今日はベンチプレスやウエイトリフティング(クリーン・スナッチ)を好んでやられる方に起こりがちな「手首の痛み」についてお話しします。
と、その前に…
ウエイトリフティングをご存じない方へ
【 クリーン&ジャーク 】
【 スナッチ 】
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症状は、手首を反らせたときに手首関節の深部から甲側にかけて現れる鋭い痛みと可動制限(「反らない」ということ)です。
この故障は、前腕の骨(橈骨・尺骨)と掌の手根骨との間の動きの狂いから起こります。
何がどうなっているのかと申しますと、
バーを握るのに働く筋肉たち(前腕屈筋群)が縮むことで手の平(遠近二列ある手根骨のうちの遠位側)が前腕に対して「手の平側」へズレ込みます。
普通は前腕と掌の中心は合っている
前腕屈筋の短縮があると、手の平(手部)は前腕に対して掌側(腹側)にずれる
この状態で手首を返そうとすると、手首関節に正しい滑り運動が起こらずにロックがかかってしまいます(いわゆるインピンジメント)。
慢性化し、組織が傷ついてゆくと「手首は反らなくなるは引っかかって痛むは…(;´Д`)コマッタナ」となるわけです。
痛みはぶつかり合う関節面から生じるケースもありますし、
強く縮んだ前腕屈筋のカウンターバランスとして働き続けた前腕の伸筋(長短橈側手根伸筋など)から生じるケースもあります。
図版引用:トリガーポイント・マニュアル : 筋膜痛と機能障害 Janet G. Travell, David G. Simons[原著] ; Barbara D. Cummings図 ; 川原群大監訳 エンタプライズ
当然、それらの複合のケースもありです。
治療のポイントとなるのは以下の3点。
①筋膜機能障害への対処
まず手根骨を「手の平側」に引き込んでいる前腕屈筋群の緊張を解くことです。
ターゲットは尺側および橈側手根屈筋です。
それから握る動作に強く作用する母指球筋。
ここが強く働いたままだと、前出の尺側・橈側手根屈筋も力が抜けません。
なので、ここの緊張を解くことも大事!
②関節機能障害への対処
筋膜機能への手入れが済んだら、手根骨間に拘縮を生じていないか調べます。
だいたいは大小の菱形骨と舟状骨・月状骨の間あたりが動きを失っています。
こういうのはピンチ(摘み)動作が強く求められる作業をする人に多く見られます。
刺繍をされる方や薬剤師さん、マッサージャーにも多いです。
③セルフケアの指導
【忘れがちで大事なポイント:セルフケア前後で痛みの軽減や可動範囲の向上があるかチェックを忘れずに!】
この故障はセルフケアもけっこう簡単です。
・テニスボールで前腕屈筋(手をグーにする筋肉)をマッサージする
1、手を後ろ手に組み、壁に寄りかかります。
2、前腕と壁の間にテニスボールをはさみ、体重を掛けます。
3、肘の内側から手首にかけて「ローラー」を掛けるように転がし、「じぃ~ん」と痛む場所を見つけたら痛みが半減するまで待ちましょう。
・母指球を肘で指圧する(肘だから肘圧か!?)
1、椅子に座り、痛む手を反対の膝の上に乗せる
2、肘で母指球を指圧する。「じぃ~ん」と痛む場所を見つけたら痛みが半減するまで待ちましょう。
って、これこそ動画や写真があるといい感じですね。(^^;)
時間ができたら加筆したいと思います。
関節部に拘縮や炎症・損傷をきたしているケースでは回復に時間がかかりますが、
筋膜レベルの問題でとどまっているケースでは早期の回復も期待できます。
トレーニングに打ち込んでいると、つい痛みがあっても計画通りにトレーニングしたくなりますが、
痛めた以上だましだまし続けずに、しっかり治して仕切り直していただきたいところです。