Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

クイーンズ・ギャンビット

2020-11-30 | TVドラマ(海外)
★★★★☆ Netflix

倒すごとに強くなる敵。ラスボスはロシアの天才。そして友情。誰もが熱くなれるジャンプ的世界を軸にフェミニズム視点を存分に織り交ぜながら、SEX、ドラッグ、アルコールも赤裸々に少女の成長を描く。カメラも美術も衣装も超一流。今年配信ドラマでダントツのクオリティ。

目に映るもの全てが一流でまばゆいほどだが、それらの背景に負けないアニャ・テイラー=ジョイの存在感。彼女のキャスティングが一番の勝利。大きな目。挑戦的な態度や佇まい。専業主婦の檻に閉じ込められアル中になる養母とのバディ感もいい。最初の対戦者のアイツにあとで泣かされるとは!

世界の一流ホテルが続々登場し、建築好きにはたまらない。当時の壁紙もステキ。8Kカメラ撮影ということだが、どこで一時停止してもフォトジェニックな美しい映像。チェス全然わかんないけど、スリリングに見えるゲーム展開。こんなもん作られたら、もうそんじょそこらのドラマでは満足できなくなるよ。

ファーゴ シーズン2

2020-11-29 | TVドラマ(海外)
★★★★☆

S1同様、北部田舎町とマフィアをフォーマットに人々の交錯する運命を描く傑作。淡々とした語り口が神の目線を思わせる。何気ない日常の行い一つひとつが(誰かの運命を狂わせるかもしれない)人生の選択なのだと突きつける。それでも善く生きることを我々は選択できるのか。

大量の死者を出すマフィアの抗争の原因は1人の主婦ペギーの思慮浅い行いである。あれよあれよと歯車が狂い、多くの人を巻き込み、死に至らせる。自己啓発セミナーにハマるペギーは自身が道を踏み外しているとは決して思っておらず見る者を異常にイラつかせる。キルスティンダンスト、ハマり役。

マザーレス・ブルックリン

2020-11-19 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/オリビア・ワイルド

エドワードノートン演じるトゥレット症候群の探偵が実に魅力的。突発的に「イフ!」と奇声を発したりして周囲からは変人扱いだが、そんな彼が政治の闇に迫るハードボイルドサスペンス。全てがユニーク。50年代NY、ジャズ。大好物でしかなかった。

ブルースウィルス、ウィレムデフォー、アレックボールドウィンとキャストが豪華。エドワードノートンはこの難役を演じるだけでも大変なのに、脚本・監督もこなして凄いよ。ジャズクラブのシーンはウィントン・マルサリスがやってるって言うし、主題歌はトムヨークじゃん。公開時なんでスルーしたんだ…

ミッドナイトスワン

2020-11-13 | 日本映画(ま行)
★★★★☆ 2020年/日本 監督/内田英治

社会の泥沼で邂逅した美しい白鳥。神からの啓示を受けたような草彅剛の目がすばらしい。一生手に入るまいと諦めていた物が目の前に現れ、凪沙は前に進もうと決意した。凪沙の魂は少女に引き継がれたのだからこの物語は悲劇ではない。凪沙は成すべきことをして生ききったのだ。

天才芸術家が開眼するまでの物語としても堪能。人間の醜さや汚さにまみれたからこそ、対極にある美の頂点に立てる。その表現者としての凄みを映像として納得させるラストのバレエシーンが圧巻だ。山岸涼子の舞姫テレプシコーラを思い浮かべた人も多いのではないだろうか。

エミリーパリへ行く

2020-11-11 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

ファッション、仕事、恋愛、SEX。それぞれの女性たちの価値観を衝突、対比させながら軽やかなコメディに。さすがSATCのダーレンスター、ツボがわかってる。 パリの街並みに最新ファッションの女たち。メキシコ麻薬戦争で疲れた頭にはちょうどいいです。気分転換には最高。

フランス人が怒るのは無理ない。みんな意地悪だし、不道徳だし、あんま働かないし。なので、そこは置いといて楽しもうよっていうのは不謹慎だというのは理解できる。でも、でも。ああ、パリの美しい街並み!ハイブランドのキメキメのファッション!そしていい男!胸高鳴る庶民の性。パリ行きてー。

ビリーブ 未来への大逆転

2020-11-09 | 外国映画(は行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ミミ・レダー

ギンズバーグ氏の功績のほんの一部の判例ではあるが、法律がいかに人々の不平等を黙認、推進しているかがわかる良作。日本の男女別姓の法改正と重なる部分も多い。法律を変えたくない奴らは誰か。その理由と目的は何か。しかし、邦題がぬるい。原題はOn the Basis of Sex

バトル・オブ・ザ・セクシーズは原題ママだったのに、なんなんすかね。あと、こういう差別問題を扱う作品って、キャスティングが重要。アーミーハマーが良くも悪くもイケメン過ぎる。まあ目の保養でしたけれども。キャシーベイツは気骨あふれる法律家として流石の演技でした。

ファーゴ シーズン1

2020-11-09 | TVドラマ(海外)
★★★★

悪魔はすぐそばに潜んでいる。付け込まれる人の欲望と近づかぬ人の良心、宿命と自由意志、日常と非日常。様々なコントラストが田舎町を舞台にペーソスたっぷりに描かれる。 ちょっとしたボタンの掛け違いで人生は転落する。どう生きるかという話でもある。実に面白かった。

コーエン兄弟の作風は苦手だが、ドラマは面白かった。映画では唐突に思える展開もドラマなら一人ひとりのキャラクターを掘り下げて描けるからかもしれない。クズのマーティン・フリーマン、殺し屋BBソーントン共にキャラ立ち凄いが、個人的には自身の行いに葛藤する善人コリンハンクスが印象に残る。

ハンターキラー 潜航せよ

2020-11-08 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/ドノバン・マーシュ

海と同時に陸上でも決死の作戦が遂行される展開がいい。テンポがいいし、ハラハラが最初から最後まで持続する。潜水艦のセットもリアルで精巧。国の大義と個人の思いの対立も納得できる形で決着される。戦闘物大作でここまで満足できたの久しぶりかも。

悪の法則

2020-11-06 | 外国映画(あ行)
★★★★☆ 2013年/アメリカ 監督/リドリー・スコット

贅沢な暮らしに美しい婚約者。弁護士はほんの少しの好奇心と欲望でドラッグディールに手を染める。地獄行きのボタンを押したらもう止められない。生きることは狩ること。狩る意思のないものは決して狩り場に入ってはならない。警告は全て実現する。世にも恐ろしい伏線回収映画。

狩の女王、マルキナを演じるキャメロン・ディアスが圧巻。裏でカルテルを操る存在だが、最後まで素性は明らかにされないし、組織に属しているのか一匹狼なのかも不明。そのわからなさが最高。だって、この世の中のほとんどを私たちは知らないのだから。

罪の声

2020-11-05 | 日本映画(た行)
★★★☆ 2020年/日本 監督/土井裕泰

あれだけの長編小説をまとめ上げた脚本が見事。もつれた糸が解けるように真相が明らかになるサスペンスの醍醐味。日本とロンドン、重要人物の告白をカットバックで繋ぎ、クライマックスを盛り上げる。さすが野木亜紀子、エンタメをわかってる。原作既読ゆえいろいろ心配したが大満足です。

役者陣がみんないい。宮下順子、塩見三省、若葉竜也、阿部純子、奥野瑛太…。数カットの出演でもキャスティングに並並ならぬこだわり。中でも宇野祥平、水澤紳吾両氏の役づくりは賞賛に値する。ネタバレゆえ事前に取り上げられていないのが実にもったいない。観客の心に爪痕残す演技。

思春期に大阪でグリコ事件を見聞きとした身としては「キツネ目の男」がスクリーンに映し出される事はかなりの衝撃なんです。それは小説でいくら描写されても脳内再生でしかない。キツネ目のアイツがいる。肉体を伴った人間として。背筋がゾワッ。本作の映像化はそれを体感することでもある。