Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

共喰い

2014-08-27 | 日本映画(た行)
★★★ 2013年/日本 監督/青山真治
DVDにて観賞

なんとも悪趣味な映画だ。
悪趣味大好きなんだけど、悪趣味の奥にある、悲哀とか、人間の愚かさから何かこう、
深遠なものが見えて来るという作品はあるんだよね。
でも、これは違った。ただただ悪趣味なんだよね、タイトルからして。
下関の漁港そばの貧しい人々の暮らしぶり、その捌いた魚の内蔵の匂いみたいなリアリティはすごく感じられて
その辺は、北九州サーガ三部作を思わせる。場所も近いし。バスのショットで始まるのはユリイカみたいだし。
役者陣はみんなすごくいいね。光石研は最近クズみたいな父親ばっか演じていてちょっと可哀想だけど(笑)。
やっぱ、田中裕子だよなあ。樹木希林と双璧。
物語が悲惨でも、田中裕子の演技が見られたらそれでいいと思わせてくれる。
物語の悪趣味がただ悪趣味で終わるってのは、原作のせいなのかもなあ。
親父を超えられず、うじうじしている青年の話なもんで、これって村上春樹なんじゃね?と思ってしまったよ。
表現方法は真逆だけど。

はじまりのみち

2014-08-26 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 2013年/日本 監督/原恵一
DVDにて観賞

いやあ、いい映画だったなあ。
母親をリヤカーに乗せて、峠を越えるという、ただそれだけの話なのにねえ。
これぞ日本映画の真骨頂。
そして田中裕子の演技が鉄板。田中裕子出てりゃ、はずれなし!
空気がゆったりと流れるような静かな演出。原監督、実写初挑戦とは思えないです。
木下恵介生誕100周年プロジェクトという、ある意味、いろんな人の思惑とか、制限とかあるなかで
木下作品を紹介しつつ、木下恵介の素晴らしさもわからせつつ、そして、自分の作品としてのアイデンティティーを確立させるという
非常に難しいことを成功させているんですよね。凄い。
木下恵介の映画を見たくなりました。ほんとに。

めぐり逢わせのお弁当

2014-08-26 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2013年/インド・フランス 監督/リテーシュ・バトラ
(映画館にて観賞)

歌って踊らないインド映画で実に大人な作品でした。
ダッバーワーラーというお弁当配達のシステムにまず驚愕。
そして、毎日心を込めてイラが作るお弁当のおいしそうなこと!
平凡な主婦と定年間近のサラリーマン。手紙を通じて、少しずつ心が通じ合っていく。
ものすごくもっさりした恋愛映画になりかねないのだけど、
語り口が非常に洗練されていてすばらしかったです。
妻を亡くして以来、他人に心を開かないサージャンの部下としてやってくる孤児の青年。
彼の配置の仕方も非常に巧いなあと思いました。
インド文化の知らない部分も知ることができたし、とても豊かな作品です。

少年と自転車

2014-08-16 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2011年/フランス・ベルギー 監督/ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、 リュック・ダルデンヌ
DVDにて観賞

とても良かったです。
父に捨てられた少年シリルと彼を見守る里親サマンサの交流をとっても丁寧に描いている。
シリルは親の愛を受けて育っていないから、相手の気持ちを思いやるということが全くできず、
温かい手を差し伸べるサマンサのことを何度も裏切るようなことをしてしまう。
なんで、わからないの!とちょっとイライラしたりもするんだけど、
しょうがないよね、こんな切ない境遇になったらさ。
シリルは常にじっとしていなくて、いつもいつも走っているか、暴れているか、自転車に乗っているかなんだけど、
その落ち着かなさが彼のキャラクターをよく伝えている。
サマンサにしても、なぜここまで彼に思い入れるのか背景は全く語られていないんだけど、
こういう省略の仕方は構成上非常に賢明で美しい。さすがヨーロッパ映画。
もっとダルデンヌ兄弟見よう。

サルトルとボーヴォワール 哲学と愛

2014-08-15 | 外国映画(さ行)
★★★☆ 2006年/フランス 監督/イラン・デュラン・コーエン
DVDにて観賞


巷の評は芳しくないのだけど、意外と楽しめました。
一番気に入ったのは、ボーヴォワールを演じるアナ・ムグラリス。
この女性とても美しい。意志の強い目が私の好み。
一方、サルトルがあまり素敵じゃなかったのが、何ともなあ。
まあ、ご本人も美男子というわけではないから、難しいのか。
自由恋愛といえども、サルトルの奔放な女遊びに嫉妬してしまうボーヴォワール。
それを、結局振り回されているだけ、というのはたやすい。
サルトルが自由に女遊びをしているのだから、ボーヴォワールだって自由に男遊びすればいいのさ。
それができるかどうかってのは、男とか女とか関係ないと思うね。
結局はサルトルはボーヴォワールにとっては、初恋の男で、初恋の男ってのは、
すごく特別な存在で、そんな彼の言うことは何でも受け入れてしまうものなんだろう。
ひとりの人間として、独立した存在でありたいと思う女にとって、
結婚という馬鹿げた契約でキミを縛ったりしないよ、という男の申し出はしごく全うなもので、
彼女のスタンスがそう男に言わせているのだから、それはそのまま受け入れるしかない。
そこで、苦しもうとも、女の嫉妬心よりも、女としての自立の方が生きていく上で大事なんだからしょうがないのだ。
そんなボーヴォワールを可哀想と思うのは、大きな間違い。
自分の生き方を自ら選び、その信念を貫いたことを喝采するべきなのです。同じ女性として。

その夜の侍

2014-08-14 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2012年/日本 監督/赤堀雅秋
DVDにて観賞

最近の堺雅人はハイテンションの役ばかりで見飽きていたのですけど、
本作では交通事故で死んだ妻のブラジャーを持ち歩いている人生どん底な男を好演しておりました。
虎視眈々と復讐のカウントダウンをする堺雅人、そして、クズ野郎の山田孝之。
二大俳優の演技合戦が見物のような体の作品なのですけれども、
私はどうしようもないクズ野郎から離れられない周囲の人物の有り様の方が興味深かったなあ。
田口トモロヲ演じるタクシー運転手と谷村美月演じる警備員のふたりは、酷い目に合わされたにも関わらず
ずっと縁を切ろうとしない。クズ友達の綾野剛も。
ひき逃げを起こした山田孝之よりも、この周辺人物の方の孤独の方が恐ろしい。
ここをもう少し掘り下げてくれたらもっと面白かったなあ。

素晴らしき哉、人生!

2014-08-13 | 外国映画(さ行)
★★★★ 1946年/アメリカ 監督/フランク・キャプラ
DVDにて観賞

観賞後、ディズニーアニメを見終わったような気分に襲われ。
まあ、むしろこうした古き良き時代の良いシナリオ、
つまり、見たすべての人が幸せになれるような映画づくりを未だに継承しているのがディズニーアニメなんだなと感じた次第。
まあ、あまりにも主人公の善人ぶりをちょっと斜めに見たくなる時もあるんだけど、
良き人が報われるという、どストレートな物語を素直に楽しめました。

嘆きのピエタ

2014-08-12 | 外国映画(な行)
★★★★ 2012年/韓国 監督/キム・ギドク
DVDにて観賞

ミソンを演じる女優さんが岸本加世子にしか見えない。
ということは置いといて。

とても賛否両論の作品で否定的な人の意見もよくわかるのだけど、
私は好きだなあ。
こういう絶望のどん底をややナルシスティックに描くというやり方が鼻につく人がいるのもよおく理解できる。
そういう意見もわかった上での、俺にはこういう見せ方しかできないんだよというギドクの嘆きが聞こえてきそう。
母の愛に飢え続けてきた男の成れの果て。残酷非道な生き方の始末の付け方。
援交していた友人を死なせてしまって、その友達が懺悔のためか、友人が体を売った男を訪ね歩くという
「サマリア」を思い出させる。
罪と懺悔。ギドクって、いつまでもおんなじテーマを描きつつけている。
ショッキングなラストにやられました。

ジョーズ

2014-08-11 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 1975年/アメリカ 監督/スティーブン・スピルバーグ

子どもの頃に日曜洋画劇場とかで見た記憶はあるんだけど、ちゃんと見たのは初めてかも知れない。
いやあ、うまくできてるなあ。
スピルバーグは20代でこれを撮ったんだねえ。凄いな。
本作からサメのことをジョーズというようになったりとか、
人物の背景が後方へ飛んで行くヒッチコックの「めまい」ショットを取り入れたりとか、
いろんな影響を与えているのがよくわかった。
だめ男が尋常ならざるものに遭遇して、一人前の男になるという。
スピルバーグは、そういう映画をずっと撮り続けている。その出発点。
不謹慎なんだけど、誰が食われて、誰が生き残るんだろうというハラハラ感。
サメの恐ろしい姿は最後まで全然出てこないんだけど、群像劇としてのスリリングさも演出の妙。
あのオッサン、少々イラっとするキャラだったけど、死なないで欲しかったなあ。

ローズマリーの赤ちゃん

2014-08-09 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★☆ 1968年/アメリカ 監督/ロマン・ポランスキー
DVDにて観賞

いやあ、怖い。本作を見たのは子どもを産む前だったと思うので、
妊娠・出産を経験すると、また怖さ倍増。
どう考えてもアパートの隣人たちがおかしいという展開にも関わらず、
終盤、もしかしてこれは妊婦の妄想なのか?とミスリードされる、
ミア・ファローの狂った演技が秀逸。
そして、やはり本作の見所は、ローズマリーが見る悪夢の映像。
ロマン・ポランスキーの映像作りの才能を再確認。
直接的な怖さというより、得体の知れない恐ろしさで足がふらつくような、
めまいを感じる映像。これは唯一無二ですね。

裏切りのサーカス

2014-08-08 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2011年/イギリス・フランス・ドイツ 監督/トーマス・アルフレッドソン
DVDにて観賞

これほど詳細を語らない映画というのも久しぶりだなあ。
騙し騙されのスパイ合戦ストーリーなのに、誰と誰がどう手を組んでいるのか
裏で何が動いているのか、説明が少ないから、めちゃくちゃ想像力を使わないとストーリーに付いていけない。
最後まで見終わって、まだ飲み込めないところもあるけど、でも、この硬派な雰囲気は好きだなあ。
ゲイリー・オールドマンを始め、役者陣が渋い。
コリン・ファースやベネディクト・カンバーバッチなど、イギリスの有名どころがたくさん出てて見応えある。
男同士の組織論なもんで、ハナからやや同性愛的怪しげなムードが漂っているんだけど、
その要素も後半しっかりとストーリーに絡んでくる。上質な1本。

わが母の記

2014-08-07 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2011年/日本 監督/原田眞人
DVDにて観賞

この人たち、そこそこの裕福な暮らしをしているから、
こういう温かい目で認知症の母親を介護できるんだよねーという意見もあるのですけど。
それを言ってもしょうがないんじゃないかと思う。
家庭にはそれぞれの形があって、そこで生まれた介護の問題をどんな風に受け止め乗り越えていくかは、
それぞれの家族のやり方に委ねられているのだから。
壮絶な介護もあれば、こうして温かく見送れる介護もある。
ぼけていく母親のそばで、自分が勝手に思いこんでいた過去の出来事が誤解だったとわかる。
ぼけていくからこそ、真実が見えるなんて、人生って皮肉だ。
どうして、しっかりしている時に親ときちんと向き合って話さなかったんだろう。
今のうちに親と話しておくべきことがあるんじゃないか。全ての子世代に通じる作品だと思う。
まあ、とにもかくにも樹木希林のぼけ老人の演技の素晴らしさが光ります。
宮あおいはいつもの優等生で飽き飽きなんだが。

オンリーゴッド

2014-08-06 | 外国映画(あ行)
★★★ 2014年/デンマーク・フランス 監督/ニコラス・ウィンディング・レフン
DVDにて観賞


これって、デビッド・リンチじゃないのー?
ツインピークス+ブルーベルベット+ロストハイウェイみたいなさあ。
処刑の後の突然カラオケってのは、ギドクみたいだし。
残虐シーンは、パクチャヌクみたいだし。すごい寄せ集め感を感じたのですが。
まあ、映像に力強さはあるし、割と好みの展開だったから、それなりに楽しめましたが、
合わない人には全然ダメだろうねえ。
前作の「ドライブ」が良すぎたんだけど、こっちの路線が本当にやりたいことなんだろうなあ。
クリスティン・スコット・トーマスの怪演はすばらしい。
キャメロン・ディアスに激似だけど。

サラの鍵

2014-08-05 | 外国映画(さ行)
★★★★★ 2010年/フランス 監督/ジル・パケ=ブランネール
DVDにて観賞

もっと早く見るべきでした。すばらしい作品。
1942年にフランス政府が行なったユダヤ人一斉検挙、ヴェルディヴ事件。
恥ずかしながら知りませんでした。非常に衝撃を受けました。
まずユダヤ人迫害というシリアスなテーマを現代を生きる家族と合わせて描いていくという手法が
感情移入しやすくて非常に物語にはり込みやすい。
ユダヤ人少女サラの消息はどうなったのかというサスペンス要素と
思いがけず妊娠してしまった中年ジャーナリスト女性の苦悩。
複数の要素を織り交ぜながら、物語に深みを与えていく。
とってもシリアスな話なんですけど、見ていて辛くなる感じではないんですよね。
それがすごく私は気に入りました。
「縞模様のパジャマの少年」みたいな、観賞後の落ち込む感じがなくて。
とても悲劇的なんですけどね。
やはり、真実は知らなければならないし、知った上で今を生きる私たちは前を向くしかないと思わされました。

奇跡

2014-08-04 | 日本映画(か行)
★★★ 2011年/日本 監督/是枝裕和
DVDにて観賞

大好物の是枝作品なんですけど、これはちょっと入り込めなかった。
それは、主演のまえだまえだのふたりの演技がうますぎるということに尽きます。
子どものナチュラルな演技を引き出すのがうまい是枝監督ですが、
こと、まえだまえだは、是枝さんの演技指導がなくても、この演技ができると思うんですよね。
だから、他の子どもたちと演技が噛み合わないんです。
どうもその不協和音が最後まで違和感を感じさせました。
オダジョーが良かったなあ。