水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「不均等な時間(内山節)」の授業(1)

2021年05月09日 | 国語のお勉強(評論)
1~5段落

1 春になると私は上野村の村人といっしょに、近くの村に山菜採りに出かける。そこにはヤマウドなどがたくさん芽生えていて、カッコウやウグイスの鳴き声を聴きながら山歩きをするのは、村人たちの楽しみでもある。昼になると村人は森の木陰で弁当を広げ、子供のようにはしゃいでいる。
2 その間にも森から見下ろす畑の上では、春の耕作を進める隣村の人々の姿が見える。それは〈 上野村とは全く異なる農業 〉である。山の裾野は広大に開墾され、大型トラクターが動いている。高冷地の野菜専用の農地、その光景を見ると上野村の人々も感嘆の声を上げる。三反もあれば大百姓と言われる上野村とは違って、ここでは一区画が一ヘクタールを超えるような農地が切り開かれている。
 「〈 この村の人たちは偉いものだ 〉。」
そう言いながら上野村の人々は、この村の農民たちを称賛する。
3 ところが毎年同じように感嘆しているのに、〈 上野村の人々は少しもこの新しい農業をまねしようとはしない 〉。村に帰れば、村人は鍬や鋤を使った伝統的な山村農業に従う。もちろんまねをしようにも傾斜のきつい上野村では、同規模の農地を造成することは不可能なのだけれど、それでもその気になれば開墾可能な場所もないではない。何よりも、この村では上野村の農民の平均所得の百倍を超える粗収入のある農民が多数いることを、上野村の人々も知っているのにである。
4 おそらく毎年感嘆の声を上げるだけで終わってしまうのは、上野村とこの村の農業の間には、根本的に違う営農の世界があることを、上野村の人々が知っているからであろう。上野村の農業は伝統的な畑仕事として展開している。季節の循環とともに作物を作り、その作物を利用して村人もまた循環する季節とともに暮らしている。ところが隣の村で行われている農業は、農業経営なのである。ここでは農地が商品の生産工場になっている。農民は大地に投資をし、そこを商品の生産工程に変えた。
5 上野村の畑では作物を作り、毎年同じ季節を迎えることに価値があるのに、この村では〈 労働時間 〉の作り出す経済価値がすべてである。とともに、この相違は農業の形だけでなく、暮らしのすべての面に現れてくる。


1上野村の村人
  山菜採り・山歩き → 子供のようにはしゃぐ
   ↑
   ↓
2隣村の人々
  広大な農地・大型トラクター → (楽しくない)
  高冷地野菜専用農地
  = 上野村とは全く異なる農業
   ↑
 上野村の村人……称賛butまねしない
   ↑
4 r「根本的に違う営農の世界だと知っている」から

5上野村の農業
  伝統的な畑仕事
  季節の循環のなか → 作物
      ∥
  毎年同じ季節を迎えることに価値がある
    ↑
    ↓
 隣の村で行われている農業
  農業経営
  農地=生産工場 → 商品
      ∥
労働時間の作り出す経済価値がすべて
    ∥
 暮らしのすべての面の相違


「上野村とは全く異なる農業」について、

Q1「全く異なる農業」を行っている人はだれか。5字で抜き出せ。
A1 隣村の人々

Q2「全く異なる」のは、上野村で行われている農業がどのようなものだからか。15字で抜き出せ。
A2 鍬や鋤を使った伝統的な山村農業

Q3 Q2の答えに対して、この農業の様子はどのようなものだと述べられているか。9段落から16字で抜き出せ。
A3 「先進的」で近代的された農業経営

Q4 「上野村の人々は少しもこの新しい農業をまねしようとはしない」のは、なぜか。その理由が述べられた部分を45字以上50字以内で抜き出し、最初と最後の4文字ずつを記せ。
A4 上野村と ~ いるから

Q5 「労働時間」を言い換えた9字の言葉を6段落から抜き出せ。
A5 経済価値を生む時間
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