イタリアのネオ・リアリズムの系譜に位置する傑作。
ベテラン鉄道機関士の一家の生活を、幼い末っ子の男児の目で見た家族の物語。初老の夫婦、働く意欲のない長男、結婚生活が上手く行かない娘、まだ年端のいかない二男。この映画の名作たる所以は、この子役エドアルド・ネヴォラによるところが大きい。
映画の目線が普通の庶民にあてられていることが好感度のゆえか。父親の仕事場や同僚たち。共に繰り出す酒場そして歌。娘の亭主の町場の薬屋。新しい勤め先の洗濯場。長男のひと山上げよう気質とヤクザとの絡み。喜怒哀楽の姿が愛おしい。
この映画を最初に観たのは、学生の時だったろうか。足繁く通った名画座の類だったと思う。洋画の女優というもののイメージの原型が、この映画のシルヴァ・コシナと『第三の男』のアリダ・ヴァリである。イングリッド・バーグマンでもグレース・ケリーでもカトリーヌ・ドヌーブでもない。自身以外ではあった。
【1956年イタリア作品 監督・主演 ピエトロ・ジェルミ】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます