Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ザカリーに捧ぐ

2013-08-31 | 外国映画(さ行)
★★★ 2008年/アメリカ 監督/カート・クエンネ
(DVDにて鑑賞)

「見切り発車では」


2001年に殺害されたアンドリュー・バッグビィの子供の頃からの友人である監督による作品。
青年医師アンドリューは、ペンシルヴァニアの駐車場で殺害される。
その第一容疑者であった彼の元ガールフレント、シャーリーは、彼の子供を妊娠していることが発覚。
出産し、ザカリーと名づける。
監督はザカリーにいかに父親アンドリューが人々に慕われていたかを伝えるため、
彼の友人を訪ねて回るが、アンドリューを殺害した女であり、
ザカリーの母でもあるシャーリーの逮捕、控訴、裁判は予想外の展開を迎えてしまう。

監督がカメラを回し始めた後で、シャーリーの保釈、そしてさらなる悲劇が訪れた。
その衝撃はドキュメンタリーゆえでもある。
しかし、そのためアンドリューの思い出語りだった作品の方向性がどんどんぶれてゆく。
この作品は全てが終わった後で再構築されるべきだったのではではないだろうか。

しかし、アンドリューの両親の奮闘ぶりには本当に頭が下がる。
息子を殺した女に何度も面会し、孫の親権を得るために女の言い分を聞き、共に時間を過ごし。
私なら耐えられない。作品の後半はザカリーに捧ぐではなく、アンドリューの両親に捧ぐの様相。

一方でこうしてカメラを回し続けたことが、シャーリーを追い詰めたことにはならなかったのだろうか。
殺人犯シャーリーの心の闇にはスポットがあてられず、終始「あのビッチ」と呼び続けられることにも
鑑賞者としては不満が残る。

ジュリー&ジュリア

2013-08-30 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2009年/アメリカ 監督/ノーラ・エフロン
(DVDにて鑑賞)

「なぜだかわからない」

非常に好感が持てる作品なのでした。
だけど未だにもってその理由をうまく言葉で説明できない。

ジュリアは料理研究家として名を馳せるけど、専業主婦のきまぐれで始めた仕事のようにも見えるし、
ジュリーだって有名人になるけど、きっかけがブログだもんなあ。
いろんなことを犠牲にして血を吐きながら、男どもとやりあって最後に見つけた私の居場所てなフェミ映画じゃないからね。
だから、この映画を面白いと思う自分にちょっと混乱してる。
しかも、ジュリアもジュリーもパートナーにとても恵まれている。
このダンナじゃなかったら無理だよね、と観客に思わせてしまうことが果たしていいのか、悪いのか。

女性の自分探し映画には、自分自身の立ち位置とか、自分なりのフェミニズム観が混ざり合って、
普通に鑑賞できなくなっちゃうんですよ。悲しいかな。

とはいえ、私がこの映画を楽しめた大きな理由の一つがメリル・ストリープのはっちゃけた演技。
あんだけ、堂々と開き直るのは見ていて気持ちいい。
子どもができなかったというつらさは見せないで、好きなことに一直線に突き進む。
私もあんな風にふるまえたらいいなあと思う。

ワールド・ウォー・Z

2013-08-29 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2012年/アメリカ 監督/マーク・フォースター
(映画館にて鑑賞)

「不死身のブラピ」

ゾンビ映画をスクリーンで見たのは初めてである。
本作、前宣伝で「ゾンビ映画」は禁句だったようですが、
そのおかげが日頃ゾンビなんか見ないと思われる(私も含め)客層で満員。
私の前ではおそらく70歳以上と思われる老夫婦がチケットを買っていたが、
途中で席を立ちやしなかっただろうか。
逆にゾンビ映画ファンにはきっと物足りないのでしょうが、初心者には充分恐ろしかったです。

ブラピの不死身っぷりには苦笑ですが、まあゾンビ映画というよりブラピ映画ですからね。
それはもうどんどんみんなゾンビになって死んでいくんですけど、
ブラピの家族だけが守られているってのがなんか納得いかないというか、不公平感を感じる。
だって、女子どもでスポットライトを当てられているのはブラピ家族だけだからね。
守られるべき存在(=何もできねえ)存在としての女がブラピ妻で、
そことバランスを取るために屈強な女性兵士を登場させているのかな、とフェミ目線を発動させてしまうのでした。

フィッシュ・タンク

2013-08-28 | 外国映画(は行)
★★★★ 2009年/イギリス 監督/アンドレア・アーノルド
(WOWOWにて鑑賞)

「イギリスの貧困社会」

マイケル・ファスベンダーが出ていなかったら絶対見なかった作品。
母親が昼間から酒を飲み男を連れ込むすさんだ家庭で生きる15歳の少女の話。
母親のボーイフレンドがマイケル・ファスベンダーでミアは彼にひかれてゆく。
貧困のリアルを描く社会派イギリス映画です。
ですが、もうとにかくマイケル・ファスベンダーが最高にセクシー!
こんな男毎日家に来たら、14歳でも15歳でもそりゃ好きになるわ。
2009年の作品なんですけど、こんな映画に出てたなんて全然知らなかったなあ。
なぜかスタンダードサイズで撮影しているんですけど、それがまた新鮮で良かった。

それにしても、イギリスの貧困家庭って、ほんとすさんでるよね。
15歳のミアの行き場のない、鬱屈した気持ちががんがん伝わってくる。
期待しないで見たけど、これは良作でした。

終戦のエンペラー

2013-08-27 | 外国映画(さ行)
★★★★ 20012年/アメリカ 監督/ピーター・ウェーバー
(映画館にて鑑賞)

「未だ知らぬことが多い終戦前後の日本」


デリケートな問題をうまくエンタメ処理していて、退屈せずに見れました。
玉音放送にまつわるエピソードなど、知らないことがいっぱいあり。
日本人として戦争のことを考えさせられるよい機会になりました。
あの時、アメリカではなく別の国が日本の統治を任せられていたらどうなってたんだろう?
という当たり前の疑問に改めて行き着くのでした。
残念なのは相手役の日本人女性が、演技も英語も下手なこと。
せめてどちらかがいい感じならなあ。
日本キャストはみんな熱演で違和感なかったです。
意外と西田敏行の発音がキレイだったり。
夏八木勲が突然和歌を詠み始める、その緊張感の作り方はさすがです。

例えば日本茶を入れるようなちょっとしたいかにも「和」の所作が出てくると、
やたらカメラがゆったり動いてジャパネスク感を前に前に醸し出すあたりがいかにもハリウッド。
しかし、これアメリカ人が見て面白いのでしょうか?
天皇という曖昧な存在にトライした意気込みは凄いのですが。

先生を流産させる会

2013-08-26 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2011年/日本 監督/内藤瑛亮
(WOWOWにて鑑賞)

「私の体は誰のものか」

これはとても気に入りました。
映画としての絵づくりがきちんとできています。
60分程度の作品で、こんなに暗い話はこれくらいが限界だろうという感想もあるようですが、
私はむしろ120分かけて、5人組のそれぞれの立ち位置や
カリスマの女の子がだんだんと孤立する様をじっくり見たかったです。
首謀者を思春期の女子生徒にすることで妊娠への嫌悪という構図は、
ある意味わかりやすくなります。
女はみんな気持ち悪い生き物。
その共感と嫌悪がうまく表現されていました。
このじめじめした女子ならではの複雑な関係を男性監督が撮っているというのが面白いです。

妊娠した女性教師を気味が悪いと思う、女性中学生。
これはやはり、女性特有の身体性の物語なんですね。
園監督の「恋の罪」と同じモチーフではないでしょうか。
妊娠によって、赤ん坊に体を乗っ取られる女。
初潮によって、違う体に変わる中学生。
自らの意思とは関係なく、変貌する体へのとまどい。
私のこの体は、私のものなのか。その不安が恐ろしい

さて、実際の事件は首謀者は男子中学生です。
これ、男子だとまたずいぶん物語の核は変わってきます。
男子生徒だとどういう映画になるのだろうと不謹慎ながら考えてしまいました。

タワーリング・インフェルノ

2013-08-25 | 外国映画(た行)
★★★★★ 1974年/アメリカ 監督/ジョン・ギラーミン 、 アーウィン・アレン
(映画館にて鑑賞)

「マチズモ映画なれど星5つ」

午前十時の映画祭にて観賞。
1974年、CGのない時代にこれだけのスケールで災害の恐怖をまざまざと見せつけたことにただただ感動。
今年映画館で見た映画の中でダントツに面白かった。
それだけ新作映画に魅力がないということなのかと思うとそれもまた寂しいのだが。

小さなボヤがやがて130階建てのビルを炎で包む。
ガラスは砕け散り、人々は恐怖に逃げ惑う。
いや、本当に本当に火事って怖い。

早く逃げなきゃいけないのに、火事が起きたことを言わないオーナーだとか、
秘密の情事にふけっているサラリーマンと秘書だとか、
かなりベタな展開もありますが、そこはまるで気にならない。
なんででしょうね。本来ならツッコミどころ満載で醒めてしまうような展開でも、前のめりが止まらない。
火事の原因を作った設備の責任者(オーナーの娘婿)が責任転嫁しまくり、
あげくの果てには自分さえ助かればいいととんでもない行動に出始めるというこれまたお約束の展開。
それでも、それでも、面白い!

二大スター、ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーン。
セリフの数やエンドロールの順番など、かなりもめたようだけど、
観客としては、この渋い二枚目俳優が並んでスクリーンに映るだけで胸躍る。
やはり消防隊のリーダーとして次々と難局に立ち向かうスティーブ・マックイーンがカッコ良すぎる!

でもさあ、最上階で取り残された女どもの描き方が気にくわないよね。
この時代はどれもこれもマチズモ映画だからしょうがないんだろうけど。
パーティの装いであるドレス姿で右往左往、そしてキャーキャーわめく。
とにかくドレスのひらひら具合が見てて腹立つ。
そんなもん着てる場合じゃなかろう。という苛立ち感。
そして、カナリア女どもを頑張って救出する男たちという構図。
この後、「ワールド・ウォーZ」を見たらブラピを援護するのが片腕切り落とされても頑張る女性兵士。
やっぱりフェミニズムの流れがあって、今のアメリカ映画はここに辿り着いたわけだよねと感じ入るものがあるのでした。
(アメリカが本当の意味で男女平等かというのは全く別の話)

まあ、そんなフェミ目線の介入もありつつ、
パニック時の人間模様と壮大なスケール感に圧倒され、大満足なのでありました。



マン・オブ・スティール

2013-08-24 | 外国映画(ま行)
★★ 2013年/アメリカ 監督/ザック・スナイダー
(映画館にて鑑賞)

「地球を守るより、破壊するスーパーマン」

試写会にて鑑賞。

とにかく破壊シーンが多すぎてげんなり。
マッハで飛べるんだったら、敵を荒野に誘い出してください。
NYのビルが次から次へと破壊されるのを見るのはもう嫌です。

ケビンコスナーとダイアンレインの育ての親コンビはなかなかいいのですが、
最初の登場シーンから主人公が老けているもんでなんかノレない。
みずみずしさがないというか。
ヘンリー・カヴィルという俳優、あんま魅力感じないなあ。

クリプトン星が破滅して、反乱者が現れてというくだりのシーンなんかは、
もうマイティソーやら、タイタンの戦いやら、
その他遠くの星で戦争が起きる系の作品と似たり寄ったりです。

製作がクリストファー・ノーランってことで、もう少し人間ドラマが描かれるかと思ったんですが、あまりなく。
ハンス・ジマーも好きなんですけど、飽きてきました。
新聞記者になるところで終わるので完全にシリーズ第一作ですが、もう見ないだろうな。

ミザリー

2013-08-23 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 1990年/アメリカ 監督/ロブ・ライナー
(WOWOWにて鑑賞)

「ヒッチコックを思わせる」

監督ロブ・ライナーだったんだあ。
彼ってライトタッチのラブコメのイメージが強かったので意外。
迫り来る恐怖の演出には、そこはかとなくヒッチコックを思わせるところがあります。

何と言ってもミザリーを演じるキャシー・ベイツが怖い。
もの凄く機嫌がいいと思ったら、小さなきっかけで凶暴性を発揮する。
これが田舎にひとりで住んでる小太りの中年女だってのが、さらにリアル。
アカデミー受賞も納得。

なんだけどね。
これ、厳寒の地で外界から閉ざされている。
体が不自由で誰とも交信できない。
という閉塞感をもっとうまく演出できなかったかなあ?と思う。

文字通り、身も凍る感じというのかなあ。
そこの表現の甘さがやはりロブ・ライナーだからかなあと少し物足りないのでした。

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

2013-08-22 | 日本映画(あ行)
★☆ 2012年/日本 監督/本広克行
(WOWOWにて鑑賞)

「無残なラスト」

ドラマシリーズをリアルタイムで見ていた。あの時は面白かったなあ。
君塚良一の脚本も冴えてたし。

で、シリーズ最終作はぐだぐだな展開。事件もつまらない。恋バナも盛り上がらず。
何とか、最後を収めるだけの映画。終わりましたよ、というただそれだけ。
何か意味があるとしたら、いくばくかの経済効果があるということくらいか。

とにかく、湾岸署シーンのぐだぐだ感はハンパないね。
垂れ流しな感じ。非常に退屈。ビールのネタ、面白いか?面白くないよ~
笑わせる意図で繰り返されるセリフの応酬もしらけることこの上なし。
君塚さんもいいかげん飽きてたんだろうなあ。

本筋の事件も全くハラハラしないし、展開が全然練られていない。
ずいぶん時間があっただろうに、この練られてない感はなんなんだろう。
と、何もかも首をかしげたくなるファイナル。

ルート・アイリッシュ

2013-08-21 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 2010年/イギリス/フランス/ベルギー/イタリア/スペイン 監督/ケン・ローチ
(WOWOWにて鑑賞)

「戦争の無残さと人間の我が儘と」

今年の3月にロンドン行って感じたことのひとつは、
イギリスと中東ってすごく関係が近いんだなあってこと。
街中にも中東のレストランやイスラム系の人が多かったり。
だもんで、この映画ではイギリスでの中東問題がとても生々しく感じられました。
アメリカが中東を描くときって、「国家」とか「正義」とかイデオロギーに走りがちなんだけど、
すごくパーソナルな問題として中東が描かれていることが私は面白かった。
軍隊上がりで戦場で散々酷いことをやってきた主人公が友人のためとはいえ、復讐に燃える。
そこに浮かび上がる矛盾には考えさせられる。
自分だって戦争でずいぶん金を稼いで、えらく高級なマンションに住んでるくせにさ。
兄弟同然に育った親友が謎の死を遂げたからって急に正義感振りかざすのはおかしいんじゃないかいと。
でも、それが人間なんだよね。
そういう道理や理性に合わない人間の行動も全て呑み込んで見せていくケン・ローチの作品が面白い。
実に硬派な作品。良かった。

メランコリア

2013-08-20 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 2011年/デンマーク/スウェーデン/フランス/ドイツ 監督/ラース・フォン・トリアー
(DVDにて鑑賞)

「鬱病患者だけが救われる」

ラース・フォン・トリアーはあまり好きではないというか、むしろ嫌いなんだけど、
シャルロットが出ている、というのと鬱病がテーマだというので鑑賞。

(以下、完全にネタバレ)

結婚式の花嫁(キルスティン)が終始精神不安定というのは、いわゆるマリッジブルーなのか、
はたまた彼女だけは地球が滅亡することに気づいていたのか。
いずれにしろ、周囲をイライラさせる花嫁の描写が延々と延々と続く、というね。
まあ、人を不愉快にさせる手腕はいつも通りでここまで極めると天晴れと言うしかないのかなあ(笑)。

災害とかではなく、惑星が地球にぶつかるというトンデモSFな展開が
作品全体のミステリアスなムードを存分に盛り上げている。
こういう幻惑的な映像の連続で最後までもたせるのもある意味凄い。

いよいよ地球滅亡という時になって、
鬱病の人だけが「神様、地球を滅ぼしてくれてありがとう」と感謝するという。
いやあ、どこまでひねくれてるんだ、フォン・トリアー。