Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

帝一の國

2018-02-28 | 日本映画(た行)
★★★★ 2017年/日本 監督/永井聡

(WOWOW)

もう笑った笑った!若手だけでなく中堅俳優陣のくどい演技も最高。
とにかく編集のテンポがいい。そして、意外とエキストラに手抜きしないなど、ディテールにこだわってるがすばらしい。
学祭とか会長選挙にまつわる小物ね、ポスターとか、旗とか。すごくちゃんと作られてます。
あと、数秒拍手してピタッと止まるみたいな、細かい演出。
作り手の気合いがありますね。こういうのが大事だとつくづく思う。

切腹

2018-02-27 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1962年/日本 監督/小林正樹

(U-NEXT)

蜘蛛巣城の三船に対抗できるのは、この仲代達矢か。
それくらい大立ち回りが始まってからの仲代がカッコいい。
美術が戸田重昌、音楽が武満徹の作品は全部傑作に違いないのだが、
惜しむらくは仲代の立ち回りに行くまでの身の上話のくだりがやや長いと感じられること。

武家屋敷や日本家屋をスタイリッシュに撮影するということ。
これは、邦画にとって殺陣同様、継承してくべきもの。
歴史的背景など深い知識のもとに美術をセレクトし、正しく配置すること。
そして、それらを美しく撮るテクニック。
アクション全盛の今、殺陣よりむしろこちらの方が危機的状況かもと思わされる。

それにしても、リマスターされたモノクロ映像が美しい。
どんどんこういうクラシックをリマスターして配信してほしい。

ビッグシック ぼくたちの大いなる目ざめ

2018-02-26 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/マイケル・ショウォルター

(映画館)


アカデミーに脚本賞でノミネート。なかなかの感動作でいい話である。
でも、どうもNetflixのドラマを見ているようで、絶対に映画館で!と言うのでもない。
これがヒットしたのはドラマの「マスターオブゼロ」の人気も影響してるのかなあと思う。
あと、ゾーイカザン、かわいかった。この子、すごくキュートでいい。

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ

2018-02-25 | 外国映画(は行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ソフィア・コッポラ

(映画館)

考えてみれば、閉ざされた世界の女性を描くのはソフィアの一貫したテーマで、
この作品のリメイクを選んだのもさもありなん。
森の中を少女が彷徨うファーストカットからもはや巨匠の風格。
撮影も実に美しく、宗教画のようなカットにため息。
衣装や美術を見るだけでも十分満足できる。
旧作はもっと女性のえげつなさにスポットが当てられていたが、ソフィア版はその辺控えめ。
野蛮な外の世界と、囚われた女性たちの無垢(=残虐な幼稚性)な世界の裂け目を描くことにシフトしている。
傷ついて迷い込んだ鳥が散々弄ばれたあげく、無惨に捨てられたようなラストカットが秀逸。
とはいえ、終盤の男の運命を左右する出来事が改変されており、個人的には旧作の方が好みだ。
ソフィア版は一人ひとりの内面を描くことには目を向けていない。
それは意識的にそうなのだろうけど、あちらの方が、
こんな小さな少女にもオンナの嫉妬や怒りが芽生えるのかという恐ろしさにぞわぞわした。

犬猿

2018-02-24 | 日本映画(か行)
★★★★ 2018年/日本 監督/吉田恵輔

(映画館)

冒頭の引っかけから、吉田監督の意地悪魂が炸裂。
離れたくとも離れられない最も近い肉親きょうだいへの妬み、そねみ、ひがみがスパーク。
縁が切れればラクなのに、できないからマウント合戦。
人間の闇をモロだしにしつつ、やっぱりきょうだいっていいよね、とならないのがまた吉田流。
とはいえ、どんより系かというとそうではなく、兄弟間のドロドロを面白おかしく見せてくれる。
また、吉田監督は端役の演者のキャスティングに非常に巧い。
親戚のおじさん、おばさん、会社の同僚(確か「恋人たち」でも同僚役だった)などが
「こんなやついる」という実在感で迫ってくる。
これが作品のリアリティに大きく貢献している。
個人的には演技派男兄弟より、姉妹の確執に共感。
あの2人はいがみあっているが、でも、心の奥底ではわかり合いたいという気持ちがあるはず。
そう思わせてくれる、2人ともすばらしい演技だった。

ストレンジャーシングズ シーズン2

2018-02-23 | TVドラマ(海外)
★★★★

意外にもシーズン1より楽しかった。
正直シーズン1は息子の失踪により、ウィノナライダーが毎回ぎゃあぎゃあ騒ぐのがうるさかった。
しかし、シーズン2では難局を救ってくれたイレブンがいなくなり、
残された者がどう友情を築いていくかというところにフォーカスされているのがいい。
基本は向こう側の世界と通じている超能力少女を巡る物語だが、ホラー的な面白さもさることながら
12歳前後と、16歳前後、それぞれ異なる世代の青春物語、成長潭として大変よくできている。
10代のこれぐらいの世代間の違いって、大きいよね。それを見事に描き分けていると思う。
新メンバーの今後の展開も楽しみ。そして、ボブの顛末に泣けた。

アメリカン・クライム・ストーリー / OJシンプソン事件

2018-02-22 | TVドラマ(海外)
★★★★★

凄いのひと言。
ロス暴動など人種問題で揺れる社会背景を盛り込みながら、
OJ裁判を黒人問題にすり替えようとする弁護側の策略、
証拠多数なのに窮地に追い込まれる検察側の焦燥などが実に重厚に描かれる。
検察主任が離婚調停中の女性でその容姿が揶揄されたり、
検察のもう1人のパートナーが黒人ゆえにOJ裁判に抜擢されることで苦悩したり、
毎回感情移入して胸熱。
メディアの報道の在り方、ロス市警の差別体質、陪審員制度の是非など、とにかく切り口が多様。
なのに複雑にならずにすばらしいエンタメになっている。しびれた。

スリー・ビルボード

2018-02-21 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/マーティン・マクドナー

(映画館)

広告看板の告発から、ビリヤードの玉突きのように関係性が変化し、キャラクター性が反転していく。
観客を次々と裏切る脚本が巧い。
誰もが100%善人でもなければ、100%悪人でもない。
そのグレー部分こそが人間らしさであるという一種の人間讃歌。
レイシスト警官はある意味おいしい役どころで別の俳優でもできたと思うが、
フランシス・マクドーマンドの存在感は唯一無二。
共感と反感、どちらに傾いていいかわからない底知れなさがあり
彼女なくしてこの世界観は成り立たないと思う。
息子の同級生の股間(しかも女子!)に蹴り入れるんだよ。あれは笑った。

レイシスト警官がイヤホンで聴いているのがABBAのチキチータで、
それはとても重大な秘密なのだが、これに気づく人はなかなかいないかもしれない。

アリスのままで

2018-02-20 | 外国映画(あ行)
★★★ 2015年/アメリカ 監督/リチャード・グラツァー、ウォッシュ・ウエストモアランド

(Netflix)

言語学の教授にまでなった女性がアルツハイマー病で言葉を失っていく。
そのつらさは身に染みるものだが、これが遺伝性であり
娘にも陽性反応が出てるってことも重大事じゃないのか。
介護問題も、次女との確執も深堀りができておらず、えらいするっと終わってしまった感じ。
ジュリアンムーアが本作でアカデミーを獲ったわけだが、
これよりいい演技の作品は山のようにあるぞ。
あと、最終的に不和だった次女が面倒を見に帰ってきて終わり。
え?ここからが描きどころじゃないの?って感じで、
いろいろと焦点がずれているような気がしてならなかった。

間奏曲はパリで

2018-02-19 | 外国映画(か行)
★★★ 2015年/フランス 監督/マルク・フィトゥシ

(Amazonプライム)


実直だが味気ない田舎者の夫に嫌気がさし、
つかのまのロマンス求めてパリまで行くが、現実を知って元通り。
天下のユペール様がよくこんな平凡な役引き受けたなあ。
彼女が謎の湿疹に悩まされているのがひねりになるのかと思ったらそれもなく。
ごく普通で肩透かし。

パリで年下男にこっぴどく打ちのめされるのだが、
そこはユペール様!ヒールのかかとでケツでも蹴ってやりな!と思うのだが、
全くそういう展開にもならず、残念至極。

明日に向かって撃て

2018-02-18 | 外国映画(あ行)
★★☆ 1970年/アメリカ 監督/ジョージ・ロイ・ヒル

(WOWOW)

全然つまんなかったから、もう西部劇は見ないと決めた。
キネ旬の「映画遺産200」コンプリートするべく頑張っているけど、あきらめた。
私の映画の楽しみ方の一つは自分が萌える絵があるかどうかで、
西部劇にはそういうテンションが上がる絵が全く見当たらないようです。
「突然炎のごとく」の影響を町山解説で知ったけど、だとしたらヒロインが魅力なさすぎ。

ケンとカズ

2018-02-17 | 日本映画(か行)
★★★☆ 2016年/日本 監督/小路紘史

(WOWOW)

近年「北関東ノワール」というジャンルが確立されつつある中、
完全に自費で撮り上げた新人監督小路紘史の気合いが伝わる作品。
とにかく主演ふたりの顔がいい。そして、地方都市の閉塞感が痛い。
入江悠の「ビジランテ」がこれの発展形とも言えるか。
北関東、まだまだネタの宝庫っぽい。

羊の木

2018-02-04 | 日本映画(は行)
★★ 2018年/日本 監督/吉田大八

(映画館)

私の感性がおかしいのでしょうか?というくらいつまらなかった。
元殺人犯6人の過去やトラウマを丁寧に描いているわけでもないし、
6人に翻弄される役人の悲哀というわけでもないし、
物語の軸足をどこにも見つけられず、退屈で仕方なかった。
6名のキャストの個性が全然活かされていないのが致命的。
というか、役柄はいずれも個性的なキャラクターなのに、
配置された役者がその役で生きていないというアンビバレンツ。
これ、どうしようもないダメージなんだが。
田中眠なんて、わざわざ彼にやってもらうほどの役でもない。
また「見てはいけない伝説の怪物のろろ様」が
殺人犯の過去にこだわるか否かの問題とかぶさっているのはわかるが、
作品内で回収できていない感が否めない。
まさか、吉田大八でこんな気分になるとは。
というか観賞前のハードル上げ過ぎてしまったのかもしれない。

DEVILMAN crybaby

2018-02-03 | TVドラマ(日本)
第1話のサバト祭にテンションMAX。
湯浅政明のタッチ、めっちゃ私の好みやんか。
何で今まで見てないんだよ。
エログロ描写がてんこ盛りはNetflixならでは。
残虐描写も容赦がなくデビルマンが愛する人の最期もそこまでするかと驚いた。
ただ、ひたすら絶望に向かう展開は先が読めてちょっとだれた。
まあ、それはサバト祭でアガリ過ぎてしまった私のせい。
ノクターナルアニマルズの二の舞。
でも俄然湯浅政明に興味湧いてきたので「夜明け告げる」など湯浅作品見てみようと思う。

祈りの幕が下りる時

2018-02-02 | 日本映画(あ行)
★★★☆ 2018年/日本 監督/福澤克雄

(映画館)

仕事と仕事の間で時間がちょうどよく観賞。
「砂の器」を引き合いに出す感想もあったので期待したが、
映画を見たというよりも2時間かけて東野圭吾の本を読んだという感じ。
ストーリーのできの良さがそのまま映画の良さといいますか。
ただ、松嶋菜々子がすこぶる良かったのが意外なところの収穫。
特に表情の演技がすばらしかった。

とはいえ、この手の警察物の捜査会議の演出はいいかげんどうにかならないものか。
会議室に刑事がずらっと座って、捜査課長が気合いを入れるとか、白々過ぎてかなり萎えた。
せっかく物語に入り込んでいるのに、気持ちが引いてしまう。
半沢シリーズの監督だからしょうがないのか。