萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第77話 決表act.1-another,side story「陽はまた昇る」

2014-07-19 11:45:00 | 陽はまた昇るanother,side story
snowfall 時の積もり



第77話 決表act.1-another,side story「陽はまた昇る」

雪がふる、この空は懐かしい。

遠い遥かな山、近い山、どれも薄墨あわく白紗にとけてゆく。
やわらかな白と墨色の世界は凛と静かに懐かしい、この静謐を昔から知っている。
幼い冬の雪の森、父と見た雪の山、それから初雪と1月と3月の雪にあの大好きな笑顔。

『周太、名前で呼んでよ?』

ほら、また笑ってくれる。

綺麗な低い声、黄金の森に白い雪が降る、あの深い金色は落葉松とブナ。
温かなココアの香、凛と澄んだ雪の匂い、そして真紅の登山ジャケットにダークブラウンの髪ひるがえる。
黄金まばゆい森の雪、白皙やさしい笑顔、あの場所にもう一度だけで良いから還りたい、その願いごと周太は瞳ひらいた。

「…えいじ」

大切な名前かすかに声こぼれる、その頬にシーツやわらかに温かい。
抱きしめてくれる温もりはカットソー透かす、覚めきらない視界にボタンとニットの編目が映る。
ほら、夢の願いのまま抱きしめてくれている?嬉しくて頬よせて、けれど陽ざしの香に瞳ひとつ瞬いた。

「え…?」

あのひとの匂いじゃない?

英二は森のような甘くほろ苦い香、あの笑顔の匂いと今は違う。
そう気づいたまま今寝ているベッドに意識ひっぱたかれ鼓動が叫んだ。

「きゃあっ!」

どたんっ、

床鳴って隣からっぽになる。
いま叫んで腕も動いて、そのまま起きあがった背に壁ふれる。
もうカーテン透かす陽は明るい、やわらかな朝の光に床から黒髪が起きあがった。

「痛ぇっ…」

ぼそり不機嫌な声が低くベッドの向こうに呻く。
細身の体躯はカーディガンとスウェットパンツに逞しさ透ける。
これは昨夜と同じ格好だ?そう見とめるまま寝惚け顔ふりむき微笑んだ。

「ぃっ…あ、どうした湯原、怖い夢でも見たのか?」

ほら、こんなに優しい人なのに自分は突き飛ばしてしまった。
それでも今この状況が解らなくて壁に背くっつけたまま尋ねた。

「あのっ…なんでだてさんべっどにいるんですかソファでねてたのに、」

ああ僕また声うわずっちゃってる恥ずかしい。

だけど今こんな状況は驚くだろう、だってベッドひとつ一緒に寝ていた。
喘息を心配してベッドを譲ってくれた、そして伊達はソファで寝ると言っていた。
だから昨夜は確かにソファで寝てくれたはず、そんな相手は端整な浅黒い顔かしげ笑った。

「ああ、喉乾いて起きた時だな、クセでベッドに入ったんだろ?驚かせてごめんな、」

そういう事確かにあるだろう?
けれど言訳にならなかった状況に重ねて尋ねた。

「でもっぼくのことだきしめてましたよねあれなんなんですかっ」

ごめんなさい英二、どうしよう?

きっと知ったら本気で怒るに決まっている、それとも泣く?
きっと本気で泣いて怒って悄気てしまう、そして色々くどくど言われる。
そんな予想すぐ描かれてしまうほど本当は逢いたい、だから今がショックで泣きたいのに精悍な瞳は笑った。

「弟と間違えたんだろな、恥ずかしいブラコンだろ?」

なんだ間違えたんだ?

そう言われて肩から力抜けてしまう。
けれど一人っ子の自分には解らなくて重ねて尋ねた。

「お、おとうとをだっこしてねるんですか?それってきょうだいならふつう?」
「うん?」

首傾げてカーディガンの肩を軽く揉む。
その手が大きく武骨で、なにか羨ましく見惚れるまま伊達は笑った。

「そうだな、普通はしないだろな?でも弟には俺が母親代わりなんだよ、5歳下でな?」

ずきり、

言われた言葉に鼓動が軋む「母親代わり」が傷む。
だって自分はもう聴いている、伊達がどんな家族に育ち弟を守ってきたのか?

『俺の家は男所帯でな、祖父と父と弟と毎日4人分の飯を作ってたんだ。母親は出ていった、弟の喘息のことも居辛い理由だったらしい、』

そう話してくれたのは1ヵ月前、あの事件の後だった。
あのとき泊りこみで看病してくれた、うどんを煮込んで食べさせてくれた。
あの優しさは過去の哀痛と今も続く愛情でいる、そんな青年はすこし照れくさそうに笑った。

「母親が出て行ったとき弟は4歳でな、甘ったれで俺がいつも抱っこして寝てたんだよ。そのクセが今もあってな、恥ずかしいブラコンだろ?」

恥ずかしいだろ?そう言ってまた笑ってくれる。
その笑顔は気恥ずかしげだけど温かい、その温もりに申し訳なくて周太は頭下げた。

「恥ずかしくないです、そういうの…すみません、僕が変なこと言って、」
「いや、俺こそ悪かったな?湯原が怒るの当り前だ、」

さらり笑って床に座ったまま伸びをする、そんな仕草から大らかな温もりが優しい。
いつも業務中は沈毅で真面目を描いた貌でいる、けれど素顔はこんなに優しい。
だからこそ自分が恥ずかしくて首すじ熱くなる。

―僕ったら変なこと考えちゃって…おとこどうしなら何でもないのに、ね、

こんなこと知ったら伊達はどう想うのだろう?
そして自分の心配が気恥ずかしい、本当に何も無かったならそれで良いのに首すじ熱くなる。
考えるだけでも気恥ずかしくてブランケット被ってしまいたい、そんな想いの前でカーディガン姿は立ち上がり笑った。

「朝飯つくるな、テレビでも観るか?」

言いながらスイッチ入れてリモコン渡してくれる。
その画面に映し出されたモノトーンやわらかな画に息吐いた。

「あ…すごい、」

白銀そまる尾根、その山懐に里は蒼く白く埋もれる。
雲ゆるやかな空は青い、時おり舞う小雪が陽にきらめき降り積もる。
昨夜も雪は降っていた、そう思い出して窓のカーテンひくと鉄格子の向こう白い。

「雪積もってるだろ?」
「はい、」

伊達の声に応えて見下ろす窓、通りは白く埋もれる。
こんな都心でも雪が積もった、それなら奥多摩は今ごろ雪深いだろう?

―美代さん試験に行けるかな、

今日、美代は大学入試の模擬試験を受ける。
受験場所は青梅、雪もあるから車で行くと話していた。
美代なら雪の運転も慣れているだろう、それでもテレビの光景に心配になってしまう。

―英二と光一も救助とかあるかも、ね…雪掻きの応援とかもあるのかな、

第七機動隊山岳レンジャーの二人は今日、出動があるのだろうか?
そんな思案に瞳ひとつ瞬いて周太はベッドサイドに畳んだニットパーカー取った。 
もしかして連絡が入っているかもしれない?そう気が付いてパーカーのポケットから携帯電話だして開いた。

「あ、」

着信履歴2つ、メールも入っている。
どれも同じ人だろうか、その申し訳なさにメール開くと逢いたい名前が呼んだ。

From  :英二
subject:初雪
本 文 :おつかれさま周太、電話したけどもう寝てるのかな。
     冷えこんでるけど体調大丈夫か?明日は休みだって言ってたけど無理するなよ、
     去年の初雪を周太は憶えてる?あの初雪は俺にとっていちばん幸せだよ、森も夜も。
     今日、逢いたかったな。

From  :英二
subject:銀世界
本 文 :おはよう周太、屋上から見た都内は真白だよ。
     今日は雪掻きすると思う、出るかもしれないけど心配しないで。
     でも俺は周太を心配するよ?

着信2つとメール2通、どれも同じ人でいる。
こんなふう構ってもらえる事は嬉しくて、けれど昨日の記憶ずきり傷む。
庁舎のエレベーターホール、あのとき声かけられなかった事をあなたは知らない。

―昨日ほんとうは逢ってるんだよ、英二…気づいてくれなかったよね、

終業時間に伊達と降りたエレベーターの先、あの笑顔は咲いていた。
誰も同じダークスーツ姿で歩いていた、それでも自分にはすぐ解かる見つけてしまう。
けれど白皙の横顔は振り向いてくれなかった、一瞥も無かった、それで良いはずなのに哀しい。
あの場所に自分が居ることは知られてはいけない、そう解っているのに哀しいのは自分の弱さだろうか?

―守秘義務だから逢っちゃいけない、あの場所では…でもいろいろありすぎて、

異動して2ヶ月、特にこの1ヶ月は秘密が多すぎる。
父の軌跡は遮られてばかり、けれど自殺未遂と伊達の手首に現実を見た。

『あの場所は適性が無いやつは死ぬ、性格と能力の両方で適性が無ければ死ぬ、訓練か現場で事故死するか、自殺する』

『僕がしていることは幸せな仕事とは言えない、そんな父親の子に生まれて子供は幸せなのか?考えつめて僕は生きていたら邪魔になると思いました』
『僕らは任務中に死んでも極秘扱いで殉職になるか解りません…拳銃なら訓練中の殉職にして貰えるかもしれない、だからあの場所で拳銃自殺をしました、』

『人を殺した手で人を養う飯作るなんて変だろ?だから家族にばれたくない、食ったモノ吐かれたら辛いからな…そういう秘密が自分で赦せない、』

伊達と勝山、ふたりが語ってくれた想いはそのまま父の聲だ。
だから父の願いも秘密も今なら解かる、なぜ父が家族に言えなかったのか?それは守秘義務の所為じゃない。
ただ知られたくなくて、ただ幸せを護りたくて、だからこそ罪悪感に苛まれるままに春あの夜あの場所で父は殉職を選んだ。

「…っ、」

ほら、想うだけで泣きたくなる。
あの春には何も解らなかった父の想い、けれど今なら抱きしめられる。
もう自分は何も知らない子供じゃない、そう想えることが誇らしくて嬉しくて、父に逢いたくて、あのひとに逢いたい。

―英二、逢いたい…いま話したいこと沢山あるんだ、でも、あなたを信じていいの?

あなたを信じていいの?

この疑問ずっと廻ってしまう、だって何もかもが出来過ぎている。
父と似た俤の青年がなぜ自分と出逢ったのか?なぜ自分の同期になり想い交わすことになったのか?
しかも血縁まで繋がれる相手だった、そんな全てが偶然なのか必然なのか解らなくて迷って、だから気が付いてしまう。

昨日のあの人影は、誰?

―庁舎の壁に誰かいた、普通ならいるはず無いのにでも見たんだ、

昨日午後、コピー機から顔上げた窓の向こう人影を見た。
地上数十メートルの外壁を誰かがいる、そんなこと普通なら有得ない。
あんなところ素手で登るなど普通出来ない、なにより登る動機なんて何があるだろう?
だから「居るはすば無い」けれど唯ひとり可能性がある、昨日あの時間あの場所でクライミングするなら誰?

「…できちゃうよね、」

ぽつん、声こぼれて台所へ視線を向けて安堵する。
思わず零れた独り言、けれど台所にいる伊達には聞えていないだろう。
その安堵にベッドの上そっと膝抱えこんで窓もたれて、眺める白銀の街に雪の山は遠い。



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚157

2014-07-19 00:42:14 | 雑談寓話


雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚157

大晦日、新幹線に乗って親戚+友達に会いに行き、
まず親戚の家に顔出して食事に行ったら歯痛になり大嫌いな歯医者に連行されて、
その歯医者も一緒に友達と呑んでたら同僚御曹司クンからメール(長文注意)が来た、

From:御曹司クン
本文:いま年越カウントダウンで山下公園に来てる、隣にいるのオマエだったらいいのに。
   いつも素っ気ないし意地悪だしメールも短いのしか返してくれないし、
   電話も圏外なこと多いし寝てて出てくれないし今も遠くに行ってるし、
   いま隣にいる大学の友達のことマジ羨ましいし嫉妬してる、
   <中略>
   もうじき今年も終わるけどオマエのコト考えてる時間がいちばん長い一年だったよ。
   こんだけ長い片想いって俺初めてなんだからな?   

こんなモード入っちゃってるんだなー思いながら読んで、
そしたら隣から友達ナニゲナク画面を見て、で、グラス噴いた、

「ぶはっ、ぅえっ?!」

びっくり発声→ビール噴いた飛沫は弾けて跳んで、
前にいたドッチか言うと美形な歯医者が被害者になった、笑
ビールだったかをぶちまけられた卓上は料理の皿が少なくて助かった、でも被害を浴びた相手に笑って訊いた、

「大丈夫?笑」
「はあ、大丈夫ですけどソッチこそ大丈夫??」

ちょっと気の抜けたような調子で訊かれて、
ちょっと状況説明しないと悪いなって思って正直に言った、

「職場の同僚から来たメール見て噴いたんですよ、バイな男の文面が刺激強すぎたらしくて、笑」

ごく簡単ありのまま答えて、
そしたら歯医者も噴きそうになった、

「っ、…え?それってどういう?」

まあ「?」に普通はなるんだろね、笑

で、どっちかいうと美形な歯医者&友達も「??」ってなっている。
そんな二人に今までも色んな友達が見せた反応を思い出して、それと対照的だった両親の貌を思い出して、
それから御曹司クンが今まで話してくれた現実や本音の言葉たちを思い出した。

で、友達ならソウイウ御曹司クンを解かるだろうから真面目なトコ話して良いなって考えて、
歯医者は未知数だったけどナンカどっか御曹司クンと似てる=解かり得るかなって思いながら話し始めた、

「そいつね、ずっと両親の言う通りに生きてきたやつなんだ。大学も仕事も、旅行の行先とか食事とか何でも親の好みでさ、いつも営業スマイルしてる、」

たぶん同じなんじゃない?
そう推測と話し始めた向かい、歯医者の目が真剣になった。
きっと他人事じゃ無くなった、そんなトーンに笑いかけて続けた。

「恋愛も結婚するための手段で結婚は義務だって思ってる、親が気に入ってくれる相手と結婚して、親の仕事を継いで、それが幸せだって思ってるよ?
だけどコイツ一度だけ本気で親も家も全部捨てようってしたんだよね、幼馴染の男に告白されて、初めて本気で恋愛して、二人で生きようって思ったらしいよ?」

ずっと親の言いなりだった、そんな御曹司クンが初めて人生を自分で選ぼうとした。
けれどその初めては叶わない、その結末前にジントニック呑んだら友達が訊いてきた、

「なあ、でもオマエにこんなメール送って来るってことは、その幼馴染とは上手くいかなかったんだ?」
「だね、笑」

笑って答えて、友達は何とも言えない複雑×哀しい優しいって貌になり、
歯医者は他人事じゃ無いまんまの貌で訊いてきた、

「なんでその人達、別れたんですか?本気で恋愛して全部捨てようってしたのに、」
「ま、ストレートに言っちゃうと裏切られたんだよね、笑」

ストレートすぎるかなって言葉遣って、その前で歯医者は哀しい貌になった。
この男にも同じような想いがあるんだろうか?それとも無いから憧れるんだろうか?そんなこと考えながら言った、

「彼は本気で入籍も考えたんだよ、同性婚は日本の法律では認められないから養子縁組で入籍して事実婚するんだけどさ、彼もソレしようって考えたワケ。
だけど幼馴染にその気はなくてね、その幼馴染が彼を同性の恋愛に引張りこんだけど一生お互いダケで生きるツモリなかったらしい、世間体とか色々ね?」

本気で恋されて愛されている、そう信じたから御曹司クンは幼馴染に応えた。
一生懸けても後悔しないと決めて信じて恋愛して、だけど仕掛けた幼馴染はそうじゃない。
そういう擦違いは御曹司クンにとって裏切りでしか無くて、それでも忘れられない一途は正直、自分は好きだ。

勝ち目がなくても他人から見てクダラナくても、それでも一つ貫くならね?笑

くだらない戦い9ブログトーナメント

とりあえずココで一旦切ります、続きあるけど反応次第でラストで、笑
第77話「結氷11」+Aesculapius「Saturnus24」校了しています、会話短篇もUP済。
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Short Scene Talk 初夏某日7―Side Story act.22

2014-07-18 22:47:01 | short scene talk SS
未来点景@或る初夏の夕暮3
side story第77話+XX日後



Short Scene Talk 初夏某日7―Side Story act.22

「あ、…きれい(いい夕焼雲)ね、えぃ(英二きれいだよ見てって言いたいけどダメまだ甘い顔しちゃ)」
「そうだな、いい夕焼けだな周太?(笑顔)(夕焼け見てる周太の方がキレイだよ萌デレ)」
「…ゆうやけよりしっかりうんてんおねがいします(なんか英二にやにやな感じまたえっちなこと考えてるのかな照×ツン)」
「もう着くよ?(笑顔)(周太すこしづつ口利いてくれる文字数増えてるな嬉しいこのまま機嫌直してほしいな家に着くまでに)」
「…うんてんおつかれさまでした、ここでまっててもいいから(英二だって仕事で疲れてるよね僕は勉強してただけだけどでも素直に言えない今)」
「一緒に行くよ周太、スーパーなんて久しぶりだもんな(御機嫌笑顔)(周太とスーパーで買物ってなんか幸せなんだよな萌デレ)」
「…ありがとう英二(疲れてるのにちゃんと着いて来てくれちゃうねだったら)英二の好きなもの買っていいよ、それで夕飯つくるから、」
「お、そういうの嬉しいな、ありがとう周太(別嬪笑顔)(俺のために俺の好きなもの作ってくれるとかってもう怒ってないのかな周太カワイイ萌デレ)」
「ん、…照(なんかすごく綺麗な貌で笑ってくれてる喜んでるね英二こんな喜んでくれるなんて嬉しいな照)でざーとも好きなの言ってね、」
「ありがとう周太、オレンジのゼリーとか良い?(別嬪×極上笑顔)(デザートも言ってくれてる周太なんでそんなに俺のこと幸せにしてくれるんだこれってもしかして今夜<R18略>かな悦デレ)」
「ん、いいよ…あの、丸ごとくりぬいて皮を器にするゼリー?(前にしたら英二すごく気に入ってくれて照嬉)」
「うん、それ食いたいな?(極上笑顔)(なんかこういう会話@スーパーってシチュエーション萌えるコレってやっぱり今夜は<R18略>させてくれるかな悦デレ)」
「あ、英二?待って、レジちゃんと通して?(そういえば英二ってスーパーの買い物よく知らないんだった困でもそういうとこなんだか可愛い照)」



Aesculapius「Saturnus24」校了しました、
次は短編か「side story, another」かナンカUP予定ですけど体調イマイチなんで順延かもしれません。

気分転換がてら取り急ぎ、




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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚156

2014-07-18 08:05:04 | 雑談寓話



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚156

大晦日、新幹線に乗って親戚+友達に会いに行き、
まず親戚の家に顔出して食事に行ったら歯痛になり大嫌いな歯医者に連行されて、
なんとか無事に治療が終わって友達と待ち合わせる書店に行ったら歯医者と再会し、で、友達曰く、

「なあ、もう店の予約時間になるんだけど、よかったら一緒しませんか?こんなとこ立話してるのも変だし、」
「じゃあ一杯だけ一緒させて下さい、せっかくの機会ですし、笑顔」

ってワケで歯医者と呑むことになった、
歯医者は注射と並んで大嫌い、だからこんなシチュエーションが可笑しかった、

なんだってコンナことなってんだろね?笑

なんて思いながらも店に着いてオーダーして、
最初の一杯から会話が始まった。

「勤め先の同僚と彼が友達なんだよ、で前に一緒に呑んだことあるんだ、」

そういう知り合いだったんだ?って納得したら歯医者が言った、

「高校の友達なんです、おもしろい先生と仲良くなったから呑もうって誘ってくれて、」

ま、確かに「おもしろい先生」だよね?笑
なんて納得またしながら思ったまま笑った、

「確かに面白いよね、笑」
「そんなに俺って面白いか?おまえのが面白いと思うけど、」

相変わらずの切り返しで笑ってくれる貌は爽やかだった、
こんな爽やかなクセにアレコレ抱えてる、それでもオモシロイ友達に暴露1個Sってやった、

「自分で留守電入れちゃうヤツよりは面白くないんじゃない?オカエリナサイってさ、笑」

ホントにそんなことしたんだよね、笑
って記憶と笑ったら歯医者が訊いてきた、

「自分で自分の電話にメッセージ入れたんですか?」
「そ、面白いだろ?笑」

イイながらジントニック呑んで笑ったら友達も口開いた、

「誰かにお帰りって言ってほしかったんだよ、ちょっと一人が寂しくってさ、」

ソンナことあったなって懐かしかった、
あのころ友達はイロイロ抱え込み過ぎていた、そんな時間に歯医者が尋ねた。

「一人暮らしが辛かったんですか?」
「その頃だけはね、」

さらって答えて友達はグラスに口付けた。
話しても良いけどなって貌、だけど言い難いだろう相手だって解かる。
どうするツモリかな?その推測してたら携帯電話が振動したから何げなく開いた、

で、案の定な相手からだった、

From:御曹司クン
本文:いま年越カウントダウンで山下公園に来てる、隣にいるのオマエだったらいいのに。
   いつも素っ気ないし意地悪だしメールも短いのしか返してくれないし、
   電話も圏外なこと多いし寝てて出てくれないし今も遠くに行ってるし、
   いま隣にいる大学の友達のことマジ羨ましいし嫉妬してる、
   <中略>
   もうじき今年も終わるけどオマエのコト考えてる時間がいちばん長い一年だったよ。
   こんだけ長い片想いって俺初めてなんだからな?   

やっぱりそういうモードなんだ?
って感想と眺めてたら友達が訊いてきた、

「お、新しい相方からのメール?」
「こっちは友達のつもりだけど、笑」

笑って答えた隣から友達ナニゲナク画面を見て、で、グラス噴いた、

「ぶはっ、ぅえっ?!」

飛沫が弾けて前に飛んで、
その先にいるドッチか言うと美形な歯医者が被害者になった、笑

これはきっと状況解説の義務が生じたろう?笑

何気ない風景ブログトーナメント

とりあえずココで一旦切ります、続きあるけど反応次第でラストで、笑
Favonius「少年時譚26」校了しました、第77話「結氷11」読み直したら校了です。
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朝に取り急ぎ、



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第77話 結氷 act.11-side story「陽はまた昇る」

2014-07-17 23:20:00 | 陽はまた昇るside story
neve 上限の点



第77話 結氷 act.11-side story「陽はまた昇る」

あと一歩、その最後を慎重に登りあげる。

見つめる先は雪庇じゃない、その山肌は足場がある。
一歩また膝まで埋もれてしまう、けれどアイゼン確かに雪を噛む。
そして踏んだ尾根の雪上、止まない小雪に懐かしい笑顔ほころんだ。

「宮田、おまえは本当に悪運が強いよ?雪崩も避けちまったなあ、ははっ」

日焼浅黒い笑顔は労ってくれる。
その言葉いつも通り明るくて、けれど心配してくれる温もりに英二は笑いかけた。

「後藤さん、俺だけの運じゃありません、二人分の運ですから、」

背中に負う要救助者、この青年こそ幸運の持ち主だろう?
落差150mを転落しても命繋ぎとめている、この運に信じるまま傍ら立つハイカーへ笑いかけた。

「いま意識は薄いですが頭に怪我はしていません、急いで運ばないと危険ではありますが、」
「あ…、」

話しかけてニットキャップの顔上げてくれる。
まだ三十前だろう、たぶん自分と歳の変わらない青年は頭下げてくれた。

「ありがとうございます、こんな危険をすみませんっ…ありがとうございます、」

感謝と謝意を示してくれる、その言葉に尾根の時間が解かる。
この急斜を岩棚へ降りて戻るまでに後藤は「山」を諭していたのだろう。

―まだ今からが危険なんだ、だから後藤さんは、

こんな時になんだがな?そんな言い方から後藤は話しだす。

どの遭難者にも必ず「山」のルールを教える、そして次に備えさせる。
確かに遭難した時はショックが大きくて「こんな時に」だろう、でも直後だからこそ深く刻まれる。
もう事故に遭ったのなら今この経験を活かしてしまえ、そんな発想は厳しすぎるようでも真直ぐな優しさ温かい。

こんなふうに自分もなれたら良い、その願い見つめながら歩きだした。

「急ぎましょう、」
「ああ、行こう、」

お互い頷きあい歩きだす道は細やかな乾雪に深い。
ざぐり踏みしめる足は行きより沈む、その荷重が肩へ食いこます。
それでも今は傷つかないだろう、そんな自信も体も昨夏の自分には無かった。

―あれから1年半だ、周太を初めて背負って、

警察学校の山岳訓練が自分の「山」の最初だった。
あのとき周太が滑落したから自分は今ここにいる、そして命ひとつ担ぐ。

―周太がいるから俺はこの人を救けられるんだ、今も、これから先も、

想い見つめながら背中へ声かけて尾根の雪を漕ぐ。
もう膝上まで埋もれてしまう、この状況に振り向いた。

「ワカンを履きます、」
「おう、そうしよう、」

雪中に立止りアイゼン嵌めたまま装着する。
ハイカーも慣れた手つきで履いていく、その仕草に笑いかけた。

「雪の奥多摩は慣れてるんですか?」
「はい、」

頷きながら笑顔すこし見せてくれる。
崖上の時よりは硬さがとれた、そう見取りながら仰ぐ雪雲は厚い。
これでは救助ヘリは飛べないだろう、このまま徒歩で担ぎ下ろすしかない。

けれど時間が掛かる。

―俺だけなら速く降りられる、でも後藤さんだけハイカーと残すのは、

手術から後藤は2ヵ月経っていない。
それでも副隊長として今を一歩も退く気はないだろう、そのプライドが好きだ。
だから支えたくて今日もパートナー組んでいる、けれど今この状況下で後藤と離れることは怖い。

低温、乾いた深雪、同時多発の遭難事故。
警察も消防も救助体制に入っている今は応援要請も充てに出来ない。
そう解かっていても誰かを呼びたくなる、いつものザイルパートナーがここにいてくれたら?

―光一の存在をあらためて解かるな、

溜息ごと微笑んで底抜けに明るい目が懐かしい。
あの男なら今この状況でも共に速く走れる、もう一人のハイカーを連れても方法を考えるだろう。
この尾根道をどうしたら速く搬送できるのか?その可能性を考えながらも慎重に進む先、足音ひとつ捉えた。

ざぐっざぐっざぐっ、

リズミカルな雪音が滑るようこちらへ来る。
この歩き癖は聴き慣れない、そう見つめた風雪に青い人影が現れた。

「宮田さんですか?谷口です、」

穏やかな声が白い大気から響く。
その名前が意外で驚かされたまま応えた。

「宮田です、なぜ谷口さんが今ここに居るんですか、浦部さん達と天目山でしたよね?」

天目山、別称は三ツドッケ。

標高1,576mの山頂直下にある岩峰は奥多摩随一の眺望とも謳われる。
標高差1,000m標準タイム2時間40分、その登山口から今このポイントに入る踊平まで車道20Kmほど。
この降雪では1時間は掛かる、そして奥多摩交番を出たのは14時半で今は16時半、だから居るはずが無い。

―どんなに山の足が速くても登りだけで1時間は掛かるはずだ、この雪なら、

遭難場所まで登りあげ救助し下山、そこから車で向っても2時間では着けない。
けれど青い影は風雪を滑るよう近づいて谷口が微笑んだ。

「尾根道を来ました、」

天目山から踊平まで標準タイム2時間20分、今いる曲ヶ谷北峰はプラス50分。
そこを雪中1時間ほどで谷口は駈けて来た、この体力と技術に後藤が笑った。

「さすが芦峅寺の男だな、天稟ってやつだ。あっちの救助は終わったんだろう?」
「はい、後は浦部さん達だけで大丈夫です、」

答えながら谷口は肩からザイル外しセットしていく。
その傍らに立つハイカーを見、後藤に尋ねた。

「こちらの方も疲労が見られます、ここから俺が背負って走る方が速いです。よろしいですか?」
「そうだな、頼んだよ、」

頷いた顔に微笑んですぐ大柄な背にハイカー載せていく。
ザックごと担ぎ上げて揺るがない、けれど穏やかなままの瞳がこちら見た。

「宮田さん、俺のペースで良いですか?」

確実に速いよ?

そう問いかける言葉は声に無い、けれど同じことだ。
その寡黙な自信に知りたくて英二は綺麗に笑いかけた。

「はい、全速でお願いします。急ぎましょう、」

成人各1名ずつ背負う谷口と自分、そして空身の後藤なら拮抗する。
そんな推計と歩きだした雪上、芦峅寺の男はすべるよう尾根の風雪に進んだ。



ばさん、

ひっくり返った背にスプリング鳴る、その天井にため息吐く。
洗い髪まだ濡れている、けれど乾かす余裕も今は心身ともに無い。

「…負けたな、」

ため息こぼれた本音に天井は仄暗い。
デスクライトだけの蒼白い空間は自分独り、だから言える弱音に髪かき上げた。

「ほんと凄い芦峅寺…勝てるイメージ無い、」

勝てるイメージが無い、なんて生まれて初めてだ?

小学校から大学、司法試験、警察学校と現場、そして山。
どこでも自分は優秀でいられた、始めて2年目の山すら「勝ち」しか知らない。
そのイメージが「あの男」観碕にも勝利を疑わなくて、けれど今日、初めて敗北感を知った。

芦峅寺出身の谷口俊和、あの雪上技術に負けた。

「…天稟の差ってやつかな、育ちと、」

本音こぼれて現実を嚙みしめる、そして気が付かされる。
今まで自分は光一のザイルパートナーとして対等だと思っていた、けれど本当は違う。

―あの谷口さんが光一には一目置いてるんだ、

あれだけの男が一目置くのは上回る実力者、それだけの力が光一にある。
そんな光一だからこそ初心者だった自分を育てられた、その意味を改めて突き付けられる。

「黒木さんより手強い、ほんと…後藤さん厳しいな、」

芦峅寺の出身で山にもレスキューにも真面目一徹でなあ、国村と似たタイプだから井川と一緒に異動させてみたよ。

そう言って笑った後藤の意図はどこにある?
それが今日の遭難救助にも見えていた、その言われなかった諌言が聴こえる。
たぶん後藤は気づいているのだろう、最近の自分は「山」にすら慢心しかけていた。

―きっと解かってる、所轄を離れた緩みも蒔田さんとのことも、観碕に俺が関わる危険も、

宮田、おまえさんは知るほど怖いほど、山に惹きこまれちまってるだろう?

そう問いかけられた言葉は「山」だけを指していない?
そんな思案にあの深い眼差しを記憶に見つめて、そして芦峅寺の男を思い出す。
寡黙で篤実、あの真直ぐな瞳は武骨で不器用な愚直を見せていた、それが自分には眩しい。

だって自分も愚直に単純に生きてみたい、この心と体ひとつで大切なものだけ真直ぐ見て生きられたら?

「周太、…逢いたいよ、」

ほら、単純になった心から本音こぼれだす。
あの大好きな笑顔だけ見つめて山に生きられたなら?そう何度も考えてきた。
けれど今の現実のままでは叶わない、それでも掴みたいなら今は祖父が言う通りの生き方が手段になる。

『だが泥の中でも立てる男の方が美しいと私は思っている、だから私もそう生きただけだ。泥が無ければ草も生えん、醜いようで役に立つものだ、』

確かに「泥」は役に立つ。

祖父が泥に生きてきた、その時間に与えられた情報と権限が「鍵」になる。
もし祖父が泥に生きる途を選ばなければ権力は無い、そして周太を本当には救えない。
だって祖父のIDとパスワードを教えられなかったら観碕のIDを推論できなかった、そして「鍵」は掴めない。

「…うん、」

そっと頷いてポケットに手を入れチェーン手繰り寄せる。
細いけれど頑丈な鎖は携帯電話を繋いでもう一つ、ちいさな守袋を手にとり開いた。

かさり、

小さなカードとUSB、そしてネジひとつ掌に並べて見る。
カードには白い花びらと雄蕊、ネジは古いけれど磨かれてUSBだけが真新しい。
このどれも自分には掴みたい「鍵」でいる、そんな想いに鳴りだした携帯電話を掴んだ。

「あ、」

開いた画面の着信名に鼓動ふわり温まる。
この名前ずっと待ちわびていた、今日の天候に心配で何度も想ってしまった。
今も現実に思い知らされながら唯ひとつ明るい、そんな聴きたかった声に通話つなげて英二は笑った。

「周太、元気か?」




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山岳点景:夏実の赤

2014-07-17 23:00:00 | 写真:山岳点景
花の後、



山岳点景:夏実の赤

いわゆる野苺です、丹沢某所で実っていました。
祖父の山畑では崖の草地でよく見ました、美味しかった記憶があります、笑

気軽なブログトーナメント



Favonius「少年時譚26」校了しました、光一@中学生会話のシーンです。
第77話「結氷11」まだ加筆中です、英二@奥多摩救助譚の続きになります。

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚155

2014-07-17 08:00:09 | 雑談寓話
山の暮らしアンソロジーみたいの読んでますけど、山岳救助隊からマタギに小屋主までいろんな談話が載ってて面白いです。



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚155

大晦日、新幹線に乗って親戚+友達に会いに行き、
まず親戚の家に顔出して食事に行ったら歯痛になり大嫌いな歯医者に連行されて、
なんとか無事に治療が終わって友達と待ち合わせる書店に行ったら歯医者と再会して、

「さっき教えてもらった本を見に来たんですよ?笑顔」

なんて言われたから本一緒に見る流れになり、
葉隠やら孫子やら花伝書やらの翻刻や小説ぽく訳された読みやすいヤツ選んで、
なんかコイツ御曹司クンと雰囲気が似てる顔は全然似てないけど思ってたら待合せ時間すこし過ぎて来た友達が笑った、

「あれ?なんで二人一緒なんだ、どういうこと?」

どういうことってコッチが訊きたいんだけど?
って思いながら笑ったら歯医者が驚いたよう訊いた、

「え、知り合いなんですか?」

なんで東京方面から来たやつがココに知り合いがいるんだろう?
そんな顔と言葉に友達は相変わらずの笑顔で言った、

「大学の友達なんですよ、よく一緒にキャンプとか行ってたんだよな?」
「だね、笑」

こいつ相変わらず爽やかだなー思いながら笑って、
そしたら歯医者が言ってきた、

「じゃあ同じ齢とかってことですか?」
「学年は同じだよ、俺は一浪しちゃったけどコイツは現役で入ってるから1歳下、」

なんて言われてそう言えば一歳違いだったこと思い出した、笑
大学は年齢の違う同級生とかフツーにいる、だから学年が同じだと年齢とかドウでもよくて、
そういう感覚から懐かしいな思ってたら歯医者に言われた、

「現役で入るって優秀ですね、でも若く見えますね?」

なんか微妙に失礼だなコイツ?笑

若く見えるって言うのは中学生のころから既に言われている、
もう慣れていることだけど社会人として若く見えることは時に損、
で、初対面初日に同世代から言われるとナントナク癪にさわって微妙にSった、

「よく言われます、先生は落着いて見えますね?跡取りの貫禄っていうか、笑」

跡取り(坊ちゃんらしい苦労知らず上から目線)の貫禄っていうか?笑

なんて皮肉を内心で笑って、
だけど歯医者はナンも気づかずに笑顔で訊いてきた、

「跡取りって、伯母さまから聴いたんですか?」
「後からね、笑」

正直そのまんま答えたら歯医者は不思議そうな顔をした、

後から=歯科医院から帰った後で伯母に確認=歯科医院に行った時から跡取りだろな見当ついてたよ?

って意味だけどソコまで読み切れないだろう?
でも友達は相変わらずの調子で訊いてくれた、

「おまえ急に虫歯になって彼に診てもらったのか?伯母さんの紹介で、」
「アタリ、笑」

相変わらずの推論だよねってなんか嬉しかった、
で、その推論に解答した、

「歯医者って初期費用が掛かるだろ?若いのに開業してるなら跡取りか資産家の息子のドッチかだから、笑」

歯科医は機材が高額になる、
だから当たり前の解答なんだけど歯医者は笑顔で言った、

「よくご存知ですね、歯科医のお知り合いとかいるんですか?」

褒めてるツモリなんだろう、でもナンダカ上から目線な空気がある。
そんなふう想えるのは笑顔=営業用スマイルなカンジだからかもしれない。

こいつホント御曹司クンと似てるな?笑

「歯科衛生士の友達ならいるよ、あとは身内に医者がいます、笑」

この回答ホントは軽くSってる、しかもカナリ意地悪い。
普通なら気づかないけど当事者かつ賢明なら気づくトコ、で、彼は率直な羨望貌で笑った、

「いいですね、」

その身内が誰か?を彼は気づいていないだろう、
そして友達との付き合いレベルも解かるな思ってたら当の友達が言った、

「なあ、もう店の予約時間になるんだけど、よかったら一緒しませんか?こんなとこ立話してるのも変だし、」

相変わらずイイヤツだなー思った、笑
こうやって誰でも気軽に誘えるトコ変わっていない、
こういう性格だから教職は天職だろう?そんな感心してたら歯医者は少し考えて頷いた、

「じゃあ一杯だけ一緒させて下さい、せっかくの機会ですし、笑顔」

ってワケで歯医者と呑むことになった、

第20回 過去記事で参加ブログトーナメント

とりあえずココで一旦切ります、続きあるけど反応次第でラストで、笑
Aesculapius「Saturnus23」校了しています、Favonius「少年時譚25」加筆まだする予定です。
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚154

2014-07-16 08:04:05 | 雑談寓話
写真だけでも夏休みっぽいものを、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚154

大晦日、新幹線に乗って親戚+友達に会いに行き、
まず親戚の家に顔出して食事に行ったら〆のジェラートに歯がズキっときて、

「いつも行く歯医者さんがあるのよ、お願いしたら診てくれるかも?ちょっと電話してみるわね、」

なんだってコンナとこまで来て歯医者なんだよ?
ってか歯医者は苦手嫌い注射と並んで大嫌いだから抵抗したんだけど結局は連行され、

「じゃあ頑張ってね、そこらで買い物してるから終わったら連絡してね、迎えに来るから、笑顔」

なんて伯母たちの笑顔で待合室に座らされ、
携帯の電源切ろう思ったら御曹司クンからメール入っていて、

Re :歯医者に連行されたとこ、マジ最悪、笑

って返信して電源落としながら逃亡したいな考えた、
でも伯母たちが常連なのに勝手したらマズイだろって座ってたら歯医者本人に呼ばれて診察が始まった、

「ご親戚だそうですね、遠くから来たそうですけど、東京?」

なんて質問から話しかけてきたマスクかけた笑顔は声がまだ若かった、
大晦日の午後で他に人もいない歯科医院+若い=跡取りで継いだヤツとかだろ思いながら答えた、

「家は神奈川です、保険証で東京って思いました?笑」
「はい、遊びに来て歯痛になったそうですね、じゃあ口開けて下さい、」

笑顔で話しかけ診てくれる、でも歯医者は歯医者=苦手な場所にいるわけで、

あー早く終わらないかな、凹

とか思ってるのに丁寧に診てくれて、
こいつ丁寧な性格なんだろな悪い奴じゃないんだろうけど早くしてくれ思ってたら言われた、

「昔に治療した所がすこし痛んでいます、被せてるのつけかえるから~中略~でも今日しか診察来られないですよね?」

ようするに・詰めたトコが虫歯になってる→ソレ詰め替えるのに日をまたぐのは出来ないよねって確認されて、
明日の夕方には帰る予定だしナニヨリ歯医者に通うとか嫌だったから笑顔で拒否った、

「はい、明日には帰るので通うのは無理です、笑」
「ですよね、じゃあ今日このままお時間もらえますか?すぐ型とって作っちゃいましょう、」

って笑顔で返されて結局そのまま歯科医院で過ごすことになり、
あー大晦日に何だって嫌いな場所にいなきゃないんだよ思ってたら笑われた、

「そんなアカラサマに嫌そうな顔しないで下さいよ?歯医者ホント嫌いなんですね、」

訳知りだよ?って笑顔で言われて、
たぶん伯母に先手打たれたんだろう思って訊いてみた、

「伯母から歯医者嫌いだから逃亡注意とか言われました?笑」
「はい、お電話頂いたときに。迎えに行くまで外に出すなって仰られて、」

答えてくれるマスクの笑顔は目だけでもスゴイ笑ってるのが解かる、
ドンダケ面白がられてる+伯母は何言ったんだろ思ってたら言ってくれた、

「被せもの作るのに時間すこし掛かるんですけど、待ってる間の時間潰しは持っていますか?」

ちょっと食事に行くだけのつもりだったから鞄持ってない、
だから持ち歩いてる文庫本もその時なくて、携帯も使えないだろうから訊いてみた、

「携帯しか持ってないんですよね、本とか貸してもらえると嬉しいんですけど、」

そしたら一冊持ってきてくれたんだけど自分が普段読まないタイプの本だった、
この手のアンマリ読まないんだけどな思いながら受けとって、そしたら言われた、

「私物なんですけど、好み合いそうですか?」

好みとは言えないなー、笑

でも普段読まないジャンルでも開いて見るのは面白い、
それに私物から選んでくれたのなら彼のおススメなんだろう?
正直あまり面白そうじゃないけど先ず読んでみよう思いながら笑顔で答えた、

「マニュアル系ってアンマリ読まないんです、イイ機会だからお借りしますね、笑」

って言ったら歯科医先生うれしそうに笑って、
で、向うはアッチでなにやら始めたから自分も本に没頭することにした。

あんまり頭使わないで読めるな手軽だなー、

思いながら読んでたらページの進むの早くて、
ほぼ読み終わった頃に治療再開して全行程が終ると訊かれた、

「もう読み終わったみたいですね、面白かったですか?」

読むの速い=面白いって思われている。
でもこの等号はホントは成り立たない、で、そんな面白くは無かった、笑
それでもソレナリ楽しめた部分はあったから正直そのまんま答えた、

「懐かしいなってトコが幾つかありましたよ?笑」
「ん、なつかしい?」

どういう意味だろう教えてほしいな?
そんな目が訊いてくるから笑って答えた、

「中国や日本の故事を応用した話が載ってたんです、マニュアル本って昔からあるんで、笑」

って言ったら興味あるなって顔をして、会計しながら訊いてくれた。

「故事の応用っていうのは引用例でみてますけど、マニュアル本って昔もあるんですね?」

どんなものがあるんだろう?
そんな好奇心は目だけでも解かるから多分知ってるだろうアタリを言ってみた、

「ありますよ、『孫子』とか『葉隠』なんか聴いたことないですか?笑」
「名前だけならあります、でも古典って敷居が高くないですか?」
「イマドキに訳したのとか読みやすいのありますよ、『風姿花伝』はあまり無いですけど、」
「それ初めて聴きます、どんなのですか?」
「能楽のマニュアルっていうかバイブルです、身ごなしから考え方の指南本ってカンジですけど剣道から帝王学にまで応用できるって言われてます、笑」
「なんか面白そうですね、買って読んでみようかな、」

なんて会話しながら会計も済んで、
そしたら伯母たちが迎えに来てくれた、

「先生、大晦日なのにありがとうございました。このヒト逃げたりしませんでした?笑」
「いい患者さんでしたよ、本のこと教えてくれたし、笑顔」

ってカンジの会話かわされて後とりあえず伯母たちの家に戻り、
お茶飲んだら約束の時間に近くなったから荷物もって出た、

「お友達によろしくね、いい御年を、」
「はい、伯父さんと伯母さんもいい御年を、また明日顔出します、笑」

と明日=元旦の約束して駅まで送ってもらい、
待合せ場所の本屋で文庫本を見てたらイキナリ声かけられた、

「こんばんわ、さっきはどうも?笑顔」

こいつ誰だっけ?

って思って男の顔よく見たら目許に見覚えがある、
もしかしてそうかなー思ってたら笑って言われた、

「さっきの歯医者です、教えてもらった本を見に来たんですよ?笑顔」

やっぱりそうだった、笑
こっち来て同世代の知り合いはこれから会う友達しかいない、
そんな消去法で見つけた解答の相手は伯母の言ってた通りだから笑った、

「そうですか、ホント真面目なんですね?笑」
「あ、伯母さまにナンカ言われました?」

なんて会話から始まって、で、本を一緒に見ることになり、
さっき話した葉隠やら花伝書やらの読みやすいヤツ開きながら話して、で、思った、

こいつナントナク御曹司クンと似てるな?

顔は全く似ていない、御曹司クンはカワイイ系だけど歯科医クンはどっちかいうと美形、だけど空気が似ていた。
後継ぎお坊ちゃんぽい器用×傲慢×臆病=お人好し甘ちゃん系、物質的不自由ない育ちのソレなりモテるヤツの雰囲気。
やたら人当りの良いカンジの笑顔+初対面なのにナゼだか懐っこく来る、そういう仮面笑顔と裏腹の懐っこいトコも似ていた。

なんでココまで来て似たヤツがいるんだろ?笑

とか考えながらも本の話は割と楽しかった、
で、待合せ時間すこし過ぎたころ友達がやってきて笑った、

「あれ?なんで二人一緒なんだ、どういうこと?」

どういうこと?ってコッチが訊きたいんだけど、笑




とりあえずココで一旦切ります、続きあるけど反応次第でラストで、笑
第77話「結氷10」加筆もう少しします、会話短篇Short Scene Talk「ふたり暮らしact.56」昨夜UPしました。
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Short Scene Talk ふたり暮らしact.56 ―Aesculapius act.69

2014-07-15 23:30:00 | short scene talk
二人時間@夜話
第4章act.21-22の幕間@自宅



Short Scene Talk ふたり暮らしact.56 ―Aesculapius act.69

「ほら光一、布団剥いじゃ駄目だよ、ちゃんと掛けないと風邪ひくよ?(こういうとこ子供のままだ可愛いな萌)」
「ちっと暑いんだもん、もう6月だしさ、足だしてる方が気持ちいいよ?(笑顔)(こういうお小言も嬉しいね雅樹さんと寝てるってカンジでさ)」
「暑いなら少し離れようか?くっついてるから暑いんだろうし、(僕もつい抱っこしちゃうな光一が赤ちゃんの頃からでクセになってて照×萌)」
「くっついてるのは必要だねイイねっ、抱っこしてくれないと俺ちゃんと寝れないもん(御機嫌笑顔)雅樹さんの匂いがないと良い夢で寝られないねっ(ホントだもんねっ)」
「僕の匂いが無いとダメなの?照(ああ光一も抱っこがクセになってるって言ってくれてる嬉しい萌)」
「うんっ、雅樹さんって桜みたいな佳い匂いでね、うんとヨク眠れるよ?(ホント雅樹さんは匂いから別嬪だね大好き)」
「そう?照(ああ匂いとかってなんか恥ずかしいでも幸せだな)どんな夢を見るの?照」
「あの森の夢が多いね、山桜の下で雅樹さんとイロイロしてる楽しい夢だよ?(御機嫌笑顔)(夢だっていつも楽しい幸せだもんね)」
「山桜の下でいろいろ?(って光一そういう意味かなどうしよう僕また悶々してきそう困るよ照×悶々)」
「うんっ、弁当食べたり喋ったり花摘んだり川遊びとかね、いつもイロイロ楽しいよ?(御機嫌笑顔)(夢でも仲良しだもんねっ)」
「あ、(そういう意味か僕また照)あ、それで光一は何の勉強がいちばん好き?(なんでも光一は良く出来るけどね萌×自慢)」
「ん、国語と理科が好きだね(ドッチも雅樹さん得意だったもんねコレもお揃いだねっふふん)」
「僕もその二つが好きだったよ(笑顔)(同じだなんか嬉しいなコンナコトすら嬉しいんだ僕って単純だな照)」
「うんっ、同じだね雅樹さんっ(御機嫌笑顔)(やっぱり同じだね嬉しいねふふふんっ)」
「そうだね(照れ笑顔)理科だと化学と生物と物理、あと地学もあるよね。光一はどれが好き?(どれも面白いんだけど)」
「遺伝のトコとか面白いねっ(このあいだ雅樹さん教えてくれたからねっ)このあいだ教えてくれたDNAのトコとか、」
「DNAだと生物の分野だね、(ってソレが好きな理由ってもしかしてまた明広さんの本かな照)」
「ね、雅樹さん、遺伝の仕組みってDNAなのは教わったけどね、ドウやってDNAが伝わるようになってるワケ?具体的なトコ教えて?」
「えっ、照(具体的なトコってつまりそういうこと訊いてるよねああどうしようコレって思春期の疑問ってやつだ既に実技で教えてるけどでも解かってないってコトだよね13歳だからまだ解ってないの仕方ないけどでも照×困惑)」
「雅樹さん?なんか黙っちゃったけどドウしたの?(寝ちゃったのかね)」
「えっ、照真赤(ああ僕また考えこんでたんだ照でも答えまだ見つからないどうしようそうだ)あ、ちょっと一瞬だけ寝てたかも、ごめんね?(笑顔×真赤)」
「ね、やっぱ眠いかね?疲れちゃってる?(運転したり仕事だったり疲れてるよね心配)」
「今ちょっと寝たら元気になったよ?(笑顔)(しまった心配させた嘘でこんなごめんね光一)」
「ほんと?疲れてるならやっぱ寝ないとダメだね?(だって疲れ溜って雅樹さん具合悪くなったら哀しいもんねっ)」
「大丈夫だよ、ありがとう光一(笑顔)今日は授業で何を教わったの?国語と理科もあったよね、(ああ僕のくだらない嘘で心配こんなにさせてごめんねでも心配してもらうの嬉しい幸せ萌)」



第4章act.21-22の幕間で光一と雅樹@紳一郎来訪後の夜です。

第77話「結氷10」加筆もう少しします。
それ終わったら短編のナンカ+Aesculapiusの続きかなと考えています。
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第77話 結氷 act.10-side story「陽はまた昇る」

2014-07-15 19:11:00 | 陽はまた昇るside story
avalanche 瞬きの生



第77話 結氷 act.10-side story「陽はまた昇る」

頬うつ雪が痛くなる、けれど構っていられない。

谷駈けあがる風は雪を舞う、その零度が感染防止グローブを凍えさす。
それでも指先ふれる体温は温かい、サムスプリント固定させる首もと脈は打つ。
呼びかけには応えてくれない、それでも微かな反応に希望とリスク廻るまま英二は微笑んだ。

「今から胸の手当をします、ウェアの胸元を開けますね?」

笑いかけて、けれど要救助者の瞳は開かない。
それでも処置ふれるたび顔かすかに顰めてくれる、指先も動く。
胸は確かに上下する、呼吸も荒く吐いている、反応かすかでも示す、まだ終わっていない。

―意識レベル200、まだ生きてる、この齢なら保つ、

声なく呪文のよう呟きながら手を動かし笑顔で呼びかける。
まだ三十前後のはず、その若さなら体力も気力も耐えてくれるはず。
この可能性だけ見つめてウェアのファスナー開きフリースも寛げる、そしてTシャツから血が溢れた。

「すみません、Tシャツを切ります、」

呼びかけて救急ケースから鋏を出して木綿地を切り開く。
血染めの真中は径が親指はまるほど穿つ、枯枝かストックで刺したのだろう?
そんな推測に視界の端とらえたテラスの雪上、転がったストックは剥きだしの石突が斑に赤い。

『ストックは使い方によって危険だよ、転倒して刺しちまうこともあるからね、』

以前この事例を読んだとき光一が教えた通り、この男も受傷したのだろう。
こうした危険を防ぐため石突はポイントプロテクターでカバーする、けれど外れてしまう事もある。
今回も尾根から墜ちるとき何処かに引っ掛けて外れたのだろう、それでも頭部や頸部の受傷が無い事は幸運だった。

―雪と冬装備とザックの厚みで助かったんだ、脳震盪は起こしていても、

この狭いテラスから尾根まで約150m、これだけ墜ちたら重傷で当り前。
ここは岩盤の上でヘルメットすらしていないなら頭蓋骨折や即死で文句は言えない。
そう考えたら下肢の骨折や胸部の傷は幸運の部類だろう、だから助けられる可能性を信じたい。

―でも雪崩が起きるかもしれない、それでも、

時刻は15時半とっくに過ぎた、この急斜面に不安定な岩棚は雪崩の危険も高い。
それでも「全員で無事帰還」が救助隊の本分だから護りたくて、その願いごとサランラップをカットした。

「聞えますか?今から胸をラップして傷を保護しますよ、」

呼びかけながらラップを正方形に切ってゆく。
それを胸部の刺創へ被覆し3辺をテーピングする、このとき開放した1辺は下へ向かす。
この開けた1辺から呼気を逃がし血液が流れることでラップが弁の役割をし、胸腔への空気の流入を止め外傷性気胸を防ぐ。

―肺の動きは正常だ、きっと大丈夫、

目視で確認する胸部の動きは異常がない。
もし外傷性気胸を起こせば肺は正常に膨らまなくなる、そして山上の深い傷は気圧差が怖い。

―腹部に刺創は無いな、よかった、

腹部を枝やピックなどで穿通、突き刺すと内臓が飛びだす事がある。
それは体内と大気圧の圧力差による現象で腹腔内の方が陽圧=圧力が高いと起きてしまう。
このため山上の処置はラップとガーゼによる保護までとなる、また内臓が外気に触れると感染や乾燥による壊死の危険が高い。
そして移動させるにも腹圧が掛からない姿勢が必要になる、だから今この条件下では腹部への受傷が無かったことは幸運だった。

「はい、処置が終わりました。大丈夫ですよ、聴こえますか?すぐ病院へ行きますからね、」

声かけながら処置を終えて着衣を直してやる。
固定した頭部もフードすこし絞らす、こうすれば雪が入りこまない。
終えて感染防止グローブいつもの手順で外し廃棄袋へ入れて、すぐ無線を繋いだ。

「後藤さん、宮田です。処置が終わりました、右胸部に刺創、右下肢の骨折、目は開きませんが痛みに反応します、頭部に怪我は見られません、」

報告しながら現場の回収をしていく。
落ちていたストックは石突にラップ巻きつける、セルフビレイのハーケンを抜く。
ハーケンはカラビナ繋いだまま左手に携え搬送準備を整える、その耳元に深い声が応えた。

「そうか、脳震盪だろうがな、バスケット担架が使えるなら」

答える声が途切れて思案くゆらせる。
バスケット担架が使えるなら迷う必要など無い、けれど現状では無理だ。
そして急斜面の狭い岩棚では怪我以上の危険がある、その可能性に無線へ告げた。

「後藤さん、このまま背負って登ります。時間がありません、ここは雪崩の道です、」

見あげる斜面は立木が少ない、これは雪崩で根こそぎ流されやすい証拠でいる。
それに昨夜からの低温とまとまった降雪に雪の粒子も固まらず結束性が無いため積雪状態は脆い。
低温、微風、低密度の積雪、そして見あげる斜度は40度以上、こうした条件下では雪面の一点僅かな崩れに雪崩が起きる。

点発生雪崩 Loose snow avalanche 

雪面一点の小さな崩れが流下しながら周囲を巻き込んで起きる。
この雪崩は積雪が融けて固まる前で雪粒は未結合のまま細かい、そのため横方向に幅を広げることはない。
そのため縦長に流れる雪崩となり巨大な崩落の印象は無く、それでも積雪量が多ければ人を押し流すだけの力は生じる。
また雪に結束性がないため細かい雪の粒子は障害物をすり抜けてしまう、そのため斜度35度以上あれば樹林帯でも発生し足場ごと人間を攫いこむ。

「本来はバスケット担架で安静に運ぶ方が安全です、でも今の状態で雪崩に流されたら助かりません。出血状態も緊急の搬送が必要です、」

告げながら空も大気も天候悪化を兆す、16時の刻限に気温低下は止まず雪は安定しない。
要救助者も胸部の刺創は出血と呼吸困難からリミットは迫っている、けれどヘリが飛ぶ可能性は低い。
こんな場所と気候と容態で応援を待てば生存の可能性を減らしてゆく、その感覚に無線の向こうが告げた。

「よし、登ってこい宮田、」
「はい、」

頷きながら要救助者を静かに背負いあげていく。
サムスプリントと本人のザックで頭部は固定、右下肢もサムスプリントとストックで副木した。
そして胸部の刺創もある、この受傷どれも本来なら背負って運ぶなど不適で、けれど今は他にない。

―雪崩も怪我も速く運ぶしかない、無理な姿勢でも短時間で、

今、自分の登攀能力と運が生死を分ける。
その責任ごとザイル掴むと英二はアイゼンの足を踏みだした。

ざぐり、ざぐっ、

雪も氷もブレードが噛んでゆく、その音と山の気配に聴覚を研ぐ。
さっき下降したザイルとハーケン回収しながら登ってゆく、その足元は雪ずぶり埋もれる。
この急斜に雪崩が襲えば要救助者ごと流されるかもしれない、それでも自分は耐えて救い帰るだろう。

だってまだ何も終わっていない、五十年の歪な連鎖も観碕への復讐も。

「頑張ってください、あと少しですよ?」

背中へ呼びかけながらザイル繰る手に雪踏んばる足に荷重が掛かる。
いま背には成人1名と装備で80kgほど、これくらい訓練で背負いなれている。
けれど意識レベル薄い体は重心ぶれやすい、それでも登れる今に時の経過が分厚い。
あの時もこれくらい速く登れていたら?そんな昨夏のワンシーン掠めてすぐ意識を戻した。

―今考える暇はない、一瞬の隙が死だ、

登る手足、負う背中の状況、そして大気と山と雪の気配。
この3つ同時に確かめながら登攀しなくては危険に陥る、そして帰れない。
そんな現実に意識はりめぐらせ登りあげて3ピッチ目、あと40mの地点で風が頬切った。

来る、

「来るぞっ宮田!」

頭上から叫ばれた同時に右手がハンマー握って折れた木ひとつ映りこむ。
その根元へ左手のハーケン撃ちこみカラビナごと握りしめ背中に叫んだ。

「耐えて下さい!」

呼びかけながら雪面へピッケルも撃ちこます。
ずぶり突き刺さる先は心許ない、それでも立木抱えこんだ斜面が轟きだした。

―直撃は避けてくれ、

声なく祈りながら背中の呼気は荒く温かい。
もし雪崩が直撃すれば背の要救助者に負荷は大きくなる、そして容態に響く、だから自分が上になりたい。
けれど自分が斜面にしがみつかなければ雪崩に押し流されるだろう、この判断はざま踏ん張るまま鳴動が奔った。

ざあっ、おおおっ、

咆哮が間近を駈けてゆく、零度の飛沫が頬叩く。
煽らす風、氷の礫、唸る音、そして迫らす轟音が足元から這い昇る。
この足場の雪は流されるだろうか、それとも逸れるだろうか?その賭けに右30cm向こう白銀が崩落した。

「…っ、」

息呑んで見つめる先はるか白銀の飛沫は落ちてゆく。
駆ける氷雪が頬を肩を叩く、舞い上がる光きらめいて白い粉塵が降る。
いま離れてゆく風切り音を聴きながら英二は手許のハーケンと折れ木に微笑んだ。

「ありがとう、ごめんな?」

根に楔を撃ちこんでしまった、それが申し訳ない。
こんなこと知ったら周太は怒るだろうか?そんな心配ごとハーケン抜き登攀を再開した。
まだ救助は終わっていない、この断崖を登り終った先からが長くなる、その覚悟に一歩の雪は深い。



(to be continued)

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