ぼくらの日記絵・絵心伝心 

日々の出来事や心境を絵日記風に伝えるジャーナリズム。下手な絵を媒介に、落ち着いて、考え、語ることが目的です。

疑問が多すぎる世論調査

2016年07月06日 | 日記

 誰が植えたか、並木の根もとのグミ。実が熟したので一粒失敬しました。


 NHK始め、各主要メディアは毎月決まって政治意識についての世論調査を実施し、公表している。そして安倍内閣の支持率が上がったとか下がったとか、あるいは改憲に賛成か反対かなど、調査結果を公表している。選挙前など、そうした数値の発表が投票行動に微妙に反映されているようだ。大衆民主主義の時代では、こうした公共メディアの情報発信は有力な判断材料になっていることは、否めないところだろう。
 ところで、世論調査とは、いったいどのように実施されているのであろうか。NHK始め、各メディアはその世論調査の方法について、概要は公表しているものの詳しい説明はしていない。
 例えばNHKの、近々の調査である「憲法についての世論調査」場合は次のようになっている。
 
 【調査の概要】  調査期間 2016年4月15日(金)~17日(日) 

            調査方法 電話法(RDD)

         調査対象 全国の18歳以上の男女 2,425人

             ※平成28年熊本地震のため熊本県は除外、大分県は中断
                回答数(率) 1,523人(62.8%)

 RDD法というのは、Random Digit Dialingの略で、対象となるサンプルを電話番号から一定数ランダムに抽出する方法である。
 電話が大多数の家庭に普及した時代、このサンプリングは一定の科学的信頼があった。だが、今日、この方法は本当に妥当なのだろうか。例えば、電話を公開していない人の場合はどうなるのか。むしろそのほうが多いのではないか。また、電話番号は家族で使用しているから、その場合の対象者は誰になるのか。不在電話の場合、あるいは固定電話を持っていない対象者はどうするのかなど、問題が次々と出てくる。
 さらに、全国から該当者を2,425人選んだとして、それが全国の投票者数という巨大な母数とどういう確率関係になるのか、紹介がない。さらには、回答率の62.8%という結果は、本来、数値を読む際の前提条件となるはずだが、その配慮はどうなっているのか、などなど根本的な問題が次々と出てくる。
 さらに問題なのはワーディング、つまり設問の仕方によるバイアスと形式化された回答方法などをどう考えるのか。NHKの場合は、放送文化研究所が長年にわたって社会調査を行ってきており、その実績を背景にしての調査であろうが、そのほかの民間主要メディアの場合は、こうした統計学上の問題をどのように考えているのか。
 世論調査は、社会心理学の方法のひとつとして広く実施されているが、それは大衆社会が確立した、20世紀後半期に有効だった嘗ての方法であり、今日のような情報社会では通用しない調査方法なのではないかと、私は思っている。

 データとか事例というのは、科学的判断の前提をなすものだが、文化や社会を対象とした場合、鵜呑みにしてはいけないものが大多数だ。そのうえ、そうした情報が虚偽やデマゴーグの温床になって、またたくの間に流通するのが現代である。いま、参議院選、東京都知事選と続く政治の季節に、流布されるデータのついては、私たちが心して置きたいもののひとつである。【彬】

 

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EUって、未来ではなかったのか?

2016年07月03日 | 日記

都会の水辺にセリに混じってオモタカを見つけた。めずらしいので描く。

 イギリスが国民投票によって、EU脱退が可決したことは、世界中に大きな反響を呼んだ。著名人も各人各様、またメディアもたいそう、とりあげている。それだけ衝撃的な出来事だった。

 しかし、私にはいずれのコメントにも聴くべきものがない。

 なぜなのか。それはEUが私たちの来るべき未来だったことに、まったく触れていないからである。

 国家が国家の枠を超えて人類として共同化すべき未来への第一歩を踏み出したのがEUだったはずだ。特に社会主義、共産主義の理念が崩壊してして以来、先進社会の行くべき方向を示す理想が、ここに掲げられていた。最初は市場の開放として、そして金融の統一としてのユーロ、さらに特許権などの調整と、ドイツ・フランス・イタリアといった主要国から、東欧、中東まで幅広く統合する勢いだった。当初、傍観していたイギリスもそうした動きに加わざるをえなくなって、EUは理念だけでなく実質性を積み重ねてきたように見えた。だから、今回のイギリスの離脱騒動は、その理想のどこが問題で、なぜ停滞してしまったのか、を問うているはずなのだ。

 情報などによると、結局、各国は自国の利害をお互いに押し付けあって、中東の崩壊による移民・難民に対処できなくなったということが大きな理由のようだ。大量の移民・難民はどんな国でも受け入れは困難にちがいない。だから表面的には移民や難民の発生、その対処の方法が問題となっている。そういう面から言うと中東は火薬庫であり、しかも国民国家というものが成立しておらず、部族が国家を代替している。あるいは特定部族が専制化している。そこに巨大な石油利権が絡む。危なかしいことこのうえないのだ。

 人類の未来のはずである国家統合が、移民・難民問題を経済的、思想的に組み込むことができなかった、つまり統合とは名ばかりで、国家を超えることができなかったということが、今回の最大の問題なのだ。国家を超えるためには通貨の統一などでは解決されないことなのだ。

 今日の資本主義は、階級対立といった古典的な課題から、生産経済から消費経済に移る時の社会的、経済的な課題を解決できずに流浪している。そこから格差という問題が生ずる。アメリカに限らず経済の活性化を進める手段が、依然として国家主義的な金融緩和というインフレ政策しか提示出来なのもそのせいである。このことに石油問題が重なっていることは衆目の一致するところである。

 とはいえ、消費社会であろうがなかろうが、未来は依然としてEU的な方向にしかないのは、私には明らかなように思えるのだ。【彬】

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