掴まれて、
英二side story追伸@第5話 道刻
secret talk40 言訳act.2 ―dead of night
なんで、なんて決まっている。
君だから盗みたかった、繋がりたくて。
どうしても欲しかった隣の木蔭、真夏のベンチに問われる。
「宮田、どうして…俺のメアド?」
黒目がちの瞳が見つめてくれる、深く澄んだ瞳。
この眼をごまかすなんてしたくない、ただ英二は微笑んだ。
「湯原とメールしたかったんだ、でも勝手にごめん、」
怒られるだろうか、嫌われる?
不安が揺らす、でも君は隣に座ってくれた。
だから嫌われてはいない?縋りたい期待にオレンジ香った。
「きのう…どうやって?」
「え?」
訊き返しながら反芻する「どうやって」って?
ついさっきも答えたのに?けれど澄んだ瞳が見あげた。
「きのう、ここで、本読んだまま寝て…そのとき宮田、どうやって俺の携帯を?」
そのこと訊いちゃうんだ?
―言ったら今度こそ嫌われそうだよな?
どうやって?
ヒントは君が今どこに携帯電話をしまっているか?だ。
そんなこと訊かないでも解るだろう、それとも否定したいから訊いている?
「…宮田?」
黒目がちの瞳がのぞきこんでくる、さわやかな香かすめて甘い。
甘いのに涼やかになる深さオレンジと似て、逢いたかった香に瞳に微笑んだ。
「赤外線受信で湯原のデータをもらったけけど?」
こんな答え、追及は諦めてはくれない?
たぶん無理だろう、そんな予想どおりに静かな声が訊いた。
「…俺の携帯からデータ送らせるのに、どうやって寝てる俺から携帯とりあげた?」
逃げようがない質問だ?
―こんどこそ嫌われるかな、俺?
アドレスを勝手に盗んだ、それは許されたらしい。
けれど「携帯をとりあげた」方法は別、その問いかけに口ひらいた。
「スーツのポケットからとったよ、ごめん、」
ほんとうのことだ、嘘なんてない。
嘘なんてないまま気づかないで?願い、けれど訊かれた。
「ぽけっと…ってスーツの内ポケットに手を?」
訊かれた、気づかれた?
こんなの答えざるを得ない、でもたとえば、
携帯電話しか触ってないよ?
なんて言ったら逆効果、触りたい本音が透ける。
どう言えば疑い招かない?一瞬の思案に笑いかけた。
「どうしても昼飯につきあってほしくて、連絡したかったんだ。でも勝手にごめん、」
嘘はついていない、本音だけ。
けれど片方は隠しこんだ前、黒目がちの瞳ゆっくり瞬いた。
「…そう、…」
瞬いて見あげてくれる、深い澄んだ視線が自分を映す。
今なにを考えているのだろう、その答えに鼓動ゆっくり奔りだす。
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