Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

DOPESICK~アメリカを蝕むオピオイド危機~

2022-01-09 | TVドラマ(海外)
★★★★★

大傑作。 処方通りに服用して依存症になる患者の地獄、それを処方した医師の悔恨、虚偽のデータで莫大な富を築く一族の骨肉の争い。地を這うように捜査するDEAや地方検事。オピオイドの恐ろしさと巻き込まれる人々の重厚な人間ドラマにただただ圧倒された。

マイケルキートンとケイトリンデヴァーは本作でゴールデングローブ賞にノミネート。しかし、それ以外のキャストもすばらしくて役者陣みんなベストアクトでは?というくらいの熱演。特に私はピーターサースガードを推したい。

POSE シーズン2

2021-10-29 | TVドラマ(海外)
★★★★☆

1991年。マドンナのVOGUEに始まりチャカカーンのI'm EVERY WOMANで終わる完璧な音楽構成。リアタイで聞いていた世代としてはクソミソに泣けた。エイズの蔓延、アクトアップ、人権問題。もがきながらも前に進む人物たちの成長譚。とにかく1話1話の内容が濃密!大感動。

トランスが殺されても警察は1ミリも動かない。エイズへの偏見。商売を邪魔する白人。酷い仕打ちばかりが彼らを襲うが、それでも煌びやかなボールの世界で彼らは輝く。S1で感じた美しさを評価するのは現代にフィットしていないのでは?という違和感も見事に回収。すばらしすぎる。

メア・オブ・イーストタウン

2021-09-28 | TVドラマ(海外)
タイトルが宣言している。メアという女性の物語だと。それにケイトウィンスレットが見事に応えた人間ドラマ。電子タバコが手放せないやさぐれ中年刑事。息子の死という喪失を抱え、時に人としての道を外す。その泥臭い姿をさらけ出す演技が貫禄の域。

田舎町の殺人事件、女刑事、そして周辺人物の隠された秘密。偶然にも先日見たばかりの「ブロードチャーチ」とそっくり。すでにこの種の設定がフォーマットになりつつあるとも言えるが本作は何より主人公メアが立っているし、周辺人物が抱える苦悩や三者三様の親子の在り方に引き込まれた。

ブロードチャーチ〜殺意の町〜 S1

2021-09-25 | TVドラマ(海外)
殺人事件など起きない田舎の海岸で少年の遺体が発見される。徐々に明らかになる住民たちの秘密。
ってこれツインピークスじゃん。
犯人が意外な人物ゆえミステリーとしての面白さはあるが、疑わしき人物たちの深堀りがやや足らず。断崖絶壁の風景は印象的だけど。

殺人事件ものって、放送時は犯人は誰かってことで視聴率を稼いでいけるんだろうけど、ビンジウォッチになるとそれより人間ドラマとしての面白さを求めてしまうわけで、やや物足りない。シーズン2を見るか微妙…。

ホルストン

2021-09-20 | TVドラマ(海外)
ほアメリカ人デザイナー、ホルストンの成功と挫折の物語。主演のユアンが我儘放題の天才デザイナーを熱演。伝説のクラブ、伝説のオフィスなど70-80年代当時のNYの再現ぶりが凄い。いかに天才でも、投資家と資本主義に呑み込まれる。ファッションとビジネスの話でもある。

ユアンマクレガー、本作でエミー賞授賞。確かに熱演なんだけど、芸術家気質のゲイの男性が男とドラッグに溺れて転落するという話はよくあるもので目新しさはない。(彼のこれまでのキャリアから考えるとチャレンジングな役と言えるのかもしれないが)

それでも、ホルストンの邸宅、別荘、パリの名だたるデザイナーたちとベルサイユ宮殿でショー対決。めくるめくゴージャスなセットと舞台は眼福。ここまで上り詰めた彼が落ちぶれて、全国チェーンブランドのデザインをさせられる。湯水のごとく金を使い続けた彼の自業自得なのだが、哀れだ。

見てて思ったのは、ライセンス契約がいかにおいしいかってこと。ただのハンカチやベルトや靴下に名前とロゴが付いているだけで、膨大な利益が生まれる。そりゃそのおこぼれにわんさか人が集まってくるわけだよ。

POSE

2021-09-08 | TVドラマ(海外)
★★★★

80年代ゲイカルチャーの再現ぶりはすばらしく、「ボール」と呼ばれる週末の対決イベントの煌びやかさは圧巻でアガる。一方、忍び寄るエイズの恐ろしさにも向き合い、互いを支え合うLGBTQの人たちの人間ドラマとしても見応え抜群。

故郷から身一つで出てきた若者を受け入れる「ハウス」と「マザー」の存在。こうした共助の形があることは全く知らず、互いに支え合い、誇りある生き方を模索する人物たちに魅了された。全キャストがトランスジェンダー俳優というのも画期的。特にゴッドマザーを演じるドミニクジャクソンの存在感が凄い

地下鉄道 自由への旅路

2021-08-31 | TVドラマ(海外)
★★★ AmazonPrime

バリージェンキンス全話監督で話題だが私の肌には全く合わず。特に撮影が好みじゃない。クレーンによる移動ショット多すぎ問題(お尻ムズムズ)、逆光ショット多すぎ問題(目がチカチカ)。狙ってやってます感が無理。超高画質カメラで映像はキレイだけどさ。

ムーンライトのように、カラーコーディネーションが徹底的に行われている。しかしだよ。基本地獄めぐりの話で、黄色や茶色を中心としたくすんだ色目のカラーコーディネーションが続くので正直、気が滅入ってしまった。黒人奴隷解放前にもしも本当に地下鉄道があったなら。設定は面白いんだけどなあ。

高い城の男

2021-08-02 | TVドラマ(海外)
★★★★☆ Amazon Prime 

もし大戦でドイツが勝利しても、いずれ破綻するなら…。様々な展開が可能な中、優生思想による家族間の断裂を中心に持ってきたのは、クリエイションとしてとても正しい選択だと思う。何でもありなIF-SFで脚本も美術も作り込みがすばらしいドラマだった。

パラレルワールドと繋がる技術をドイツが開発し、地下に別世界への入口が建設されるという飛躍した展開も、ドイツ軍内の勢力争い、アメリカ黒人たちの解放運動など、実際の歴史をなぞらえた展開がリアルで緊迫感を保つ。しかも黒人解放運動が共産主義と結びついているなど、ひねり方が面白いのだった。

マスター・オブ・ゼロ シーズン3

2021-07-23 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

S2まで見ていた人間からすると、違うドラマ始まった?と思うほどの違いだが、その向こうに広がる豊潤な世界。日常の幸福、恋の哀れ、妊活の厳しい現実。全てがゆったりと、実にゆったりとした時間と共に描かれる。レズビアンカップルの数年に渡る愛と葛藤の物語。

もはや現代の映画では無理かも知れないと思える贅沢な時間の使い方。ひと気のないコインランドリーでただ機械音がするだけのシーン、愛し合う2人が肩を抱き合い牧場を横切るロングショット。体外受精に取り組むアリシアが母に電話をかけるシーンも胸に迫る。心のひだに触れるような繊細な演出が見事。

FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー

2021-07-20 | TVドラマ(海外)
★★★☆ Netflix

東京オリンピックを前に状況が酷似と話題の作品を鑑賞。リゾートで豪華フェスをぶち上げるも、絶対無理やん、アカンやんのつるべうちに誰もストップかけられず結局開催して地獄の様相。馬鹿騒ぎ一団だが多くの教訓がここにある。

個人発信でもその執着で巨大イベントになると誰も止められない。この場合、投資家の存在がキーだ。投資と回収。この命題に囚われると後には引けない。オリンピックも然り。開催後に再び感染拡大した時、なぜ止められなかったかと自分を責めるのかと思うとゾッとする。ビリーの周辺にいる奴らは私たちだ

サーヴァント ターナー家の子守

2021-07-10 | TVドラマ(海外)
★★★ AppleTV

あることで子を亡くした女性。傷ついた心を癒すために赤ちゃん人形を世話している。が、彼女はそれを本気で自分の子供だと思うように…。Mナイトシャマラン製作総指揮ということで期待したが、謎ばかり撒き散らしてちっとも回収せず。全く好きになれなかった。

とにかく赤ちゃん人形がリアルで怖い。カメラワークもクールだから映像としての引きも強い。が、全てが思わせぶりで話がつながらないのはいかがなものか。普通気づくだろ、普通止めるだろの連続で見ていても疲れた。S1の謎がS2ではっきりするかと我慢して見たがそれもなし。多分S3は見ないな。

瞳の奥に 

2021-06-19 | TVドラマ(海外)
Netflixドラマ

スティーブンキングが原作を絶賛という触れ込みで見たけど、残念案件。ラストのオチはそれなの?というちょっとした驚きはあるけど、謎を引っ張るばかりでドラマとしての魅力が乏しい。悪夢とか精神病院とか、それらしいアイテムを散りばめるだけじゃあイカンでしょ。

ボクらを見る目

2021-06-17 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

5人の黒人少年が強姦事件の冤罪で逮捕される。こんな無理筋が通るのかという、白人警官による取り調べ中の脅しと自白強要。少年ゆえに大人の言うことに従ってしまう、その先の地獄たるや。これが実話なのかと何度も目を疑った。少年期、青年期を演じるキャストも熱演。

原題は「When They See Us」。黒人の仕業に違いないと決めつける先入観、黒人のせいにすればいいという身勝手さ。常にそうした悪意に晒され続ける彼らの苦悩が胸に迫る。無実を知りながら「白人警官の言うことを聞いて刑務所に入った方がいい」と言う親もいる。その彼らを取り巻く環境があまりに悲しい。

ザ・サーペント 

2021-06-04 | TVドラマ(海外)
★★★★ Netflix

殺人鬼シャルル・ソブラジの犯罪史をバンコク時代を中心に描く。70年代ヒッピーカルチャー盛んなアジアの猥雑な街が見応え抜群。バンコク、カトマンズ、香港…etc。Netflix+BBCのロケ力が存分に活かされている。多くの欧米バックパッカーが次々と毒を盛られる様に戦慄。

映画ファンとしてはタハールラヒム主演が見どころ。メイクで本人に寄せており本性が見えない不気味さが増してる。ソブラジはただのサイコパスじゃなく、強盗・詐称・文書偽造・脱獄とあらゆる犯罪に手を染めている。時系列の行き来が多いのが残念だが回を増すごとに増え続ける犯罪歴に驚きの連続だった。

犯人を追い詰め、彼に固執して人生が変わってしまうオランダ人大使館員のヘルマン。「ゾディアック」や「凶悪」にも通じるテーマ。他国の大使館員は自国の旅行者の死に全く興味なしで、前半はいわゆる「誰も自分を信じてくれない」ジャンルでもある。彼の奮闘がなければと思うとゾッとするばかりだ。

高い城の男 シーズン1

2021-03-14 | TVドラマ(海外)
★★★★☆ Amazon Prime

第2次大戦に日独が勝利しアメリカを分割統治している歴史改変SF。トンデモ設定かと思いきや、ナチス統治下のNY、日本統治下のサンフランシスコ、いずれも脚本やセットが緻密で唸らされる。日独の駆け引きがまさに東西ベルリンを彷彿とさせ、ポリティカルサスペンスとして実に面白い。

米国が勝利していた別世界のフィルム映像が鍵を握る展開。プロパガンダで勢力を拡大したナチスだからこそ、フィルム回収に躍起になるという設定がリアル。あちこちで鉤十字がはためき、憲兵隊が横暴を振るう。そのビジュアルは生理的嫌悪感を催す人もいるだろう。それでもなお、抗えない魅力がある。日本人キャストも魅力的だ。