Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ラヂオの時間

2006-08-12 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 1997年/日本 監督/三谷幸喜

「ツボというツボは全部押すテクニシャンのマッサージ師映画」


名脚本家が満を持しての監督作品、しかも唐沢寿明、鈴木京香などの豪華俳優出演と聞いた時、正直私は「大丈夫か」と思ったものだ。しかし、その心配は杞憂に終わった。豪華出演陣がノリノリで大いに笑わせてもらった。まあ、そういう不安から入ったのが、良かったのかも知れない。

やはり、三谷幸喜はシチュエーション・コメディでこそ、その才能を存分に発揮する。私が最も好きなドラマは「王様のレストラン」。閉じられた空間で繰り広げられる内輪の小ネタ集。「小ネタ」と言う言葉は、何だか非常に軽いもののように感じられるが、小ネタで笑わせるというのは実は非常に難しいんだと思う。次から次へと小ネタを出すために、たくさんの伏線を張る。もちろん、それらの伏線は整然としており、かつ一つの結論へと収束されねばならない。

登場人物が多く、場面もほとんど変わらないため「12人の優しい日本人」と比べてしまう。やはり、監督が三谷幸喜なので、ドタバタした感じは否めない。ただ、このドタバタはギリギリボーダーラインをうまくキープできていると思う。例えばラジオ収録シーンの井上順のセリフ回しなんか、オーバーアクトでないと出せない笑いだし。そもそも、パチンコ屋で働く主婦の物語が、一人の主演女優のワガママによって、なぜかアメリカの弁護士の話になってしまうという展開そのものがハチャメチャだもんね。

「内輪ネタ」で笑えるというのは、観客がいかにその「内輪の世界」に入り込めるかというのが大きなポイント。見た目はゆるゆるでも、内輪の世界観はしっかり一人ひとりの役者が共有していないとできないことだと思う。そういう点でもこの作品は各俳優陣がラジオ局のスタッフを自然にこなしていた。こんな人いそう、というゆるい感をみんなが演じられていた。それは、何か演出の妙ということではなく、「三谷幸喜の世界」をそれぞれの役者がわかっているから、なんだと思う。

数ある出演陣の中で私が好きなのは、布施明。あの軽薄な感じがまずおかしい。そして忘年会の景品で当たった、という電子ピアノ(なにゆえ電子ピアノ?)を担いで収録現場に現れる→次のシーンで何気に机の上でそれを弾いている。ここで私は声を出して笑ってしまったよ。でもね、人によってはそれのどこが可笑しいの?と思うかも知れない。これこそが「小ネタ笑い」の深みである。小ネタ笑いのツボはビミョーなポイントのため、人それぞれビミョーに違う。それをまるでゴッドハンドを持つマッサージ師のように「ここか?ここがポイントか?」とツボ押しが続く。あまりに次々とツボ押しの矢が放たれるため、「そこが効く~」と叫ぶ客の笑い声がそこかしこで起きるのだ。

エンドロールが流れ、最後のシメとも呼ぶべきツボ押しが。「千本ノッコの歌」だ。しかも朗々と歌い上げるのは、布施明。やられた。未だに何度聞いても吹き出してしまう。

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1 コメント

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御見それいたしました (おさかな)
2010-06-27 01:21:21
「ゴットハンドを持つマッサージ師のように・・・」と言う表現。まさにそれ!
御見それいたしました!<(_ _)>
観た人それぞれの「ツボ」を見事に押し切って?くれた作品かもしれません。
それぞれの人が「あのシーン」「このシーン」と話が弾む映画だったのではないでしょうか。