世界マスターズ基準記録公認記録会結果

2020年10月28日 | トレーニング日記

10/25は2021ワールドマスターズウエイトリフティング競技基準記録東京都公認記録会に出場してきました。

世界大会への切符を手にするための登竜門。

結果は基準記録(168kg)ギリクリア…(-_-;)

ぎゃぁ~~~~~~~

くやしさしか残らん!!!

記録は以下のとおり

スナッチ:73kg〇75kg×75kg×

クリーン&ジャーク:95kg〇100kg×100kg×

※成功試技もおまけの毛でいただいた感じです(-_-;)

今回の反省点は以下の3点

1、スナッチのキャッチの強化を全くせず、ぶっつけ本番になった

2、減量の失敗

3、記録会20日前のピークアウト

 

ダメだった言い訳は書いてて恥ずかしいだけなんですが、

ただ結果を書いてゆくよりも今後にどう活かすか、そのための振り返りとして書かせていただきます。

 

「1、スナッチのキャッチの強化を全くせず、ぶっつけ本番になっていた」

年始に痛めた右肩(腱板損傷)もどうにかこうにか9月にはリフティングで痛みのない状況にまで回復し、

記録会までの一か月半でどこまで戻せるかといった挑戦になりました。

どうにか9月後半には70kgまでは取れるまでにはなったんですが、その先が遅々としてすすまず。

バーベルを跳ね上げる力を養成するトレーニングにハイプルという種目がありますが、

それ自体は91kgまでは鎖骨あたりまでひけるようになっていました。

なので、80kgは何とか狙えるところまで来ていたと思います。

後にも書きますが、10/5の段階で出力の向上が確認されたので80kgに挑戦しました。

結果はキャッチが定まらず後ろに落とすといった失敗を繰り返す状況でした。

ちなみに75kgはクリア。

このとき、キャッチのフェーズが安定しないことが分かっていたのですが、

その対策となる練習種目が十分に積めなかったんですよね。(-_-;)

キャッチの練習にスナッチバランスというものがあるんですが、

失敗すればバーベルを地面に落とすことになる練習なので自宅ではできなかったんです。

大会直前にウエイトリフティング場で挑戦したら70kgがせいぜいの状態…

『こりゃばくちになるな』

と思いつつの挑戦でしたので、75kgが取れなかったことも「さもありなん」な結果でした。

地力はそこまで不足していたわけではなかったと思える状況でしたので

動作ごとの特異的適応※ができていないとこういうことが起こるのかと、いい勉強になりました。

今後は特異的適応という側面から現状を整理すれば練習の課題が明確にできそうです。

頭のメモにしっかり刻んどこう。

そして、この悔しさは次に活かそう…

※「特異的適応」競技動作を円滑に行うための神経回路の活性が高まることやその回路自体が出来上がること。

競技ごと、競技動作の局面ごとの適応というものがあり、

適応できていない動作では地力があってもその地力相応のパフォーマンスは発揮できません。

主観的にはだいたい一日おきの練習で2週間あればその動作を円滑に行うためのプログラムがまとまるようです。

競技レベルでの活用はその後数か月かけて脳神経に強く記憶させていくことが必要です。

十分に脳神経に記憶として痕跡を残せれば、条件反射として無意識に動作を発現できるようになるでしょう。

 

「2、減量の失敗」

これは…もうどうしたらいいものか…(-_-;)

普段は72kgぐらいなのですが、減らしても68kg中盤までは問題なく力が出ていました。

ちなみにピークだったと思われる10/5の体重は68.6kg。

でも、67kg台前半になると途端に力が抜けていく…

こりゃ地力の強化しかないかな…

減ってなお100kg以上クリーンできる地力を作ろう。

 

「3、記録会20日前のピークアウト」

これ、本当に難しい問題です。

ピークアウトという用語にはいろいろと解釈があるようですが、

ここで言うところは最大出力を発揮した後の神経系の疲労を指しています。

ウエイトリフティングをしている方なら皆さん経験されていると思うのですが、

試合の後、ベストが出た後なんか特にしばらくの間、力が出なくなるんです。

どうも100%に近い出力でオールアウトしてしまうとその後1~2週間は出力が低下してしまうようです。

逆に出力の向上は高出力で低レップの練習に切り替えてからだいたい2週間で適応するようです。

片麻痺の患者さんのリハビリなんかも新しい課題への適応はだいたい2週間ぐらい。

神経系が新たな学習をするのに必要な時間は2週間なのかもしれませんね。

今回のケースでは試合前の練習をさかのぼると10/5の月曜日の練習がピークでした。

この日はスナッチもクリーンもやけに軽く感じ、筋出力の高まりを実感した練習会でした。

『あ、乗ったな(高出力への神経の適応ができた)』と分かったんですが、

ここで出し切ってしまうとピークアウトのリスクがあるわけです。

ここは本来、慎重に進めるが吉。

解っていたのですが、これまでためた地力を信じすぎたのか、執拗に自己ベスト以上の重量に挑戦してしまいまして…

あと少しで取れそうだったので、あきらめきれなかったんですよ…(-_-;)

嫁さんも見てたし、良いとこみせたいなって欲が出て…

結局失敗。(-_-;)(-_-;)(-_-;)

その次の練習日には圧倒的な出力の低下を確認。

『あ、やらかした…』

と、大いに慌てることになりました。

神経系の回復に早くて7日、そこから出力が再びあがるのが14日後と考えると日が足りません。

『詰んだな…(*´ω`)』

と思いましたが、それならそれで足掻くだけ。

諦めの悪さは人一倍なので、最大限必要な能力を高める努力はしました。

試合6日前に入り、ようやくスナッチ73kgのクリーン95kg(ジャークは失敗)まで漕ぎつけまして、

試合3日前には60%の重量でスピード練習をして準備を終えたのでした。

上手くいけば当日出力が戻ってくれている…かもしれない、と期待したんですが…

次回は『あ、乗った』と思えたら慎重に行こうと思います。

 

以上、反省終わり。

 

世界大会はエントリー上位7名(10名という説もあり)で足きりがあるので、

基準記録ギリギリでは参加は難しいかもしれません。

でも、選考会直前に世界大会のもう一年延期(2022)が決まったそうなので、

来年の全日本マスターズでの記録が良ければそちらで再エントリーもできるかもしれないと希望をつないでます。

今回の失敗は無駄にしないつもりです。

ロード・トゥ・ワールドマスターズゲームズ!

頑張ろうと思います。

 

動画は当日の試技の模様です。

酷い出来ですが、もしよろしければご覧ください。

 


テレワーク腰痛流行中~椎間板ヘルニアと坐骨神経痛~

2020年10月23日 | 治療の話

このところ椎間板ヘルニア(中高年の方は椎間板症=椎間板のひび割れが主なのですが分かりやすく「椎間板ヘルニア」と書いてます)からの坐骨神経痛の相談が増えてます。

みなさん在宅勤務が続いている方ばかり。

座った姿勢は椎間板への負荷が高いので、椎間板の故障を起こしやすい状況です。

また、座ったままという環境はハムストリングスをはじめ股関節内外転筋の短縮も生まれやすくなります。

股関節外転筋のなかでも中殿筋の故障では筋膜性の腰痛がおこりやすく、

ハムストリングスの短縮は腰椎の不安定性を強めることで腰部脊柱由来の腰痛が起こりやすくなるので、

最近の腰痛流行り(うちの治療院だけかな?)は座業によるものと考えるのが妥当でしょう。

でも、デスクワークはコロナ前からずっとやってきたはずです。

きっとテレワークであるが故の理由が潜んでいるはず。

それは何か?

おそらく、ですが、私は「通勤」の有無が関係していると考えています。

みなさん、満員電車での通勤は結構な運動負荷だと思いませんか?

家から駅まで早歩き。

足ばやに階段を上り駅のホームでは立って電車を待っている。

車内に移れば移ったで、座れればいいけど立てば電車の揺れとの格闘です。

揺れに対して耐える、これは立位保持に関する立派なスタビライゼーション(姿勢保持のための)トレーニングです。

これを朝夕二回、週に5日こなしていたわけです。

ドアツードアで通勤時間を30分としたら、毎日1時間トレーニングしてたわけですよ。

これがなくなって、座りっぱなしになって半年。

腰痛を引き起こすのに十分な機能低下が起こってしまってもおかしくはないでしょう。

困ったことに今回の流行(腰痛の)は関節由来位の故障がメインになっているケースが多い。

筋肉痛と捻挫を比べたら捻挫の方が治りが遅いというのは容易に想像できるでしょう?

関節由来の腰痛って回復に時間がかかるんです。

さらに、関節の炎症が近くの神経に波及しているケースが多い。

つまり、坐骨神経痛を起こしている人が多いんです。

神経は骨と並んで回復に時間のかかる組織なんです。

なので、壊す前に何とか手を打ちたいところ。

きっとテレワーク腰痛予備軍の方はまだまだたくさんいると思います。

いまのうちにしっかりと対策を打っておきませんか?

明確な関節の損傷に発展する前に、周囲の筋の緊張を解き、

腰椎・骨盤・股関節の連動性を取り戻すエクササイズを実施することで

テレワーク腰痛のリスクを大幅に低減させることは決して難しいことではありません。

もしよかったら、下の5つの動画を日替わりで順に実施してみてください。

1から5まで行う間にあらかたの治療要素が揃うよう作っています。

腰痛予防、慢性腰痛のセルフケアにおススメのエクササイズたちですので

ぜひお役立てください。

※痛みが強い、もしくは実施中に痛む場合は無理せず治療に来てください。

そして、ここまで書いておいて申し訳ないのですが、

エクササイズの実施は自己責任でお願いいたします。

 

ぎっくり腰といえば「大腰筋」!! テレワーク腰痛のセルフケア DAY1 #伸展型腰痛 の対処法

貼りつくようなしつこい痛みは「中殿筋」!! テレワーク腰痛のセルフケアDAY2 #屈曲回旋型腰痛 の対処法

仙腸関節痛といえば「腰方形筋」!!テレワーク腰痛DAY3 側屈型腰痛 の対処法

おじぎで痛む「起立筋」!!テレワーク腰痛DAY4 #屈曲型腰痛 の対処法

「ゆがみ」を正して根本治療!!テレワーク腰痛DAY5 脊柱・骨盤の運動療法

 


チャンネル登録者5000人達成、その後

2020年10月21日 | よもやま話

YouTube、その後。

昨晩のこと。

私「ただいまぁ~」

かみさん「あ、おかえり~」

か「5000人達成の挨拶動画、作んなきゃね」

私「え?そうなん?」

か「そりゃそうだよ。応援してくれてる方に節目のご挨拶、するもんでしょ。」

私『え…めんどくさい

そそくさと風呂に逃げる私。

 

風呂上り、腰椎ヘルニアによる坐骨神経痛の息子の治療中

息子「そういえば5000人達成の挨拶動画、まだあげないの?」

私「あ…うん」『え、挙げる前提!? それ挙げなきゃいけないものなの??』

 

このところ治療業務が忙しく、そして週末の試合もあり、それどころではない心境なのですが、

どうも「節目の挨拶」として動画を挙げなくてはいけないらしい。

これって世間一般の常識なのだろうか?

そもそも私が楽しみにしている「堀井翼のラッキーパンチチャンネル」や「川端龍(お笑い柔道系YouTuberのドンマイ川端さん)」なんて登録者数万人。

5000人をようやく達成した私なんかがこの数字で「5000人達成で~す♪」なんて挙げたら

「可哀そうなオジサンがはしゃいでる」

そんなみっともない動画になってはしまわないだろうか…

悩ましい。。

 

そんな雰囲気を察した息子のダメ押し。

「父さん、応援してくれたら『ありがとう』でしょ!? ちゃんとスジ通そうよ…(´-ω-`)」

オヤジ、わかってねぇなぁ…的な、

静かに、そしてちょっと憐憫を含んだまなざしで17歳に諭される45歳(もうすぐ46)…

 

はい、ちゃんとしようと思います。(-_-;)


ぎっくり腰急増中!?

2020年10月20日 | 治療の話

このところ「今日診てほしい」という連絡が後を絶たちません。

そのほとんどが「ぎっくり腰」の相談。

雨上がりから1~3日後がとくに多い。

なんでそんなことが起こるのでしょう?

今日はその理由についてお話しいたします。

ただ、あくまで私的見解ですのでそのつもりでお付き合いください。

 

まず知っておいてほしいのが関節の安定性の仕組みです。

関節はそれを包む関節包や周囲の靭帯、関節を取り巻く筋肉によって支えられていますが、

関節内外の気圧の差も関節の安定性に関与しているんです。

関節の中は通常、外の気圧より低くなっています。

外気より気圧が低いことで関節する骨同士を気圧(陰圧)で引きつけ合うように安定させているんです。

そういう仕組みが働いてるもんですから低気圧が近ずくと内外の圧力の差を維持できず不安定になるんです。

そこに来て私含め中高年の下位腰椎は椎間板がしぼんで元から不安定。

そうした不安定な腰椎は代わりに周辺の筋肉で安定させることになります。

つまり、そこそこの年齢にある人の腰は大なり小なり慢性的な緊張状態にあるわけです。

そこに雨降り前の気圧の低下があると筋肉は普段以上に強固に関節を支えなくてはならず、よりいっそう緊張を高めて関節を守りに入ります。

そうして雨降りの間、関節をぐらつきから守るわけです。

問題は雨が上がったあと。

気圧が今度は高くなるわけです。

すると、関節は再び気圧による安定性が取り戻されるわけです。

関節する骨同士がしっかりと引き付けあう。

するとどうなる?

関節の隙間は狭くなる。

すると、周辺の緊張した筋肉はさらに短く縮まざるを得なくなる。

目いっぱい縮んだ筋肉って、不意に引き伸ばされるようなシチュエーションで筋痙攣をおこしやすいんです。

もうわかりましたよね。

雨上がりからの数日がぎっくり腰にはリスクの高い期間であることが。

例年よりもこうしたぎっくり腰が多いのは、きっと在宅勤務の普及も原因していると思います。

通勤がない分、日常生活から歩き回るということが極端に減ってしまいますよね。

そうなると座業で癖がついた身体がリセットされなくなります。

座った姿勢では椎間板の負荷も高くなるし、ぎっくり腰の原因になりやすい腸腰筋の短縮も生じやすくなります。

このところのぎっくり腰の相談の急増は天気とコロナ下での新生活様式のダブルパンチが原因でしょう。

そうかんがえると通勤ってけっこういい運動になってたんですね。

となると…

テレワークが定着したコロナ禍での日常では通勤に変わる運動をした方がいいということになるのでしょうね。

では何をしたらいい?

ミニマムな答えとしては一つ前の記事で紹介した動画のエクササイズをお勧めします。

その上で、お散歩やジョギング、リフティング(?)などをすればなおよしです。

コロナだからと言って籠りきりにはならないように気を付けたいところですね。


治ってるものは治せない

2020年10月19日 | 治療の話

急に腿の外側に痺れが出たとご来院のAさん(70代太目男性)。

なんでも二週間前に座り仕事を数時間した後から足がしびれて歩くこともままならなくなったのだとか。

きっと大腿外側皮神経痛に違いないといいます。

(ちなみに、大腿外側皮神経は知覚神経なので運動麻痺は起こしません。歩行障害があったなら、何か別の問題があったということになります。)

 

しかし、そういうAさんの足取りはしっかりと地面を捉えていて院内の移動もじつにスムーズです。

見た限り歩行に問題はなさそうです。

脊柱の動きを見て若干の問題はあるも放散痛など神経の故障を疑わせる症状はありません。

足踏みやしゃがみ立ちの動作もしっかりしている。

皮膚の知覚を検査しても問題ないといいます。

件の症状に近い「偽物のシビレ症状」を起こす筋肉も調べましたがそれらしき問題は見つからず。

ひょっとして…

「いまは症状もだいぶ落ち着いてらっしゃいますか?(^_^;)」

と質問すると、

「今はしびれていない(-_-;)」

とAさん。

「でも、痺れた当初は大変だったんだよ(; ・`д・´)」

とおっしゃる。

症状はなくなったものの、また症状が出たらどうしよう?と不安でいたたまれなくなってご来院されたのでしょう。

でも、もう治ってしまったものは治しようもありません。

「安心してください。確認した限りでは神経にも筋肉にも問題はなさそうです。治っていると考えていいでしょう。」

と伝えるとちょっと不満そうなAさん。

「せっかくなので全体を整えましょう。それが終わったら再発予防の体操をご紹介します。」

ということで施術開始。

治療をしていて気が付いたのは、Aさんが履くズボンもパンツもAさんの体形に対してとてもタイトだということ。

このサイズが普段使いだとしたら、数時間の座り仕事の間に大腿外側皮神経の一過性の麻痺を起こしてもおかしくはないかもしれません。

施術を終えて、Aさんには「もう少しゆったりとしたズボンと下着を使うこと」をおススメし、下の二つの体操をお伝えしました。

骨盤を境に脊柱と股関節の筋バランスを正常化する効果を持つおススメの体操です。

脊柱管狭窄症やヘルニアなどの脊柱の故障のリハビリにはもってこいの方法で、かつ安全性も高い方法です。

腰下肢の故障予防に広くお役立ていただける方法なので、続けていただければ今回のような不意な故障にあう機会も減らしてくれることでしょう。

「寝る前に布団の中で2セットずつやってみてください」

とお伝えし、治療を終えました。

私の治療ではお馴染みの体操なのですが、

腰椎・股関節・膝関節に生じた変形性関節症のケアにも役立つ優れものですので、

もしよろしければみなさんもお試しになってみてください。

【腰・膝・股関節】故障予防と回復のための運動処方 No.1【ペルビックティルト】

【腰・膝・股関節】故障予防と回復のための運動処方 No.2【ヒップスラスト】


YOUTUBEのチャンネル登録者数が5000人を超えると…

2020年10月18日 | よもやま話

つい先日のお昼休みのこと。

私のYouTubeチャンネルの登録者数が5002人になっていることに気が付き、

『お~!?大台?に乗った?ちょっとうれしい。』

と思いまして、家族にLINEしたんです。

「登録者数5002人になってた」

と。

ちょっとうれしい、そんな程度だったのでその後も普通にお仕事をして、

治療業務終了後もブログなどを書いていたのですが、

珍しく嫁さんから電話。

どしたっ!?

と聞くと、お祝いに寿司たのんだから早く帰ってこい!と嫁さん。

 

帰ったらほんとにしこたま寿司が並んでてびっくり(゚Д゚;)

私が見ているお気に入りのYouTuberのそれとはまったくレベルの違う数字なのに…

すし?

そして、まぁまぁチヤホヤしていただいたりして…

これ、1万登録とかいったらどうなるんだろう?

 

最近全然動画アップできてないのだけれど、頑張ろうと思えた秋の日の出来事でした。

 

私のYOUYUBEチャンネルはこちら

もしよかったらのぞいてみてくださいね(*´ω`)


アームカールで手がしびれる~正中神経の絞扼神経障害~後編

2020年10月17日 | 治療の話

さて、続いて今度は治療の話。

シビレのご相談ではまず神経を締付け傷付けている部分を開放しなくてはなりません。
 
ただ、締付けを外せばすぐにもと通り…になるとは限らないのがシビレの相談の辛いところです。
 
パッ!と良くなるのは神経の損傷の度合いが軽かったケースです。
 
傷が深いか浅いかは治療してみると解ります。(治療的診断といいます)
 
残念ながら、損傷の度合いが深いと治療が上手くいっても治療直後に症状的な改善がみられないこともままあります。
 
それどころか、上手な治療を施しても一時的にシビレが大きくなることすらあるんです。
 
なぜか?
 
正座してシビレた脚を思い浮かべてみてください。
 
あれは血流障害による一過性の麻痺なのですが、脚を崩したあとからビリビリとシビレがやってくるでしょう?
 
血流が再開した後、今度は一過性の過敏症を起こすんです。
 
あれと同じで、知覚異常の治療では治療後に痺れの症状が強く出ることがあるんです。
 
Aさんにはびっくりされないようその辺の事情をご説明した上で治療開始。
 
絞扼神経障害の治療ではより背骨に近い絞扼部位から手を付けるのがセオリーです。
 
なのでまず斜角筋部から…なのですが、いきなり斜角筋に手を入れてもなかなか素直に緩んではくれません。
 
なので、まずは斜角筋が硬くなる背景要因から手を入れます。
 
▲斜角筋と機能的な関連性を持つ筋群。オレンジ色の筋肉が大腰筋
 
斜角筋の緊張は大腰筋の緊張のカウンターバランスとして生じていることが非常に多く、
 
また、大腰筋の緊張は後脛骨筋というふくらはぎの深層筋の緊張から影響を受けていることが多いので、
 
ふくらはぎから順にチェック&リリース(緊張緩和)してゆきます。
 
▲大腰筋の過緊張の背景となりやすい後脛骨筋
 
それが済んだら上腕二頭筋に手を入れます。
 
▲上腕二頭筋(肘のところにご注目。腱が逆さのY字に分かれてるでしょう?その内側がポイントになります。)
 
筋の緊張を解くことも大事なのですが、この場合、絞扼部位の腱膜部にできた正中神経との癒着を剥がすことが重要です。
 
具体的には腱膜下の正中神経との癒着部位を探り当ててDTMという按摩のような技法で癒着を剥がすんです。
 
なんで癒着してしまうのかというと、神経の損傷では神経炎が起こるからなんです。
 
炎症という字は「炎」という字が入ってるでしょう?
 
傷ついた神経が炎症を起こすと周辺の組織にも炎症が波及します。
 
それはもう火事のように類焼してゆく感じで周囲の組織も傷つけてゆくんです。
 
炎症後の組織には線維化が起こります。
 
その線維たちは傷ついた神経とその傷をつけた筋腱との接点を蜘蛛の巣のようにつなぎ、縮み込みます。
 
イメージはやけどの跡のケロイド。
 
ケロイドは正常な組織と違って縮んでいて、伸びの悪い組織となっているでしょう?
 
そうして神経の炎症に巻き込まれた近隣組織との間に癒着ができあがるんですね。
 
ちょっと込み入ってるので整理しましょう。
 
神経の損傷から癒着までの流れをまとめるとこんな感じ。
 
1、神経を締めあげ、ごしごしと摩擦を起こし神経の損傷が起こる。
 
2、神経炎が生じる。
 
3、締め付けた部分と癒着する。
 
 
その癒着を剥がしたら、今度は神経線維自体の自然回復を待つことになります。
 
この手の故障の治療で大切なポイントは、神経線維の修復が済むまでのあいだ
 
いかに神経への圧迫が外れた状態を保持するかということです。
 
いったん開放しても、患部は良くも悪くも悪い状況で安定しています。
 
つまり、都合の悪い体癖が出来上がってしまっているわけです。
 
なので、放っておくと神経の圧迫が再発してしまいやすい状況が続きます。
 
なので、神経線維が治るまで、根気よくこまめに手を入れる必要があるんです。
 
これは必ずしも治療家の手が必要なわけではなく、セルフケアをまめに行っていただくことで十分対処できますのでご安心を。
 
さて、本丸(二頭筋腱膜)の圧迫を解いたら今度は枝葉の問題を払います。
 
このケースでは手根管。
 
Aさんの場合、軽くではありますがチネル徴候がみられましたので、ここもしっかり手を入れた方がいいわけです。
 
この部分の治療は手根管関節自体のこわばり(拘縮)がある場合は関節へのアプローチをし、
 
前腕から掌(特に母指球筋)の筋肉の過緊張があれば筋へのアプローチを行います。
 
多くの場合はその混合型なので、関節・筋肉両方のケアをすることになりますが
 
Aさんの場合は前腕と母指球の筋肉の問題がメインでした。
 
一通りの緊張をのぞいたら、各関節を正しい位置関係でコントロールする運動療法に移ります。
 
それらをざっと終えたら手のシビレや種々の陽性所見の変化を確認します。
 
まずはチネル徴候から。
 
手根管は消失、肘(二頭筋腱膜)1/4に減弱。
 
続いて指の感覚を調べると、完璧ではないものの感覚がクリアになってきたとのことでした。
 
となるとAさんに起こった正中神経のダメージは軽くはないけどそこまで深いものではないことが分かります。
 
ちなみにこの時点で「全く変わらん」というケースもあります。
 
それは治療が上手くいっていないのではなく、神経線維のダメージが深かったことを意味します。
 
そうなると、回復までの時間は長くかかりますし、酷ければ戻り切らずに後遺障害として残るものも…
 
なので、初回に好転がみられたAさんのケースは幸先の良いスタートが切れたということになります。
 
今後の回復を見てみないとはっきりは言えませんが、そう長い付き合いにはならなそうだと胸をなでおろした症例でした。
 
おわり

アームカールで手がしびれる~正中神経の絞扼神経障害~前編

2020年10月14日 | 治療の話

だいぶ間が空いてしまいましたが、久しぶりに治療関係のお話をかきたいとおもいます。

ちょっと長くなりそうですがお付き合いいただけるとありがたい。(^_^;)

今回のテーマは正中神経の締め付けによる手のシビレ(絞扼神経障害)。

相談者はAさん45歳男性。

手のシビレは半年前から。

初期はトレーニング時や朝起きぬけに痺れが出る程度だったようですが、

いまでは随時しびれてしまっていて、

特にアームカール(上腕二頭筋のトレーニング)をするとワ~ッとシビレるとのこと。

シビレの範囲は前腕から親指~薬指の中指寄りの半分迄。

病院では「手根管症候群(掌底で正中神経が締め付けられている状態)」と診断されたとのことでした。

Aさんの左右の指を親指から一本一本撫でてゆくと、

下図の水色の領域で触られた感触が鈍く、同時に「ピリピリ」するといいます。

シビレの範囲を見る限り、確かに正中神経の絞扼神経障害(エントラップメントシンドローム)のようです。

(以下GRANT's atlas of anatomy eleventh edition LWWより抜粋)

▲水色のエリアが正中神経のシビレの領域

さて、Aさんのシビレはどこから来ているのでしょう?

正中神経のシビレの相談では斜角筋・円回内筋・手根管での圧迫が有名です。

▲斜角筋と腕神経叢

▲円回内筋と正中神経

▲手根管と正中神経

通常であればこの辺りを疑うわけですが、

「アームカールでしびれる」と聞いたとき、Aさんのシビレの原因はそれらと別の場所であると考えていました。

あまり知られていませんが、上腕二頭筋でも正中神経の圧迫が生じることがあるんです。

絞扼部位は二頭筋腱の腱膜部。

▲上腕二頭筋腱と二頭筋腱膜

ペン先に切断された形で書かれているのが二頭筋腱膜です。

ペン先に黄色く書かれているのが正中神経。

もうイメージが付いたとおもいますが、

アームカールのような上腕二頭筋を強く使うシチュエーションでは正中神経が圧迫されることがあるんです。

そう書くと、アームカールをするとみんな正中神経を痛めてしまいそうな勘違いをされてしまいそうですが、

そう簡単に神経障害を起こすことはありませんのでご安心ください。

普通にトレーニングする中でそんなことになるのはむしろレアケースです。

神経って結構タフな組織で、多少圧迫されたぐらいでは痛みもしなければ痺れもしないんです。

でも、周辺の組織との間でごしごしと摩擦を繰り返すようなことがあると次第に傷ついてゆきます。

神経のケーブルが傷つくと、その傷をたたくことでシビレを誘発することができます。

これをチネル徴候といいまして、陽性所見は神経の走行に沿った放散痛。

Aさんの二頭筋腱膜部を打鍵槌でコンコン叩いてみると、くだんのシビレがビンビンと広がります。

ビンゴです。

手根管をたたいてみてもシビレは「ごく僅か」だということでしたので、主犯格はこの二頭筋腱膜部で決まりです。

でも、他にも共犯が隠れているかもしれません。

神経痛にはダブルクラッシュという故障の仕方があるんです。

「ダブルクラッシュ」というのは、

ひとつの末梢神経にいくつか同時に圧迫を生じている場合、

一つ一つの圧迫は神経症状が出るほどではなくても複数個所からの刺激の累積で神経症状があらわれる、

といった故障の仕方です。

ダブル、というと問題は二か所と勘違いしがちですが、複数個所が同時に障害された状況と考えてください。

なので、一つの問題点を突き止めただけでは不十分。

ざっと正中神経の経路上を確認する必要があるわけです。

 

さて、診察の続き。

まずは正中神経の出どころの頸椎を調べます。

第6~7頚椎での圧迫でも親指から中指にかけてシビレることがあります。

▲頚神経と皮膚節(各神経が支配する皮膚の知覚エリアの図)

通常はご高齢者でない限り第6・第7頸椎が同時に故障することはまれな話です。

若い世代では第6頸椎(C6)の領域のみ、第7頸椎(C7)の領域のみといった感じで狭いエリアでの症状が現れるものですから

Aさんのように綺麗に母指から薬指の親指側半分(専門的には「橈側半」といいます)がしびれる場合は頸椎由来の故障は原因としての優先順位は低いと考えます。

でも、ダブルクラッシュを疑った場合、累積負荷の一つになりえますから確認は大事。

頚椎のテストとしてスパーリングテストを行います。

頚を大きく後ろに倒してもらい、さらにシビレている手の方に頭を倒します。

これで首に痛みを訴えたら頸椎の故障を考え、手のシビレが出てくるようなら頸椎部での神経圧迫(頚椎症)も考えます。

でも、Aさんのそれはいたってノーマルでした。

頸椎部はクリア、ということです。

 

続いて斜角筋。

頚の動きが綺麗となると頚についている斜角筋の問題も薄そうだと考えます。

でも、筋の動きだけで神経のダメージの有無が決まるかというとそうではないから面白い。

▲斜角筋と腕神経叢

斜角筋が神経を挟み込みやすい場所の圧迫検査(モーレイテスト)を追加しました。

すると結果はなんと黒!

ジワリと前腕に痺れが感じられるといいます。

こういうことがあるから検査は丁寧に積まなくちゃダメですね。

 

続いて円回内筋。

ここは打鍵槌でチネル徴候(シビレの再現)を確認します。

結果は白。

 

そして神経の経路沿いに前腕をたたいてゆき、途中の神経損傷がないか探します。

これもなし。

そして、手根管。

ここはすこーし響くといいます。

ということで弱めの黒。

 

ここまでは神経の絞扼部位の特定を目的とした検査です。

神経は知覚を伝えたり筋肉に指令を届けたりする器官ですので、筋肉の働きもチェックします。

正中神経は手を握る作用を持つ筋肉を制御していますので、まずは力強く握手をします。

これは左右差もなく良好です。

続いて親指と人差し指で丸を作ります。

正中神経の障害では特に指の第一関節の力が入らなくなりますので丸をつくったつもりが第一関節が曲げきれずに「しずく型」になってしまいますが…これもなし。

二頭筋の筋力も、腕橈骨筋の筋力もばっちり。

なので、Aさんが障害されているのは「知覚」のみだということが分かります。

さて、では治療開始。

まずは背景要素からつぶしていきます。

って、ちょっと長くなり過ぎましたね。(^_^;)

いったんここまでで区切って、

後半を近日アップしたいと思います。

 

つづく


手のシビレ関連のブログ記事を書いてます

2020年10月13日 | よもやま話

なかなか更新できずお恥ずかしい。

たまに挙げてもトレーニングの進捗状況…

そんなん聞いてもねぇ…(;´Д`)

ちゃんと皆さんに役立つ情報も揚げねば!と頑張ってるんですが、

このところ何やかやと時間が削がれ…

 

 

 

はい、いいわけです(^_^;)

 

いま、かれこれ6日ほど、手のシビレについて書いています。

知覚異常に関してはどの部位もなかなかキチンと治療がされてないケースが多く、

困っている方も多いようでしたのでちゃんと書こうと気合を入れてみたんですが…

なんだか講義みたいになってしまって、一般の方が読むには難しくなってしまって…

現在、一般の方向けにリライト中です。

 

あと少しで出来上がると思いますので、今しばらくお待ちくださいm(__)m。


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