今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

緊急事態の対応ができない人たち

2011年05月29日 | 防災・安全
JR石勝線での特急火災では
トンネル内に停車して一時間以上たっても
乗客への避難指示がいっこうに出ず、
危険を察知した乗客が自主的に避難したという。
乗務員の(無)指示を無視して避難行動に出なかったら、
大惨事になっていたかもしれない。
このことを知って、寒気がした。

災害が起きているのに、迅速な避難誘導ができないのはなぜか。
今起きている事態の危険性が正しく認識できないためだろう。
なぜ正しく認識できないのか。
多くの場合、「正常性のバイアス」に陥っているためだ。

この概念は、私が尊敬する防災心理学の第一人者・広瀬弘忠先生の
『人はなぜ逃げ遅れるのか』(集英社新書)で紹介されている防災心理学の最重要概念で、
緊急事態でも「たいしたことない(正常事態)」と解釈してしまう心理傾向を指す(その結果、避難が遅れる)。

ただ広瀬先生の本は新書とはいえ、
心理学実験(室内に煙が入ってくるという今回の事故と似たような設定)の説明などやや専門的なので、
山村武彦氏(防災システム研究所所長)の『人は「自分だけは死なない」と思っている』(宝島社)でもいい。

それと同時に、人々を管理する側にはいまだ「パニック神話」という誤った認識が生きている。
すなわち、緊急事態であることを人々に告げると、無知蒙昧な群衆はパニックに陥り、
阿鼻叫喚の大混乱に陥るという、群衆心理に対する誤った思い込みだ。
実際には、群衆的パニックには発生条件が知られており、
緊急事態であるという情報提供だけではパニックは発生しないことはわかっている。
事実、「緊急地震速報」でパニックが起きないように
(最近は”空振り”が多いので「正常性のバイアス」に陥りそう)。
むしろ、情報の公表が遅れて、危険がより切迫したほうがパニックになりやすい。

つまり、災害被害を拡大するのは、「正常性のバイアス」による事態の緊急性の見落としと、
「パニック神話」の誤信念によって実情を公表することの遅れによる”人災”部分があるといえる。

その上、組織的隠ぺい体質や連繋不足があったりしたら
…て、それってこの二ヶ月間起きていることかも