Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ちゃんと伝える

2010-08-31 | 日本映画(た行)
★★★★ 2009年/日本 監督/園子温
「今、伝えないといけない」

「愛のむきだし」の後に手堅いヒューマンストーリー。まあ、デビッド・リンチでも「ストレイト・ストーリー」とか撮ってますからね、できる監督は何でも撮れちゃいます。生(性)の後には死を描く、といったところでしょうか。奇をてらったところは一切なく、実にまっとうに向き合い、じっくりと見せてくれます。

限りある命だからこそ、大切な人に自分の意志をきちんと伝えておかなければならない。この意志は遺志とも言うべきかも知れません。ちゃんと伝えることによって生まれる人と人の絆こそ、かけがえのないもの。「きっと相手はわかってくれてるさ。言わなくてもわかるはず。」それは、怠惰であり、甘えなんですよね。父親がガンで倒れた矢先、自分自身もまたガンに冒されていることを知る主人公。果たして彼はいつ自分の病気を打ち明けるのだろうか。その関心はまた観客自身に自分ならどうするかと問うこととなるのです。死を目前に苦しむ主人公を通じて、私たちは“今この時”に自分の大事な人に愛を伝えることの大切さを知る。

主役を務めるEXILEのAKIRA。役者が本業じゃないけど、とてもいい。園監督がうまいんだろうなあ。現場でどう演出しているのかとても興味があります。新人の俳優さんはみんな園監督の作品に出演すれば、ひと回りもふた回りも大きくなれそうな気がします。



ウルトラミラクルラブストーリー

2010-08-30 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2009年/日本 監督/横浜聡子

「ひねり方がウルトラ」



キテレツな設定だけども、これはちゃんとした純愛ストーリーなんかもしれんなあ。と少しほのぼのした気持ちでエンディングを迎えようとしていたら、開いた口がふさがらない驚くべきエンディングでした。ビックリ仰天。

前作「ジャーマン+雨」同様、ラブストーリーと言えども実にシュールな展開で、主人公町子の元彼は交通事故で亡くなったのだが、未だに首が見つかっていないとか。どん引きエピソードと演出のてんこ盛りです。これから観る方は、かなりヘンな映画だと了解してから観ましょう。

さて、東京で失恋した女の子が傷を癒すために田舎に行く。そして、純朴な青年に出会う。彼は彼女に好かれようと努力するけど、叶わない。でも、彼は彼女に大事なものを遺していった、というのが本作の骨子。これはとてもベタなラブストーリーの展開です。ただ、彼女の失恋の仕方とか、純朴な青年の純朴さとか、好かれようと努力するその行為とか。それぞれがかなりおかしな方向にイカれてるんですね。理解に苦しむラストも、普通のラブストーリーなら、さしずめ「彼が遺していった手紙が波にさらわれた」という演出にでもなりましょうか。と勝手に解釈。

なぜそういう方向にひねる!?と言った凡人には理解しがたいセンスこそ、この監督の持ち味。それが独自の世界観を作っていて、唯一無二の輝きを放っています。それに、あまりに突出したひねくれ具合が作品全体を破綻させていないのは、人物達の掛け合い、特に松ケンと太、松ケンと子供たちなどのシークエンスにおける間の作り方の巧さが作品を落ち着かせているからでしょう。

それにしても、この監督の作品の子供たちは全くかわいくない。おそらくほとんど演技指導せずに即興的な演出をしているのだろうと思う。このかわいくない感じこそが、実に子供の子供らしさを表現できていると思います。ともあれ、松山ケンイチという俳優が持っている純粋さ、危うさが大変魅力的に映し出された作品で、松ケンのための映画と言っていいのではないでしょうか。松ケンが好きな人は見るべし、ですね。津軽弁がカワイイです。




トイ・ストーリー3

2010-08-27 | 外国映画(た行)
★★★★★ 2010年/アメリカ 監督/リー・アンクリッチ
「練りに錬られた脚本にピクサーの企画魂を見る」

<109シネマズ箕面にて観賞>


冒頭のアンディの小さい時のビデオですでにうるうる状態。

脚本がすばらしいです。「リトル・ミス・サンシャイン」の脚本家が書いたということで、いかにもと納得しました。仲間でがんばろう!といういかにもベタなモチーフだけど、展開がスピーディで、エンターテイメント性に優れた脚本で、全く飽きさせずにぐいぐい引っ張る。また、そのスピーディな展開の中に小笑いから大笑いまで、様々な笑いが散りばめられているのがいい。私のツボはドールハウスのケン。エレベータに乗ってするすると降りてくる登場シーンで、のっけから爆笑。ポテトヘッドのトルティーヤとか、数え上げたらきりがない小ネタの連続に笑いがとまりませんでした。

使われなくなったオモチャを、リストラされた失業者に重ねるという見方もあるようですね。どこでもいいから自分の役割を発揮できる場所を探し求めるという。そう思ってみると、さらに泣けますね。でも、個人的にはあまりそうしたフィルターをかけないで見てました。私は風刺や教訓はアニメの場合はあくまでもエッセンスだけで結構、と思っているタチなので。そういう意味ではこの「トイ・ストーリー3」は脱獄、逃亡劇としてのスリリングさが際立っていて、そこがすごく良かった。“あの”シーンは、さすがに観念しましたよ!

そして、見事な群像劇。オモチャの場合も群像劇って言うんですかね?あれだけ、キャストが多いにも関わらず、それぞれのキャラクターがしっかり立っている。これはもう、企画段階においてどれほどスタッフが頭を悩ませ、人物の背景を錬っているかという証拠。思いつきだけでつまらん邦画を作っている人たちは、ホント見習って欲しいな。ピクサーのこの企画力を。1回、企画会議に潜入してこい!

アンディがオモチャたちと遊ぶラストシーン。あれは、少年だった自分にお別れを言う儀式にもなっていて、泣かせる。息子の旅立ちを想像してしまい、涙が止まらないのでした…。

と、ここから方向転換。

映画館を後にして夫がひと言。「この映画は最初から最後まで母親目線だよ。第一、大学にも行こうって年齢であれだけオモチャに愛着を持っていることがおかしい。俺は“ナイト・ミュージアム”の方が何倍も泣けるなあ。」ふうむ。そういう見方もありますか。なるほどね。確かにこれは母親目線かも知れない。そう言えば、作品中お父さんが出てこない。もしかして、アンディの両親は離婚してしまったんだろうか。ふと、そんな風にも考えてみる。そうすると、アンディが中学・高校とおもちゃを大事にしてきたのも理屈が通る。とまあ、いろいろ見終わってから背景を考えたりできる懐の深さも本作のすばらしいところではないでしょうか。「2」の悪ガキ、シドも裏キャラとして出てるようですからね。



プラネット・テラー

2010-08-26 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2007年/アメリカ 監督/ロバート・ロドリゲス
「グチョ!グチャッ!はやっぱダメだあー」


グラインドハウス企画「デス・プルーフ」の片割れ。「デス・プルーフ」観賞後に再チャレンジしました。いやあ、やっぱグロいスプラッターはダメです…。「最後まで見なければならない」という暗示を己にかけ続けてようやくエンドロール。ぎゃあ、疲れた。やっぱ「片腕マシンガール」は借りれないです。

ローズ・マッゴーワンがぐいんぐいんポールダンスするオープニングとか、すごいカッコイイんですけどねー。この監督は音楽も自分でやるんだね。すごいね。ブルース・ウィルスとか、ジョシュ・ブローリンとかハリウッドスターが悪ノリしてやってるのも見ていて楽しい。でも、ひとたび、人間の顔がぐにゃあ~となってヘンな液体出てくるあたりから、もうダメぇ。。。しかも、レストランの食い物、めっちゃ汚いし!!!

気持ち悪いのもそうなんだけど、そもそもどうもゾンビ(のようなもの)をめった撃ちにするって、シチュエーションがノリきれないんだよね。己の嗜好を再確認いたしました。

七人のマッハ!!!!!!!

2010-08-22 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2004年/タイ 監督/パンナー・リットグライ

「落下!激突!強打!」


「マッハ!」が面白かったので観賞。いやあ、凄まじいスタントの連続でお口あんぐりでした。「マッハ!」より1対1の対決が少ないのがちょっと不満ですけど、それでも主演を務めるダン・チューボンの数々のスタントシーンに釘付けでした。とにかく落ちて、落ちて、落ちまくる。しかも、ただ落ちるんじゃあないですよ。必ず何かにぶつかってから落ちるんです。車、丸太、建物…etc。出演者のみなさん肋骨、何本折れてますかね。いや、肋骨くらいならかわいいもんでしょうか。燃えるトラックが次々と村中の家屋に激突。村ひとつぶっつぶすくらい、どーってことありゃしないという、もはやそれは意気込みとか、驚かせたいとか、そんなことでなく、無茶苦茶したれという狂った波動攻撃であります。

虫けらのように村人が虐殺されるわけですが、タイ人によるタイ人のための映画であることを考えると、この描写を「やり過ぎ」、「可哀想」、「ストーリーのためにわざわざ」、というのは、いかにも生ぬるい日本人的思考だと感じられて仕方ありません。父親の無惨な死を目の当たりにした少女が自ら下す鉄槌。憤怒の表情で肘鉄を入れるあの表情は、阿修羅のようです。その後続く、「とどめを刺して!」というセリフ。「殺して!」ではなく「とどめを刺して!」というセリフに侵略された者の憎しみの深さを感じさせます。しかも、それをあんな小さい少女に言わせるというところに、タイという国が抱える闇を感じられてしょうがないのです。ストーリーは無茶苦茶だし、セパタクローの選手なんて、ほとんどお笑い担当ですけどね。でも、侵され続けた者の怒り。それが、アクションというフィルターを通じて爆発する。それが、あまりに無謀で命知らずゆえに、圧倒されました。

デス・プルーフ

2010-08-21 | 外国映画(た行)
★★★★★ 2006年/アメリカ 監督/クエンティン・タランティーノ

「超バイオレンス版SEX&THE CITY」


サ、サ、サイコー!ビバ!タランティーノ!いやあ、やられました。スプラッターが苦手なのですが、がんばって見て良かったです。なんで、そもそも今頃これを見ているかというと、グラインドハウス2本立て企画としての片割れ「プラネット・テラー」を先に見ようとしていたからなんですよ。ゾンビ出まくりの血しぶき飛ぶ展開に途中でDVD止めちゃいまして。こりゃ「デス・プルーフ」も無理だなと棚の奥に追いやっていたのです。

ぺちゃくちゃダラダラ続く女たちのおしゃべり。あけすけな会話。男たちを迎え撃つ4人組。なーんか、SEX&THE CITYのバイオレンス版みたい。くだらんおしゃべりがおもしろすぎる。女子モードのホラーアクションってのが、このジャンルになじみのない私にはとっても新鮮。こういうのをきっかけに「片腕マシンガール」とかにも興味がいっちゃったりするんだろうか。

とことん相手を痛めつけちゃうってのは、見ていてすごく痛快でなんですけど、やっぱそれは相手がほんとにワルじゃないといけないワケです。「アバター」みたいにやっちまえ~と思う自分に罪悪感を感じるようじゃ、映画としてダメなんですよ。その点、これはもう「このオトコ、早くたたっきっておくんなさい」てな、仕事人の依頼者みたいな心境になり。反撃始まった途端、イケイケモード全開。それにしても、メインスタントを務めるゾーイ・ベルかっちょええー。彼女の壮絶カースタントだけでも見る価値アリですね。

映像をわざと汚したり、フィルムが飛んだり、昔のグラインドハウスをそのままなぞらえた映像世界は、タランティーノがほんと、現場で楽しそうにやってんだろうなあってのが、目に浮かぶようです。作り手の興奮や楽しさがそのままドストレートに観客に伝わってきて、実に爽快でした。

マッハ!

2010-08-19 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2003年/タイ 監督/プラッチャヤー・ピンゲーオ
「生身の強さ」

現役アクションスターで最高峰とも言われる、トニー・ジャー。ずっと見たい見たいと思い続けてようやく観賞です。

いやあ、凄かった!とにかく、トニー・ジャーの身体能力の凄さはハンパじゃないですね。まさに体を張ったシーンの連続で、思わず「痛い!」と声を出してしまいそうなほどです。マーシャルアーツがハリウッドを始めとするアクション映画に取り入れられて久しいと思うのですが、その手の映画に慣れてきた昨今。ムエタイをベースにしたアクションが非常に新鮮に映ります。攻撃そのものの突破力も目を見張るものがあるんですけど、私が驚いたのは攻撃をした後、すぐさま構えのポーズに戻るその早さ。尋常じゃないスピードです。蹴りを入れた後、どうだ~みたいな余韻が一切ない。しかも、その一連の動きがとても美しいんですよね。

最初はタイ語独特の抑揚の大きいイントネーションが気になったりもしたんですけど、まあこれは見慣れてないからでしょう。香港映画も最初はそうだったしね。空手を習っている息子も大喜びでした。これからトニー・ジャーどんどん見ようと思います。