学年だより「次から次へと(2)」
上武大学ビジネス情報学部教授で経済学がご専門の田中秀臣氏は、長年学生の就職指導にも関わってきた。人気企業ランキングに名を連ねるような会社が採用ターゲットにする学生の層を、田中先生は「就職コア層」と名付けている。東大、一橋をはじめとした旧帝大と、早稲田・慶應に代表される有名私大の学生を指す。約2万人がこの層に該当し、ここからいかに多くの学生を採用するかが、有名大手企業の人事戦略となるそうだ。
つまり、学歴はあきらかに就職において一つのハードルになっているのだ。
しかし、「コア層」には含まれない学生が40万人以上存在し、大手ではない会社が全体の9割以上を占めるのが、就職活動のフィールドである。
大手以外の企業は、偏差値60の大学でも、40の大学でも、積極的に差を設けようとはしていない。そんなコストをかけていられないというのが実態だという。
ただし結果的には、偏差値と相関関係があるような就職状況になっていく。
田中先生は、その原因として、学生たちの就職に対する姿勢の違いを指摘する。
~ 就職コア層の学生たちと比較すると、非コア層の学生たちは非常にのんびりしています。彼らは1つの企業を受けることで手いっぱいになってしまい、複数の企業を同時に受けることはなかなかできません。就職コア層が分散投資型であるとするならば、非コア層は前述のように人気ラーメン店の行列型です。何十分もかけて行列が進んで、ようやくラーメンを食べるように、1つの企業を受けて、その結果が出てから、ようやくもう1つの企業にアプローチを始めるという形をとります。そのため、就職期間にトータルで受けられる企業の数が、就職コア層に比べると極端に少なく、2社から5社というのが平均です。 (田中秀臣『偏差値40から良い会社に入る方法』東洋経済) ~
人気ラーメン店の前で行列をつくっている人というのは、言ってしまえば「暇な人」だ。
学生時代ならではの時間の使い方と言えるかもしれないが、さすがに就職活動の時期になって、同じ時間の使い方をするのは、人生の貴重な資源を有効活用しているとは言いがたい。
1社受けて結果が出るまで待ち、不合格になってから次の1社を受けに行くというのと、平行していくつもの会社を回るのとでは、自分のチャンスを広げるという点で格段に大きな差がある。
この姿勢の違いは、日常のすべての面にあてはまることではないだろうか。
電車の待ち時間をぼおっと過ごすのと、単語を暗記するのとでは、その瞬間ではわずかな違いだが、積み重なってものすごく大きな差が生まれる。
たとえば今、数十名のみんなが指定校の希望を出しているが、その結果を見てから次を考えようというラーメン行列タイプの人と、平行して次の課題(自己投資)を進めていく人とでは、最終的に全く異なる結果になるだろう。
今の自分にとって最も有効な時間の使い方は何なのか、そういうことを実践しながら学んでいくことも、この受験勉強期の大切な課題だ。