台風などが通過するたびに死者が出る(今回の台風8号は今のところ3名)。
気象現象は地震と違って、予測と実況ができるのだから、死者ゼロにならないものか。
もっとも、戦後などに比べれば台風被害は格段に減少しているが。
死者ゼロにならない一番の理由は、土砂災害の危険地帯に住宅が軒を連ねているためだ
(南木曽町の土石流を起こした沢も、もともと土砂流出量が多かったらしい)。
そもそも日本の70%以上は山地で、そこの川沿いや山腹に、
すなわち土石流の通り道に人がへばりついて住んでいる限り、土砂災害は減らない。
ならば、みんなこぞって広い沖積平野(関東平野、濃尾平野、大阪平野など)に住んだ方がいいかというと、そうでもない。
沖積平野は地盤が弱く、地震被害にあいやすい。
もともと河川の洪水の跡だから、洪水被害も潜在的にある。
しかも海沿いの低地は津波被害も加わる。
日本の70%以上は毎年の台風による土砂災害にあいやすく、残りの20数%の沖積平野は地震被害にあいやすい。
比較的安全なのは、山地と平野の中間にわずかに残る「台地」のみ
(たとえば東京では武蔵野台地。ただし丘陵になるとそこは土砂災害の危険)。
ここは水利が悪いので、もともと開けてこなかったし、面積が狭いので、多くの人は養えない。
こう考えると日本って結構住みにくいんだな。
いや、むしろわれわれは災害のリスクとともに暮してきたのだ。
大地震があっても太平洋側に住み、雪害があっても日本海側に住む。
草食動物の群れのように、一定の犠牲は折り込み済みで、集団的に見れば繁栄する。
それが生き物の世界のリアルなのかも。
死者を”減らす”ことはで現実的に可能であっても、
究極のゼロに達するためのコストは無制限なものとなってしまう。
完成までに数百年かかる首都圏のスーパー堤防の建設が議論の対象となるわけだ。
人口密度の高いわが国ならば、0メートル地帯や山の谷あいに住むなとは言えない。
ならば、次善の策として、危険に対して敏感に反応するようにするしかない。
これを次回に考えたい。