感染者数を抑え込みにかかっている
2020年2月26日(水)
政府は、新型コロナウィルスの感染者数を抑え込みにかかっているように思います。「感染者」を抑え込んでいるというのではなくて、「数」を抑え込んでいるという意味です。
PCR検査について、もう大分前から指摘されていたことですが、検査数が圧倒的に少ないです。私の記憶する限りでも2週間前の羽鳥慎一モーニングショーのそもそも総研で指摘されていました。政府として総力を挙げて検査を十分に行う対策をとったとは到底思えません。
この新型コロナウィルス対策の当初から感じていたことですが、どうも経済に与える影響と天秤にかけているように感じていました。例えば入国規制を武漢に限定していたとか。対照的に、アメリカは中国全体を対象にしていました。つまり、経済に与える影響を考えて腰が引けていた。
患者がウィルスの感染を心配して、検査を要求しても、受けない! それのみならず、現場の医師が指摘していることですが、検査が必要であると説明しても、検査をしないというのです。この緊急時に信じられない体制です。できるだけすみやかに感染者の実態を把握しなければ、正しい対策を取ることはできません。相手は、何せ目に見えないのですから・・。専門家は、「可視化」と言っています。
余談ですが、この「可視化」はトヨタ生産方式では「見える化」と言っています。トヨタが流行らせたようなものです。
25日の朝日新聞です。
新型ウィルス対策で、専門家会議が、「1~2週間が山場」と言っています。
「軽症者 外出せず自宅療養を」と言っています。これ、これを原則として求めているとしたら、完全に失敗です。日本はフリーアクセスが認められています。また、早期発見早期治療ということは小学校の頃から教えられています。この原則を崩してはいけません。
ただ、軽症者が医療機関に集中したら重傷者に対応することができませんので、「ご理解、ご協力をいただきたい」と言うべきであります。
繰り返しになりますが、フリーアクセスは認められるということをまず大原則としてアナウンスする必要があります。
26日の朝日新聞です。
政府の対策は抽象的で中途半端な内容が多い中で、「感染者なくても休校検討」は具体的で評価できます。
26日の朝日新聞です。
感染者の増加ペースがスローダウンしています。
26日の赤旗です。
この記事では、治癒して退院した患者数も報道しています。
私は、この点について、以前から疑問に思っていました。どうして治癒した患者数のデータを公表しないのだろう?と。
安倍首相は、正しいデータを公表すると言っています。治癒した患者数も公表すべしであります。
冒頭の、「数」を抑え込んでいるということですが、東京の感染者数が不自然に少ないんですね。①人口が桁外れに多い、②満員電車など感染する環境がある、といったことを考慮すると、また、③必要と思える検査すらしない、といったことを考慮すると、こりゃ、五輪でありますなぁ!と匂います。五輪だけに、感染者「数」を抑え込んでゴリ押しで開催しようとしているのではないかと、勘ぐってしまいますです。
今後、バレますですよ、と思います。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年2月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
オリンピック中止排除という思考停止
新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない中、海外のメディアからは「東京オリンピックは本当に開催できるのか?」という疑念が出てきています。
といっても、正確には「感染拡大が既に日本で広がっている」という前提で物事を考えない姿勢に対しての批判であり、「夏までには終息している」といった根拠なき楽観にすがり「問題ない、開催できる。いや、開催する」とオリンピック開催中止の可能性を除外していることが原因です。つまり、思考停止に陥っているのです。
そもそもこういった異常事態では「リスクコミュニケーション」を徹底することが最大のリスク管理になります。しかしながら、日本ではリスクコミュニケーションがゼロ。政府側は(オリンピック組織委員会含め)、「リスクコミュニケーション」をないがしろにし続けています。
「リスクコミュニケーション」は個人、集団、組織などに属する関係者たちが情報や意見を交換し、その問題について理解を深め、互いにより良い決定を下すためのコミュニケーションです。つまり、一方通行ではなく双方向。言い換えれば、リスクコミュニケーションとは、一般の人たちの「知る権利」であり、リスクに対する彼らの不安や被害をできる限り減らすための唯一の手段なのです。
そういったコミュニケーションの積み重ねが、リスクそのものをなくしたり、想定外の出来事が起きた時のパニックを防ぎ、冷静な判断とリーダーシップにつながります。
しかしながら、日本は「お上が決めたことに従う」という文化が古くからあるため「リスクコミュニケーション=双方向」という考え方が希薄でした。その一方で、日本は世界中のどの国より「リスクコミュニケーション」の大切さを経験した国でもある。
原発の事故。そうです。原発のときの、さらにはその後の再稼働などでも、リスクコミュニケーションの重要性が専門家から指摘され続けてきたのに、今回も政府は性懲りなく「リスクコミュニケーション」を軽んじているのです。
リスクコミュニケーションという用語が広く使われるようになったのは、1万人以上の死者を出して史上最悪と言われたインド・ボパール事故がきっかけでした。
1984年にボパール北端にある有限会社インド・ユニオン・カーバイドの工場で、操業中にメチルイソシアネートという化学物質の貯蔵タンクに水が異常に流入。その結果生じた化学反応によって、タンク内の圧力が急激に上昇しました。
ところが安全装置が作動せず、メチルイソシアネートが大気中に大量に放出され、有毒ガスが工場周辺の市街地に流出する事態に発展したのです。
ボパール市民健康病院の発表によると8000人以上が瞬時に死亡し、50万人以上の人が被害を受けたとされています。工場には、アメリカ合衆国ウェストバージニア州インスチチュートの工場と同じ安全基準が適用されていると発表され、事故後もそう主張され続けました。
このような事態を受け、1986年に米議会は、「緊急時行動計画と市民の知る権利法」(Emergency Planning and Community Right- To-Know Act =EPCRA)を制定。地域住民が化学物質のリスク情報を知ることができるようになり、環境に影響を及ぼす可能性のある施設を設置する場合、一般市民との対話プロセスが必須となりました。
今の日本は原発の時と同じです。情報が透明化されることもなく、相互作用のプロセスも徹底されないまま、「今は踏ん張りどき!」「一致団結しよう!」などと精神論に終始している。世界から批判されて当然です。
ひょっとするとお偉い人たちは、「オリンピックの開催中止の可能性」を議論の俎上にのせると、「そんなことになったら借金ばっかり残って経済が大変なことになるぞ!」「そんなことになったらますます景気が冷え込んで、どうしようもなくなるぞ!」と、パニックを恐れているのかもしれません。
しかしながら、人間はそう簡単にはパニックにならない。リスクを正直に言うことで、好意的かつ冷静に対処するという人間の行動特性が引き出されることがわかっているのです。
危機管理の専門家である米国の社会学者ミレッティらは「情報提供者が陥る誤解」を次のように説明しています。
誤解その1:人々はパニックを起こす
パニックは映画のプロデューサーが作り出した幻想。誤解その2:警告は短くすべし
緊急時ほど詳しい具体的なメッセージが必要。誤解その3:誤報にならないように慎重に
たとえ結果的に誤報となったとしても、その情報が問題となることはない。誤報を恐れず、すべての情報を即座に開示せよ。誤解その4:情報源は1つにすべし
危機に面した人は様々な情報源を求める。多様な情報源からの一貫した情報を得ることで、緊急事態の意味と、その内容を信じるようになる。誤解その5:人々は即座に防衛行動に出る
情報が持つ正確な意味が分かるまで、人は具体的な行動は起こさない。
とここまで書いていたら「IOCが5月までに東京オリンピックの開催の有無を決めると発表した」というニュースが飛び込んできました。
さて、…どうなることやら。
みなさんのご意見もお聞かせください。
image by: 首相官邸
MAG2 NEWS
最終更新: 2/27(木) 4:45
舛添 要一 2020/02/28 06:00
まったくなっていない。新型コロナウイルスの感染に対する政府の対応は、後手後手である。
専門家会議が設置されたのが2月14日であるが、前日に神奈川県の80代の女性が新型肺炎で死亡しており、それで慌ててこしらえたような感じであった。初会合は2月16日。この時点ですでに、日本で初めて患者が出た日(1月15日)から、1カ月も経っていた。
いま必要なのは感染症対策だけでなく日本全体の危機管理
感染源が不明なケースが日本列島各地で続出するに及んで、ついに政府は2月24日に専門家会議に諮って、25日に基本方針をとりまとめた。
その基本方針によれば、まず現状認識については、一部地域で小規模な集団発生があるが、大規模な感染拡大ではないとしている。そして、水際対策から国内対策に重点を移し、流行の規模とスピードを落とし、重症者を減らしていく。また、経済への悪影響を減らすことも謳っている。
また症状については、普通の風邪とあまり変わらないが、特徴としては、37.5度以上の熱が4日以上続くことを挙げている。
国民に対しては、感染防止のために「せきエチケット」を守ることや手洗いの励行を求めた。そして、風邪症状のときは安易に職場へ行かず、密閉空間での濃厚接触を避けること、また、イベントも自粛することを要請している。
この基本方針の取りまとめが行われた日の翌26日に開かれた対策本部の会合で、今度は安倍首相が直々に、大規模なスポーツ・文化イベントについては「2週間の自粛」を求めた。
それを受けて、PerfumeやEXILEは当日26日夜の公演を中止した。また、プロ野球もオープン戦の全72試合を無観客で実施することを決定。このように各種イベントが次々と中止に追い込まれている。
また基本方針では、医療体制について、地域で患者数が大幅に増えた状況では、一般の医療機関で感染が疑われる患者も診療できるようにするが、症状が軽度のときは、自宅での安静・療養を原則とすると明記されている。
2009年に新型インフルエンザが発生したときは、その時期が5月の連休と重なったため、やはり各種イベントが中止になり大混乱に陥った。関西では修学旅行が中止になり、観光業界を含め経済界に甚大な被害が出て、厚労大臣の私の許にも京都や大阪から数多くの陳情が寄せられた。政府全体で補助金などの対策を講じたが、感染症対策と経済活動の維持のバランスをどうとるかというのは、難しい課題である。これは感染症の専門家が解決できる問題ではなく、それこそ政治指導者の出番なのである。
ところが25日の基本方針では、大規模イベントの自粛を決めながら、具体的判断基準すら示さなかった。そこを批判されたからなのか、翌日になると突然、「2週間」という期間を示した。だが、これは危機管理としては失格である。どの程度の規模を「大規模」というのか、どれくらいの期間の措置なのか、本来は最初から決めておかなければならないのだ。
また、専門家会議に感染症の専門家を集めるのは当然であるが、基本方針の策定に当たっては、大規模イベント業界の専門家、商工業界の代表、教育現場の代表など、基本方針が影響を及ぼす分野の専門家の意見を広く聴取すべきなのだ。日本国全体の危機管理が問題なのであって、感染症対策のみを行っているのではない。
イベントや活動自粛のツケは全て国民が負担するのか
安倍政権の対応ぶりを見ていると、大日本帝国陸海軍を思い浮かべてしまう。戦時中の大日本帝国軍には大戦略がなく、小手先の戦術のみで、無能な司令官が朝令暮改の指示を与えたため、討ち死にする兵隊が続出した。クルーズ船の地獄絵はまさにこれに瓜二つである。司令官であるべき橋本岳副大臣が乗船して失笑ものの写真をSNSで発信し、しかも感染の疑いで自ら隔離されることになる。このような愚を繰り返してはならない。
本来は、感染源の不明な感染者が出始めた2月13日頃には大規模イベントの中止を決めるべきであった。結局、ここでも決定が遅すぎ、後手に回ってしまった。
しかもイベント自粛要請そのものも、その後の補償や業界の救済などについては一切念頭に置かずに、決定してしまった。これでは、収容先も決まっていないのに、武漢までチャーター機で飛ばしたのと同じである。そのため、「チャーター機で帰国した人々はホテルで相部屋」という信じがたい措置をとり、世界を唖然とさせてしまった。
今回も、後出しで26日午前中に「大規模イベントの2週間自粛」を決めたために、その日の夜のイベントが中止されるという異常事態になった。公演のチケットは払い戻されるだろうが、日本全国からイベントのために集まった人々の悲しみと、会場までの交通費や宿泊費の負担をどう考えているのだろうか。まさに国民の目線を忘れてしまった政権の奢りがここに表れている。
「小中高校の休校」で日本全体が困惑
さらに27日夕方には、驚くべきニュースが日本列島を駆け巡った。安倍首相が、3月2日から全国の小中高校を春休みまで臨時休校に入るように要請したのだ。これには全国民がびっくり仰天したに違いない。
こうなると、イベントの自粛とはわけが違う。こういう措置をとるときには、たとえば共働き家庭の支援などの措置も同時にとらないと、家庭と仕事の両立ができなくなる。期末試験、進学進級、卒業などをどうするのか? 子供の面倒を見るために職場に出られない母親たちはどうするのか? 彼女たちの戦力を失った企業や組織は営業を続けられるのか?
そういうこともきちんと考えずに、このような手を打つと日本全国が大混乱に陥る。場当たり的、五月雨的な政策を連発するようでは、感染症対策にも経済活動の維持にも失敗する。政策を決めるときは、副作用などその結果にも責任を持たねばならないのである。
日本は「村八分」社会であり、全員が「右へならえ」になってしまう。異論を許さない社会における内閣総理大臣の発言の重さを再認識したほうがよい。そして、問題は、この危機的状態において、首相が、役人の書いた紙を、下を向いて朗読するのみだということである。正面を向いて、紙など見ずに自らの言葉で語らなければ、国民には通じないし、説得力もない。嫌々ながら新型肺炎対策を行っているようにしか見えず、弱々しい印象しか与えない。
アメリカのトランプ大統領は、ペンス副大統領とCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の責任者を従えて会見し、副大統領をヘッドとするチームに最高の人材を集め、全力をあげて新型コロナウイルスの感染阻止に取り組むことを、自らの言葉で正面を向いて国民に訴えている。これが感染症対策の危機管理における政治指導者がとるべき態度だ。だから、安倍首相の会見の様子は世界に発信しないほうがよい。また世界が失望するからである。
首相の判断が常に最善とはかぎらない。だから、せめて内閣を構成する閣僚が異論を差し挟むことができるようでなくてはならない。果たして現状はそうなっているだろうか。
自民党内も安倍一強で、首相に諫言する者がいない。野党が分裂して弱体化しているおかげで安倍政権は安泰であるが、今のような危機管理を行っていれば、政権の命運は遠からず尽きることになるだろう。
この調子では安倍政権の命脈尽きることにも
今や中国や日本以外でも、イタリアとイランで急速に感染が拡大し、ヨーロッパや中東の周辺国にも感染が広まりつつある。アフリカでは、エジプトに次いでアルジェリアで、また南米でもブラジルで感染者が確認されている。これで5大陸すべてに感染が広まったことになり、WHOがパンデミックを宣言するのは時間の問題だ。
そのような状況の下で、東京五輪が予定通り開催されるのかどうか、世界から心配する声が高まっている。
私は2月22日付のJBpressの記事で、「五輪中止のシナリオを用意せよ」と書いた。
(参考記事)新型コロナ終息せず、五輪中止のシナリオも用意せよ
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59449
だが安倍政権の目線の先には、今夏のオリンピック開催は絶対に成し遂げたいという思いが先立っているようにしか見えない。だからこそ、IOCの委員から五輪開催に疑問符を付けるような発言が飛び出したらびっくりし、急遽、小中高校の休校を要請したのではないか。
IOCのパウンド委員(カナダ)は、東京五輪開催か中止かの判断は今から3カ月以内、つまり、5月25日頃までには決定せねばならないということを明らかにした。これは、日本政府が言うようにIOCの公式見解ではないものの、IOCが中止のシナリオを書き始めたことを意味する。そして、世界の世論の動向を探るためのアドバルーン(観測気球)をあげたと考えてもよい。
私も都知事のときに、IOCと何度も交渉を行ったが、開催地が東京であっても、最終決定権を握っているのはIOCであり、何度も苦い思いをさせられた。実際にIOCは、マラソンと競歩を札幌に移すことを、小池都知事など蚊帳の外において決めたことは記憶に新しい。
© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 『ヒトラーの正体』(舛添要一著、小学館新書)
すべては、新型コロナウイルスの感染の状況次第であるが、私は五輪は開催か中止かしかないと思う。秋に延期という選択肢は、テレビ放映権の問題があるから、まずない。また、ロンドンなどで代替開催ということもない。これは5月のロンドン市長選を前に与野党の候補者が人気取りに思いつきの提案を行っただけであり、今や選手村もマンションになっており、メインスタジアムも縮小されている。事実上、ロンドンでの開催は無理だ。
パウンド委員は、来年延期案を示唆しているが、それが実現可能かを決めるのは容易ではない。
新型肺炎の感染が止まる時期にもよりけりであるが、クルーズ船が拡散した日本のマイナス・イメージは選手も観客も東京から遠ざけることになってしまうだろう。東京五輪はまさに正念場を迎えつつある。
いずれにせよ、今のような感染症対策を続ける限り、五輪より前に安倍内閣が幕を閉じることになるだろう。
官邸HP 総理記者会見(2月29日)
私の手元に、1枚の書面がある。それはこの会見を前に、官邸記者クラブの幹事社が各社に回したものだ。そこには「内閣総理大臣記者会見の幹事社質問」(案)と書かれている。
それが冒頭の写真だ。「朝日新聞」と書かれているのは、これは官邸の新聞社幹事である朝日新聞の質問ということだ。因みに、幹事社とは記者クラブのとりまとめ役で、各社持ち回りで担当することになっている。通常、新聞・通信社の幹事社と後述するようにテレビ局の幹事社がある。その質問には以下の様に書かれている。
臨時休校について伺います。総理は27日に突然発表しましたが、その日のうちに政府から詳しい説明はなく、学校、家庭など広く社会に不安と混乱を招きました。説明が遅れたことをどう考えますか。
この後、ひとり親、共働き家族への対応、授業時間の確保について質している。また、国民生活や経済への影響、感染の抑え込みについて見通しを問うている。更に、クルーズ船への対応に海外から批判が出ていることを挙げて、これまでの政府の対応について「万全だとお考えでしょうか」となっている。加えて、中国の習近平主席の訪日、東京オリンピックを予定通り行うかどうかも「あわせてお聞かせください」となっている。
次にテレビ幹事社のテレビ朝日の質問が書かれている。
総理は先日の対策本部で新しい法律を整備する意向を表明された。与野党から補正予算を求める声もあるが、具体的にどのようなものを想定しているのか。法案は早期に成立させなければならない。そのために野党側に与野党党首会談も含めて協力を呼び掛ける考えはあるか?
この書面には、「ご意見の有る方は」と書かれ、幹事社まで連絡するよう求めている。これは質問案に欠けている質問が有れば加えるという趣旨だろう。その時間は記者会見前日の28日午後9時までとなっている。つまり、この時間をもって、質問を事前に官邸側に送ることになる。因みにこの行為を、「投げる」と言う。
これは今回に特別なことではない。これまでもそうだった。日本のリーダーの記者会見とは、このように事前に質問事項がまとめられて記者から官邸側に渡され、それに基づいて総理大臣の答弁が決められて答弁書が作られる。総理大臣は答弁書を読むだけとなる。それを記者と総理大臣が演じる一種の茶番劇となる。
今回の安倍総理の会見は36分ほどだった。その最初の19分は安倍総理がプロンプターに出てくる原稿を読むものだった。そして、残りの17分で記者との質疑が行われ、先ず幹事社の朝日新聞とテレビ朝日が質問しているが、それは私の持つ書面の文面の通りに行われている。少し違うのはテレビ朝日の質問に、「さらに生活面でマスクやトイレットペーパーといった日用品がお店に行っても買えないという現象が起こっている」と付け加えられたくらいだ。これは答弁を変えるほどのものではなく、答える安倍総理も、用意された答弁書と見られる紙を読んで終えている。
続いてNHK、読売新聞、AP通信の記者が質問しているが、これらの答弁も安倍総理は紙を読む形で答えている。
この会見に出ていたフリー・ジャーナリストの江川紹子氏は自身のYahoo!個人ニュースの記事で次の様に書いている。
スピーチの間は、首相の前に立てられた2つのプロンプターは、質疑の時間になると下ろされる。首相は、会見台の上に広げられた書面を見ながら質問に答える。複数の証言によると、首相会見では事前に質問者が指名されており、質問内容も事前に提出している、とのこと。会見開始直前に駆け込んできた男性は、佐伯耕三首相秘書官で、彼が提出された質問への回答を用意し、安倍首相はそれを読んでいる、というわけだ
出典:Yahoo!個人ニュース「新型コロナ対策・首相記者会見で私が聞きたかったこと~政府は国民への説明責任を果たせ」
質疑について「彼(秘書官)が提出された質問への回答を用意し、安倍総理はそれを読んでいる」は指摘の通りだろう。つまり総理大臣自身が「本当に大変なご苦労を国民の皆さんにはおかけしますが、改めてお一人おひとりのご協力を深く深く、お願いする次第であります」と語り、国民の協力を求めている記者会見の場は、事前にやり取りが決められた茶番劇だったということだ。
当然、そこには権力者と取材者との緊迫したやり取りなど存在しない。あらかじめ用意された紙を読んで質問をしたことにする記者。それに応えて予め用意された答弁を行うことで誠実に対応しているように見せる首相。それが20分弱繰り返されたというわけだ。各社、原稿もある程度は事前に書いている筈だ。
会見が終わる際に、予定の時刻を過ぎたとの説明がなされているが、これも想定通りと見て良い。事前に質問者と質問内容に加えて答弁の分量もわかっており、想定を超えて時間が過ぎたわけではない。そして、予定された質疑が終わったところで会見は打ち切りとなることが既に決まっていた筈だ。
では、こうした「茶番劇」の何が問題なのか?それは、記者会見が事実関係を問いただす場にならないということだ。普通、質問は一発で回答を得ることはできない。その為、記者は関連質問を行う。これを「二の矢、三の矢を放つ」と言う。それによって、初めて回答を得られる。実際、江川氏は、最初の朝日新聞の質問に安倍総理が明確に答えていなかったと指摘している。ところが朝日新聞の記者は二の矢を放っていない。放てないのだ。なぜなら、総理大臣会見では二の矢を放つことは想定されていないからだ。否、別の言い方を敢えてする。二の矢を放つことは許されていないのだ。
仮に、ここで朝日新聞の記者が二の矢を放ったらどうなるか?官邸側と朝日新聞の信頼関係に傷がつくことになる。その結果、朝日新聞は官邸での取材で不利益を被ることが予想される。例えば、官邸幹部へ取材などで朝日新聞だけが外されるという事態は容易に想像できる。
そう書くと、「この新型コロナウイルスという緊急時に際して、そんな些末なことで事実の確認という重要な仕事を放棄することなどあり得ない」と思う人もいるかもしれない。しかし、残念ながらそれが実態だ。なぜか?予め決められた内容をやり取りすることで総理大臣を答えに窮するといった困った立場に置かずにすむからだ。それは官邸側の意向ではあるが、それを認めているのは記者の側だ。
「それでも厳しい質問をするのが記者ではないのか?」と思う人はいるかもしれない。ところが、日本の記者、特に政治権力を取材する官邸記者クラブの記者はそうではない。一般的に日本の記者は権力の側から情報をとることが仕事となっており、そのためには権力の側を怒らせることに極めて消極的だが、その最も典型的な例が官邸記者クラブだと言って間違いない。
勿論、「記者会見は国民の知る権利に応えるための場」とは、日本の主要メディアで掲げられる言葉だ。それが嘘だとは言わない。しかし、完全にこの言葉に忠実かというと、そうではない。国民の知る権利に応えようと記者会見で頑張って二の矢、三の矢を放って、総理大臣を立ち往生させるか?官邸を困らせるか?その結果は見えている。取材で不利になる選択肢は当然の様に取らないし、取れない。
では、世界中どこでもそうなのか?残念ながらこんなことをしている国は民主主義の国では日本くらいだろう。日本のリーダーの記者会見に特有の現象と言っても良いかもしれない。
記者会見での言動が常に批判を受けるアメリカのトランプ大統領にしても、この様な茶番劇は演じていない。記者会見は日本の首相会見とは大きく異なり、そこは権力者と取材者との真剣勝負の場となっている。だからこそ、トランプ大統領が、「お前は失礼な奴だ」とか、「お前らの会社はフェイクニュースだ」などと記者を罵倒する状況が生まれる。怒りのあまり会見の場で、「この人殺しのテレビ記者ども」と口走った姿を確認したこともある。それは、それが本当の記者会見の場だからだ。核廃棄という専門性の高いテーマだった一回目の米朝首脳会談の後の記者会見でも、「北朝鮮がどこまで核廃棄を進めれば、廃棄したとなるのか?」といった質問に、「専門家に言わせれば、ある段階まで廃棄を進めれば、再開が難しい段階が有る・・・」と自分の言葉で語っている。
日本の総理大臣の記者会見では、トランプ大統領の言うところの「失礼」な質問は出ない。そもそも官邸側と調整した質問しか出ず、「失礼」な質問が投げかけられる余地が無いのだ。
一度、ニューヨークの国連で安倍総理が会見を開いた際、アメリカの記者がこの慣例を破って二の矢を放ったことが有った。その時、安倍総理がそのまま用意された答弁を読んでしまった。当然、二の矢のための答弁は準備されていない。安倍総理が読んだのは、次の記者の為の答弁だったと見られる。当然、質疑は意味不明なものになってしまった。異変に気付いた官邸スタッフが割って入り、記者会見は途中で終わっている。私はその会見に出ていたアメリカ人記者からその話を聞き、返す言葉が無かった。
私はYahoo!個人で、総理と主要メディア記者との会食の問題を取り上げてきた。総理会見の在り方も権力者と取材者との癒着という意味で全く同じ話だ。
Yahoo!個人ニュース「総理大臣と記者との会食が引き起こしている問題の深刻さに気付かないメディア」
またこうも言える。こうした会見と総理大臣と記者との会食は表裏だ。会見で本音が聞けないから、会食で本音を探るということになる。しかしこれはおかしい。極めて不透明且つ不健全な会食などをせず、透明性の高い記者会見を堂々とやれば良いだけのことだ。
NHKは安倍総理の会見を伝える29日のニュースで、「安倍総理が自ら説明」と報じている。これは一種のフェイクニュースだ。用意された文章を読み、質問には準備された回答を読み上げる。それは、「自ら説明」したことにはならない。
更に言えば、これはもう記者会見ではない。これは単なる演説会だ。質問に答えない記者会見を記者会見と呼んではいけない。官邸記者クラブの記者に言いたい。次からは「記者クラブ主催総理演説会」と名称を変えた方が良い。そうでなければ、記者会見を本物の記者会見、つまり権力者と取材者との真剣勝負の場に変えなければいけない。この未曾有の事態に際して人々を茶番劇には付き合わせてはいけない。
立岩陽一郎
「インファクト」編集長
私はカン違いしていました。貴方は、誰かの書いたものを、私へのコメントとしたのですね。
情報提供していただいたことには感謝いたしますが、「引用した」ということを明記しないのであれば、今後はコメントはご遠慮くださいませ。
古賀茂明「弱者を切り捨てる安倍政権のコロナ対策」〈週刊朝日〉
3/3(火) 7:00配信
2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表したが、そこに非常に心配なことが書いてある。それは、国内での感染状況の把握についての将来の方針転換である。
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現在は、PCR検査(ウイルス感染の有無を判断する遺伝子検査)は、様々な要因を勘案して医師が必要と認める場合に実施することになっている。ただし、実際の現場では、4日前から咳が続き、ようやく熱が38度に上がった妊婦が検査を拒否されたとか医師が必要だと言っても検査できないなど理不尽な例が多発し、国民の間には不満と不安が高まりつつある状況だ。
しかし、今回の基本方針は、さらに不安を増幅する内容になっている。今後、「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査に移行」する可能性を予告したのだ。わかりやすく言えば、熱があってもダメ、苦しくてもダメで、肺炎で入院が必要だという状況になって初めて検査が認められるという意味になる。
いつそうなるのかというと、「地域で患者数が継続的に増えている状況では」と書いてある。今後は、各地域で患者数は継続的に増加していく確率が非常に高いと誰もが思っている。ということは、「肺炎になって入院」という危機に陥るまで検査ができない事態になるのはほぼ確実だと考えたほうが良い。
感染したとわかってもまだ特効薬はないからたいしたことはできない、だから早めに検査しても仕方ないと思っている人もいるが、これは完全な間違いだ。なぜなら、エイズ用などの既存の抗ウイルス薬に効果があることが判明していて、重症化しやすい患者などには、発症したら必要なタイミングですぐにこうした薬を投与すれば死に至る危険を軽減できる。逆に、肺炎で重症化してから検査をするのでは、対応が遅れて一命を落とすことになる確率が高まる。早期治療には早期診断が必須、早期診断には早期検査が必要というのは誰にもわかることだ。それができないということは、常識的に考えれば、必要な検査ができず、重症化して死に至るリスクを避けられないということだから、政府がまさに医療崩壊の予告を行ったと言っても良いだろう。
また、軽症者への検査をしないという方針だと、若者など軽症者が外でウイルスをまき散らすことで、お年寄り、基礎疾患のある方、妊婦などの弱者がその犠牲になる恐れが高まる。それを避けるためにも早期検査により軽症段階で感染者を特定し自宅待機を求めることが必要だ。今回の方針は、弱者切り捨て宣言でもある。
厚生労働省は何とか検査の数を減らしたいと考えているようだ。同省は、2月26日現在、クルーズ船とチャーター便と一部の地方機関の分を除き、1061件の検査を行い、うち149件が陽性だったとホームページで公表した。お隣韓国では、同25日までに1日7500件以上の検査態勢になっていて、累計4万件強の検査で977人が陽性だった。比例計算では、もし日本で4万件以上の検査を行えば、5千人以上の感染者が出てもおかしくない。
感染者が激増しても、検査しなければ、統計上の感染者数は増えない。感染がわからないまま死亡しても、新型コロナウイルスによる死者の数も増えないから、五輪開催などには好都合なのだろう。
安倍政権の「医療崩壊予告」と「医療弱者切り捨て宣言」を黙って見過ごすわけにはいかない。
※週刊朝日 2020年3月13日号
情報提供ありがとうございました。
古賀さんは、私が尊敬する人の一人です。
<新型肺炎>早朝ドラッグストアに並ぶ女性に…男性が無償でマスク譲り立ち去る「温かい気持ちに救われた」
3/4(水) 7:27配信
<新型肺炎>マスクを無償で譲った男性「感動した」
新型コロナウイルスの影響でマスクが手に入りにくい状況の中、早朝に店の前で一人並ぶ女性に、通り掛かりの男性がマスクを譲ってくれた。女性は「温かい気持ちに救われた」と感謝している。
10年前から花粉症に悩まされている埼玉県ふじみ野市の会社員女性(42)は1日午前5時半ごろ、市内のドラッグストア店舗前に並んでいた。常備していたマスクがなくなり、薬局やスーパーなど数十軒訪ねたものの、マスクはどこも品切れになっていたからだ。
前日も午前6時半に店の前に並んだが、すでに行列ができていた。開店すると、自分の前の人でマスクは品切れに。店から「明日に入荷するかは分からない」と言われたが、わずかな望みにかけて翌日さらに1時間早く並んだ。
一人で待っていると、散歩中とみられる40~50代の男性から「イベントでもあるのですか」と声を掛けられた。事情を説明すると、男性は「それは大変ですね」と言って立ち去ったが約40分後に戻って来て、「少ないですけど使ってください」とビニール袋を手渡して立ち去った。中には未使用のマスク6枚が入っていた。
「マスク欲しさにけんかする人もいるご時世に、寒い中をわざわざ戻ってきて自身のを無償で他人に手渡すなんて」と感動した女性は、「市内にこんな素晴らしい人がいることは誇りです。できれば『あの時の温かい気持ちに救われました。心から感謝しております』と伝えたい」と話している。
最終更新:3/4(水) 8:54
埼玉新聞
【新型コロナ】「高齢者を殺す気か」の声も 安倍首相、休校要請の支離滅裂〈週刊朝日〉
3/4(水) 11:30配信
安倍晋三首相が独断で投じた“劇薬”によって、列島はパニックに陥った。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国すべての小中高校と特別支援学校に対し、春休みまで臨時休校するよう要請。休業補償など新たな施策を打ち出したが、官邸内では深刻な亀裂が生じている。
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安倍首相は2月29日の記者会見で、この時期に休校を要請することを「断腸の思い」と述べたが、内実は少し違う。自民党幹部がこう話す。
「安倍さんの会見、この程度かと期待外れだった。北海道の鈴木直道知事が2月26日に道内の全小中学校の臨時休校を要請し、評判がいいという話が官邸内で話題になり、その施策をもらおうと今井尚哉首相補佐官が安倍首相に進言。細かいところを詰めず、表明したというのが真相だ。側近の萩生田光一文科相、鈴木知事の親分である菅義偉官房長官、杉田和博官房副長官も制止しようとしたが、安倍さんはそれを振り切った。あまりにも唐突な決断で公明党にも話を通しておらず、大混乱になった。この亀裂は今後、響くだろう」
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーからも疑問の声が聞かれる。委員の一人で、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦医師はこう語る。
「休校は諮問されたテーマにはなかったし、私たちが提言したものでもありません。どの仕事でもそうでしょうが、医療従事者でも看護師や薬剤師、検査技師には子どもを預けて共働きしている人が結構多い。この人たちが仕事を休まざるを得なくなれば、医療体制はガタ落ちになります。もちろん休校も感染症対策の一環ですが、今回、多くの社会的なマイナス要素を無視して行うほどの効果があるとは思えません」
28日に衆院を通過した2020年度の予算案に、野党側が求めていた新型コロナ対策予算を盛り込むことを拒否。批判されると、冒頭の首相会見で慌てて今年度予算の予備費2700億円の活用と、新たな助成金制度の創設に言及した。
韓国が新型コロナで苦境に立たされる中小企業支援を中心に、総額16兆ウォン(約1兆4千億円)もの経済対策をつぎ込んだのと、あまりにも対照的だ。
共働きの保護者らは不安の声を上げている。スーパー販売員の30代女性が困惑する。
「うちは小学2年と保育園児の2人の子がいるから、仕事を休まなくてはならない。生活は楽ではないのに急に休校と言われても、どうしろというの」
小学3年と保育園児を抱えるメーカー勤務の30代女性も不安を明かす。
「コロナは高齢者が感染すると重症化するというし、じいじやばあばには預けられない。これまではお迎えや夕食の世話などをシルバー人材センターの方や、シッターさん、ファミリーサポートの会員に頼んでいたのですが、それも高齢者の方が目立つし……」
新型肺炎は中国全土で見ると、致死率は約4%だ。
「放っておけない病気であることは事実ですが、現時点での子どもの感染者の割合も重症化率もきわめて低い」(前出の岡部氏)
むしろ、中国のデータなどからわかっているのは、新型コロナに感染して重症化するのは高齢者や持病を抱えるハイリスク者だ。
新型コロナの初期症状は風邪と見分けがつきにくいうえ、感染しても無症状の人も多い。全国各地で小集団の感染が見つかっているということは、国内でかなり蔓延が進んでいると見たほうがよさそうだ。
NPO法人「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広医師はこう指摘する。
「蔓延期の感染症対策は、とにかく死者を出さないことが目的です。つまり、高齢者を守ること。高齢者は子どもなど家庭でうつされます。ですから、風邪の症状のある若い人の検査が必要なのです。感染がわかれば、高齢者や持病のある人と距離を取ることができます。これが徹底されなければ大変危険なのです」
だが、日本の検査数は1日平均約900件にとどまり、発症が疑われている人さえ検査が受けられていないのが現状だ。
「高齢者の感染が見つかったら、早期治療が肝心です。脱水症状などを起こして、すぐに重症化しますから、治療が1日早いか遅いかでずいぶん違ってきます。ところが、帰国者・接触者相談センターに相談するのは、いまだに高齢者でも37.5度以上の熱が続くことを目安にしている。非難されるべきです」(上氏)
あまりの支離滅裂さに医療現場からは「高齢者を殺す気か」との声も聞かれる。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏が厳しく批判する。
「官邸の指示機能が崩壊したということです。今度ばかりはこの人たちに任せていたらダメだと国民は思ったはずです。森友・加計問題はアベ友優遇に腹を立てても、自分の生活や人生には痛みにならなかった。けれども、自分が働けない、子どもが学校に行けないということは国民にとってそんな甘い問題ではない」
前出の自民党幹部がこう危惧する。
「あの首相会見では株価下落に効き目はないんじゃないか。こんな時期に解散はできないから、下手すれば、内閣総辞職もありうる」
(本誌・亀井洋志、永井貴子/今西憲之)
※週刊朝日 2020年3月13日号
マスク無償提供は、よい話でした。
週刊朝日の記事も参考になりました。
ありがとうございました。
厚労省が新型コロナ検査を「この状況でも広げたくない」ウラの思惑
3/6(金) 7:01配信
まだ「保健所の拒否」がまかり通る
厚生労働省は3月4日、新型コロナウイルスに感染したかどうかを調べるPCR検査に6日から、健康保険を適用する、と発表した。一見すると、従来に比べて、一歩前進のように見える。だが、実はそうでもなさそうだ。
死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い
PCR検査を受けたいのに、受けられない「検査難民」が続出しているのは、ご承知の通りだ。日本医師会は4日、医師が検査を求めたにもかかわらず、保健所の判断で断られたケースが3日時点で7道県医師会で30件に上った、と明らかにした。全国では、はるかに多いはずだ。
こうした事態が世間の強い批判を受けて、厚労省は遅まきながら、検査の保険適用に踏み切った。そもそも「医師が必要と判断したのに、保健所が拒否する」仕組みがまかり通っているのが、おかしい。
医師は対面で患者と向き合って診察しているのに、保健所は電話相談にすぎない。それで、どうして医師でもない保健所職員が患者の状態を適切に判断できるのか。常識で分かる話だろう。断られた患者や医師が憤慨するのは、当然だ。
そんな仕組みにしたのは、先週のコラムで指摘したように、そもそも厚労省と国立感染研究所(以下、感染研)が患者の治療よりも、疫学調査を優先したからだ(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70698)。彼らがデータを集めるためには、保健所や各地の地方衛生研究所を通したほうが都合が良かったのである。
それを裏付ける「証拠」もある。
感染研は3月2日、「新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査に関する報道の事実誤認について」という声明を発表した(https://www.niid.go.jp/niid/ja/others/9441-covid14-15.html)。北海道に派遣された感染研職員が「入院を要する肺炎患者に限定すべき」と発言し「検査をさせないようにしている」と一部で報道されたのを受けて、「それは事実誤認」と反論したのだ。
そんなに検査を囲い込みたいのか
声明は「感染症が流行した際は、法律に基づき、積極的疫学調査が実施される」としたうえで「調査では、医療機関において感染の疑いがある患者さんへのPCR検査の実施の必要性について言及することは一切ありません」と強調した。
当該職員は「軽症の方(あるいは無症状)を対象とした検査については、積極的疫学調査の観点からは『PCR検査確定者の接触者であれば、軽症でも何らかの症状があれば(場合によっては無症状の方であっても)、PCR検査を行うことは必要である』と述べた。『一方、接触歴がなければ、PCR検査の優先順位は下がる』と述べた」という。
読みにくい文章だが、彼らがPCR検査を実施するのは、自分たちの疫学調査のためであるのはよく分かる。保健所や地方衛生研究所を通さずに、街のクリニックの依頼で民間検査機関がどんどん検査するようになったら、データ収集に支障をきたしかねない。だから、公的機関の世界で、全部のプロセスが完結するようにしたのである。
声明には、明らかな矛盾もある。一方で「医療機関で疑い患者へのPCR検査の必要性に言及することは一切ない」と言いながら、他方で、職員は「接触者なら検査は必要」とか「接触歴がなければ優先順位が下がる」と発言した、という。それなら、感染研職員は必要性に言及しているではないか。
だが、それはひとまず措こう。問題は「保健所を通さずに」PCR検査を受けられるようになったのかどうか、だ。
報道によれば「保健所を通さずに検査を受けられる」ようになった、という(たとえば、https://www.yomiuri.co.jp/medical/20200305-OYT1T50015/)。だが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、検査を依頼するのは、全国860カ所の医療機関に設けられた「帰国者・接触者外来」の医師に限られているからだ。
国民の誤解を狙っているのか?
発熱があって感染を心配する患者は帰国者・接触者外来を訪れて、医師の診断を受ける必要がある。ところが、肝心の外来がどこにあるかは、一般に公開されていない。所在や電話番号を知るには、保健所の帰国者・接触者相談センターに電話して、教えてもらうしかないのである。
患者はまず保健所のセンターに相談して、帰国者・接触者外来の電話番号を教えてもらい、診察を予約する。そこで、医師が「検査しましょう」と判断して初めて、PCR検査を受けられる仕組みだ。それでは「保健所を通さずに」という話にならない。最初に保健所のセンターに相談しないことには、プロセスがそれ以上、前に進まないからだ。
そもそも、検査の可否を決めるのが860カ所の外来に限られているのも問題だ。これでは事実上、ほとんどの街のクリニックや診療所は手が出せない。今回の対応はどうも、そういう仕組みである「ようだ」。
ようだ、と書いたのは、以上の点を厚労省のホームページで確かめようにも、文書がなく確認できなかったからだ。検索すると「PCR検査の保険適用について、記者ブリーフィングを実施します」という連絡メモ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09971.html)は見つかったが、肝心の政策説明文書は3月5日12時時点でアップされていない(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09964.html、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00088.html など)。
国会でも問題になった重要案件を説明する文書をアップしないとは、厚労省はどういうつもりなのか。まったく信じられない対応である。邪推すれば、国民が「保健所を通さずに検査を受けられるようになった。ああ良かった!」と誤解するように仕向けているか、に見える。
政府の規制改革に関わる委員として、厚労省の姿勢を目の当たりにしてきた私の経験で言えば、厚労省は「悪知恵に長けた役所」である。一見、前進させたように見えても、肝心な部分では絶対に降りない。今回で言えば、保険適用では折れたが「保健所を通す」ことや「医療機関を限定する」点では、一切妥協していないのである。
患者が病院に行くのは止められない
それは、なぜか。最大の理由は先述したように、データを集めるためだろう。
なぜ、帰国者・接触者外来を一般に公開しないのか。厚労省に言わせれば「公開したら、患者が押し寄せて医療が崩壊しかねない」という理由である。それは一理あるかもしれない。それでも、発熱患者がクリニックか病院に行こうとするのは止められない。
いくら厚労省が「保健所の相談センターに電話して」と宣伝しても、わざわざ電話番号を調べて電話する人が、どれほどいるか。患者本位で考えれば、まずは近くのクリニック、かかりつけ医を頼りにするのは当然だ。
ただし、厚労省は「一般にはマル秘の帰国者・接触者外来」で事が足りるかどうか、について、自分でも自信がないようだ。それは、3月1日付の「患者が増加した場合の対策移行について」という事務連絡文書にうかがえる(https://www.mhlw.go.jp/content/000601816.pdf)。
そこには「地域の感染拡大で受け入れ患者が増大した場合」にどう対応するか、次のように記されている。
1. 地域の感染状況や医療需要に応じて帰国者・接触者外来を増設し、帰国者・接触者相談センターの体制を強化した上で、今の枠組みのまま、外来を早急に受診できる体制とする。その際、同センターは柔軟に帰国者・接触者外来へ患者をつなげる。
2. 原則として、一般の医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で外来診療を行うこととする。新型コロナウイルスへの感染を疑う方は、受診する医療機関に事前に電話連絡を行うよう周知し、電話を受けた医療機関は、受診時刻や入口等の調整(時間的・空間的な感染予防策)を行った上で、患者の受入れを行う。
つまり、帰国者・接触者外来がパンクしたら、仕方ないから「一般の医療機関でも受け入れざるを得ない」と覚悟しているのだ。私は、そうなる可能性が高い、とみる。そうなったら、どうすべきなのか。
厚労省は、クリニックや診療所の感染対策に全力で取り組むべきだ。医療用マスクや防護衣、ゴーグルなどを整えるのはもちろん、クリニックの入り口に、事情に応じて、大きく患者向けの注意事項を掲示するくらいは当然である。
「感染疑いの定義」がナンセンス
もう1点。どんな患者が検査を受けられるのか、と言えば、厚労省は「感染疑いのある患者」に対象を絞っている。そんな患者の定義について、厚労省は2月27日付の自治体・医療機関向けの事務連絡文書の添付資料で、次のように書いている(https://www.mhlw.go.jp/content/000601671.pdf)。
(問2)疑似症の定義を教えてください。
(答)現時点では疑い例とは、患者が次のア、イ、ウ又はエに該当し、かつ、他の感染症又は他の病因によることが明らかでなく、新型コロナウイルス感染症を疑う場合をいいます。ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではありません。
ア、発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む)を呈する者であって、新型コロナウイルス感染症であることが確定したものと濃厚接触歴があるもの
イ、37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域(新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域とは中華人民共和国湖北省及び浙江省をいう)に渡航又は居住していたもの
ウ、37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域(新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域とは中華人民共和国湖北省及び浙江省をいう)に渡航又は居住していたものと濃厚接触歴があるもの
エ、発熱、呼吸器症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し(法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当)、新型コロナウイルス感染症の鑑別を要したもの
もはや、ア、イ、ウが示すような中国帰国者との接触うんぬんを言っている場合ではないのは、明白だ。自分がどうして感染したか分からない人はたくさんいる。そうだとすると、エの条件が焦点になる。ここで「集中治療」とあるように、対象は重症患者なのだ。軽い人は検査の対象にならない。
ようするに、ちょっと発熱が続いた程度では、PCR検査にたどり着くのは、相変わらず容易ではないのである。「PCR検査をして、入院など面倒を見るのは重症患者だけ」と理解しても、そう間違いではない。読者は万が一の場合、自宅で休む態勢を整えたほうがよさそうだ。
長谷川 幸洋(ジャーナリスト)