慶應大学に合格して富山から上京した美紀(水原希子)が見る「東京」像は、富山県出身の原作者、山内マリコさんが見てきたものが投影されているのだろう。
学生時代、慶應に入った高校の同級生を頼って東京に遊びにいった。
キャンパスに入り、都会の大学の雰囲気を味わわせてもらった。知り合いと出会った友人が、とってつけたような東京弁で会話するのを見て、ムリしてないか? とも感じた。
上野毛にあったそいつのアパートで何泊かさせてもらい、ドキドキしながら都内をふらつき、でも金沢にもどったときは落ち着いたような気分になった記憶がある。その何十年後、こんなにも都会に慣れ親しんだシティボーイになるとは思いもしなかった……(遠い目)。
田舎の進学校で猛勉強して、都会の大学に入り、しかも慶應だったりすると、内部生とのヒエラレルキーの違いが厳然と存在することにも気づいたりして、地方人が想像するような優雅な大学生活にはならないのかもしれない。
希子ちゃんと、親友の山下リオちゃん二人組が、田舎から上京してきた子のとまどいとカルチャーギャップの感じ方が見事に描かれている。
でも、たまに田舎に帰って同窓会に出ると、地元に残った友人達とは、また別の意味の隔たりを感じてしまう。
さらに、学費、生活費の問題がある。すでに大学を卒業した娘二人は家から通っていたが、もし都内にアパートを借りるということになっていれば、こんなにamazonで本を買いまくることを許してはもらえなくなってただろう。
地方に住む、地方から抜け出すということは、都会やその近郊に住む人に知らない苦労がある。
美紀は、父親の仕事がうまくいかず、アルバイトで生計を立てざるを得なくなる。
ただ生きていく分を稼ぐのが難しいのに、学費も工面するのは容易ではない。
結局は大学を中退することになり、しかし挫けることなく都会でそれなりに暮らしを整えていく美紀。
希子ちゃんへのキャスティングはどうかなと思っていたが、完璧だった。
今までみた作品のなかで一番いかされていた。主演女優賞確定。
もう一人の主人公、門脇麦ちゃんもよかった。
上流階級に生まれ育った華子役。親は開業医で、松濤に邸宅を構えている。
いつも自転車移動の美紀に対して、華子はほとんどタクシーで移動する。
ほかにもいろんな対比を描きながらら、決して二人を対決させない。
上流に生まれても、地方から出てきても、別種の生きづらさを同じくらい感じている。
それは対決させて、どちらかをいい悪いに仕立て上げて片付く問題ではないという、監督さんのメッセージなのかもしれない。
「女は女性というだけで差別される!」と気炎を上げている方々は本質を見ていないという、アンチテーゼだったりもするだろうか。
いや、そういう思想的なものではないかな。
おわりの方で、美紀が華子にこう言う。
「あんまり事情はわかんないけど、どこに生まれてもさ、最高っていう日もあれば、たえられない日もあるよ」
こういうのを地に足のついたやさしさと言うのだろう。
いい作品だった。
水原希子、山下リオ、門脇麦、石橋静河、篠原ゆき子、石橋けい、高橋ひとみ……。
よくぞここまで仕事のできる女優さんをそろえられたものだ。ほんとにいい作品だった。
学生時代、慶應に入った高校の同級生を頼って東京に遊びにいった。
キャンパスに入り、都会の大学の雰囲気を味わわせてもらった。知り合いと出会った友人が、とってつけたような東京弁で会話するのを見て、ムリしてないか? とも感じた。
上野毛にあったそいつのアパートで何泊かさせてもらい、ドキドキしながら都内をふらつき、でも金沢にもどったときは落ち着いたような気分になった記憶がある。その何十年後、こんなにも都会に慣れ親しんだシティボーイになるとは思いもしなかった……(遠い目)。
田舎の進学校で猛勉強して、都会の大学に入り、しかも慶應だったりすると、内部生とのヒエラレルキーの違いが厳然と存在することにも気づいたりして、地方人が想像するような優雅な大学生活にはならないのかもしれない。
希子ちゃんと、親友の山下リオちゃん二人組が、田舎から上京してきた子のとまどいとカルチャーギャップの感じ方が見事に描かれている。
でも、たまに田舎に帰って同窓会に出ると、地元に残った友人達とは、また別の意味の隔たりを感じてしまう。
さらに、学費、生活費の問題がある。すでに大学を卒業した娘二人は家から通っていたが、もし都内にアパートを借りるということになっていれば、こんなにamazonで本を買いまくることを許してはもらえなくなってただろう。
地方に住む、地方から抜け出すということは、都会やその近郊に住む人に知らない苦労がある。
美紀は、父親の仕事がうまくいかず、アルバイトで生計を立てざるを得なくなる。
ただ生きていく分を稼ぐのが難しいのに、学費も工面するのは容易ではない。
結局は大学を中退することになり、しかし挫けることなく都会でそれなりに暮らしを整えていく美紀。
希子ちゃんへのキャスティングはどうかなと思っていたが、完璧だった。
今までみた作品のなかで一番いかされていた。主演女優賞確定。
もう一人の主人公、門脇麦ちゃんもよかった。
上流階級に生まれ育った華子役。親は開業医で、松濤に邸宅を構えている。
いつも自転車移動の美紀に対して、華子はほとんどタクシーで移動する。
ほかにもいろんな対比を描きながらら、決して二人を対決させない。
上流に生まれても、地方から出てきても、別種の生きづらさを同じくらい感じている。
それは対決させて、どちらかをいい悪いに仕立て上げて片付く問題ではないという、監督さんのメッセージなのかもしれない。
「女は女性というだけで差別される!」と気炎を上げている方々は本質を見ていないという、アンチテーゼだったりもするだろうか。
いや、そういう思想的なものではないかな。
おわりの方で、美紀が華子にこう言う。
「あんまり事情はわかんないけど、どこに生まれてもさ、最高っていう日もあれば、たえられない日もあるよ」
こういうのを地に足のついたやさしさと言うのだろう。
いい作品だった。
水原希子、山下リオ、門脇麦、石橋静河、篠原ゆき子、石橋けい、高橋ひとみ……。
よくぞここまで仕事のできる女優さんをそろえられたものだ。ほんとにいい作品だった。