3学年だより「胸をはる(2)」
映画「ホリミヤ」は、同じ教室にいて全く接点がなさそうな二人の男女高校生が、いつしか心を通わせていく様子を描いている。
宮村くんは、典型的な陰キャ。顔を覆い隠す長髪、毎日学ランを着て登校し夏でも脱がない(脱げない事情があるのだが)。休み時間は一人で過ごし、自分から誰かに声をかけようとはしない。
同じクラスの掘京子さんは、眉目秀麗で勉強もできて気立てもいい、キラッキラな女子高生だ。
全く接点のなかった二人だが、迷子になった堀さんの弟を宮村君が助けたことをきっかけに、仲良くなる。宮村くんは、弟くんにせがまれて、堀さんの家に遊びにいく。
彼女の家は、普段は両親が不在で、弟の面倒や家事の一切を担当するのが堀さんだった。
学校とはちがい、すっぴんでエプロンをして台所に立つ宮村さんを見て堀君は驚く。
あちこちにピアスをつけロックなジャンパーで訪れた堀くんに宮村さんも驚く。
二人が学校でも時折会話するようになったある日、宮村くんの唯一の友人から、「おまえ、堀さんとつきあってるのか?」と尋ねられる。
宮村は「そんなわけないだろ、第一おれとじゃ釣り合わないじゃないか」と答える。
その言葉を耳にした堀さんは、宮村に詰め寄る。
「ねぇ、ほんとにそんなふうに言ったの? おかしいよ、そんなの。自分のことつりあわないとか、二度とそんなふうに言うんじゃないわよ!」
「おれとは釣り合わない」――。彼女は自分よりもヒエラルキーのはるか上だから、というようなニュアンスで、堀くんは言ったのだ。
謙虚な態度と言えなくもないが、普通に友人として付き合っているつもりの相手が、そんな感覚だったと知ったなら寂しいにちがいない。
堀くんの気持ちも理解できる気はした。
長く生きていると、すごい人に出会う。
何をとっても自分はかなわない、足下にもおよばないと思えるような人に。
その才能、実績、仕事能力、性格のよさ、スタイルのよさ、えもいわれぬオーラ、それらを鼻にかけない態度、周囲から慕われる様子……。
それに比べて自分はどうだ、すべてが劣っていて、追いつけることなど一つもない。
そう感じると、仮に仲良くなれても、「仲良くしてくれてるのは、きっと表面だけにちがいない」などと考えてしまう。
しかし、その考えは相手に対して失礼だ。
そういうふうに人と付き合う人と、見なしたのだから。
「あいつ暗いし面倒くさそうだから、話しかけねぇよ」と扱われている宮村くんを、堀さんは学級委員だから仲良くしてあげたのではない。
弟と遊ぶ時の、学校ではみせない優しい感じに、惹かれていくものを堀さんは感じていた。
キラキラJKではなく、エプロンをして夕飯の支度をする堀さんに、宮村君も心惹かれていた。
堀さんはけっして、宮村くんを相手して「くれてる」わけではなかった。
映画「ホリミヤ」は、同じ教室にいて全く接点がなさそうな二人の男女高校生が、いつしか心を通わせていく様子を描いている。
宮村くんは、典型的な陰キャ。顔を覆い隠す長髪、毎日学ランを着て登校し夏でも脱がない(脱げない事情があるのだが)。休み時間は一人で過ごし、自分から誰かに声をかけようとはしない。
同じクラスの掘京子さんは、眉目秀麗で勉強もできて気立てもいい、キラッキラな女子高生だ。
全く接点のなかった二人だが、迷子になった堀さんの弟を宮村君が助けたことをきっかけに、仲良くなる。宮村くんは、弟くんにせがまれて、堀さんの家に遊びにいく。
彼女の家は、普段は両親が不在で、弟の面倒や家事の一切を担当するのが堀さんだった。
学校とはちがい、すっぴんでエプロンをして台所に立つ宮村さんを見て堀君は驚く。
あちこちにピアスをつけロックなジャンパーで訪れた堀くんに宮村さんも驚く。
二人が学校でも時折会話するようになったある日、宮村くんの唯一の友人から、「おまえ、堀さんとつきあってるのか?」と尋ねられる。
宮村は「そんなわけないだろ、第一おれとじゃ釣り合わないじゃないか」と答える。
その言葉を耳にした堀さんは、宮村に詰め寄る。
「ねぇ、ほんとにそんなふうに言ったの? おかしいよ、そんなの。自分のことつりあわないとか、二度とそんなふうに言うんじゃないわよ!」
「おれとは釣り合わない」――。彼女は自分よりもヒエラルキーのはるか上だから、というようなニュアンスで、堀くんは言ったのだ。
謙虚な態度と言えなくもないが、普通に友人として付き合っているつもりの相手が、そんな感覚だったと知ったなら寂しいにちがいない。
堀くんの気持ちも理解できる気はした。
長く生きていると、すごい人に出会う。
何をとっても自分はかなわない、足下にもおよばないと思えるような人に。
その才能、実績、仕事能力、性格のよさ、スタイルのよさ、えもいわれぬオーラ、それらを鼻にかけない態度、周囲から慕われる様子……。
それに比べて自分はどうだ、すべてが劣っていて、追いつけることなど一つもない。
そう感じると、仮に仲良くなれても、「仲良くしてくれてるのは、きっと表面だけにちがいない」などと考えてしまう。
しかし、その考えは相手に対して失礼だ。
そういうふうに人と付き合う人と、見なしたのだから。
「あいつ暗いし面倒くさそうだから、話しかけねぇよ」と扱われている宮村くんを、堀さんは学級委員だから仲良くしてあげたのではない。
弟と遊ぶ時の、学校ではみせない優しい感じに、惹かれていくものを堀さんは感じていた。
キラキラJKではなく、エプロンをして夕飯の支度をする堀さんに、宮村君も心惹かれていた。
堀さんはけっして、宮村くんを相手して「くれてる」わけではなかった。