10年物なのに若き酒

2014-03-02 11:06:31 | お酒
フラスクボトルの酒も飲みほして、家にあるウイスキーの種類が激減した。
正月にグラッパをお土産に買った他はここんところ安い酒ばかり買っている。
久しぶりに地方色豊かなウイスキーを買ってみようか。
なんて血迷ってアイラのシングルモルト、アードベッグの10年物を買ってしまった。
うわあ、いいのか?
いいのだ。



食後、さっそく封を切る。
グラスに注いで驚いた。
どんな樽を使って貯蔵していたのだろう、とても淡いレモン色。
ほんとに蒸留酒なのか?、少し濁っているのか透明度は低い。
こんなウイスキーが高値で売られていいのか。
琥珀色で透明な、きれいに作られたウイスキーしか知らない身には、少し白く見えるだけでどぶろくの様に見えてしまう。



リーズナブルなスタンダードウィスキーに比べれば、はるかに年代物の10 YEARS OLD。
なのに匂いは若々しい。
若い故に深みは感じられない。
が、その爽やかな香りは複雑玄妙。
ボトル一度きりの封の切りたて時の香りを何度も嗅ぎ、何度も陶然とした。
どれだけの香り成分が含まれているのか。
ふくよかさの芽がいくつもいくつも伸び始めていた。



口に含むと、生まれて10年経過した味わいがあるにもかかわらず、ここでも明らかに若く感じる。
しかし飲んだ後の余韻の豊かさ長さは年代物であるが故。
これらアンバランスな発展途上の旨味がおもしろい。
やはりもっと熟成させねばいけないだろう。
しかしどうすればこんなにゆっくりと醸すことができるのだろう。



この原酒の伸び代は18年、25年とあるのでは。
18年くらいしてようやく熟成し、25年で老成といったところか。
私が酒代を奮発して飲めるのは12年物がいいところ。
こんなこと書いておきながら18年物なんて飲んだことはない。
が、この原酒なら思いっきり背伸びして18年物、25年物を買って飲んでもいいかな、飲んでみたいな、と思わせる。
家にあるレモン・ハートを引っ張り出してきてページをめくってみると、アードベッグには17年物、29年物なんてのがあるらしい。



すでに旨いこの酒に刻の深みを加えたならどうなるのだろう。
空恐ろしい。
年を置き、今芽生え始めている予兆がどうなるのか想像をたくましくする。
気分は才能豊かな若き芸術家を見守るパトロンのそれだ。
おもしろき酒である。
こんなのに出会うとやはりシングルモルトを飲まないといけないな、と思う。