Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

17歳の瞳に映る世界

2022-06-08 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/エリザ・ヒットマン

削ぎに削ぎ落とした語り口とリアリティを追求した演出で図らずも妊娠してしまったオータムの切なさが胸に迫る。また、驚くほど口数が少ないこの2人の従姉妹関係が興味深い。オータムの真の理解者として、ひたすら彼女のために行動するスカイラーの背景にも思いを馳せる。



シャン・チー/テン・リングスの伝説

2022-01-13 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2021年/アメリカ 監督/デスティン・ダニエル・クレットン

トニーレオン見たさに鑑賞。普通にカンフーアクションファンタジーとして楽しむ。主人公がそもそもスーパーパワーを持たない普通の人というのがいいし、安直に恋愛に持ち込まないオークワフィナとのバディ感も好感。後半はネバーエンディングストーリーだった…

Swallow スワロウ

2021-10-15 | 外国映画(さ行)
★★★★  2019年/アメリカ カーロ・ミラベラ=デイビス

カラフルで美しく鮮やかな映像にぐんぐん引き込まれた。夫のモラハラは物語の中心ではなく、実は妊娠恐怖が主題だった。そう来たか。子を宿したとき、女性は命をこの世に送り出すことの重さに対峙せざるを得なくなる。異食症は特異だが普遍的な物語だ。とても面白かった。

食べた後の描写に驚き。いや、でもそれなんかわかる。自分の体を通っていったものって愛しいよね。ハンターにとって異食は対象への自傷行為でもあり、愛したい行為でもあったのではないか…などと想像してみる。女性用○○を延々と映すラストカットも様々な含みを帯びており、巧い。

自由が丘で

2021-09-15 | 外国映画(さ行)
★★★★  2014年/韓国 監督/ホン・サンス

語り口対極の「メッセージ」を彷彿とさせる時間物語。片思いの女性を追いかけソウルへやってきた男。果たして彼女に会えるのか。時間が戻ったり、追いかけたり、入れ替わったり。時の流れという概念に向き合い、かつ夢か現か藪の中というとびきり実験作。なのにこの微笑ましさは何なの。

時間をいじるということでは「メメント」もそうだが、ホン・サンスはそれを謎解きとして利用しない。これほど、時間があっちこっちするのに、イライラせずひたすらニヤニヤ見守れるところが唯一無二。ムン・ソリやユン・ヨジョンなどの人気俳優が自然体でどこにでもいそうな人を楽しげに演じている。

すばらしき映画音楽たち

2021-09-03 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2016年/アメリカ 監督/マット・シュレイダー

おなじみのフレーズを聞いた時の高揚感。音楽の役割は大きいとはわかっているが、その思いがさらに強まる。しかし意外と丸投げなのに驚き。イメージや世界観を共有してあとはよろしく。自由度高いのは面白そうだが大変な仕事だ。そしてハンスジマーがバグルスにいたとは!

「2001年宇宙の旅」でキューブリックができあがった音楽を全部ボツにして、結局クラシックを採用したとか、坂本龍一がベルトリッチにボツにされた曲を「Sweet Revenge」として発表したりとか、映画監督と音楽監督の関係性って面白いネタが多い。映画やドラマにしても面白いよね。

新感染半島 ファイナル・ステージ

2021-08-25 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2020年/韓国 監督/ヨン・サンホ

シチュエーションホラーからサバイバルアクションへ。父性愛から母性愛へ。大ヒット作の続編として文句のつけようのない舵の切り替え。マッドマックス的な世界観にロメロオマージュもチラリ。壮絶なカーチェイスは息を呑む。見事な娯楽大作。面白かった!

前作の方がいいという声をチラホラ聞き、躊躇していたけど、いやあ痺れた。ゾンビと人間の鬼ごっことか、設定が実に面白い。漫画的ではあるがディテールの作り込みがしっかりしてるので世界観にハマれる。母親を軸にしたのも良かった。トラックのクラクション鳴らすところで危うく泣きそうに。

ジョン・ウィック パラベラム

2021-08-14 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/チャド・スタエルスキ

犬が撃たれてブチギレアゲイン。ストーリーはもうどうでもよくて、最先端の格闘アクションの博覧会と思って楽しむ。特に犬を交えたシーンは発明!圧巻。鑑賞中何度も「いてえ!」と連呼。これほど痛みを感じさせるアクション映画はない。真田広之出演の次作が楽しみ。

スキャンダル

2021-07-19 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/イギリス・アメリカ 監督/ジェイ・ローチ

FOXニュースセクハラ事件の映画化。上昇志向のある女性につけ込むのが、卑怯。ジョンリスゴー、損な役回りだがハマってる。最初の告発者がニコールキッドマンでそれに続くのがシャーリーズセロン。2大女優の並びで絵的に盛り上げたい所を敢えて我慢している。抑えた演出がいい。

1年間にわたる用意周到な準備がなければ告発できない。その1年間にどれだけの人が新たなセクハラを受けたとしても、それだけの準備がいるという辛い現実。誰かが、どこかで止めなければならなかったのだ。しかし、どうやって?もし私があの役員室の入口受付に座る秘書だったらと思いを馳せてしまった。

ジュディ 虹の彼方に

2021-07-07 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/イギリス 監督/ルパート・グールド

公演初日の「バイマイセルフ」の凄みにやられた。レネーのオスカー文句なし。晩年のロンドン公演を軸に天才シンガーの孤独と苦悩と少女時代の恐るべきエピソードを織り込む構成が見事。業界に、親に、狂わされた一人の天才は最後まで魂を振り絞り、歌いあげる。

長年のファンであるゲイカップルの存在が効いている。あなたは孤独じゃない。あなたの歌によって、生きる希望を得た人はたくさんいる。そんなメッセージはしっかりとジュディに届けられたのだ。

ストップ・メイキング・センス

2021-06-22 | 外国映画(さ行)
★★★★ 1984年/アメリカ 監督/ジョナサン・デミ

一台のラジカセからリズムが流れる。1人また1人とメンバーが現れ、やがて狂おしいほどに見る者を高揚させる凄まじいグルーブ。デビッドバーンのパフォーマーとしての天才性をとことん見せつける。なぜ人は音楽を聴くのか。その理由がここにある。ライブ映画の金字塔。

リアル世代だが当時の私はトーキングヘッズに対してはその哲学的で抽象的な詩の世界やビジュアルイメージも相まって、スカしたバンドというイメージがあった。しかし本作公開時にその先入観は打ち砕かれた。久しぶりに見直したがあの時よりもエモいこの感情はなんだ。2021の今、バーンの詩が胸に来る。

聖なる鹿殺し

2021-03-22 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2017年/イギリス・アイルランド 監督/ヨルゴス・ランティモス

ギリシャ悲劇が元ネタらしいだが、それを知らなくても観た人がそれぞれにこれはなんの寓話かと思い巡らせる面白さに溢れている。マーティンは神か悪魔か。次々と呪いを成功させるホラー的な展開に胸糞ここに極まれりな結末。だが嫌いじゃない。いや大好きだ。ニコールの佇まいも最高。

北欧の監督は「気まずい」を描くのがうまい。彼らが描く関係性の気まずさは日本映画にも通じると思う。あとは突拍子もないエピソードの挿入。全身麻酔ごっこ、爆笑だし。脇毛見せて欲しいとかさあ。もう何なのの連続。宗教や哲学モチーフにヘンテコエピソードをぶっこむ離れ技。誰にも真似できません。

ザ・ホワイトタイガー

2021-03-11 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2020年/インド・アメリカ 監督/ラミン・バーラニ

インド製ポップチューンに載せテンポよく進むエンタメ感は楽しく、一発下克上のノリに前のめりになる。しかし、立ちはだかるカースト制の実情はあまりに厳しく呑気に見てるとビンタを食らう。染み付いた「使用人根性」の絶望感。パラサイトにも通じる現代インドの格差映画。

本当に今でもインドこんななの?と驚くことの連続。超高級マンションの地下駐車場にはお抱えドライバーたちが暗闇と湿気の中で日々を過ごしている。誰もがそれを当然と思っている恐ろしさ。そして、どこまでもまとわりついてくる家族という地獄。ヘビィな内容だが娯楽作として見応え十分。

ザ・ファイブ・ブラッズ

2021-03-11 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/スパイク・リー

退役軍人が戦時に埋めた金塊と友の遺骨を取り戻しにベトナムへやってくる。帰還兵のPTSD。未だ残る地雷。アメリカとベトナムに残る遺恨。黒人差別の現在・過去・未来。これほどのテーマを散りばめながら、全てが際立ち、融合する。これぞ監督の手腕ありという見事な1本。

154分の尺に腰が引けていたが、これは早く見るべきだった。本作の肝は黒人のポールがトランプ支持者であること。搾取され続けてきた彼が固執するものとは何か。とことん考えさせられる。 そして、今となっては亡き友を演じるのがチャドウィック・ボーズマンであることがことさら胸にしみた。

サウンド・オブ・メタル

2021-02-06 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ダリウス・マーダー

聴覚を失った男性の喪失と再生の物語。大切なものを失ったルーベンの悲しみにひっそりと寄り添う優しい人がいる。静かに耳を澄ませることで愛しいものが見えてくる。 ヘッドフォンで見るべしの意味、そういうことかと膝を打つ後半の展開。音を描くことに挑戦した意欲作。

ガールフレンド・ルーの父親、マチュー・アマルリックの登場に驚く。(配信って、事前にキャストチェックせずに見るから、この人出てたんだ!って驚くことが多い) わずかな登場シーンと佇まいで、どういう家柄か家庭環境かが想像できる。さすが。

続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画

2021-01-31 | 外国映画(さ行)
★★ 2020年/アメリカ 監督/ジェイソン・ウォリナー

Qアノンのリアルライフ、ジュリアーニのリアルセクハラ。この手法だからこそ撮れる衝撃映像だが、偽りの姿と嘘が前提にあるこの手法がどうしても好きになれない。正攻法じゃ真実はたやすく見えないことは重々わかっているのだけど、やっぱり後味悪い。