Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

くれなずめ

2021-10-27 | 日本映画(か行)
★★☆  2021年/日本 監督/松居大悟

男達のしょーもないわちゃわちゃが本当にしょーもないわちゃわちゃとしか感じられない。喪失を埋める方法が悪ノリというのも時代に逆行しているよう。種々の回想がインサートされるが号泣する程の絆があったかも判然としない。そして全編に漂う何も動いていないような停滞感がキツかった

ここで示されるわちゃわちゃには批評的視点があるのだろうか。それすらもわからない。奇しくも悪ノリを批評的に描いている(と私は感じた)「あの頃。」と対照的。構成されるものの全てが断片的で、全体をつなぐ線が見えてこない。停滞して見えるのはそういうことからかも知れない。

空白

2021-10-13 | 日本映画(か行)
★★★★   2021年/日本 監督/吉田恵輔

父親のモンスター化から人の恨みや好奇心が玉突き事故のように誘発される。唸らされるのは敢えて意図的に見せない部分。父娘の今まではもちろん、万引き直後の店長と花音に何があったか、彼女をはねた女性と母親はどう過ごしていたか。それが空白。観客の中途半端な想像力を拒絶する凄み。

「あなたのためを思って」取る行動に人は救われず、何気ない一言で人は救われる。寺島しのぶと奥野瑛太(マイティ、ワンカットなのにおいしい!)の対比がすばらしい。片岡礼子のあの衝撃の言葉もしかり。他人の空白を他人が埋めることはできない。空白を埋められるのは自分だけなのだ。

愚行録

2021-02-09 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2017年/日本 監督/石川慶

最高に好みの映画。 妬み、嫉み、僻みの大洪水。人間の厭な部分が晒し続けられる120分だが、ソリッドで緊張感のある演出と撮影によって、作品に品格が漂っている。クソみたいな人物たちを冷徹に描き切る客観性、距離感がいい。そして、いつもながら妻夫木聡が最高。映画館で見たかった。

ユージュアルサスペクツな冒頭シーンで本作がただならぬ映画だというのがわかり、テンションMAX。また、キャストが全員最高に厭な奴を熱演。特に関西弁のクズを眞島秀和が演じる意外性が面白い。満島ひかりは貫禄の演技だし、濱田マリの目の演技もすばらしい。キャスティングが100満点。原作読もう!

火口のふたり

2020-12-14 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2019年/日本 監督/荒井晴彦

柄本佑と瀧内公美、2人だけの世界を堪能。震災への負い目。子を産みたいという女の本能。ラストの賢治のセリフ。欲望のまま体を重ねているように見え、命を授かるという性行為の本来の意味に返っていく展開に胸を打たれた。風力発電を背景にしたふたりのラストシーンがとても美しい。

中盤明かされる二人の関係。そして予想外のラスト。原作未読だったのでこの展開は驚いた。エンドロールを見て女性スタッフが多いなと思っていたが、やはり意図的にそうしていたようで安堵した。裸のふたりを撮影したモノクロームの写真がすばらしくいい。カメラマン野村佐紀子。写真集欲しくなった。

きみの鳥はうたえる

2020-08-19 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/三宅唱

男ふたりに女がひとり。心地いい3人の関係。でもそれは長くは続かない。突然炎のごとく函館編。熱情もファムファタルもここにはないけど。なーんも考えずにテキトーに生きてる。そのダラダラが愛おしい。たゆたうような甘やかな時間。壊さないでと困り顔の女のクロースアップ。

石橋静河も柄本佑も、こうした日常系の日本映画の小品には欠かせない存在で自然体の演技がとてもいいが、私は染谷将太に釘付け。このつかみどころのなさは、誰にも真似できない。本作では何の賞にもノミネートされてないのかな? 彼が出てきただけで確実に空気感が変わる。

劇場

2020-07-31 | 日本映画(か行)
★★★★ 2020年/日本 監督/行定勲

身勝手な男に狂わされる女の話という古典。その金字塔は成瀬の「浮雲」だと思う。こんなクズとは早く別れろと念じながら見る。 太宰を令和に放り込んでみたい。又吉氏の思いは見事に映像化された。淀み、溜まる、男の自意識。不快でも共感でもいい。観客もまた自分の淀みに対峙する。

ただし、良くも悪くも東京の映画であり私自身は作品との距離感を感じた。「おろか」「まだ死んでないよ」など敢えて厨二病丸出しのネーミング、そして下北沢。それらをもっとクソダサく見せてくれたら。まだまだオシャンティに見える映像に監督の自意識を感じる。それも距離感の理由の一つ。

ユキサダ作品のいかにも業界人ですよといったムードを感じ取ってしまう自分もたいがい自意識過剰なので、ユキサダ作品がしんどいのだと思う。あと、松岡茉優氏は最高の役者だと思うが、この手の役柄はいささか飽きた。もっと違う役を見たい。

来る

2020-07-01 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/中島哲也

これはハマった! 妻夫木聡のクソイクメンっぷりへのツッコミでご飯三杯はいける。途中退場が残念すぎる。

あと冒頭のタイトルバックがカッコイイ。邦画はもっとタイトルバックに力入れるべき。ニッポンの家族の闇をオカルト仕立てに見せて、ラストは全世界宗教者参加のお祓いフェス。大いに盛り上がる。痛快。

検察側の罪人

2019-11-20 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/原田眞人

WOWOW

大人数映画を多数撮ってきた原田眞人。酒向芳、東風万智子など出演わずかでも輝きを見せる俳優陣多数。演技合戦を楽しんだ。真面目な社会派と見ると突っ込み所満載だがジャニーズ主演を鑑みればこれだけ現政権を揶揄する表現がよくできたなと思う。暗黒舞踏ばりの泣き女は笑った。

脇役陣でいちばん光ったのは松重豊。最近いい人役が多いだけにクセのあるワル役で本領発揮。そして、二宮和也は俳優としての潜在能力を見せつけた。結婚してまた開き直った演技ができるのでは。ジャニーズ主演と公開時スルーしてしまったのを後悔。ちゃんと映画館で見ておくべきだった。

殺さない彼と死なない彼女

2019-11-19 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2019年/日本 監督/小林啓一

普段なら絶対見ない作品だけどTwitterで好評につき観賞。 面白かった。いみじくも先日愛なき森で叫べを見て未だに園さんは自殺サークル当時のノリで死にたい女子高生を描いてるとツイートしたがこれこそが最新版の死にたい女子高生だろう。両者の隔絶ぶりに妙な感慨を抱いた。

ティーン向け映画は飽和状態で危惧する事もあるがこうした良作に巡り会えるならおばちゃんひと安心です。現代の高校生の抑制された生き方を少しでも開放できるなら映画の存在する意味は大きい。高校生が板に付いてる間宮翔太郎の振り幅見直したし、桜井日奈子始め若手俳優陣すばらしかった。

靄のかかったような映像、敢えての逆光撮影など、カメラも非常に意欲的。桐島部活の俳優陣が大きく羽ばたいたように、本作の若手俳優陣の将来がとても楽しみ。

ギャングース

2018-12-12 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/入江悠

(TOHOシネマズ二条)

親にも社会にも見捨てられた少年たちの行き場のない怒りと友情の物語。鈴木大介氏のルポルタージュを元にしているだけあって、貧困の現実、オレオレ詐欺の内情などが実にリアルに描けている。何よりラストのサラリーマンの会話による痛烈な皮肉が効いた。林遣都演じる高田の背景が気になるのでスピンオフしてほしい。とはいえ、最高演技は金子ノブアキのサバイブサバイブ〜だろう。冒頭のあの長回しで一気に作品世界に引き込まれた。
それにしても、こんな力作が公開2週目から1日1回上映とは、あまりに理不尽。初週の出だしと東宝の年末興行が影響しているのだろうが、少年の貧困と暴力を扱う社会的意義の高い作品なのは公開前からわかっていることで、そこは配給会社も腹をくくって対処すべき。単館系で再度上映されることを願う。

カメラを止めるな

2018-07-28 | 日本映画(か行)
★★★★★ 2017年/日本 監督/上田慎一郎

37分の長回しを実現させた気合い。構造転換による大逆転劇。これもそれか!の見事な伏線回収。その伏線回収が緻密かつ爆笑ギャグという驚愕。幾多の困難を乗り越える作り手の熱意と成功のカタルシス。爆笑の後の落涙。全てが完璧。本作を見ずして2018年の映画は語れまい。

構造的なすばらしさもそうだし、映画館における観客の一体感という意味でこれ以上の作品には当分お目にかかれないだろう。そういうことか!と膝を打つ瞬間が全ての観客に同時発生する気持ちよさよ。

二重構造に加えた三重構造目、すなわちエンドクレジットの撮影シーンが実に泣ける。物作りをしている人間なら誰しも感情移入してしまうだろう。

孤狼の血

2018-05-20 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2018年/日本 監督/白石和彌

東映実録路線を見事に現代にバージョンアップ!凶悪や日本でいちばん悪い奴らなどで磨き上げたバイオレンス描写がビッグバジェットで炸裂。蒼々たる役者陣を見事に演出しきった白石監督の手腕も冴える。役所広司の新たな魅力を引き出しているし、やはり松坂桃李がすばらしい。

黒蜥蜴

2018-03-31 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 1968年/日本 監督/深作欣二

みなみ会館閉館興行にて

大阪の映画館で催された乱歩特集で一度見たことがあるのだが、フィルムの劣化激しくぶつっと途切れるところも。とはいえ、ムキムキ銅像の三島由紀夫に接吻する麗しい美輪様を見られるだけでありがたや、ありがたや。丸山明宏時代の美輪様の妖しげな魅力がたまりません。

それにゴージャスで耽美な美術が最高ですなあ。大好きなビアズリーがかなりフィーチャーされています。(版権大丈夫なのか…)うっかり忘れていたが、監督は深作欣二なんだな。いろんな俳優が明智小五郎を演じているが、木村功もなかなかキマっている。京マチ子版の黒蜥蜴見たことないので見てみたいなあ。

犬猿

2018-02-24 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/吉田恵輔

(映画館)

冒頭の引っかけから、吉田監督の意地悪魂が炸裂。
離れたくとも離れられない最も近い肉親きょうだいへの妬み、そねみ、ひがみがスパーク。
縁が切れればラクなのに、できないからマウント合戦。
人間の闇をモロだしにしつつ、やっぱりきょうだいっていいよね、とならないのがまた吉田流。
とはいえ、どんより系かというとそうではなく、兄弟間のドロドロを面白おかしく見せてくれる。
また、吉田監督は端役の演者のキャスティングに非常に巧い。
親戚のおじさん、おばさん、会社の同僚(確か「恋人たち」でも同僚役だった)などが
「こんなやついる」という実在感で迫ってくる。
これが作品のリアリティに大きく貢献している。
個人的には演技派男兄弟より、姉妹の確執に共感。
あの2人はいがみあっているが、でも、心の奥底ではわかり合いたいという気持ちがあるはず。
そう思わせてくれる、2人ともすばらしい演技だった。

ケンとカズ

2018-02-17 | 日本映画(か行)
★★★☆ 2016年/日本 監督/小路紘史

(WOWOW)

近年「北関東ノワール」というジャンルが確立されつつある中、
完全に自費で撮り上げた新人監督小路紘史の気合いが伝わる作品。
とにかく主演ふたりの顔がいい。そして、地方都市の閉塞感が痛い。
入江悠の「ビジランテ」がこれの発展形とも言えるか。
北関東、まだまだネタの宝庫っぽい。