3学年だより「釣り師」
自分をどう売り込めばいいか、どうすればファンに認められ、愛おしく思ってもらえるか。
それは「他者に自分に認めてもらうのはどうしたらいいか」という問いだ。
この問いに答えるために一番努力をしているのは、アイドルと呼ばれる人たちだ。
~ アイドルは他人の「好き」をもらう専門技術者です。彼女たちの立ち居振る舞いには、対人スキルを磨くヒントがあります。
まずはファンとの握手会から、握手をするわずか10秒程度で、いかに他のアイドルよりもファンの心をつかめるか、アイドルたちは様々な工夫をしているんです。 ~
一方的に「自分はこんな人間だ!」と主張するだけでは伝わらない。
相手がどんな人なのか、何を求めているのかを予想し、自分の伝えたいものをぶつけていく。
むしろ相手のことを考えることの方が大切だとも言えるだろう。
それは実に高度なコミュニケーションの一形態だ。
自分の欲求を一方的に伝えるのは、赤ちゃんのコミュニケ―ションだ。
みなさんは、ともすれば赤ちゃんのように泣き叫んでないだろうか。
たとえば定期試験や模試の答案をみたとき、この答案の書き手は、他者に伝えようという気持ちが本当にあるのだろうかという疑念を抱くことがある。
よく理解していないという心の叫びだけは感じ取れるものの、そんな中でもせめて「自分はここまで理解しました」という内容を表現するべきだ。採点する人のことを考えた文字で。
記述式のテストでは字が丁寧に書いてあるかどうかは(美しいかどうかではない)、間違いなく採点に影響する。
そしてさらにレベルを上げて、出題者がどのような解答を望んでいるのかを考える必要がある。
答案はコミュニケーションツールだ。
~ あと、面接ではアピールをしすぎても裏目に出ますよね。「どんな学生なんだ?」と面接者の関心を引き出す作戦はいかがでしょう。握手会用語では「釣る」とも呼ばれ、「また握手会に来たい」とファンをひきつける名人は「釣り師」と呼ばれることも。
例えば、一番の「売り」となるPRポイントはあえてさらっと触れる程度にして、面接担当者の「もう少し知りたい!」という気持ちを引き出すのも一方法です。
握手会は短時間にあらゆるボールが飛んできます。渡辺さんの人気は、人とは違う「握手とはなにかを考え、工夫を積み重ねた結果だと思います。就活も同じですよね。みんなお行儀良く「御社のために働きたい」と言う。どう違いを出すかが大事になります。
(原田朱美「アイドルから学ぶ就活スキル」朝日新聞ココハツ) ~
この先、志望理由書を書いたり、面接の練習をしたりする人も多くなる。
自分を理解してもらうためには、まず相手の理解が必要なのだ。