4日の私の主目的は、飯舘村内のより細かな放射線の線量を計測すること。
水平的だけでなく鉛直的にも細分化して測りたい。
とりわけ土壌の除去効果を確認したい。
飯舘村役場周辺
まずは、モニタリングポストのある村役場(村の中央部にある)で計測。
γ線のみを測るポストが3.7μSv/hr(以下同単位)を示す同じ場所を私の測器(アメリカ製の Inspector+)ではおよそ4。
ポストの足元の地表の値は10と地上の2倍強。
役場の人の許可を得て土のサンプルを採取する(表土除去効果を実験するため)。
建物の壁面はどうかと測ってみると2と空気中より低い(余分な付着がない)。
役場の2階に上がって非常口に出て測ると1.1。
これが地表の影響がない純粋な空気中の値とみなせるなら、
表土を除去することで実現できる値ともいえる。
ついでに、鉄筋の役場内(一階)では0.2。
この値は、地上ならば栃木県の那須や今市のレベル。
計測の経験上、外の値が高いほど建築物の遮蔽効果が発揮される。
長泥
南の浪江町に接するここは飯舘村で最も線量が高いことがわかっている。
なので、ここに向かう時、皆で防護服を着る(私は土いじりをするので、さらに足まわりの防御を厳重にした)。
十字路にある長泥のモニタリングポストと同じく13を越えた。
いよいよ我がガイガーカウンタにとって未経験の線量の世界に突入した。
住民の老婦人(まだ人が残っている!)が、家を測ってくれと言ってきたので、ついていく。
家の若い者は避難したが、老婦人はここに残るのだという。
家の前の土の地表を測るとあっというまに45に上がった。
この値に私自身驚くが、地表は地上の4倍程度という私の経験則には合致。
ついでに室内を測らしてもらおうと玄関に入る。
玄関の扉を閉めて測ると一挙に減って4。
「室内にいれば、大丈夫」と伝えた。
その隣家も測ってほしいと言われ、またついていく。
隣家の人にも地表が高い事を示すために、家の前のコンクリートの路上を測ったら、
なんと120(かくも簡単に3桁に達するなんて…)。
土よりもコンクリート面の方がずっと高いのはなぜか
(ちなみに道路のアスファルトはもっと低い。車のタイヤがもっていくせいもあろう)。
こちらも屋内を測らしてもらうと、2~3の値。
ついでに、子牛のいる牛舎も測ると、ほぼ同じ値(餌のワラも同値)。
ということは、屋外の地面から遮断された場所の値は長泥といえども2~4μSv程度なのだ。
ここの人も牛の世話をするから避難しないのだという。
長泥に残っている人は飲料に地下水を使っているという。
今はまだ問題ないだろうが、今後はどうだろうか(飲み水は役場に行けばミネラルウォーターをもらえる)。
家の前の畑で自家用の作物を作っているが、作物の内部は測れないので、
食べる前に検査してもらうように進言した。
長泥で地面のサンプルを取る予定だったが、あまりの数値の高さにびびって採らなかった。
比曽と蕨平
比曽は長泥から比曽川沿いにほぼ真西に行ったところ、
川沿いの道路では14と高く、川から離れて南に少し入った集落では8。
土の地面では25で、コンクリートの私道ではやはり109と高い。
ここにも残っている人がいた。
避難所に行ったが生活しづらく戻ってきたという。
比曽とは正反対の長泥から川沿いに東に行ったところが蕨平。
そこの分校跡での地上は12。
これらの計測で、予想と異なったのは、
長泥だけが高いのではなく、比曽も蕨平も南部は皆高いということ。
高い線量帯は、海風にのって浪江町から長泥に入り、そのまま国道399号に沿って北西に分布しているものと思っていた。
SPEEDIでも同様なシミュレーション結果を出している。
ところが実際には、長泥に達した放射性物質の多くは、北の山に阻まれて、谷に沿って左右に分流し、西の比曽も東の蕨平も高くした。
だから長泥より北(役場の方)はぐっと値が下るのだ。
計測する前は、長泥からの北上ルートしか頭になかった。
浪江町
蕨平から30km圏内に入り、峠を越えて浪江町に入る。
石小屋という所で、路上に犬の親子がいて、人がまだいる家があった。
そこで測ったら地上で15。地表は車道上で100,道脇の土で150。
地上に較べて地面の堆積分が多くなっている(人や車が通らない所は堆積が最大だろう)。
赤宇木という集落は誰もいないが、犬と猫が残っていた。
ここの地上は20。
そして土の地面を測ったら、200。
あまりの高さにがく然として、立ち上がれなかった。
車で20kmの検問所まで行く。
そこで地上を測ったら、40を越えた。
マスクはしているが、40μSv/hrの空気を吸うのは初めて(人生でこれっきりなのを祈る)。
舗装された道路上で地面を測る必要もないので、急いで引き返す。
表土除去効果の現場実験
赤宇木に戻ると、餌も水もなくなった檻の中にニワトリの群れがいるのを発見(前の記事に詳細)。
その対応が一段落した間、私は、表土の除去効果を実験したくなった。
そもそも役場などでサンプルを採ったのは、現場では周囲の表土の影響を除去した計測が難しいと思ったからだが、
ここの土は値が高すぎて持ち帰れないので、現場でやることにした。
ある民家前の踏み跡のない土の表面は220。
1cm掘ると、表土とは異なる黒っぽい湿った土がでてくる。
そして値も40近くに下がる(つまり周囲の影響を受けていない)。
2cm掘ると、20近くになり地上とほぼ同じ値。
3cm掘ると値は12に、地上よりも低い値になった。
他の場所でもやってみたが、やはり2cmで地上並になった。
確認はこれで終わりにしたが、
きっと7cmほど掘れば、原発事故前の平常値(バックグラウンド)程度になるだろう。
表土の除去効果を確信した。
役場と比曽でサンプルを採ったが、ここでの確認で充分だ
(ここと較べると、1桁の値での除去効果なんて”誤差”に見えてしまう)。
以上をまとめるにあたっては、地点差よりも、同一地点での鉛直差を問題にしたい。
○データが公開されている地上(1-1.5m)より地表面の値がかなり高い。
○とりわけ、人や車が通行しない道や道脇は地上の10倍になる。
○2階は地上の1/3程度に下る。
○屋外に対して屋内(牛舎なども)はかなり低い。
○地中は2㎝以下で地上以下になる。
すなわち、
●地表に堆積がない牛舎や玄関内は地上値も低い。
●地表から遠い2階はさらに低い。
●地表の堆積物を除去すると、地面も格段に下がる。
ということで、村内の値を実質的に高めているのは、地表の堆積分(主にセシウムだろう)といえる。
水平的だけでなく鉛直的にも細分化して測りたい。
とりわけ土壌の除去効果を確認したい。
飯舘村役場周辺
まずは、モニタリングポストのある村役場(村の中央部にある)で計測。
γ線のみを測るポストが3.7μSv/hr(以下同単位)を示す同じ場所を私の測器(アメリカ製の Inspector+)ではおよそ4。
ポストの足元の地表の値は10と地上の2倍強。
役場の人の許可を得て土のサンプルを採取する(表土除去効果を実験するため)。
建物の壁面はどうかと測ってみると2と空気中より低い(余分な付着がない)。
役場の2階に上がって非常口に出て測ると1.1。
これが地表の影響がない純粋な空気中の値とみなせるなら、
表土を除去することで実現できる値ともいえる。
ついでに、鉄筋の役場内(一階)では0.2。
この値は、地上ならば栃木県の那須や今市のレベル。
計測の経験上、外の値が高いほど建築物の遮蔽効果が発揮される。
長泥
南の浪江町に接するここは飯舘村で最も線量が高いことがわかっている。
なので、ここに向かう時、皆で防護服を着る(私は土いじりをするので、さらに足まわりの防御を厳重にした)。
十字路にある長泥のモニタリングポストと同じく13を越えた。
いよいよ我がガイガーカウンタにとって未経験の線量の世界に突入した。
住民の老婦人(まだ人が残っている!)が、家を測ってくれと言ってきたので、ついていく。
家の若い者は避難したが、老婦人はここに残るのだという。
家の前の土の地表を測るとあっというまに45に上がった。
この値に私自身驚くが、地表は地上の4倍程度という私の経験則には合致。
ついでに室内を測らしてもらおうと玄関に入る。
玄関の扉を閉めて測ると一挙に減って4。
「室内にいれば、大丈夫」と伝えた。
その隣家も測ってほしいと言われ、またついていく。
隣家の人にも地表が高い事を示すために、家の前のコンクリートの路上を測ったら、
なんと120(かくも簡単に3桁に達するなんて…)。
土よりもコンクリート面の方がずっと高いのはなぜか
(ちなみに道路のアスファルトはもっと低い。車のタイヤがもっていくせいもあろう)。
こちらも屋内を測らしてもらうと、2~3の値。
ついでに、子牛のいる牛舎も測ると、ほぼ同じ値(餌のワラも同値)。
ということは、屋外の地面から遮断された場所の値は長泥といえども2~4μSv程度なのだ。
ここの人も牛の世話をするから避難しないのだという。
長泥に残っている人は飲料に地下水を使っているという。
今はまだ問題ないだろうが、今後はどうだろうか(飲み水は役場に行けばミネラルウォーターをもらえる)。
家の前の畑で自家用の作物を作っているが、作物の内部は測れないので、
食べる前に検査してもらうように進言した。
長泥で地面のサンプルを取る予定だったが、あまりの数値の高さにびびって採らなかった。
比曽と蕨平
比曽は長泥から比曽川沿いにほぼ真西に行ったところ、
川沿いの道路では14と高く、川から離れて南に少し入った集落では8。
土の地面では25で、コンクリートの私道ではやはり109と高い。
ここにも残っている人がいた。
避難所に行ったが生活しづらく戻ってきたという。
比曽とは正反対の長泥から川沿いに東に行ったところが蕨平。
そこの分校跡での地上は12。
これらの計測で、予想と異なったのは、
長泥だけが高いのではなく、比曽も蕨平も南部は皆高いということ。
高い線量帯は、海風にのって浪江町から長泥に入り、そのまま国道399号に沿って北西に分布しているものと思っていた。
SPEEDIでも同様なシミュレーション結果を出している。
ところが実際には、長泥に達した放射性物質の多くは、北の山に阻まれて、谷に沿って左右に分流し、西の比曽も東の蕨平も高くした。
だから長泥より北(役場の方)はぐっと値が下るのだ。
計測する前は、長泥からの北上ルートしか頭になかった。
浪江町
蕨平から30km圏内に入り、峠を越えて浪江町に入る。
石小屋という所で、路上に犬の親子がいて、人がまだいる家があった。
そこで測ったら地上で15。地表は車道上で100,道脇の土で150。
地上に較べて地面の堆積分が多くなっている(人や車が通らない所は堆積が最大だろう)。
赤宇木という集落は誰もいないが、犬と猫が残っていた。
ここの地上は20。
そして土の地面を測ったら、200。
あまりの高さにがく然として、立ち上がれなかった。
車で20kmの検問所まで行く。
そこで地上を測ったら、40を越えた。
マスクはしているが、40μSv/hrの空気を吸うのは初めて(人生でこれっきりなのを祈る)。
舗装された道路上で地面を測る必要もないので、急いで引き返す。
表土除去効果の現場実験
赤宇木に戻ると、餌も水もなくなった檻の中にニワトリの群れがいるのを発見(前の記事に詳細)。
その対応が一段落した間、私は、表土の除去効果を実験したくなった。
そもそも役場などでサンプルを採ったのは、現場では周囲の表土の影響を除去した計測が難しいと思ったからだが、
ここの土は値が高すぎて持ち帰れないので、現場でやることにした。
ある民家前の踏み跡のない土の表面は220。
1cm掘ると、表土とは異なる黒っぽい湿った土がでてくる。
そして値も40近くに下がる(つまり周囲の影響を受けていない)。
2cm掘ると、20近くになり地上とほぼ同じ値。
3cm掘ると値は12に、地上よりも低い値になった。
他の場所でもやってみたが、やはり2cmで地上並になった。
確認はこれで終わりにしたが、
きっと7cmほど掘れば、原発事故前の平常値(バックグラウンド)程度になるだろう。
表土の除去効果を確信した。
役場と比曽でサンプルを採ったが、ここでの確認で充分だ
(ここと較べると、1桁の値での除去効果なんて”誤差”に見えてしまう)。
以上をまとめるにあたっては、地点差よりも、同一地点での鉛直差を問題にしたい。
○データが公開されている地上(1-1.5m)より地表面の値がかなり高い。
○とりわけ、人や車が通行しない道や道脇は地上の10倍になる。
○2階は地上の1/3程度に下る。
○屋外に対して屋内(牛舎なども)はかなり低い。
○地中は2㎝以下で地上以下になる。
すなわち、
●地表に堆積がない牛舎や玄関内は地上値も低い。
●地表から遠い2階はさらに低い。
●地表の堆積物を除去すると、地面も格段に下がる。
ということで、村内の値を実質的に高めているのは、地表の堆積分(主にセシウムだろう)といえる。