学年だより「ジグソーパズル(3)」
ずいぶん前に、野球評論家の江川卓氏が「3連敗しないチームをつくるのが大事」と言っていたのが記憶に残っている。
プロ野球の長いシーズンの間には、チームの好不調の波が必ずある。
打撃陣が好調で、同時に投手陣も開幕以前に想定していたより良い状態になる時期があるかと思えば、主力の何人もが怪我で戦列をはなれてしまうような事態も起こりうる。
調子の良いときに連勝できるチームをつくることはできる。
しかし、調子が悪くてもカード3連敗しないチームをつくるのはなかなか難しくて、最終的にシーズンを制するのはそういうチームである、という話だった。
野球シーズンよりももっと長い、高校3年間、大学4年間、人生数十年、という単位を生きることに、この考え方はあてはまるのではないだろうか。
今一つ調子が出ない時期に、何連敗もしない状態の自分であること。
人間だから好不調の波は必ずある。
やることなすことうまくいく時期もあれば、何をやっても裏目に出る時期もあるかもしれない。
そんな時でも、やけをおこさずに地道な日常を積み重ねていけるかどうか。
そういう自分をつくるためにこそ、高校生活はあるのだろう。
勉強で言えば、調子がでない時期でも「勉強ゼロの日をつくらない」こと。
小さなピースを集め続けていることだ。
そんな毎日は、外から見れば、変わりばえのない日常だ。
しかし自分の意識のなかで、大きな絵を完成させるイメージがあれば、マンネリではなくなる。
~ 毎日決められたメニューをこなす、言われたことをただやるというのでは、やる気が出ないときもあるでしょう。しかし、一つひとつの練習に意味を持たせて、一つでも欠けると本番で最高のパフォーマンスを発揮できない、と自分に言い聞かせて、どんなに小さなトレーニングでも集中して取り組むことが大事です。 (鏑木毅『プロトレイルランナーに学ぶ やり遂げる技術』実務教育出版)
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今のみなさんは、高校の勉強や部活にも、ずいぶん慣れてきて、かるく手を抜く方法も身につけつつあるようにも見える。「工夫」と「手抜き」とは違う。
家に帰ったらへとへとで、「今日はあえて勉強しないで、体を休めて明日に備えよう!」というような理屈を思いつく日はきっとあるだろう。「土日にがっつりやろう」などと思いながら、日曜がくると「やっぱ日曜は身体を休めなきゃな」と自分に言い聞かせてしまう。
やらない理由を考えさせることにおいて、人間は天才的な能力をもつ。
30分でもいい。必死で机に向かい、結果的に5分でおちてしまったとしても、ゼロよりは無限大によい。小さなピースをはめつづけることが、目標に向かって進んでいるということだ。