先日、雨の上がった朝、ランニング練習で小金井公園に出かけた。
この公園で紅葉の美しいのは銀杏だ。今が大銀杏の木が紅葉の真っ盛り。 そのうち雲の合間から日が差し込み、銀杏の葉を照らした。黄色い葉は照り返し、神々しいほどの美しさ。その輝きは、宗教的な何かを感じさせるほど。この日は、湿度が上がり、いつもこの時期に感じる乾燥した冬の匂いではなく、甘い杉の香りがする。山登りをするとよく経験する、あの山の杉の香と同じ。隣にヒマラヤスギが並んでいる。
このように美しい、光り輝く銀杏を見るのは久しぶりのことだ。しばらく眺めていると、 光の中に、天使が降りてくるのが見える。実際の眼ではなく、心の中の眼では見えるのだ。
じつは、この数年、ランニングをすると呼吸が苦しくなり、走ることが苦痛になることが多かった。そして、それとは別のことなのだが、循環器系に小さな病がみつかり、先月治療したのだが、その副産物のようなかたちで走るときの呼吸が楽になっていった。
若い頃から続けているランニングは自分の生活の一部になっており、呼吸の苦さからの解放は、体全体を軽くし、気持ちを高揚させる。そんな精神状態なので、銀杏に降りしきる光の中に天使の姿を見ることになったのだと思う。
師走になり、この一年をふりかえる。天使を見たことが、はればれと気分を良くし、来年に期待感をもたせるのだ。
2019年12月12日 岩下賢治