今回は腰痛の話です
相談の主はウエイトリフターのA君
あ、
相談者が特殊だからと言って『自分には関係ない』とは思わないでくださいね(^^;
ちゃんとみなさんに関係のあるお話しです
A君からは1か月ほど前に左のシンスプリント(ふくらはぎの奥にある後脛骨筋の故障)の相談を受けたことがありました
今回はふくらはぎではなく左腰が痛いというのですが、ちょっと珍しい痛み方でした
A君の腰痛はいわゆる「伸展型腰痛」です
このタイプの腰痛は「立ち際」や「後ろに身体を反らせる」といった動作で痛むのですが、
A君の腰痛の珍しいところはそうした動きでの痛みは比較的小さく、なんとジャークを刺したときの痛みが一番大きいというのです
ジャークといわれても解らない、という方のために動画を用意しました
ひとつご覧になってみてくださいm(__)m
脚を前後に開き、両腕をビシッと伸ばす動作が「刺し」です
A君の腰はこの「刺し」の動作で強く痛むというんです
伸展型腰痛の原因としてメジャーな筋は大腰筋です
大腰筋とは腰椎の前面から股関節の内側に延びる筋肉で、
ここを傷めると立ち際や伸展動作といった、股関節を後方に伸ばすような動きにともなって腰部起立筋に沿った腰痛が現れます
A君を調べたところ、やはり大腰筋の痙攣が見つかりました
(↓大腰筋)
早速カウンターストレインというテクニックで大腰筋の痙攣を抑えたところ、立ち上がりや伸展動作での痛みはなくなりました
しかし、ジャークの動作を確認すると途端に酷く痛がります
それどころかせっかくなだめた大腰筋の痙攣がまた元に戻ってしまい、治療も振出しに戻ってしまいました
こうしたリアクションから『椎間関節のダメージ(怪我)に由来する痛みなのではかなろうか?』とも考えましたが『いや待てよ…』と…
『確かシンスプリント(後脛骨筋の損傷)をしていたな…』とA君の既往歴が脳裏に浮かんだんです
↓後脛骨筋
後脛骨筋と大腰筋は内転筋や骨盤底筋群などを介して筋連結を持っていて、互いに強く影響しあう筋です
ぎっくり腰なんかで腰を触れないような時期には後脛骨筋のボールマッサージで大腰筋の痙攣を抑えることもできるぐらい、互いに強い影響力を持っています
A君の場合、シンスプリントという後脛骨筋の故障の既往があるので、後脛骨筋に残る瘢痕組織なりが大腰筋の痙攣を生んでいるのかもしれないと考えたんです
確かめるために後脛骨筋へキネシオテープを貼って見たところ、ドンピシャでした
大腰筋へのアプローチをしていないにもかかわらず痛まずにジャークを指すことができました
おそらくシンスプリントのダメージを引きずる左の後脛骨筋にジャークの動作で負荷がかかり、その影響を受けて大腰筋の痙攣が生じていたのでしょう
大腰筋の痙攣は二次的な症状だったということです
その後、左のふくらはぎを丹念に調べてみると、やはり後脛骨筋に瘢痕組織が見つかりました
瘢痕へのアプローチを丹念に施し、この日の治療は終了しました
3日後、A君からは痛まずに試合ができたとうれしい報告をいただきました
通常だったら腰椎部の外傷性の痛みと考えてもおかしくないシチュエーションだっただけに、
後脛骨筋のトラブルを見落とさずに拾うことができて良かったなと思います
しかし、後脛骨筋の傷跡が大腰筋にあそこまでドラマチックな症状を引き起こすとは…
やはり臨床という現場仕事は学びの宝庫だなと改めて感心させられました
これからも見落としのないようしっかり診断の眼を光らせてゆこうと気を引き締めた症例でした
END