羽生さんに、多少、似ているかな
羽生永世名人が棋界の全ての最高位の永世称号を獲得したというニュースが伝えられた。永世称号は、各種棋戦の優勝回数が数回から10回獲得すると与えられるもので、今回、竜王戦で渡辺竜王を降し優勝し、現在7つある棋戦の全ての永世称号を獲得することになったのである。常人には理解しがたい空前の偉業である。
羽生さんの凄さは、色々言われているが、私のようなアマチュアの初段くらいの人には、どこがどうすごいのか、見当もつかないのだが、テレビでの勝負や感想戦を見聞きする限りは、ごく平易な指し手を選ぶのだな、と思う。卓越した構想とか、度肝を抜くような新鮮な手は選ばないのである。
それで強いのだから、将棋という盤ゲームの本質には平易明快というような棋理が潜んでいるのではないのだろうか。
また羽生さんの凄さは、同世代の三羽ガラスと勇名を馳せた佐藤康光、森内俊之らが若手のコンピュータ世代に凌駕されて言ったのに対し、これをビクともせず跳ね返してきたことである。盤ゲームにコンピュータが導入され、コンピュータを教材にして学んできた若い世代が主流となっている現下、この活躍はすごいとしか言いようがない。というのもギャンブル性のほとんどない盤ゲームではコンピュータが圧倒的に強い。そのコンピュータを自在に教材に選べる若手は強いのが当然だからだ。
羽生さんはタレント性もあるので、将棋以外の著作もあるし、いろいろとインタビューにも答えている。それらをすべて見ているわけではないので、重複するかもしれないが、できることなら私は羽生さんに次の2点を質問したい。
1)トップレベルの棋士がコンピュータに負けているが、その敗因はなんなのか。
2)若手のコンピュータの活用方法に何か問題があるのではないか。コンピュータはどう活用するのが、いいのか。
羽生さんは柔軟な思考を持っていることもあって、コンピュータに自分たちの将棋が追いつかなくなったら、現在の9×9の盤面を9×10にすればいいのではないか、などといっている。将棋とは関係ないが、プロ野球の監督だった故三原脩は90度のヒィールドを100度に広げるなど、提言することがあった。
道を極めることは道を定めるルールにまで視野が及ぶのだなど思うことである。【彬】