著 者 寺沢 秀明
出版社 論創社
定 価 1728円
「どうしてあの渥美清氏の心を掴み切れたのか、たいした人」だというのが率直な読後感である。氏と著者の心の交流が余すところなく伝わってくる。著者に寄せる氏の信頼感は尋常ではない。
「会おうよ」という連絡は、いつも氏からの電話。いわば勤め人として組織の中で働く著者が、その都度時間を工面して氏のもとに駆けつける。「何か面白いことないか」と問われれば、氏の思いと状況に合うアイテムを探しては同道する。
人生のエンディングを自覚する氏には著者と過す時間がとても大切だったのだろう。それは唯一の癒しの時だったのかも知れない。
「人との付き合いはどうあるべきか」「何をもって自分を語るか」 自己を顧みるとき、様々な思いを去来させる得難い本である。
アマゾンの宣伝文から
「寅さん」晩年の8年間、芸能記者の枠を越えて親交のあった著者が、その『知られざる素顔』を「映画をみる眼」「渥美さんの女優観」「大磯の幽霊」など、豊富なエピソードで明らかにする!
著者「まえがき」より抜粋
共に映画を見、観劇し、美術館を巡り歩いた。春、桜が咲けば花見に出かけ、夏が来れば幽霊を見ようと古屋敷を覗きに足を運んだ。どこかこどもじみたこうどうではあったが、どれも思いで深いひとときであり、私にとって終生忘れられない人生の一コマとなった。そして、今も誇りに思う。
あの渥美さんの語り口を思い起こしながら、私が知る限りの渥美さんを、ここに記したいと思う。
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