肉離れの治療01

2017年09月26日 | 治療の話

今回は「肉離れ」のお話です。

長くなりそうなので、障害の概略、治療と2部構成で書いてみます。

まずは「肉離れ」という故障について解説します。

【肉離れ:筋損傷】

「肉離れ」という故障は、

スポーツなどで意図せず急に筋肉を引き延ばされたときや、自身の筋力発揮に筋や筋膜が耐えられなくなったとき、

部分的あるいは完全に千切れてしまった状態です。

肉離れの瞬間には「ビリッ!」とか「プチプチ!」といった音を自覚することもあります。

損傷部位は筋肉と腱と境目(筋腱移行部)に多くみられます。

困ったことに、足首の捻挫のように「肉離れ」も癖になってしまうことがあり、

また、繰り返すと徐々に重症化する危険性もあるため、治療家目線では軽症でもキチンと手を入れてほしい故障の一つになります。

発症頻度はハムストリングスやふくらはぎ(膝裏の内より)に多い印象ですが、

内転筋や起立筋など、基本どこにでも起きる障害です。

この「肉離れ」、治療では断裂の程度から重症度を3段階に分類します。

 

グレード1(治癒の目安:2~4週)

損傷の程度は軽く、内出血などは見られない状態

患部に自発痛や圧痛があり、軽い腫れもあるものの日常動作程度は可能

だが、スポーツ動作は痛みのため全力では行うことができない状態

(つまり、下肢の肉離れならば歩く程度はできるということ)

 

グレード2(治癒の目安:4~6週)

内出血を伴う部分的な損傷が生じた状態で、これを中等度とする

時間が経つと(1日程度あと)体表面にあざが現れる

患部には自発痛と圧痛があり、触察するとへこみ(陥凹)を見つける

日常動作は可能だが痛みのため難しく、スポーツ動作は行えない状態

(つまり、下肢のにくばなれであれば痛むけど何とか歩けるということ)

…といわれますが

経験としては深層の筋に生じるとあざが出てこないケースがあります。

アザが無くても痛くて日常動作にも事欠くようならグレード2以上を考えましょう。

ただ、痛みが強いからと言っても「痛みの大きさ=損傷の程度」とはならないこともあるんです。

痛みが強いのに損傷はそれほどでないというケースなのですが、

そのカラクリは患部のケイレンによる痛みです。

ケイレンによって痛みと運動障害が強くあらわれているいだけというケースの場合、

痙攣を上手に納めればすぐに痛みなく動けるようになります。

こうしたケースの診断として、ケイレンを治める手法を試しにとってみるという「治療的診断」という手立てを取ります。

結果として、

ケイレンを治めても痛みも運動障害も残るなら、それこそ痛みは「組織のダメージが深いから」ということになります。

反対に、ケイレンを治めることでグッとよくなるようでしたら自覚的訴えに反して組織のダメージは軽かったということになるのです。

以上、脱線終了。

 

グレード3(状態によっては完治しないこともあるので、いつまでに全治とは言えない)

筋が完全断裂や大きな部分断裂を生じた状態

キズが大きい分、陥凹も明確にみられる

内出血も大きく、当然自発痛も強く患部の圧痛も強い

外科的な処置が必要なレベル(縫ってつなげます)です

日常動作もできないので当然スポーツもできない状態

…はい、ここでも脱線。

グレード2や3の患者さんの病歴を聞いていると、

大きな断裂が生じる前に軽症・中等度と思われる「肉離れ」を繰り返していた

と思われるエピソードが聞かれることが多く、

後述しますが、刻み込まれた傷跡(瘢痕組織)が損傷の再発に関係しているものと考えられます。

なので、繰り返すようなら「症状が軽いから大丈夫」…とはせず、

専門家の眼を通してもらいたいなと思うのです。

脱線終わり。

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さて、本題。

上記のグレードを見ると、

グレード1で約3週間、2で5週間待てば治るかのような印象を持ちます。

私も専門学校の学生時代にはそんなもんかと考えていました。

でも、実際に治療に携わるようになると、軽いジョグすらできる軽症例にもかかわらず

いつまでたってもよりアクティブな競技動作での痛みが治まらず、

『ま、動いてればそのうち落ち着くか…』

と本格的に練習を開始すると再受傷を繰り返す、といった症例を見るようになりました。

みな同じような場所を繰り返し傷つけてしまう。

これには訳があるのです。

次回は肉離れを繰り返してしまう理由とその治療についてお話しします。

本日はここまで!


ウエイトリフティングの計測会に行ってきました

2017年09月25日 | トレーニング日記

先日、お世話になっているCrossfit代々木さんにてウエイトリフティングの計測会が催されまして、

一家で参加してまいりました。

この日は試合と違ってBOXの仲間たちの歓声のもとのびのびとリフティングを楽しむことができました。

結果は今一つでしたが、怪我もなく楽しい一日でした。

「今一つ」なところが思いのほかコメディタッチになったせいか

中々のご声援をいただきましたので動画にまとめてみました。

抱腹絶倒珠玉の試技、どうぞご覧ください!


変形性股関節症の治療より

2017年09月11日 | 考察

医療の進歩ってすごいなって感心してしまいます。

先日「変形性股関節症」の相談でこんなことがあったんです。

患者さんは90代のお母さん。

二年半前から股関節の痛みに襲われ、今年の春になってどうにもこらえられない状況になり

近医に相談したところ人工股関節置換術を進められたのだそうです。

しかし、自身の年齢のこともあり大きな手術を受けるのが怖いと、流れ流れて私のところへいらっしゃったようです。

話を聞いていてまず驚いたのが、90歳を超えるご年齢の方に人工股関節置換術が適応になるという話でした。

私が整形外科に勤めていたころは90代の人工関節置換術というのはあまり聞きませんでしたから、

ちょっとした驚きを覚えたんです。

 

30歳目前のころだったと思いますが、

当時は在宅療養マッサージのほかにデイサービスセンターでの運動指導員をしておりまして、

そこで出会った膝の悪い80代の車いすのお母さんと手術という選択について一緒に悩んだことがあったんです。

お母さん、勇気を振り絞って病院へ行ったのですが「骨が弱すぎる(骨粗しょう症)」とのことで手術できないと言われました。

ガッカリするお母さん。

それをみてしょんぼりする私。

その当時、Drに人工関節置換術について聞いたところ、

・人工関節の耐久性が10~20年(とされていた)
・人工関節の耐久性と平均的な寿命から逆算して65歳ぐらいが手術のし時(とされていた)
・人工関節を埋め込む土台となる側の骨が弱いと手術ができないため、骨粗しょう症が進んでいると手術の適応から外れる

そんな話が返ってきました。

しかし今は技術の進歩によってご本人の元気さえあれば90代でも手術の適応なのだというじゃありませんか。

では、今と昔、いったいどこが違うのでしょうか?

---[人工関節今昔]---

・手術の侵襲度が大きく減らせた

 20年前は25cmほど切開しなくてはならなかったのが今は7cm程度で済むそうです。
 術後のリハビリも翌日から始められるそうです。

・人工関節の耐久性が大きく向上した

 20年前は10~20年と言われていましたが、いまは15~30年もつのだそうです。
 ※耐久年限に開きがあるのはその人の活動量によって使用頻度が変わるから

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そうした話を踏まえて、90代のお母さんの話。

初診時、びっこ引いてかなり痛そうに歩いていました。

立位での機能検査では、痛みのため患側へ体重を乗せることができません。

患側の股関節を自力で動かせる範囲はごくわずかで、強い痛みを訴えます。

もう少し詳しく状態を調べるためにトリートメントテーブルに横になっていただくと、

股関節周囲の筋肉の緊張が強く、膝は浮き、痛みに顔をしかめまています。

注意深く股関節の滑りを調べてゆくと、コリコリという轢音と共に痛みを訴えます。

この『コリコリ』、股関節の関節面がつぶれているサインなんです。

こうなると確かに保存療法というよりは手術の適応となるでしょう。

「これは確かに手術を勧められるでしょうね…」

と私。

なぜレントゲンも診ずにそう言えるのかとお母さん。

「いま、股関節を動かしたときコリコリ音がしたでしょう。

 これは股関節の関節面、大腿骨頭っていう腿の骨の頭の部分がつぶれてきてる証拠なんです。

 こうなると手技療法や鍼灸治療で痛みの緩和はできても股関節の働きが取り戻せるかは難しくなります。

 『それでも手術がどうしても嫌!』

 という場合は手技や鍼灸、運動療法といった保存療法を選択することもありますが、

 その場合のデメリットは痛みが引いた後も股関節の可動性が大きく損なわれる可能性があるということなんです。」

 

そして、病院は嫌だとおっしゃるお母さんにお医者さんに再度診てもらうために説明を始めました。

 

「股関節や膝などの大きな関節の動きを損なうと『立ち上がる』とか『歩く』といった

 日常の動作に必要な筋力が大きくなるんですが、

 その時、お母さんの脚の筋量がそうした動作をするのに足りなければ車椅子になるかもしれませんし、

 そこから寝たきりになるリスクも考えなくてはいけません。

 私の治療で痛みがなくなったからもう大丈夫、ということではなく、

 可能な限り関節の働きを温存できるよう治療していくことが後々を考えても大事になってきます。」

 

こうした変形性関節症では、変形が進む時に痛みが現れます。

逆に変形がひと段落すると痛みも落ち着きます。

股関節という関節は面白いもので、たとえ軟骨がすり減って股関節に隙間が見えなくなっても、

ももの骨の頭(大腿骨頭)の丸みが残っているケースでは比較的動かせる状態に戻ります。

そういったケースだと手術じゃなく保存療法で、ということも提案しやすいのですが…。

 

「お母さんの股関節の場合、ももの骨の頭(大腿骨頭)がつぶれているサインのゴリゴリ(轢音)があるので、

 痛みが引いても動きは悪いままになる可能性が高いんです。」

 

さらに、こうしたケースでもっと気を付けなくてはならないのは、急激に骨が潰れていくようなリスクの有無です。

これについても説明を続けます。

 

「このようなケースだと、

 腿の骨の頭につながる血管は少ないのでそこが詰まると骨が死んでしまうことがあるんです。

 大腿骨頭壊死というのですが、これは壊死してすぐは痛くないんです。

 壊死した部分を身体が治そうとして吸収するとき、グズグズと骨が潰れていくんです。

 それ以外でも変形性股関節症で急激に骨が潰れていくタイプもあります。

 ここでは(私の治療院では)そうした隠れたリスクを見つけることができません。

 でもこれらはお医者さんがレントゲン一枚とってみればすぐに判断が付くものです。

 お母さんの場合、関節の轢音があって保存療法では股関節の動かしづらさが残る可能性が高いことがわかりますし、

 同時に痛みを訴えているので、今まさに変形が進んでいる最中にあることが疑われるわけです。

 その原因の一つとして疑われる、今お伝えしたような進行性の(つまりどんどん悪くなってゆくような)問題が隠れていないかをチェックするために、

 お医者さんにも定期的に見てもらう必要があるんです。

 それができた方がお母さん自身が損をしないですむということになりますよ。」

 

 少なくとも春先のころと今を比較してどこまで変わっているのか、それとも変わっていないのか。

 それを知ることの治療上の意義は大きいんです。

 

「前回行ったお医者様が苦手なら、ほかの先生だっていいですから病院へは行ってほしいんです。」 

 

あとでこんなはずじゃなかったと悔やまれることのないよう、お母さんには耳の痛い話をすることになりました。

私の話が期待から外れたからか、不満げなお母さん。

でも、私の領域も医療である以上、ものの理から外れることは無いのです。

一見してミラクルに思える現象も、そうなるべくして起きたこと。

決して奇跡の類ではなく、また今後の見通しについても冷静に対応しなければなりません。

 

医療機関への通院に関しては再考していただくことを促し、

治療に移ります。

初回の治療で伸びなかった脚は伸びるようになりました。

2回目の来院時には股関節の過緊張は成りを潜め、

3回目には痛む側の股関節に体重を乗せられるようになりました。

このころには院内を歩く姿もだいぶスマートになってきました。

 

しかし、毎回の治療ごとに「レントゲンは撮りましたか?」と聞くも、首は横へと振られます。

一番いいのは病院での検査結果と照らし合わせて治療を進めることなのですが、

医師と鍼灸師・マッサージ師・柔整師の連携はまだまだ難しいのが現状です。

悩ましいことですが、患者さんのためにも努力を続けたいと思います。


夏の思い出パート2:第31回全国男子中学生ウエイトリフティング選手権大会その2

2017年09月02日 | トレーニング日記

さて試合。

当日の会場は非常に熱く「熱疲労(倦怠感・吐き気・目まい)」によるパフォーマンス低下が懸念されました。

これに対し、インターバル中のアイスマッサージや電解質補給などに注意を払った結果、

後半のバテもなく6本の試技すべて成功!

フォームもばっちり!

スナッチ+3kgクリーン&ジャーク+5kgの記録更新を果たすことができました。

↑今回の目標だったクリーン&ジャーク80kg

↑右端が息子です。

嬉しいことに6位入賞を果たしてくれました!

直前まで数字が挙がらず苦しんだ息子でしたが、監督の適切な指示のもと自己ベストを大きく伸ばすことができました。

ちなみに5位の子との差は1kg。

親バカながら、来年どこまで伸びるのか今から楽しみです。


夏の思い出パート2:第31回全国男子中学生ウエイトリフティング選手権大会その1

2017年09月01日 | トレーニング日記

8/20の私の残念な試合の4日後。

今度は石川県珠洲市で息子(中2)の試合です。

息子は十分な練習ができた割に8月に入っても調子が上がらず、自己ベストの重量も取れない状態でした。

原因はフォームの崩れ。

練習中の動画を見ると、どの試技もセカンドプルというバーベルを一気に加速させる局面に問題ありでした。

本来的にはここでしっかりと地面を踏み、蹴り切りたいところなのですがどうにも股関節が伸びません。

この時、カレンダーの日付は8/7…

『あと2週間ある』

勝算ありと考えフォーム改善に乗り出しました。

ちょっと過保護な気もしましたが、私のもとに生まれた息子の唯一のアドバンテージでしょうから

遠慮なく、容赦なく介入することにしました。

↑バランスディスクを用いたコーディネーショントレーニング(これは一例です)

↑ラッシングバンドを用いた四肢-体幹の可動性及び連動性の正常化(ラッシングバンドメソッド)

これは試合当日の朝。宿舎にて。

 

何とかかんとか、試合まであと4日というところで自己ベストタイまで持ち直すことができまして

準備はギリギリ間に合いました。

あとは当日弾けるのみ!

果たして結果やいかに⁉

 


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