おびただしい数のほたる。 これまでの人生で最高の(ちょっとおおげさかな)ほたるを見てきました。
自動車も入ってこない、人家の光も街灯もない山間の狭い川縁で、弟夫婦とわたし、3人だけで美しさを独占してきました。 「ここら辺は、はめ(まむし)がおるぞ。」とおどかされながらー もちろん、サンダルを革のスニーカーに履き替えてきましたよ。 うっかり踏んづけると大変なことになりますからね。
ここでは、ほたるは乱舞するのではなく、光の群れとなって揺らめいては消え、消えてはともりしてまるで波のようにゆらゆらと寄せては引いていくのです。 長い間、飽きもせずそれを見つめていました。
カメラは弟におまかせ。
わたしのカメラで挑戦しましたが、モニターに映ったのは真っ暗な闇ばかり。 しかも2,3枚撮ったところでバッテリー切れ・・・・ もういいや、後で写真ちょうだいね。 ということで、本人は写真のできばえに不満そうではありましたが、無理矢理もらってきました。 難しいんですね、ほたるを写すのは。
そろそろ帰ろうかと言い出した頃にはすでに1時間半が過ぎておりました。
ちょうど3,4日前の新聞に、近年ゲンジボタルが増えているという記事が載っておりました。 水質の改善と放流によって、本来山間部の清流に住むゲンジボタルが住宅地でも見られるようになったというのです。 その一方で、温度の高い水や一時的な乾燥にも耐えるので田んぼやため池など人間の生活圏に近いところで生息してきたヘイケボタルが、今ほとんどいないのだそうです。
わたしが子どもの頃、近所の幅50センチほどの小さな水路に繁殖していたのは、ヘイケボタルでした。 そこは、川底は泥、岸は石積みで草が生え、ほたるの生息には適していたのですが、今はコンクリートで固められてほたるの姿は見えません。
近頃、大きな川で、コンクリートで護岸されていても川の中に芦や雑草の茂みができているところにゲンジボタルが飛んでいます。 確かに、ある程度大きな川ではゲンジボタルでなければ見えないだろうと思います。 だからゲンジボタルを放流するということになるのでしょうね。
でも、せっかく環境を整えて放流しても、やはり水温が高く生きていけないところもあるようです。 わざわざほたるのすみかを作ったものの、やはりゲンジボタルが群棲するほどではなくて、どこかからほたるを捕ってきて放しているということも聞いたことがあります。
どこかの夜を彩るためにどこかのほたるを捕まえるーこれって本末転倒の話ではないでしょうか。素人考えですが、たぶん、こういう場所にはヘイケボタルを放流すれば良かったのではないかと思うのですが。
この記事を読んでわたしは春にカワニナを見つけた小川に行ってみました。 水、土、草、食べ物すべて揃ったあの場所ならヘイケボタルがいるかもしれないと思ったのです。
いました。 ただし、光の大きなゲンジボタルです。 かなり遠くでも見えました。 でも、数匹ですね。 そして車を回すために入ったうちの田んぼの横で、念のためにライトを消してみますと・・・・・
草の奥、目をこらしてやっと見える小さな光。 たったふたつですが、 記憶に残るヘイケボタルの光でした。