のんびりぽつぽつ

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「八朔の雪-みをつくし料理帖-」

2010年04月29日 16時45分15秒 | ☆本☆
高田 郁 著 ハルキ文庫


上方から様々な事情を抱えて江戸の町に来た澪と、
彼女が作り出す料理を中心に描かれる人情物語。
以下、ネタバレです。未読の方はご注意を・・・・・





ところどころ張られるミステリーを絡めた複線は、だいたいの想像がついて、
ああ、多分・・・って思うことは、とりあえず今の所、想像通り。
だけど、それも心地よく優しく、この物語全体の雰囲気を壊すことはない。
すべてが、大上段に構えるものではない、「庶民」の風景であることに、これほどほっとできるとは思わなかった。

たとえば、ふらりといつも閉店間際に表れる浪人さんは、こんな人だろうな、とか、
謎の花魁はもしかして?とか、
その設定は、どこか今まで読んできた世界に似通って決して目新しいものじゃない。

だけど、それがすごく心地よくて安心できて。

目新しい展開はないなあ・・・と思うのに、何故こうも惹かれるのかな?
将軍様とか歴史の史実とか、そんなものが絡まないからかな?
(武家社会に少し疲れてるかな・・・)

宮部みゆきさんの描く捕物帳の世界にちょっと似ているかもしれない?
坂木司さんのひきこもり探偵にも共通項が?(こっちは現代だけど)
それよりなにより、鬼平だわ!
江戸前の蕎麦屋に浪人さんに裏長屋に・・・!!
そして・・・ふっと顔を出す磐音さんの・・・


なんてね。読んでいる途中で感じることがあるのだけれど、
(実際、吉原のエピソードは磐音と奈緒を思い起こして泣いた・・・八朔。白無垢。。なんだもの・・・・・)
そこに不快感は一切ない。
ちゃんと独立してしっかりとした世界が作られている。
時代小説ばっかり読みすぎな私をして、、、
どこが新鮮!とかじゃないのに、すごくおもしろいんですよ。
久々に、寝る間を惜しんで、っていうかこのところPCから離れられなかったのがPC忘れて読み終わりました。

大絶賛!っていう派手なものではなく、
じんわりとしみじみと、、、よい。
ああ、幸せ・・・

って感じかと。

澪自身は成功か?と思うとあっという間にどん底に突き落とされる・・・その繰り返しなのに。


雲外蒼天(うんがいそうてん)
旭日昇天(きょくじつしょうてん)

幸せだった幼い時代、ふたつの全く違う占いをされた幼馴染の2人の行く末。
苦労を重ね、それでも料理人の道だけは一本道として踏みしめて歩むであろう澪の行く末。
まわりにいる人々の行く末。

先が読みたい。


まだあと2冊。続きがあるらしい。

ということで、久々に「続き!!」と望む作品の登場。