バルカーカップ 統一全日本ダンス選手権 2017 西尾浩一・下田藍組に帯同します

2017年10月31日 | チューニング・トレーナー活動

また今年もやってきました「バルカーカップ 統一全日本ダンス選手権」!

「バルカーカップ 統一全日本ダンス選手権 2017」というのは、

ソシアルダンス(社交ダンスといった方が通じますでしょうか)のプロの日本一を決める国内最高峰の大会です。

その舞台となるのは芸能人の披露宴なんかで有名なグランドプリンス新高輪「飛天の間」

この日一日でなんと400組以上の選手が予選から決勝までを戦います。

選手自身はもとより選手をサポートする私も10時入りの21時撤収予定という、実に過酷な一日となる予定。

この栄えある大会で、今年も西尾浩一・下田藍ペア(←優勝経験多数の実力の高い選手です)の「パフォーマンス・チューニング」を担当させていただくことになりました! 

「パフォーマンス・チューニング」とは「動きやすいカラダ=操作性の高い身体」への調整法で、

個々人の持つ本来のパフォーマンスを引き出すための医科学的アプローチです。

西尾ペアのポテンシャルを存分に発揮できるよう、先週から仕込みをはじめ後は本番を待つばかり。

今年はどんなドラマが待っているのでしょうか!?

楽しみです!

 

以下にソシアルダンスの資料として動画を二つ張らせていただきました。

一つ目はご存知「ボールルームにようこそ!」

ソシアルダンサーのリアルな姿が垣間見えて、実に面白いアニメです。

二つ目は実際の試合の模様です。

西尾・下田組も踊っています。

ぜひご覧になってみてください!


ランナーズ・ケア:ランナーズ・ニーにおススメのテーピング法

2017年10月28日 | セルフケア

このテーピング法、

ジャンパー膝、腸脛靭帯炎などのランナーズ・ニーから変形性膝関節症まで、

膝の故障全般に効果ありの手法です。

その名も「とよたまテープ」!!

とよたまテープは故障時の対処(鎮痛)、故障予防、さらには試合での調整におススメの手法です。

故障からのリハビリ期間中なんてもう絶対に貼ってほしいですね。

歩行困難者の歩行訓練でもいい仕事をしてくれます。

片麻痺の方にも使っていただきたいですね。

この方法は関節周囲の深部間隔受容器に働きかけて、反射的に下肢の働きを正常化する方法なので、

どんなシチュエーションにもお試しいただける手法となります。

ところでこの手法、誰が考えたかお判りでしょうか?

ふふふ、もうお気づきでしょう!

それは私です!(←いってて恥ずかしい…)

名前は今、付けました。

本音を言うとあまり俺が俺がと言いたくないのですが、

そう言っておかないとシレっと「俺が!」って言う人もいるものですから…

全く、世知辛いったらありゃしない!

そういうのだめだからねY君!

と、そんな個人的な事情は置いといて…

マラソンシーズン真っ盛りで膝の相談も増えていましたので掲載させていただきました。

多くの皆さまにお役立ていただけたら幸いです。 


寝たきり・歩行困難からの回復をテーマとしたセミナーを開催します

2017年10月26日 | セミナー/講習会

来る2017/12/10(日)、

ロコモティブシンドロームへの徒手医学的アプローチ

~重力に負けない姿勢保持機能の再獲得~

と銘をうちまして、寝たきり・歩行困難からの回復をテーマとしたセミナーを開催します。

講師は静岡で在宅訪問マッサージをされてきた大畑健太郎先生です。

大畑先生は理学療法士、鍼灸師、マッサージ師の国家資格を持ち、

病院でのリハビリ、在宅療養、トレーナーと幅広く活躍をされている経験豊富な臨床家です。

以前、大畑先生に在宅診療におけるリハビリの技法について徒手医療協会として取材させていただいたことがありまして、

以来、いつか大畑先生の手法を公開したいと考えておりました。

それが、いよいよ実現する運びとなりました。

今回の内容は、寝たきりから歩行を回復するまでの道筋となります。

私自身、非常に興味の高い内容となっていますので、多くの先生にご参加いただけることを祈っています。


「肩関節の痛み」をテーマにメカニズムの理解と治療の勉強会を開催します

2017年10月25日 | セミナー/講習会

今日の記事は同業の先生向けです。

でも、動画なんかは一般の方がご覧になっても面白いかも。

良かったらご覧になってください。

来月11/19(日)に「肩関節の痛み」「肩関節の痛み」をテーマにメカニズムの理解と治療の勉強会を開催します。

題して「肩関節の痛みメカニズムの理解と評価・介入/肩甲上腕関節のグライドシンドロームを中心に」です。

講義活動を始めて11年、治療業界も「Aという故障にはこのレシピ」といった考え方からの脱却はだいぶ進んでいるように感じます。

大切なのは故障のメカニズムの理解と現状を把握する技術、すなわち評価技法の習得。

それがあってようやく治療技術が活かせるのです。

この回では、肩関節の痛みのメカニズムを【肩甲上腕関節のグライドシンドローム】を中心に紐解いてゆこうと思います。

僕ら治療家にありがちなミスとして、「痛い」という患者さんの痛みの訴えに目がとられ、障害の全容を見失うということがあります。

しかし、 患者さんから発せられる「痛い」という主観的な訴えは、残念なことに治療を決定づける情報にはならないのです。

大切なのは「痛み」を感じているその具体的な要因を探ることにあります。

 

本講は、肩峰下インピンジメントシンドローム・腱板損傷・肩関節周囲炎(五十肩・フローズンショルダー)など

肩の痛みをもたらす症候の背景となるグライドシンドロームと、

さらにそのグライドシンドロームを生む背景となる軸骨格のマルアライメントについて学び、

肩関節のリハビリに明日から使える治療手技をお伝えするものです。

投球肩の話なんかも挟む予定です。


ランナーズ・ケア:骨盤から始める「膝の故障」「競技前の機能的ウォームアップ」エクササイズ-動画あり

2017年10月24日 | セルフケア

ここで紹介するのは「ペルビックティルト:骨盤傾斜」というエクササイズです。(↓動画あり↓)

動画の方法は通常の方法に独自のアレンジを加えています。

このエクササイズは「腸脛靭帯炎」「ジャンパーズニー」「オスグットシュラッター」といった

下肢前面の故障に対するセルフケアとして処方することの多いエクササイズです。

変形性膝関節症の方にも効果ありです。

実施前後には「腿上げ」と「スクワット動作」をおこない、エクササイズの前後比較をしてみてください。

<手順>

1、「腿上げ」と「スクワット動作」をおこない、「痛みの程度」「動かし辛さ」といった現状を確認します。

2、「ペルビックティルト」を実施

3、再チェックとして「腿上げ」と「スクワット動作」をおこないます。

  「痛みの緩和・消失」「屈げ伸ばしの改善」といった変化を確認します。

 

患部の故障が急性期を過ぎていれば

「スクワットが深くなる」

「痛みの緩和・消失」

「下肢の屈伸がスムーズになる」

「脚が軽く上がる」

といった良性の変化を確認することができるはずです。

この「ペルビックティルト」による変化は、腹壁の筋群による骨盤前面の支持性(支える能力)が高まることで

下肢の筋バランスが正常化されることによって現れるものです。

腰部の過緊張やシンスプリントなど、下肢の故障全般に効果を発揮してくれるエクササイズですが、

特に膝の故障には高い効果を発揮します。

故障をしていない方も、故障予防、練習や試合前の調整に使ってみてください。

下肢の回転が軽くスムーズになっていることにお気付きいただけると思います。


優勝させていただきました~第15回関東マスターズウエイトリフティング選手権大会~

2017年10月23日 | トレーニング日記

昨日10/22(日)は台風の迫るなか開催された、第15回関東マスターズウエイトリフティング選手権大会に出場してきました。

場所は埼玉県スポーツ総合センター(上尾市)で、大学生の試合もよく行われる大きな会場です。

マスターズとして出場できるのは35歳以上。

5歳区切りで分かれ、さらに体重別に分かれて試合をします。

私の出場するカテゴリーはM40=40歳以上の部で、階級は69kg級となります。

ご存知の方も多いと思いますが、

ウエイトリフティングはバーベルを床から頭上に一気に引き上げる「スナッチ」という種目と

いったん胸まで引き上げてさらに頭上に差し上げる「クリーン&ジャーク」という

二種目の総合重量で競う競技です。

各3回ずつ、合計6回の試技を行います。

私の階級で優勝するにはスナッチとジャークを合わせて150~160kgあたりが目安となります。

これは全日本大会でも同様です。

私の練習のベストがスナッチ70kgのジャーク90kgなのでそれが試合で出れば優勝が見えてくるわけですが、

1日でスナッチとジャーク双方の練習のベストというのはなかなか出ないというのが現実のようです。

今までの試合の最高記録は153kg(S68/C&J85)。

という前置きをご了承いただいて…

「優勝」とはいえこの日は同じ階級2名の出場で、どんなに低いスコアでも失格しなければ銀メダル、といった状況でした。

そうなると俄然「優勝」に惹かれるのが人情というものです。

でも、対戦するO選手は春の試合で70kg/90kgを取られていて、私は負けてしまっているんですよね。

きっとその当時よりももっと挙げられるようになっているでしょうから、

今の私が勝てる見込みは低いと考えざるを得ず…

しかし、私のように当日スコアを崩すこともよくあることですから、

相手を気にすることなく自分のベストに専念していけばあるいは勝てるかもしれません。

試合は水物、何があるかわからないのはどの競技も一緒です。

しかもこの日はジュニア育成事業に携わるT先生が私のセコンド(指揮官)についてくださるというVIP待遇。

この日の試合は全てをセコンドにゆだね、挙げることに専念いたしました。

前半のスナッチでは、O選手60kgスタート、私61kgスタートです。

O選手は60kg→65kgを淡々と成功させます。

対して私は61kgを成功しましたが二本目の66kgで失敗…

三本目に66kgを取るも、O選手が3本目の71kgをビシッと決めて5kgのリードを許します。

内心、折角セコンドについていただいたのに筋書き通りに挙げられず申し訳ない気持ちでいっぱいです。

しかし、T先生は意に介さずといった感じ。

むしろ『面白くなってきたねぇ~』とでも言わんばかりの表情です。

T先生の読みが当たったのか、後半戦のクリーン&ジャークで波乱が起きました。

O選手は80kgと85kgを軽々と成功。

対する私は81kgと86kgを息も絶え絶えになんとか成功。

波乱はO選手の3本目に起こります。

T先生の指示のもと、待機する私は頭からジャージをかぶって周囲を絶ち、自分の試技へ向けて集中します。

相手は見るなということのようです。

でも、ガンガンに音が聞こえてくるんですよね…

O選手が舞台に上がる。

静寂が訪れ、クリーンで成功したときの靴音が「タンッ!」と響きます。

後はジャークで刺すだけです。

「タンッ!!」

鋭い靴音が響きます。

失敗だとすぐにブザーが鳴るのですが、少し間をおいてのブザーです。

これは成功の証です。

『ああ、Oさん、成功だな。強いなァ~(>_<)』

とあきらめにも似た感情が胸を満たします。

しかし、次の瞬間、意外なアナウンスが響きます。

「失敗です。」

O選手、90kgを差し切れなかったようです。

私の挑戦する重量は91kg

成功すれば逆転勝利です。

降って湧いたチャンスですが、T先生は『ほら言った通りになっただろ!?』とでも言いたげな顔をしています。

そして

「さぁ行こう!! さっきと一緒! おんなじフォーム!! 自信もって!!!」

と送り出されます。

 

名前を呼ばれ、プラットフォームに上がるまでのほんの数メートル。

いろんなシーンが浮かびました。

去年の全日本のこと、O選手に負けた試合のこと、今年の全日本での不甲斐ない結果、

いつも丁寧に親身になって指導してくれるクロスフィット代々木のコーチ陣の掛け声、

以前お世話になったパワーリフティングのコーチの言葉、

不調を試合当日にはね返して見せた8月の息子の活躍、

今日、一緒に出場した嫁の頑張り(彼女も午前中の試技で自己ベストを更新しました)、

いろんなシーンが脳裏を交錯します。

自信も余裕もありませんでしたが、冷静に試技へと移ることができたのは、

そうした多くの方々と過ごした濃密な時間のおかげだったのではないかと感じます。

そうして、91kgのバーベルの前に立ち、自己ベスト更新への挑戦の瞬間を迎えました。

シャフトを握り、

脚を決め、

呼吸をはかり、

行くぞ!と腹が決まる瞬間を迎えます。

クリーンも重かった。

でも、何とか立った!

ジャークも思い切り突いた!

しかし、あろうことか両肘が決めきれず。

ジャークでは本来一気に肘を伸ばさなければ失敗となるんです。

マスターズではその辺の判断が学生や成年の選手に対するそれよりもマイルドになる傾向がありますが…(基本マスターズは社会人愛好家の大会なので…)

藁にもすがる思いとはこのことかもしれません。

ゆっくりブザーが鳴ります。

主審の「ダウン!」の掛け声がかかり、バーベルをおろします。

『あ~プレスアウトかぁ~(肘が曲がることによる失敗)(>_<)!』

と電光掲示板を振り返るとそこには白ランプ三つ…

そして「成功です。」のアナウンス。

自分が思っていたよりはプレスアウトしてはいなかった、ということだったのでしょう。

この瞬間、O選手に1kgの差をつけて私の優勝が決まりました。

後で嫁さんに聞いたところ、O選手は90kgの挑戦で片肘が曲がってしまっての失敗だったのだそうです。

今回は優勝という結果をいただきましたが、次はもっと確実な試合ができるよう、また気を引き締めて頑張ってゆこうと思います。

以上、試合報告でした!


トレイルランと膝外側痛:セルフケア動画あり

2017年10月21日 | スポーツ障害

2~3週間前の休日(月曜日・平日)のこと、

何を思ったか、人生初のトレイルランに挑戦してまいりました。

この日は午前中にウエイトリフティングを2H。

調子もそこそこいい感じ。

気分よく練習を終えたその帰り道。

ふと

『温泉に浸かりたい!』

と猛烈な温泉欲にとられまして…

トレーニング場が小田急線沿線でしたので、最初は『箱根に行ってしまおうか?』

なんて考えてたんですが、スマホをいじっているうちに

『どうせなら有酸素運動で汗を絞ってからビール&温泉を楽しみたい!!!』

と欲が出て、悪ノリ半分で高尾山を訪れたのでした。

この高尾山、ご存知の方も多いと思いますが、長短いろんなコースがあるんです。

電車の中では一刻も早くBEERと温泉を楽しみたかったので『一番短いコースを選ぼう』と考えていた私。

でも、高尾山に着いてみると『自然を感じたい…』とまた欲が出てきまして、沢伝いに登る6号路(90分のコース)をチョイス。

コースの入り口までは『ゆっくりと自然を噛みしめながら登ろう』と思っていたのですが、

そこにお仕事のメッセージ(Messengerっていうのを使っています)が届きます。

実は11/12に神奈川県で行われる

第22回神奈川県ノーギアパワーリフティング選手権大会・第21回神奈川県ノーギアベンチプレス選手権大会

で徒手医療協会としてイベントを行う事になっておりまして、

この日はそうした事務連絡をする日でもあったんです。

お仕事の話はスムーズに終わり、休日の解放感からか

「ちょっと山に来てるのよ(´∀`*)ウフフ」

とかなんとか送ったところ

「走れ!40分で登頂せよ!!」

とのメッセージが届きます。

流石は体育会系。

「頑張ります!」

とご返杯。

とはいえこれはお互い軽いジョーク。

まさか走ろうなんてこれっぽっちも…

これっぽっちも!?

 

いや、どうだろ? 

 

できるかな?

 

最近だいぶコンスタントにトレーニングしてるしな…

 

行けるんちゃうか!?

 

行くか!?

 

よし!行ってみよう!!!

 

と魔が差しまして、登山からトレイルランに変更と相成りました。

とはいえ初トレイルランですし、かつ高尾山は登山者も多いので他の人の迷惑にならないよう

「人がいるところでは歩く」をルールにスタートを切りました。

急に思い立ったので、ウエイトの練習道具やびしょびしょの着替えなどでパンパンのリュックを担いだまま。

一瞬『駅のロッカーに荷物を預けようか』とも考えたのですが、また駅まで戻るのもおっくうです。

『これもいいトレーニングになるやもしれん!』

と根拠のない自信を胸に所要時間90分の沢伝いのコースを走ること50分(2/3は歩いてましたが…)。

無事山頂に立つことができました(;´Д`)

途中3~4分の休憩を3つとったので、もう少し頑張れば45分ぐらいまでは縮められそう。

でも、40分はちょっと難しかったかな、といった印象でした。

 

山頂は多くの人で賑わっています。

茶屋もあって、「生ビール」の文字が目に眩しく映りますが、ここはぐっと我慢の子。

その強力な誘惑を

『もっと美味しいビールを飲んでやるんだ!』

とこれまた強い煩悩で振り払い、

帰りの道も走ることにしたのですが…

これが間違いのもとでした。

登りのタイムに気をよくして

『下りはもっと早く帰れるはず』

と走り出すも残り1/3というところで膝痛出現…

 

なんと教科書通りの腸脛靭帯炎を背負い込んでしまいました。

『せめてリュックを駅に預けていれば…』と後悔の念が脳裏をかすめます。

早くふもとの温泉でビールを煽りたかったのですが、

はやる気持ちと数百円をケチるケチ根性がアダとなった感じです。

なってしまったものは仕方がない。

腹をくくってその場でできうる対処(治療ですね)をすることに。

傷めているのは上の図の赤い斜線のあたり。

腸脛靭帯(膝の側面)と外側広筋(四頭筋腱部と腸脛靭帯の交差部遠位)です。

腸脛靭帯のテンションを下げるために筋膜張筋のストレッチ(スイッチバックという手法)をし、

外側広筋の緊張(スパズム)をなだめるのにポジショナルリリースを行います。

上の図の赤線のあたり、腸脛靭帯と外側広筋の滑りも悪かったので筋膜リリースも掛けました。

さらに、下肢の屈伸で働く膝周囲の筋肉たちの協調性をただすMWMSまで行ったところで一先ず治療を終えました。

軽く走って見たところ痛みは1/4ほどといったところ。

※当院に来ていただいている皆さんにはお馴染みのセルフケアとしてお伝えしている「あれ」です。

膝関節のMWMSの動画はコチラ↓

1/2

2/2

古い動画ですみません…

しかし、走り出すとじきに痛みもぶり返します。

そりゃそうです。

患部がダメージを負って炎症を起こしている最中ですから、本来的には運動自体を中止したいところです。

でも、ここは山。

自力で降りなきゃどうにもこうにもなりません。

そこで、いままで登山やトレランで膝を傷めて相談にいらした患者さん達から聞きかじった対処法を実践することに。

その対処法は…

 

斜面の方を向いて後ろ向きに降りる!

 

すれ違う方に奇異の眼で見られつつも、これなら痛みなく下り降りることができそうです。

斜面に向き合って下ると痛みが感じられなくなったカラクリは股関節と膝関節の角度にあります。

腸脛靭帯炎は腸脛靭帯が大腿骨の突起(外側顆)との摩擦で生じますが、

その摩擦は膝が20~30度の浅い曲げ伸ばしで生じます。

基本的にはこの浅い角度の曲げ伸ばしが繰り返されることで腸脛靭帯炎が生じるのです。

なので、長距離走の選手には起こりやすく、短距離走の選手にはそうそう起こることが無いのです。

上の図から、斜面を背にくだる動きと向きあってくだる動きの

膝の角度を比較すればお判りいただけると思いますが、

膝の角度は右の「斜面に向き合う方」がふかく維持できているでしょう!?

さらに股関節の角度のふかさも斜面を向いている方が深い。

このことも腸脛靭帯の負荷の軽減に役立ちます。

腸脛靭帯は大腿筋膜張筋という股関節の筋肉とつながっていて、

この筋が引き伸ばされるようなシチュエーションでは靭帯の張りも強くなりますので、

股関節を伸ばしたところから膝を曲げると

大腿骨と腸脛靭帯の摩擦が強くなってしまうのです。

↑股関節の角度に注目。

斜面を向くことで股関節が深く曲がると筋膜張筋が緩みますから

腸脛靭帯も緩み、負荷も和らぐといった効果が得られるわけです。

さらに、後ろ向きで下る際に膝周りで働くのはハムストリングスとなりますので、

外側広筋を極力使わずに済むという点も大きな利点です。

 

その後も治療で痛みを散らしつつ、後ろ歩き(走り)でくだり

どうにか無事にふもとまで降りることができました。

山頂で目指した時間よりは遅れたものの、1時間での下山となりました。

そして、無事にBEERと温泉にありつくことができ、めでたしめでたし。

しかし、膝が腫れているのにBEERと温泉…

本当はNGなんですけどね(;^ω^)

 

その後、膝の故障はどうなったかというと、

そもそも軽症だったのと適宜治療した甲斐もあり、

受傷後3日でウエイトリフティングができるまでに回復しました。

明日はウエイトリフティングの試合に出場予定ですが、膝の不安はありません。

でも、受傷時は結構シビアな痛みが出ていて冷や汗ものな状況でした。

患者さんから膝を傷めた時の下山法を聞いていなかったら正直ヤバかったです…(+_+)。

患者さんに感謝です!!

この一件でトレランにのめり込む、ということは今のところはなさそうですが、

今回の反省を踏まえ、この秋の内にもう一度山を走ってリベンジしたいと思います。

次は何とか無傷で走り切ろう!

<おまけ>

○腸脛靭帯炎のセルフケア

・大腿筋膜張筋を中心に股関節外転筋群の過緊張への対処:テニスボールマッサージ

・外側広筋のトリガーポイントへの対処:テニスボールマッサージ

・ペルビックティルト

腹壁の諸筋による骨盤前面の支持性が高まることで下肢の筋バランスの正常化を引き出すことができます。
特に四頭筋や大腿筋膜張筋を含む股関節屈筋群の過緊張の緩和に効果的です。

・POINT!

セルフケアエクササイズを行う前にスクワットテスト(その名の通りスクワットをして痛みの程度や膝の曲がり具合を確認するテストです)と左右の腿上げを行ってからエクササイズに取り組んでみてください。

エクササイズ後にもスクワットと腿上げをしてみると、エクササイズの効果を確認することができます。


クライマーズ・インジャリー~下山時の膝外側痛~

2017年10月20日 | スポーツ障害

秋です。

読書の秋、

食欲の秋、

スポーツの秋、

そして登山の秋!

ということで、

今回は登山をされる方から寄せられることの多い、

あの!

「下山途中に出現する膝の痛み」についてお話しします。

上の写真では登っていますが、下山時の膝痛の話です。

え?

山登らないから知らない?

ですよねぇ…

山登りやトレイルランをする方からはよく聞く相談なんですけどねぇ…

これを書きながらも

『ちょっとマイナーなところを攻めすぎたかな…』

と不安が少々(*_*;

でも、ここまで来たら書き切ろうと思います!

 

相談者は60代男性のAさん。

Aさんはテント泊をしながら登山を楽しむという本格派。

時には山中で5日も6日もテント生活をおくるのだそうです。

しかし、今年は春先に痛めた膝が治らず

オンシーズンにもかかわらず「お散歩」程度の山歩きで我慢の日々。

お散歩程度にもかかわらず膝の痛みは続き

思うように回復が進まず困りはてたAさん。

そんなとき、Aさんのスマホが引っ張ってきた治療院が

我が「とよたま手技治療院」だったのだとか。

Aさんのような下山中に膝が痛みだすという症状の出どころの多くは外側広筋と腸脛靭帯です。

↑黄色く色分けされてるのが外側広筋と腸脛靭帯です。赤い斜線は痛む箇所です。

傷病名で言うと腸脛靭帯炎とされることが多いのですが、

どうも外側広筋の故障を見落とされることが多いように思います。

この手の相談の治療で私が持つ印象は、

腸脛靭帯炎と言われつつも実際のところは外側広筋の筋膜炎であったり

腸脛靭帯炎との合併であったりと、外側広筋の故障が絡んでくることが多いと感じています。

しかし、なんで下りで外側広筋と腸脛靭帯が痛んでしまうのでしょう?

その仕組みはいたって簡単です。

膝は曲げる際にはすねの骨が大腿骨に対して内旋(内へと捻じれる)し、

伸ばし切る際には外旋(外へと捻じれる)する構造を持っています。

下り坂を歩く(走るも同じ)ときは脛が曲げられるのを耐えるように

膝を伸ばす筋肉をブレーキとして使います。

この時、見た目上すねは折りたたまれ、同時に内へ捻じれる方向へと

押し込まれてゆきますが、ブレーキとして力が発揮される方向は

押し込まれまいと耐える方向、つまり脛を外捩じりし膝を伸ばす方向となります。

その方向へと力を発揮するのが外側広筋と腸脛靭帯(筋膜張筋)なんですね。

両者はすねの骨を外へ捩じりながら膝を伸ばす作用を持った筋肉なので、

下り坂で両者はダイレクトにブレーキとして使われるのです。

※腸脛靭帯は股関節外側で大腿筋膜張筋という筋肉につながります。この筋は腸脛靭帯のテンションをコントロールしています

筋肉や腱は引き伸ばされながら使われるようなシチュエーションでは

発揮できる筋力が通常の収縮よりも大きいものの、

その反面傷つきやすいという事実があります。

※腸脛靭帯は大腿筋膜張筋という筋肉につながりますので大腿筋膜張筋にとっての「腱」と考えることができます。

「引き伸ばされながら筋力を発揮する」といった

筋肉の収縮様式(働き方)を「遠心性収縮」と言いますが、

ブレーキとしての働きをになう外側広筋と腸脛靭帯は

下り坂を下るというシチュエーションにおいて

過度な遠心性収縮の反復を受けて傷つき故障してしまいやすい

というのも道理の通った話なのです。

これが下山時の膝の痛みの正体です。

 

さて、いつも通り寄り道がはなはだしい感じですが、

Aさんの膝の治療の話に戻りましょう。

正確な治療は評価から!ということで

スクワットテストという検査を行います。

スクワットテストでは「しゃがみ・立ち」の動作をチェックすることで、

・どの程度膝の動きが障害されているのか?

・どういった動きの狂いが出てくるのか?

を確認します。

Aさんの場合、左膝がしゃがみ切るのにあと15度足りないといった状態でした。

動きの狂いはスクワットを通じてつま先を膝が外に外れる「O脚」を呈しています。

幸いスクワット全体を通じて痛みは下にしゃがみきった時の膝外の痛みのみとのことでした。

これは炎症や損傷がひとまず落ち着いたときの兆候です。

つまり、Aさんの膝は徒手医学的な治療を存分に行える時期にあるということが、この痛みの出方を見るなかで判断できるのです。

そこからさらに詳細な評価をしたところ、Aさんの故障に対する治療上の問題点(主なもの)は以下の4点となりました。

・股関節外転筋群の短縮(これがAさんのO脚の原因でした。AさんのO脚は骨格的な問題ではなさそうです。)

・腸脛靭帯と外側広筋の癒着(炎症後の組織はしばしば癒着という隣同士の構造がへばり付いた状態に陥ります。)

・外側広筋のトリガーポイント形成(遠心性収縮によって微小損傷を繰り返した傷跡ともとらえることができます。)

・骨盤前面の腹壁による支持性の低下(下腹部の筋が下肢の土台となる骨盤を支え切れていないと股関節以下の筋が過緊張してしまうのです。)

評価で得られた所見から、Aさんの「下山時の膝の痛み」と運動障害は「腸脛靭帯と外側広筋の癒着」と「外側広筋のトリガーポイント」によるものだということがわかりました。

それらが起きやすくなる背景要因としては股関節外転筋群の短縮と体幹の不安定性という判断です。

 

治療としては通常炎症があるケースではやはりアイシングと安静が重要になります。

炎症が起きているときには患部をいじくるのはNGです。

炎症は3~6日で落ち着きます。

焦らず待つこともこうした状況では大切なことなのです。

炎症が落ち着いたら患部に生じた炎症後の癒着や繊維化を除く処置に移ります。

幸いAさんの膝は炎症期を過ぎており、すぐにそれらへの処置が開始できました。

治療後、スクワットはボトム(一番下)までしゃがむことができました。

切り返して立つ動作も痛まないと言います。

第一段階はこれでクリアです。

しかし、登山に耐えられる強さが取り戻されているかというとそれは別の話です。

山歩き、とりわけ痛みが出る下り坂を歩き切るだけの強度を取り戻すため

今の患部の強度に合わせて鍛える必要があります。

ここは「治療」ではなく「強化」なのです。

アスリートリハビリ、と言ってもいいでしょう。

また、同時に背景要因の「骨盤前面の腹壁による支持性の低下」への取り組みも必要です。

再びキチンと山登りができるようになるためには「目先の痛み」の解消だけでは不十分なんです。

完全復帰を果たすためにも

「膝に無理がかかる条件」が残っていたり、

そもそもの両筋腱(腸脛靭帯と外側広筋)の強度が山登りに耐えうる強度に届いてない

という問題が解決されなければ再発を繰り返してしまう

ということへの理解を患者さん自身がもつことがとても重要になってきます。

これはどの故障の相談でも言えることですね。

何度も書きますが、再び登山を楽しむためにはキチンと全身との連動性の正常化と

患部の強化の道筋をたどらなくてはなりません。

Aさんには、少しでも回復を早めるためにも自宅でできるケアをご提案しました。

中身は筋膜張筋をはじめとした外転筋群や腸骨筋・大腰筋や腰部起立筋へのテニスボールマッサージ。

これは炎症部位をいじらないので腫れがある初期でも安全にできることになります。

腸脛靭帯炎のケースならば大腿筋膜張筋を緩めることで靭帯と大腿骨との摩擦が緩和できますし、

外側広筋の故障のケースであっても股関節の伸展可動域を拡大し骨盤の前傾を緩和することで

膝にかかる力学的負担を軽減することができますので、

どちらのケースでも患部の回復を促すのに役立ちます。

さらに下腹部の骨盤前面への支えを取り戻すための体操として

「ペルビックティルト(骨盤傾斜の意)」を言うエクササイズを処方しました。

Aさんは初回の治療で痛みなくスクワットができるようになったと言っても

まだまだ治療は2~3合目といったところ。

今はまだ本格的な登山はできません。

恐らく今期は日帰り登山で我慢となるでしょう。

経験上はコツコツ運動療法にも取り組めば次のシーズンで復帰できるようになるだろうという目測です。

ですが、まだオンシーズンとのことですので、魔が差さないとも限りません。

回復期に魔が差すと大きなお釣りをもらうケースをよく見ますので、気を付けていただきたいところです。

以上、「下山時の膝外側痛」でした。

~終わり~


肉離れの治療03~DTM:深部横断マッサージ~

2017年10月15日 | 治療の話

さて、01で「二部構成で…」などと言いながら、気が付けば3部構成になってしまった「肉離れ」も今回でようやく完結できそうです(;^ω^)

と、その前に前回のおさらいを少々。

前回私は

瘢痕組織と筋繊維とのあいだに生まれた「強度の格差」が「肉離れの再発」の原因と考えられ

「強度の格差」を是正することで肉離れの再発を防止することができるということになるだろう

というところまでお話ししました。

今回は、その「強度の格差」を是正するための手法についてお話しします。

 

「瘢痕」「筋組織」双方の組織間の「強度の格差」を正常化するということは具体的にはどういうことなのでしょうか?

それは、瘢痕を正常な組織へと置き換える作業を身体に促すということです。

手技療法にそんなことができるのか?

と思われる方もいるかもしれませんが、多少の時間はかかるものの決して不可能なことではない

というのが私の出した結論です。

私たちの身体に起こる通常の治癒過程では、

まずはじめに細いコラーゲンの繊維で傷をふさぎ、

次いでコラーゲンの繊維が太く成長するなかで断面同士を強固に引き寄せつつ、

その一方で傷跡を形成するコラーゲンの塊を吸収しながら新生した血管や筋繊維を傷跡に潜り込ませ、

最終的には正常な組織、つまり筋繊維や血管や神経を再配置して、不要なコラーゲン繊維の塊は吸収されて修復完了!

となります。

しかし、

残念ながら傷が大きいとコラーゲンの再吸収と正常な組織への置き換えが上手に進みません。

患部が治りきる前に運動を繰り返し、新たな傷が累積するような状況が続くケースも然りです。

治した先から壊されているわけですし、新たなキズが刻まれるたびに瘢痕組織も分厚く大きくなってしまいますからね。

治癒力の許容範囲を超えるような「大きな瘢痕組織」が出来上がってしまった場合、正常な組織に置き換えるのを身体が諦めてしまうこともあるんです。

手術の後の術創などはそのよい例でしょう。

しかし、だからと言って諦めるわけにはいきません。

こちらとしてはふたたび元気にスポーツを楽しんでもらうためにも、身体に正常な組織への入れ替えを完了してもらいたいわけです。

さて、この状況を打破するためにはどうすればいいのでしょう?

 

そんなときに役立つのが「DTM」という手法です。

DTMとは

Deep-深部

Tranceversuse-横断

Massage-揉捏法(マッサージ)

の略で、筋繊維を横に横断するように揉みしだくという、ある意味とてもシンプルかつ原始的な手法です。

このDTMは主に組織の繊維化や癒着を解消するのにつかわれる技法で、「肉離れ」の治療では組織の炎症が消退した時期を見計らって使用します。

非常に原始的な手法なのですが、実際の治療経過を見る限り「肉離れ」には相性の良い治療です。

DTMを施すことでなぜ瘢痕組織の吸収が再開されるのかは想像の域を出ませんが、

恐らくはDTMを施すことで瘢痕組織を構成するコラーゲンの塊が瓦解され(ほぐされ)ることが組織の新生のきっかけとなっているのだろうと考えています。

組織の修復の初期段階では傷口に露出したタンパクに遊走細胞(免疫細胞)が食いつき傷の断面を綺麗にしてから種々の治癒反応が展開されますので、DTMによって瘢痕組織が壊されることがきっかけとなってコラーゲンの再吸収が始まり、肉芽組織の入り込む隙間が作られ、組織の新生を促すことにつながるのでしょう。

上記はあくまで推論なのですが、私自身の治療経験を顧みる限りは「肉離れ」を繰り返す症例がDTMで順調な回復がみられる例は非常に多いので、そう的の外れた話ではないと考えています。

以上、「肉離れの治療」についてのお話しでした。

「肉離れ」でお困りの方がいらっしゃったら、一人で悩まずにお気軽にご相談ください。

 ~おわり~


肉離れの治療02~肉離れを繰り返してしまう理由とは?~

2017年10月06日 | 治療の話

さて、今回は「肉離れを繰り返してしまう理由」についてお話しします。 

肉離れを繰り返す理由はいくつか考えられると思いますが、思いつく範囲でさっとあげるならば、

「マルユース(誤用:身体の使われ方のエラー)」

「オーバーユース(使いすぎ)」

「瘢痕組織の残存」

といったあたりとなるでしょう。

そのなかで、今回のお話しのメインテーマとなるのは三つ目の「瘢痕組織の残存」という問題です。

「瘢痕組織」というのは怪我の修復過程で残ってしまった「きずあと」のことです。

コラーゲン繊維がからみあってダマになったような状態で、正常な組織に比べると硬くてのびにくいという特徴を持っています。

こうした「しなやかさ」に欠ける組織は正常な組織との境界で剥離しやすくなります。

「境界がはがれやすい」とする根拠なのですが、それを説明するために知っていただきたいことを書いてゆきますね。

例えば、均質な物質に張力をかけるとその力は構造全体にまんべんなく伝わってゆきます。

ですが、一部により「柔らかな部分」ができた場合は張力がその柔らかな部分に集中します。

特に固さが急に変わる部分に力は集まりやすくなります。

加わった力が「柔らかな部分」の耐久限度を超えれば「柔らかな部分」から千切れてゆくことになります。

 

この現象をイメージできるようにちょっとした実験をしてみました。

まずティッシュで太いこよりと細いこよりを作ってつなぎます。

太いこよりにはティッシュを一枚使い、細いこよりはティッシュ1/2を使いました。

こよりの両端をもって均等に引っ張ったところ…

 

こよりは結び目から千切れました。

 

千切れた断端を見てみると、細いこよりから千切れていました。

 

これを肉離れによって作られた瘢痕組織と隣接する筋組織に当てはめて考えてみましょう。

運動時、「固い瘢痕」とそれに連なる「柔らかな筋組織」に強い張力がかかったとします。

張力はそれらの境界に集まるでしょう。

力に耐えきれなければ組織は損傷をきたします。

この場合、上記の考察を踏まえると、より柔らかな筋組織が瘢痕組織との境界面から剥がれたということになるでしょう。

もし瘢痕組織と筋繊維とのあいだに生まれた「強度の格差」が「肉離れの再発」の原因になっているのであれば、「強度の格差」を是正することで肉離れの再発を防止することができるはずです。

ではどうやって?

次回は「癖になった肉離れの治療」についてお話しします。


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