心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
歌意: 心ならずも、この辛くはかない世に生きながらえていたならば、
きっと恋しく思い出されるにちがいない、この夜ふけの月であるよ。
作者: 三条院 976~1017冷泉天皇の第二皇子(居貞いやさだ親王)
在位5年で譲位。その翌年に崩御。
『後拾遺集』の詞書に、
「例ならずおはしまして、位など去らむと思しめしけるころ、
月の明かりけるを御覧じて」とある。
「例ならず」は、病気であることをさす。
三条院は眼病を患っていた。
帝位を去ろうとしたころに、明るい月を見て詠んだ歌である。
三条院は、25年にわたる長い東宮時代を経て即位したが、
わずか5年の在位中に2度も内裏が炎上、
また、藤原道長が先帝一条院とわが娘彰子との間に生まれた皇子を
早く即位させようと画策して、
この三条院の退位を迫ってくるという状況下にもあった。
美しい月への感慨を詠みながら、
現世への絶望的な思いがにじみ出ている歌である。
※参考 文英堂 「原色小倉百人一首」
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