Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

母なる証明

2009-11-15 | 外国映画(は行)
★★★★★ 2009年/韓国 監督/ポン・ジュノ
<梅田ブルク7にて観賞」

「凄まじい緊張感に身じろぎもせず」

息子を救うことができるのは私しかいない。
ひたすらに、盲目的に犯人捜しを続ける母は愚かなのか。
果たして、その母は真実を見ているのか。
犯人捜しはいつか息子への贖罪の行為となり、
ついには己を地獄へ突き落とす。
ああ、何もかも忘れよう。
あの時もそうだったじゃないか。
また、ふたりでやり直すのだ。全てを忘れて。


凄い映画でした。「殺人の追憶」に迫る傑作。
サスペンスであり、人間ドラマであり、社会派作品。
オリジナル脚本でしょう?本当にポン・ジュノの手腕に感服。
誰が真犯人か、という犯人捜しのスリリングさ。
いろんな評論家がヒッチコックを引き合いに出していますが、
二転三転する展開にぐんぐん引き込まれます。
とにかく緊張感が凄いのなんの。
つばを飲み込むタイミングさえ失ってしまいそうです。
人間ドラマの部分で言えば、今村昌平を思い出します。
社会における下層の人々のそのバイタリティ、狡さ、いいかげんさ。
息子が母親の布団に潜り込み、
その乳房をむんずとつかまえる俯瞰のショットは、
まさに今村っぽかった。

ゴルフボール、ゴルフクラブ、鍼箱など
随所に挿入される小道具による伏線の張り方。
アスファルトに広がる小便、床に広がるペットボトルの水など、
映像的テクニックで表現する人間心理。
真犯人の発覚とその事件の収束におけるどんでん返し。
何を取っても一級品で、文句の付けようがない作品です。

あまりにも心に深く突き刺さる驚きの結末。
このラストの展開は、今の日本映画では決して
作ることはできないでしょう。
おそらく、様々な圧力やクレームが起こることは間違いありません。
そういう意味でも必見の作品と言えると思います。

ラストシークエンスも本当にすばらしい。
泣くことを忘れて、茫然自失と言った感じ。
本当に圧倒されると「泣く」という反応を超えてしまいませんか。
泣いているのはあれは、まだ心に余裕のある場合。
ポン・ジュノの決意と韓国映画のパワーに圧倒されました。

今年のNo.1は、「グラントリノ」か「母なる証明か」。
頭を悩ませています。