ひきよせられて、
secret talk47 独寝 ―dead of night
もう眠らないと、
わかっている、でもシーツの波に君が映る。
数分前に見つめた記憶、タオルの翳に籠らす声。
『…いいなら…ね…』
くぐもったような掠れた声、ちいさくて、けれど深く響く。
あの一言をつかまえたかった、でも君はタオル被ったまま言った。
『…もう寝る』
ぼそり一言、タオルの横顔そのまま出て行った。
すれちがいざまオレンジが香って、石鹸なまめく香に扉が閉じた。
そうして独り残された狭い寮室、まだオレンジが甘い。
「もう寝るって湯原…俺が寝らんないよ?」
ぱさん、寝返りの衣擦れどこか甘い。
君が話すたび香る甘い香、さわやかで深いオレンジみたいな匂い。
この香に自分がいつもどこを見ているかなんて、なにひとつ君は知らない。
―キスしたら甘いのかな、男同士だけど、
男同士だけど、なんて考えかけて可笑しい。
だって一度でも「甘い」なんて想ったろうか、この自分が?
いつもいつもそれなりでしかない、それでもそんな自分でも、そんな感覚が感情がある?
「…寝られない、」
ため息ひとりごと、吐息やたら甘い。
あまいオレンジの香ふる月光は洗い髪を艶めいた、その記憶が脈うちだす
寝ころんだベッド響きだす香と鼓動、ゆるやかに熱くなる肌の深く香あわだつ。
『帰りは宮田ほとんど黙ってた…』
声ふかく香りだす、肌の底ふかく声が波うつ。
かすれそうな小さな声わずかに揺らぐ、あれは君の不安だろうか?
―不安がってくれるなら湯原、どうでもよくはないよな?
どうでもいいなら、きっと君は来なかった。
点呼も終えた夜の時間、この部屋まで君は「ききたいことある」と訪ねた。
その前は、この部屋に現れた最初に君はなんて言ったろう?
『…おれもそっちいっていいか?』
ぎしっ、
スプリング軋んでベッドを降りる、素足に床がなまぬるい。
真夏の寮室ひそやかに扉を開けて、隣室かすかにノックした。
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英二side story追伸@第5話 道刻
secret talk47 独寝 ―dead of night
もう眠らないと、
わかっている、でもシーツの波に君が映る。
数分前に見つめた記憶、タオルの翳に籠らす声。
『…いいなら…ね…』
くぐもったような掠れた声、ちいさくて、けれど深く響く。
あの一言をつかまえたかった、でも君はタオル被ったまま言った。
『…もう寝る』
ぼそり一言、タオルの横顔そのまま出て行った。
すれちがいざまオレンジが香って、石鹸なまめく香に扉が閉じた。
そうして独り残された狭い寮室、まだオレンジが甘い。
「もう寝るって湯原…俺が寝らんないよ?」
ぱさん、寝返りの衣擦れどこか甘い。
君が話すたび香る甘い香、さわやかで深いオレンジみたいな匂い。
この香に自分がいつもどこを見ているかなんて、なにひとつ君は知らない。
―キスしたら甘いのかな、男同士だけど、
男同士だけど、なんて考えかけて可笑しい。
だって一度でも「甘い」なんて想ったろうか、この自分が?
いつもいつもそれなりでしかない、それでもそんな自分でも、そんな感覚が感情がある?
「…寝られない、」
ため息ひとりごと、吐息やたら甘い。
あまいオレンジの香ふる月光は洗い髪を艶めいた、その記憶が脈うちだす
寝ころんだベッド響きだす香と鼓動、ゆるやかに熱くなる肌の深く香あわだつ。
『帰りは宮田ほとんど黙ってた…』
声ふかく香りだす、肌の底ふかく声が波うつ。
かすれそうな小さな声わずかに揺らぐ、あれは君の不安だろうか?
―不安がってくれるなら湯原、どうでもよくはないよな?
どうでもいいなら、きっと君は来なかった。
点呼も終えた夜の時間、この部屋まで君は「ききたいことある」と訪ねた。
その前は、この部屋に現れた最初に君はなんて言ったろう?
『…おれもそっちいっていいか?』
ぎしっ、
スプリング軋んでベッドを降りる、素足に床がなまぬるい。
真夏の寮室ひそやかに扉を開けて、隣室かすかにノックした。
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