3学年だより「その後の成瀬(2)」
成瀬慶彦に大学受験を控えた娘がいることを、会社では何人かが知っている。
~「受験生が家にいると、親も神経使うでしょ」
「まぁ」
話を合わせてみたものの、あかりが受験生だからといって特に変わったところはない。早朝の走り込みは怪我防止のため室内トレーニングに切り替えているようだが、夜は以前と変わりなく九時には就寝している。
「あかりちゃんは京大受けるんだよね? すごいな~。あんな小さかったあかりちゃんが京大なんて」 (宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮社)~
支店長が、何年も前に家族を交えて花見をした時の思い出を話すと、慶彦の脳裏には、ひたすらかわいかった幼いあかりに姿が思い浮かんだ。
いや、もちろん今もかわいい娘だ。父親とは口をきかなくなるよう思春期の娘と比べると恵まれていると思いながら、いまひとつ今のあかりが何を考えているのかわからない。
~ だいたい、塾にも行かずに京大を受けるのもすごすぎてわけがわからない。ほかの大学には興味がないそうで、すべり止めも受けなかった。美貴子は短大卒だし、慶彦もそれほど偏差値の高くない私立大学を出ているのに、だれに似たのだろう。先月受けた大学入試共通テストも膳所高で一番だったそうで、担任からは京大の二次試験も普通に受ければ普通に受かると言われたらしい。だいたい、教師なんて「最後まで油断しないように」と言うのが仕事じゃないのか。まるでディープインパクトのようだと慶彦は思う。~
いよいよ二次試験本番を迎える。一人で大丈夫という娘や母親を制して、いや何かあっては困るからと、入試当日は京大までつきそうことにした。
天気予報どおり雪が舞っているが、交通機関に乱れはない。
ミッションは無事に娘を送り届けること。むしろ慶彦の方が緊張している。
大津から京都に向かうには、JRと京阪電鉄とがあるが、あかりは京阪を気に入っていた。
9時までに入室するために、余裕をもって7時に家を出る。
成瀬慶彦に大学受験を控えた娘がいることを、会社では何人かが知っている。
~「受験生が家にいると、親も神経使うでしょ」
「まぁ」
話を合わせてみたものの、あかりが受験生だからといって特に変わったところはない。早朝の走り込みは怪我防止のため室内トレーニングに切り替えているようだが、夜は以前と変わりなく九時には就寝している。
「あかりちゃんは京大受けるんだよね? すごいな~。あんな小さかったあかりちゃんが京大なんて」 (宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』新潮社)~
支店長が、何年も前に家族を交えて花見をした時の思い出を話すと、慶彦の脳裏には、ひたすらかわいかった幼いあかりに姿が思い浮かんだ。
いや、もちろん今もかわいい娘だ。父親とは口をきかなくなるよう思春期の娘と比べると恵まれていると思いながら、いまひとつ今のあかりが何を考えているのかわからない。
~ だいたい、塾にも行かずに京大を受けるのもすごすぎてわけがわからない。ほかの大学には興味がないそうで、すべり止めも受けなかった。美貴子は短大卒だし、慶彦もそれほど偏差値の高くない私立大学を出ているのに、だれに似たのだろう。先月受けた大学入試共通テストも膳所高で一番だったそうで、担任からは京大の二次試験も普通に受ければ普通に受かると言われたらしい。だいたい、教師なんて「最後まで油断しないように」と言うのが仕事じゃないのか。まるでディープインパクトのようだと慶彦は思う。~
いよいよ二次試験本番を迎える。一人で大丈夫という娘や母親を制して、いや何かあっては困るからと、入試当日は京大までつきそうことにした。
天気予報どおり雪が舞っているが、交通機関に乱れはない。
ミッションは無事に娘を送り届けること。むしろ慶彦の方が緊張している。
大津から京都に向かうには、JRと京阪電鉄とがあるが、あかりは京阪を気に入っていた。
9時までに入室するために、余裕をもって7時に家を出る。
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