呼ばれたくて、
secret talk38 視線act.3 ―dead of night
待ちぼうけ、なんて初めてだ。
「ほら…すごいかっこいい、」
「…声かけてみる?」
流れ込んでくる声たち視線が来る、でも違う。
埃っぽいい雑踏から甘ったるい刺激、香水の誘い。
からめばそれなり愉しめる、でも、そんなこと望んじゃいない。
―湯原まだかな、って来ないかな、だ?
足音たち賑わう改札前、壁際で左手首を見る。
嵌めたクライマーウォッチの時刻また進む、デジタル表示が穿つ。
“11:32”
2分すぎた、120秒も。
こんな現実に英二は微笑んだ。
―やっぱり怒らせたよな?湯原はマジメだし、
怒らせて当り前、来てくれないのが当然。
だって自分なら怒るだろう、君じゃなければ。
T o :湯原周太
subject:宮田です
本 文:アドレス勝手にごめん、理由を話させてほしい。新宿駅南口改札11:30、待ってる。
あんなメール、君じゃなかったら送らない。
だから想像したくなる、あんなメールもし君から届いたら、どんなに嬉しいだろう?
―湯原こそ俺の携帯、勝手にしてくれてたらいいのに、
想像がため息吐く、想うだけでも幸せで。
もし連絡手段を欲しがってくれるのなら、それは君に想いがある可能性だ。
―呼んでくれたら、どこでも行くだろな俺…こんなこと想ったことなかったな、
だけど現実は今、一方的な約束のまま君は来ない。
ただ違う声が自分を見つめてくる、望まなくても。
「ね…ドタキャンされたカンジ?」
「だったら…誘ったらくるかな」
「でもスーツ…仕事かな」
向こうから、あっちから、視線が声が絡みたがる。
かすかでも甘ったるい匂いは香水、雑踏ごし誘いかけて匂う。
こんなこと初めてじゃない、だけど待ちぼうけは初めてだ、唯ひとりに。
「は…、」
ため息に視線めぐらせて、ただ改札口から人波が映る。
いったい何人いるのだろう?何百の群れただ寄せて流れて街へ出る。
それぞれ目的の場所へ人へ流れて向かって、でも自分の行先は現れてくれない、呼んでほしい唯一人は。
―誰でもいいって思ってたのにな、ついこの間まで俺、
誰でもよかった、時間潰しの相手なら。
絡まりたがる視線を声を受けとめて、ただ笑顔ひとつで愉しめた。
望まなくても探さなくても快楽は歓楽は墜ちてくる、そんな自分のアタリマエが今は疎ましい。
もう唯ひとつしか欲しくない、他は要らない。
―とかって俺、かなり危ないよな?
想い立ち止まって笑いたくなる。
こんなに「唯ひとつ」想いこむ、こんな自分だなんて知らなかった。
―ちょっと外に出るか、
息がつまる、こんなまま君を見られない。
このまま警察学校に戻り再会して、そのとき鼓動の行先どうなるだろう?
―外はいい天気だよな、
駅の片隅、空が見える。
街路樹も青く茂るのだろう、あのベンチも緑きっとまぶしい。
あのベンチで隣に座りたくて、だけど「勝手」の現場だと君にはバレたろうか?
―外に行けば忘れられるかな、俺、
想い鼓動ふかく穿たれる、一方的な待合せ軋んで刺す。
こんなに苦しいなら外に出ればいい、それなのに動かない脚に呼ばれた。
「…宮田?」
呼ばれた、声に。
「、」
息を呑む、俯いたまま皮膚が冴える。
動かないスーツの脚の前、革靴ひとそろい立っている。
大きくはないプレーントゥ艶やかな黒い革靴、見覚えある足からスーツの脚を見て、ネクタイから小柄な顔を見た。
「どうした宮田…ぐあい悪い?」
黒目がちの瞳が見あげてくれる。
おだやかな深い声が香る、さわやかで深い柑橘みたいな香。
「大丈夫だよ湯原、ありがとな?」
今、抱きしめられたらいいのに?
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英二side story追伸@第5話 道刻
secret talk38 視線act.3 ―dead of night
待ちぼうけ、なんて初めてだ。
「ほら…すごいかっこいい、」
「…声かけてみる?」
流れ込んでくる声たち視線が来る、でも違う。
埃っぽいい雑踏から甘ったるい刺激、香水の誘い。
からめばそれなり愉しめる、でも、そんなこと望んじゃいない。
―湯原まだかな、って来ないかな、だ?
足音たち賑わう改札前、壁際で左手首を見る。
嵌めたクライマーウォッチの時刻また進む、デジタル表示が穿つ。
“11:32”
2分すぎた、120秒も。
こんな現実に英二は微笑んだ。
―やっぱり怒らせたよな?湯原はマジメだし、
怒らせて当り前、来てくれないのが当然。
だって自分なら怒るだろう、君じゃなければ。
T o :湯原周太
subject:宮田です
本 文:アドレス勝手にごめん、理由を話させてほしい。新宿駅南口改札11:30、待ってる。
あんなメール、君じゃなかったら送らない。
だから想像したくなる、あんなメールもし君から届いたら、どんなに嬉しいだろう?
―湯原こそ俺の携帯、勝手にしてくれてたらいいのに、
想像がため息吐く、想うだけでも幸せで。
もし連絡手段を欲しがってくれるのなら、それは君に想いがある可能性だ。
―呼んでくれたら、どこでも行くだろな俺…こんなこと想ったことなかったな、
だけど現実は今、一方的な約束のまま君は来ない。
ただ違う声が自分を見つめてくる、望まなくても。
「ね…ドタキャンされたカンジ?」
「だったら…誘ったらくるかな」
「でもスーツ…仕事かな」
向こうから、あっちから、視線が声が絡みたがる。
かすかでも甘ったるい匂いは香水、雑踏ごし誘いかけて匂う。
こんなこと初めてじゃない、だけど待ちぼうけは初めてだ、唯ひとりに。
「は…、」
ため息に視線めぐらせて、ただ改札口から人波が映る。
いったい何人いるのだろう?何百の群れただ寄せて流れて街へ出る。
それぞれ目的の場所へ人へ流れて向かって、でも自分の行先は現れてくれない、呼んでほしい唯一人は。
―誰でもいいって思ってたのにな、ついこの間まで俺、
誰でもよかった、時間潰しの相手なら。
絡まりたがる視線を声を受けとめて、ただ笑顔ひとつで愉しめた。
望まなくても探さなくても快楽は歓楽は墜ちてくる、そんな自分のアタリマエが今は疎ましい。
もう唯ひとつしか欲しくない、他は要らない。
―とかって俺、かなり危ないよな?
想い立ち止まって笑いたくなる。
こんなに「唯ひとつ」想いこむ、こんな自分だなんて知らなかった。
―ちょっと外に出るか、
息がつまる、こんなまま君を見られない。
このまま警察学校に戻り再会して、そのとき鼓動の行先どうなるだろう?
―外はいい天気だよな、
駅の片隅、空が見える。
街路樹も青く茂るのだろう、あのベンチも緑きっとまぶしい。
あのベンチで隣に座りたくて、だけど「勝手」の現場だと君にはバレたろうか?
―外に行けば忘れられるかな、俺、
想い鼓動ふかく穿たれる、一方的な待合せ軋んで刺す。
こんなに苦しいなら外に出ればいい、それなのに動かない脚に呼ばれた。
「…宮田?」
呼ばれた、声に。
「、」
息を呑む、俯いたまま皮膚が冴える。
動かないスーツの脚の前、革靴ひとそろい立っている。
大きくはないプレーントゥ艶やかな黒い革靴、見覚えある足からスーツの脚を見て、ネクタイから小柄な顔を見た。
「どうした宮田…ぐあい悪い?」
黒目がちの瞳が見あげてくれる。
おだやかな深い声が香る、さわやかで深い柑橘みたいな香。
「大丈夫だよ湯原、ありがとな?」
今、抱きしめられたらいいのに?
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