著者 江上 剛
出版 幻冬舎文庫
友人に内館牧子『終わった人』を薦めた。その友人から「面白かった」の読後感のコメントとともに、これを逆に薦められた。で一挙に読む。
大過なく銀行勤務を終えて定年を迎えた支店長の最終日の一日が、時間を追って進行する。
登場人物は、デフォルメされて、もうドタバタ。コミックの展開は、もう殆ど三谷幸喜の世界。ひょっとしたらもう映画になっているのかしら。
しかし一方では、経済小説としても面白い。市井の庶民の生活感や銀行への反感、行員群像などを描く中で、金融の仕組みに理解が及んでくる。とはいえ、それは自営業者などには日常そのものであり、私のような勤め人世界の方が異次元なのかも知れない。
著者が、多作の作家であることを知らずにいた。銀行時代、会社経営、テレビ・コメンテイター、と多彩な経歴が、現在の文筆活動に生かされている。
高齢化の日本、気力体力の充実にも拘わらず働く場のない同世代に比べ、著者は何と幸せなことか。羨やんでも詮なきこととは判っているのだが。
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