして心配になる。
もし本気になったら安易な道じゃない、なにより対象者の脈ないこと解かっているから頷いた。
「そうですね、国村さんは関係ないかもしれません、でも朝飯と薬の相性は良かったみたいですね?」
「それはそうだな、」
素直に頷いて青い冬隊服の衿元なおす、そのグローブ嵌めた手が大きい。
肩幅も豊かな長身は貫禄あふれる、空仰ぐシャープな横顔は眼差し凛と勁い。
どこまでも頼もしい貌は三十の男ふさわしい艶もある、なのに浮いた話が無い。
だから不思議にさせられる疑問を訊いてみた。
「黒木さんは独身主義ですか?」
そういう主義だから独り身でいたいのだろうか?
それなら納得できる、けれど先輩は端正な眉間しかめた。
「宮田、それは俺に対する嫌みか?」
「違います、黒木さんがフリーって不思議だから訊きました、」
ほんと不思議だ?
そう素直に返した隣、先輩は涼しい目許しかめた。
「正直に言ってほしいんだが宮田、俺は女にモテるって本気で思うか?」
訊かれて考えこまされる、女性から見た評価はどうなんだろう?
その思案そのまま英二は口にした。
「外見的にはモテると思いますよ?背は高いし顔もハーフみたいだし、ちょっと逞しすぎるけどモデルみたいって言われませんか?」
こんな外貌の仕事仲間がいたな?
そんな4年前の記憶から答えた隣、低い声が首傾げた。
「逞しいは言われたことあるがモデルとは言われんぞ、っていうか宮田に言われると皮肉っぽいんだが、」
「素直に受けとって下さい、俺は思ったことしか言いません、」
思ったまま答えながら可笑しくなる、だって原因が今すこし見えた。
だから黒木はフリーなのかもしれない?その推定のまま澄んだテノールが笑った。
「ほら黒木、そういう理屈っぽいトコに女も寄ってこないんじゃない?男にはモテるだろうけどさ、」
あ、図星まっすぐ言ってくれちゃったな?
こんなこと黒木に言えるのは一人しか知らない、そして黒木にとって最も言われたくない相手だろう。
その心配どおり隣は首すじから額まで逆上せだす、この素直な貌に想ってしまう。
結局のところ人間、外貌より性格がモテるも人生も左右する?
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宮田@第78話かつP.S 雪郷山籠act.2その後、奥多摩にて

secret talk22 氷月の午―dead of night
空が蒼い、この涯に君はいるけど遠い。
そんなこと考えてしまう空に白銀まばゆく聳える。
登山靴にゲイター履いた足元も白い、吐息も凍えて白く空融ける。
雪と空、それだけの狭間は3時間前から遠くて、この距離ただ見つめる想いに呼ばれた。
「宮田、ちょっと良いか?」
呼ばれた声に驚かされる、なぜ今ここにいるのだろう?
なにより「声」が意外で英二は振り向いた。
「黒木さん?今日は寝てろって言われましたよね、っていうか声なんで戻ってるんですか?」
今朝、新宿から戻って来たとき黒木の声は潰れていた。
それほど昨日から扁桃腺炎が酷かったはず、けれど普段通りの声は言った。
「朝飯食って薬飲んだら治った、治ったら休む理由なんか無いだろ?」
いつもの沈毅で低い透る声は澱まない。
こんな即効性の「薬」ひとつ思い当たって笑いかけた。
「国村さんの診察が良かったみたいですね?あーんして診てもらって、朝飯も国村さんが選んだんでしょう?」
あの笑顔が薬になったとか?
そんな推測に端正な顔すぐ真赤になった。
「あーんはしていないかんけいないだろ宮田おかしなこと言うな、」
関係あるって顔が言っちゃってますよ?
そう言い返したくなる、こんなに狼狽えるなんて滅多にないから揄いたい。
―ほんとに黒木さんって光一のこと意識してるのかな?
真っ赤な顔を見ながら考えてしまう、そして心配になる。
もし本気になったら安易な道じゃない、なにより対象者の脈ないこと解かっているから頷いた。
「そうですね、国村さんは関係ないかもしれません、でも朝飯と薬の相性は良かったみたいですね?」
「それはそうだな、」
素直に頷いて青い冬隊服の衿元なおす、そのグローブ嵌めた手が大きい。
肩幅も豊かな長身は貫禄あふれる、空仰ぐシャープな横顔は眼差し凛と勁い。
どこまでも頼もしい貌は三十の男ふさわしい艶もある、なのに浮いた話が無い。
だから不思議にさせられる疑問を訊いてみた。
「黒木さんは独身主義ですか?」
そういう主義だから独り身でいたいのだろうか?
それなら納得できる、けれど先輩は端正な眉間しかめた。
「宮田、それは俺に対する嫌みか?」
「違います、黒木さんがフリーって不思議だから訊きました、」
ほんと不思議だ?
そう素直に返した隣、先輩は涼しい目許しかめた。
「正直に言ってほしいんだが宮田、俺は女にモテるって本気で思うか?」
訊かれて考えこまされる、女性から見た評価はどうなんだろう?
その思案そのまま英二は口にした。
「外見的にはモテると思いますよ?背は高いし顔もハーフみたいだし、ちょっと逞しすぎるけどモデルみたいって言われませんか?」
こんな外貌の仕事仲間がいたな?
そんな4年前の記憶から答えた隣、低い声が首傾げた。
「逞しいは言われたことあるがモデルとは言われんぞ、っていうか宮田に言われると皮肉っぽいんだが、」
「素直に受けとって下さい、俺は思ったことしか言いません、」
思ったまま答えながら可笑しくなる、だって原因が今すこし見えた。
だから黒木はフリーなのかもしれない?その推定のまま澄んだテノールが笑った。
「ほら黒木、そういう理屈っぽいトコに女も寄ってこないんじゃない?男にはモテるだろうけどさ、」
あ、図星まっすぐ言ってくれちゃったな?
こんなこと黒木に言えるのは一人しか知らない、そして黒木にとって最も言われたくない相手だろう。
その心配どおり隣は首すじから額まで逆上せだす、この素直な貌に想ってしまう。
結局のところ人間、外貌より性格がモテるも人生も左右する?


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