遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

AIIBは成功するのか

2016-06-14 23:58:58 | 中国 全般
 「AIIBは成功するのか?中国でも疑いの声」とタイトルに銘打った記事が目に留まりました。
 ADBとの初の協調融資の決定を報じ乍ら、中国は、アジアの国々のリスクを低く見過ぎていたし、インフラ建設の資金を必要としている国ほど問題を抱えていると指摘。また、中国だけが参加国の利権を貪るという構図では、地元の反発は避けられないとも。
 紙面の都合なのか、具体的論拠が示されず飛躍した論理展開がありながらも(私の理解力不足?)、結論としてその可能性には納得できるので、とりあげてみました。今後の展開で、この論理が正しいとの結論がでるのか注目されます。
 しかし、そんな危険な投資を、ADBが協調実施したのはなぜなのでしょう。そのあたりには触れられていないのですが、ADBにあせりがあるのかと邪推されますし、AIIBは、リスクを半減させつつ国際金融投資のノウハウ習得も出来るので、協調投資は、AIIBにとっては、一石二鳥の大成功だとうけとれるのですが。。
 

AIIBは成功するのか?中国でも疑いの声 ADBと初の協調融資へ、それでも立ちはだかるアジアのリスク | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.6.14(火) 姫田 小夏

 
中国の主導で設立された国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の参加国数が、2016年末までに100近くに拡大する見通しだという。実現すればその規模は、日本と米国が主導する「アジア開発銀行(ADB)」(67カ国と地域が参加)をしのぐ。
 また6月10日には、
AIIBとADBの初めての協調融資が発表された。パキスタンの高速道路建設に対して、AIIBとADBがそれぞれ1億ドルを融資するという。これは中国の勝利を意味するのだろうか。


 AIIBは、中国が提唱する「一帯一路」構想を金融面で支え推進する役割を担う。一帯一路とは、アジアと欧州をつなぐ陸と海の巨大な“シルクロード経済圏”構想だ。
 「『一帯一路』構想はかつての欧米列強のやり方に着想を得たものだ」──こう語るのは、中国経済と60年近く向き合うベテラン研究者の1人だ。

<中略>

 そして21世紀の今、中国が19世紀の欧米列強と同じことをしようとしていると、この研究者は指摘する。つまり、
中国がAIIBによってアジアの新興国を“開港”させ、中国の過剰在庫という“アヘン”を売りつけようとしているというわけだ。

■中国が世界で港の建設に続々と出資
 新興国にとってインフラ建設は最重要課題だが、膨大な建設費がかかる。港湾行政に詳しい専門家は「新興国は自国だけでは予算を確保できないため、日本も多くの円借款などを提供しています」と語る。
 新興国では、インフラ建設に必要な技術も人材も不足している。「日本はアジア、アフリカに技術者を派遣したり、国内に毎年多くの研修生の受け入れるなどサポートしています」(同)。
 日本はODAを通じて、これまで多くの国にインフラ建設の支援をしてきた。しかし近年は、各国の港湾建設において中国のプレゼンスが高まっている。

中国は現在、アジアを中心に港の建設に乗り出している。
パキスタンのグワダル港、アフリカのジブチ港、イエメンのアデン港、バングラデシュのチッタゴン港、スリランカのコロンボ港、モルジブ港、ミャンマーのチャウピュー港、ギリシャのピレウス港など、中国の出資によって建設される港は枚挙にいとまがない。
 中でも
注目を集めるのがパキスタン南西部のグワダル港
である。2013年、中国は同港の港湾管理権を取得し、2015年には同港の経済特区について43年の運営権を取得した。
 グワダル港は西はアラビア海、東はインド洋を結ぶ海上の要衝である。中国はここを「中パ経済回廊」の起点に位置づけ、内陸部の新疆のカシュガルからグワダルまでの約3000キロの陸路開通にも乗り出している。
グワダル港の開発を急ぐ背景には、米国の中東における主導的地位を覆し、エネルギーや軍事面での安全保障を強化しようという狙いがある


■国内でも「AIIBの枠組みは前途多難」の声
 中国政府は「一帯一路」によって「互聯互通(fulian futong)」が実現するという。互聯互通とは、アジア諸国が互いに「連結」することである。
 だが、
中国では「本当に連結できるのか?」という懐疑的な声
もある。

「上海経済評論」(東方早報、2015年9月発行)は、AIIBという枠組みの構築は前途多難であり楽観できないとする論評を掲載した。その理由
の1つに次のような指摘がある。
アジアの政治制度や経済体制、発展水準や文化教育、宗教はみな違う。国によっては政治的に不安定で、部族間の分裂や内乱が発生しているところもある。アジアの多くの国家では賄賂が横行し、法律は十分に機能しない。領土問題を抱える国もある

 その論評は、
インフラ建設の資金を必要としている国ほど問題を抱えている
ことを指摘している。

パキスタンのグワダル港にしても、建設地のバローチスタン州は政情が不安定な地域
である。ここで生活するのは遊牧民のイラン系バローチ族で、国の6割の人口を占めるパンジャブ族とは反目する関係にある。パキスタン政府とも対立し、テロリストも潜伏すると言われている。米シンクタンクによれば、バローチ族は、中国やシンガポールなど外部の勢力が入ってくることを警戒し、国際的な港湾や輸送センターが建設されることに抵抗しているという。
 港の開発とともに闇の土地取引は盛んになり、土地を追われるバローチ族も後を絶たない。グワダル港が晴れて輸送上のハブとなったとしても、恨みを買った部族に襲われる可能性は否定できない。

 いかに
AIIBが「互恵互利」を掲げたとしても、中国だけが参加国の利権を貪るという構図では、地元の反発は避けられない。また、経済効果を“エサ”にして参加国を増やしても、参加国同士の利害は対立
し、連携は深められないだろう。

 AIIBの設立当初、中国は豊富な資金力で押し切れると思ったのかもしれない。しかし、
“アジア連結”のリスクを低く見積もり過ぎていたのではないだろうか。

 中国が投資先として力を入れているのが港湾建設で、数々あるうちの注目されるのは、米国の中東における主導的地位を覆し、エネルギーや軍事面での安全保障を強化しようという狙いの要衝となる、パキスタン南西部のグワダル港なのだそうです。
 中国はここを「中パ経済回廊」の起点に位置づけ、内陸部の新疆のカシュガルからグワダルまでの約3000キロの陸路開通にも乗り出している。そして、ADBとの協調融資で、パキスタンの高速道路建設を行う。記事では、「これは中国の勝利を意味するのだろうか」と問いかけています。グワダル港のリスクある建設に、ADBを巻き込んだのだから、中国の勝利で、ADBは焦ってリスク負担の片棒を担がされたと感じるのですが。

 中国国内で憂慮している例は、「上海経済評論」だそうで、多様でリスクのあるアジア諸国への投資のAIIBという枠組みの構築は前途多難であり楽観できないとの論評だと。インフラ建設の資金を必要としている国ほど問題を抱えているのだと。それはその通りですね。
 グワダル港では、外部の勢力が入ってくることに抵抗する遊牧民族のイラン系バローチ族と、国の6割の人口を占めるパンジャブ族+政府との対立のリスクがあり、開発が進むにつれ土地を追われるバローチ族が増えていて、恨みを買った部族に襲われる可能性は否定できないのだと。
 そこから一気に「AIIBが「互恵互利」を掲げたとしても、中国だけが参加国の利権を貪るという構図では、地元の反発は避けられない」と論理が飛躍しているので、これは中国だけが悪者なのか、パキスタン政府は何故無罪なのかが理解出来ないところです。
 ことほど、中国のインフラ建設計画は、共産主義一党独裁で、国家=党の意向優先で住民への配慮はなく進められるということか推測して読んでいます。つまり、一党独裁国家の国内の流儀で、他国のインフラ建設を進める「一帯一路」と「AIIB」のセットのインフラ投資は、リスクの多い国々で通用するのか。恨みを募らせる層を産むということですね。恨みを買う層は、中国国内でも発生しているのですが。

 インドネシアや米国での高速鉄道建設が、順調に進んでいないことは諸兄がご承知のことですし、これまでに触れてきたことです。
 ADBや日本のODAが、焦らず、現地の利益に繋がる投資を進め、AIIBのリスク負担の片棒担ぎに巻き込まれないことを願います。フットワークよく迅速な対応は求められますが。





  ヒノデキリシマの黄葉


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia






 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 6月13日(月)のつぶやき | トップ | 6月14日(火)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事