ただ見続けて、
secret talk43 独占act.2 ―dead of night
緑の光舞う、明滅あざやかな君にふる。
木洩陽きらめく小径、革靴のつまさき隣がいる。
レザーソール砂利かすかに踏んで熱が透く、ほろ苦い深い香に風が熱い。
炎天の真昼に公園は静かで、ただ足音ふたつ樹影の底、さわやかな甘い香が深い。
「人を見ないな、湯原?」
笑いかけた真中、横顔すこし肯く。
深緑うかぶ輪郭あわく澄む、その睫が長い。
―きれいだな、やっぱり、
ただ並んで歩く、それだけの時間に惹きこまれる。
炎天きらめく木洩陽が香高い、ほろ苦い深い樹木の匂いと甘い香。
―湯原の匂いだ、オレンジみたいな、
さわやかで穏やかで甘い、深い香。
この香に逢うたび惹きこまれる、脳髄から揺らされて響く。
溺れこんでしまいそうな感覚ほっと息ついて、足を止めずジャケット脱いだ。
「は…、」
深呼吸ひとつ、風がワイシャツ透る。
炎天くるむ都心の公園、それでも古木のびやかな天蓋に風がゆく。
徹りぬける風に汗ふれる、そっと冷えてゆく肌に袖をめくった。
―涼しいのに肌が熱い、これって俺?
火照る皮膚あわく風なぶる、肌うかぶ水から冷まされる。
それでも鼓動ふかく熱が起きだす、くすぶる熾火に香がくらむ。
―くらくらする湯原の匂い、あまくて、
スーツの腕ジャケット脱いで、けれど消せない熱の香。
ただ並んで歩いているだけ、それだけで隣に溺れだす。
―ほんとに俺、どうしたんだろ?
どうしたのだろう、なんて答え本当は知っている。
もう認めてしまう、こんなにも唯ひとり溺れたい。
だけど君はどう想うのだろう?
―なに考えてるのかな湯原、口数いつも以上に少ないけど、
新宿駅南口改札、君は来てくれた。
自分からの一方的な待合せ、それでも2分遅れて来てくれた。
それでも並んでベンチに座って、言訳を聴いてくれて、一緒にラーメン啜ってくれた。
―だから許してくれたと思ったんだけど、…無視してるわけじゃなさそうだし、
話しかければ反応してくれる、言葉は少ないけれど。
見つめれば見返してくれる、でも睫うつむけた影が長い。
すこし逸らされてしまう視線、その陰翳に鼓動くすぶる熱い。
―どうしたら俺のこと見てくれるんだろ、湯原?
君に自分を見てほしい。
その黒目がちの瞳に見つめてほしい、この自分を見とめて?
そうして言ってほしい想いがある、どうか一緒にいる瞬間を一言に告げて?
「湯原、」
呼びかけてしまう、告げられたくて。
唯ひとり呼びたい名前きらめく緑、穏やかな声が応えた。
「…なに?」
こつん、ことん、
レザーソールの踵が鼓動になる。
同じ質問またと想われるだろう、それでも知りたい鼓動が敲く。
「湯原は、こういうの楽しい?」
声になる、唯ひとつの答え見つめたくて。
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英二side story追伸@第5話 道刻
secret talk43 独占act.2 ―dead of night
緑の光舞う、明滅あざやかな君にふる。
木洩陽きらめく小径、革靴のつまさき隣がいる。
レザーソール砂利かすかに踏んで熱が透く、ほろ苦い深い香に風が熱い。
炎天の真昼に公園は静かで、ただ足音ふたつ樹影の底、さわやかな甘い香が深い。
「人を見ないな、湯原?」
笑いかけた真中、横顔すこし肯く。
深緑うかぶ輪郭あわく澄む、その睫が長い。
―きれいだな、やっぱり、
ただ並んで歩く、それだけの時間に惹きこまれる。
炎天きらめく木洩陽が香高い、ほろ苦い深い樹木の匂いと甘い香。
―湯原の匂いだ、オレンジみたいな、
さわやかで穏やかで甘い、深い香。
この香に逢うたび惹きこまれる、脳髄から揺らされて響く。
溺れこんでしまいそうな感覚ほっと息ついて、足を止めずジャケット脱いだ。
「は…、」
深呼吸ひとつ、風がワイシャツ透る。
炎天くるむ都心の公園、それでも古木のびやかな天蓋に風がゆく。
徹りぬける風に汗ふれる、そっと冷えてゆく肌に袖をめくった。
―涼しいのに肌が熱い、これって俺?
火照る皮膚あわく風なぶる、肌うかぶ水から冷まされる。
それでも鼓動ふかく熱が起きだす、くすぶる熾火に香がくらむ。
―くらくらする湯原の匂い、あまくて、
スーツの腕ジャケット脱いで、けれど消せない熱の香。
ただ並んで歩いているだけ、それだけで隣に溺れだす。
―ほんとに俺、どうしたんだろ?
どうしたのだろう、なんて答え本当は知っている。
もう認めてしまう、こんなにも唯ひとり溺れたい。
だけど君はどう想うのだろう?
―なに考えてるのかな湯原、口数いつも以上に少ないけど、
新宿駅南口改札、君は来てくれた。
自分からの一方的な待合せ、それでも2分遅れて来てくれた。
それでも並んでベンチに座って、言訳を聴いてくれて、一緒にラーメン啜ってくれた。
―だから許してくれたと思ったんだけど、…無視してるわけじゃなさそうだし、
話しかければ反応してくれる、言葉は少ないけれど。
見つめれば見返してくれる、でも睫うつむけた影が長い。
すこし逸らされてしまう視線、その陰翳に鼓動くすぶる熱い。
―どうしたら俺のこと見てくれるんだろ、湯原?
君に自分を見てほしい。
その黒目がちの瞳に見つめてほしい、この自分を見とめて?
そうして言ってほしい想いがある、どうか一緒にいる瞬間を一言に告げて?
「湯原、」
呼びかけてしまう、告げられたくて。
唯ひとり呼びたい名前きらめく緑、穏やかな声が応えた。
「…なに?」
こつん、ことん、
レザーソールの踵が鼓動になる。
同じ質問またと想われるだろう、それでも知りたい鼓動が敲く。
「湯原は、こういうの楽しい?」
声になる、唯ひとつの答え見つめたくて。
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