四頭筋の筋挫傷からのリカバリー<第1話>

2018年10月31日 | トレーニング日記

お恥ずかしい話ですが、去る9/5、膝の上にバーベルを落して両膝に筋挫傷を負うというアクシデントに見舞われました。

断裂部位は外側広筋の筋肉と腱の境目です。

傷の幅は4~5cm、深さは1cmほど。

結構シビアな怪我をしてしまいましたが38日(5週間と3日)で復帰することができました。

復帰直後のスコアはほぼベストの記録です。

 

両側四頭筋遠位部筋挫傷後38日目

上の動画はスポーツ障害の病期から外れた日(練習開始時の患部の痛みが感じられなくなった日)から4日後にベストの計測をした時のものです。

ちなみに、今回は専門的な治療手法を使わずに

普段患者さんや学生選手に伝えているチューニングメソッド(運動療法としてデザインしたエクササイズメニュー)のみの対処で

どこまで回復するのかをテーマにしました。

なので、テーピングや運動療法のたぐいまでは使いましたが、鍼治療や筋膜リリースなどの専門的な手法は使っていません。

幸いなことに、競技力の低下もなくリカバーすることができました。

この結果は「スポーツ障害」で紹介した内容に則った対処ができたことも大きいと考えています。

少なくとも単純に安静加療だけをしていたらこうはならなかったはずです。

怪我による5週間の足踏みは残念なロスでしたが、治療をする側としては貴重な経験になりました。

 

せっかくですので「スポーツ障害」の記事のケーススタディとして今回の一件を時系列で紹介させていただこうと思います。

アスリートリハビリのプランニングの際にお役立ていただければ幸いです。

 

さて、手始めに怪我を負った夜のことからお話しします。 

ことの顛末はこうです。

 

この日は二日前の練習(デッドリフト三昧)の疲れが残っており、かつ仕事も忙しく、頭も身体もよれよれの状態でした。

全く気の乗らないまま、義務感のみでトレーニングジムへ向かいます。

というのも、10月末に関東マスターズ選手権があり、その準備としてコツコツ練習回数を稼ごうと考えていたのです。

この日は二日前のダメージが腰に残っていて補強をやる状態ではありませんでした。

そこで、フォーム練習としてクイックリフト(ハイクリーン)に取り組んだのが不味かった。

汗でぬれた手でバーベルを引いたとき、シャフトから手がつるりと滑って外れてしまったんです。

落したバーベルの重量は75kg。

ウエイトリフティング場ではバーベルを床に落としても問題ないのですが、この日の練習場は近所の24hのジム。

こうした施設ではバーベルを落っことす(ドロップといいます)のはご法度です。

イレギュラーが生じたとき、人間とっさに何をするか分かったものじゃないですね。

手が滑った瞬間

『落したらあかん!!!!』

と思うと同時に両膝をバーベルの下に差し出してしまったんです。

このころは80kgでセット(3レップ3~5セット)を組めるようになっていたので75kgという重量はそんなにしんどい重量ではありません。

なので75kgという重量にたいして油断があったのでしょう。

でも、よく考えたら自分の体重を超える鉄の塊が落っこちてくるんですもんね…

耐えられるわけもありません。

シャフトの形にべっこりと凹んだ傷跡を触ったときには「終了」の文字が頭に浮かびました。

膝のお皿の上縁から外側へ傷が広がっています。

外側広筋腱のダメージは特に大きそうです。

『外側広筋腱部の完全断裂か?』

と冷や汗が流れましたが、お皿を動かすと外側広筋にテンションを感じます。

よかった。

つながってます。

でも、もう関東大会はないなと落胆…

凹んでいた傷跡はみるみる赤黒く膨れだしました。

必要以上の出血は回復を遅らせますので早めに手を打たなくてはなりません。

一先ず競技用のニースリーブをかぶせ、患部を圧迫しました。

落した直後はあまりの痛さに身動きが取れませんでしたが、5分もするとなんとかかんとか歩くこともできました。

 

足を引きずりつつジムを後にし、

近所のドラッグストアで消炎鎮痛剤とテーピングを買い、

応急処置をしてどうにかこうにか帰路につきますが、帰り道の遠いこと…

この晩は弾性包帯で軽い圧迫をかけ、氷嚢を巻きつけ、足を高くして休みました。

 

翌朝、両膝は木杭のように固まっていましたが、キネシオテープとエラスティックテープでテーピングをして何とか歩けるようになりました。

でも、90度も曲げられません。

いつも自転車通勤なのですが、ペダルを回すことができない状態でしたので電車通勤となりました。

でも、それはそれで駅の階段が拷問のようで…

登りも痛い。

下りも痛い。

そうでなくともじっとしていてもズキズキとうずく膝。

テーピングをしつつ鎮痛剤を飲みながらなんとかしのぐ、

そんな状態が3日間続きました。

でも、急性炎症の極期は3~6日です。

三日を過ぎたあたりから安静時の疼きも落ち着き、

4日目には階段ののぼりが幾分楽になり、

六日あたりで階段の下りも幾分楽にできるようになりました。

ま、まだまだ痛いは痛いのですけども…

その間は何もやっていなかったのかというとそうではありません。

安静時の痛みが落ち着いた4日目からあるエクササイズを開始しました。

そのエクササイズとは…

ー続くー 


肝機能障害と足底の痛み

2018年10月27日 | 治療の話

1歳のお子さんを丸一日抱っこし続けて肩が痛くなってしまったとご来院のAさん。

私の顔を見るなり

「あ、先生!お父さん脂肪肝でした!」

とニッコリ。

Aさんのお父さんはとある分野の職人さん。

時折お身体の相談をいただいています。

確か前回お会いしたのは夏のころだったような…

そういえば、確かあの時、内科的な問題を疑ったような…

しかし、脂肪肝でよかったとは?

何か肝臓と関係した筋骨格系の症状があったのかしらん?

と記憶の糸をたどりつつ

「あ…え~…それは何より…」

と歯切れの悪い返事で誤魔化すも

『あ、わすれてんな…』

と悟られること0.1秒。

微妙な空気になるより先に

「カルテ診てきていいっすか?(^_^;)」

と白旗を挙げる私。

 

不思議なもので、カルテを見るとその日の情景がみるみる蘇ります。

たしかに「脂肪肝でよかった!」です。

 

 

▲左から正常な肝臓・脂肪肝・肝硬変

 

 

Aさんのお父さんは両側の足の裏がチクチク痛むと来院されました。

かれこれ3か月も足の裏の痛みが続いているとのこと。

お父さん、お仕事では長時間立ったまま。

足元は靴底の硬い長靴をはいています。

お父さんの足裏を診てみると、土踏まず以外が赤く、少し膨れています。

これをみて私は、はじめ単に底の硬い長靴での立ち仕事がたたって足裏が腫れたんじゃなかろうかと思いました。

しかし、お父さんはどうにも納得のいかない様子。

もう少し様子を聞いてみると、お父さんの口からは気になる症状が飛び出します。

・このところ疲れが抜けない

・足がつる

・足がむくむ

・去年から急に太った(10kg体重が増えた)

・お酒は大好きだけど、最近量が飲めなくなってきた

 

疲れが抜けなくて筋肉がつる…

お酒はよく飲むが飲めなくなってきた…

飲まないんじゃなくて飲めない?

そして足がむくんで困っている…

体重が増えたというけれど、10kg脂が付いたようには見えません。

おなかを触ってみると皮下脂肪はさほどでもなく、腹腔が水風船のように膨れています。

私の頭の中は学生時代の病理学各論の授業風景がフラッシュバックしていました。

言い方が悪いのですが、こうしたお腹を「蛙腹」と呼んだりします。

つづいて、「低アルブミン血症」「浮腫」といった単語が泳ぎだします。

そして「アルコール性肝炎」「肝機能障害」「腹水」「門脈圧亢進」という単語が不気味にちらつきます。

ぐるぐる回る単語たちの向こうに「肝硬変」の文字がうっすらと浮かびます。

 

肝硬変では消化管からの血流が硬くなった肝臓を通れずに滞るため、お腹に水がたまったり手足がむくんだりします。

そうすると太って見えないのに体重が増えたりします。(水太りっていうんでしょうかね)

この状態を門脈圧亢進といって、消化管の静脈がパンパンに膨れて食道静脈瘤の破裂なんて危険性も出てきます。

肝臓の働きである解毒作用がうまく働かなくなれば筋痙攣も起こします。

 

 

そんな私の疑念を感じてか、

「足の痛みが内臓からくるってことあるかなぁ?」

と、しきりに聞いてくるお父さん。

多分、ご自身の飲酒歴から肝臓を心配しているのでしょう。

さすがは 吞ん兵衛  職人気質のお父さん。

勘が鋭い。

 

しかし、私は医師ではありません。

検査もできなければ診断もできません。(そもそも診断権というものがありません。それがあるのは医師だけです。)

 

ですが、時に進行性の疾患との判別(つまり、自身の職域で対応していい疾患であるかの判断)はしなくてはなりません。

徒手医学では通常、内科的な疾患の影響が筋骨格系に及んだ場合、手技療法のような治療では改善が得られないといわれています。

その証拠に、食道炎の影響で起こった首の付け根(襟の高さ)の強いこり感は、手技療法や鍼灸治療でも一瞬症状の緩和が得られるも、ものの数十秒で戻ってしまいます。

そうした反応を見たときは、首の付け根のコリの原因が内科的な問題で引き起こされていたことが分かります。

これを診断的治療といいます。

こうしたときは胃薬を飲んでもらうとしつこいコリもスッキリ治ってしまいます。

といった理由から、お父さんの足の裏の痛みが消えるのか試しに治療することで内科的疾患とのつながりが判断できるかもしれない…と考えました。

 

お父さんの足の痛みは下腿の循環障害によるうっ血と浮腫が原因です。

血流を滞らせているのが単にふくらはぎの緊張であれば、緊張を解けばかかとの痛みは消えるでしょう。

門脈圧の亢進であれば消えないかすぐに戻るはずです。

治療はかかとにある失眠というツボと土踏まずの先端にある湧泉というツボにお灸をしました。

かかとへの灸は腓腹筋という筋肉の緊張緩和を狙ったもの、湧泉への灸は腓腹筋の下の深層筋の緊張緩和を狙ったものです。

 

結果、足裏の痛みは消えました…

すぐに再発する様子もありません。

 

じゃあお父さんの肝臓は問題ない?

 

いえいえ、そうとは限りません。

 

諸症状を俯瞰すればアルコール性肝炎なんかも心配です。

肝機能が低下していれば浮腫も起こります(低アルブミン血症)し、筋痙攣も起こります。

さらに言えば、

内科疾患の影響によって生じた整形外科的障害(症状?)にたいして

徒手医学的アプローチ(保存療法といいます)を施すことによる身体のリアクションの話は、

あくまで経験則の範疇の話できちんと証明されているものでもありません。

個々の状況によっては「手技療法で消える痛みだから内科的疾患ではない!」とは言えないケースもあるはずですし、今までも実際にありました。

 

得られた所見を見渡して肝機能障害が疑わしいならば、やっぱり検査をお勧めするべきでしょう。

 

医者でもない、ただの鍼灸マッサージ師の私の言うことがどこまで通用するのかわかりませんでしたが、

きちんと病院に行っていただけるようAさんにお父さんのお身体についてご相談させていただいたんです。

 

で、ようやく冒頭のやり取りに戻るわけです。

 

心配していた「肝硬変」ではなく「脂肪肝」だったということで、一先ずはほっと胸をなでおろしたということです。

でも肝機能の低下はあったということですし、肝硬変の前段階でもあったわけですからしっかりと治療しなくてはなりません。

食事制限、辛いだろうなぁ…

お酒を豪快に飲んでいただろうお父さんの顔を思い浮かべて気の毒に思う秋の日なのでした。

=終わり=


12/2に大阪で「腰痛症のロジカルマネジメント」セミナーを開催します

2018年10月25日 | セミナー/講習会

12/2に大阪で腰痛症について講義をする予定でおります。

疾患をテーマに話すのは久方ぶりです。

この数年の蓄積を、どうせなら一人でも多くの先生方にお伝えしたい!!

と、いうことで…

深夜まで動画作成です(ぐったり)

明日は大学へのケアサポート。

その前にリフティングをしてから…と思っていたのに宵っ張り。

もう2時か…

せめてこの頑張りをブログのネタに…

はなりませんよね(^_^;)

でも、載せちゃいます。

なぜなら、このブログの読者はご同業の方が多いから!

 

いろいろ迷いつつ、2パターンのCMを作りました!

もしよろしければ、一般の方もご覧になってください!

(長時間労働でおかしなテンションになってますがご容赦くださいm(__)m)

腰痛症のロジカルマネジメント1

腰痛症のロジカルマネジメント2

 


治療効果は治療手技では決まらない

2018年10月19日 | 治療の話

ふと勉強会のHPを見ていたら、五年前に書いた文章が目に留まりました。

そこにはこんなことが書いてありました。

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治療法のセミナーをしていると、「このテクニックであれば何日間痛みを止められるのか?」といった質問を受けることがあります。

この回答となるかは定かではありませんが、私は「テクニック自体が痛みを消す力を持つものではない」と考えています。

そもそも痛みというものは、

日常で頻回に取られる姿勢や動作によって癖付いた筋膜などによって力学的な負荷の偏在が生じたり、

関節する骨同士の回転中心が狂うなどの異常運動が生じて過負荷にさらされた組織に損傷を生じたり、

過緊張に陥って循環障害をきたしたりするなどの経緯で発せられます

(もちろん他にも痛みが生じるシチュエーションはあるでしょう)。

それゆえに、

痛みを止めるには傷害局所への負担を除くために、

局所を含む「全体の機能」を正常化すること(力学的負荷の最適な分配ができる状態を導き出すこと)

が大前提となるのです。

つまり私たちの行う治療とは「傷つき痛む環境を正す」ということが主眼となるのです。

力学的な負荷が正しく分配されるならば、組織は正常な修復の過程を進むことができます。

また、正常な成長を遂げることもできます。

テクニックはそのための道具にすぎません。

そして、道具の効果を引き出すには適材適所、最適な使い分けがなされることが肝要です。

そのために、治療の際に最も重要なのは「評価」だということになります。

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そうなんですよ。

治療の成否は治療手技では決まらないんですよ。

大事なのは問題を読み解く思考力なんですよね。

もちろん技もなきゃだめですが、それは専門家としてはあるのが前提の話ですからね。

5年前の自分に激しく同意です。

でも…

なんでしょう!?

このころの自分が頭よさげに見えるのは気のせいでしょうか…(-_-;)

ひょっとして、今の僕、頭悪げ!?

これはちょっとふんどしを締めなおさねばいかんですね。

12月に大阪で腰痛症の治療についての講義も控えてますからね。

がんばろ。


最近おとなしくなってるな…

2018年10月13日 | つぶやき

今日は午後の治療の後、臨床技術研究会という会員制の勉強会を行いました。

この勉強会、ネチネチ臨床における推論の立て方や治療技術を練習しようという趣旨なんですが、

最近どうもしっくりこないというかなんというか…

それは会員さんにではなく、自分自身に。

昔は徹夜で練習会をしたこともありました。

で、徹夜明けで技術テスト。

受ける方も審査する方もヘロヘロ。

でも、非常に充実した時間だったなと…

最近、どうもおとなしい。

しっくりこないのはそこかも。

もっとクレイジーな企画を立てられないものか、自問してみようか。

そうだ。

ウエイトリフティングを治療家目線で解釈した講釈をして、納得したところで実際にリフティングを練習するっていうのはどうだろう!?

それに絡めてセルフケアやチューニングも体験したりしたらどうだろう!?

故障の回復が済んだあと、再発予防や競技復帰のためのいわゆる「強化」の分野に治療業界は弱いですからね。

結構、有意義な試みなんじゃないかな?

ストレングスを通して強化の過程の苦痛も体験し理解してもらえたら、患者さんとの付き合い方も変わると思うんですよね。

うん。

いいかも。

なんとなく世間と一緒のことを繰り返すのではなくて、

もっとクレイジーに挑戦し続けた方がきっとしっくりくるんじゃないか!?

 

うん。

やってみよう。

 

以上つぶやきでした。


受験生を持つお父さん

2018年10月13日 | つぶやき

つい先月あたりに生まれた…

ような気がしてならない息子も中学3年生。

体重も挙上重量も父をサックリ超えた自慢の息子も受験生。

親父に似たのか興味のあるものは必要以上に堀り下げるのに、学校の勉強はみごとにスルー。

先日、あまりに勉強しない息子にママが放った一言。

 

そんなに勉強しないと高校に行けないよ!

ちゃんと高校いって、大学入らないと

お父さんみたいになっちゃうんだよ!?

 

 

 

え?

ダメなの!?

なになに?

え?

お父さんみたいになっちゃう?

ん~

今の文脈でいうとぉ~

えぇっとぉ…

「佐藤二郎 笑う」の画像検索結果 

ん!

悪くない!

「佐藤二郎 笑う」の画像検索結果

うん

そんなに悪くはないと思うよ、お母さん!

うん、悪くはないと…

思うんだが…

 

ははっははっははっはっはは!

 

気分は佐藤二郎

ここで笑えたあたり、大人になったなって思います。

う~ん、がんばろ…


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