Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

追想

2021-10-20 | 外国映画(た行)
★★★★  1975年/フランス 監督/ロベール・アンリコ

ナチスに妻と娘を殺された男の復讐劇。自身が生まれ育った古城に立て籠もり、一人また一人とナチを殺す。そのプロセスの度々に妻と娘との美しい思い出がインサートされる展開が独特。何と言ってもロミーシュナイダーの美しさよ!イングロリアスバスターズの参照作品とも言えるトラウマ作品。

冒頭のんびりした曲に親子がサイクリングする映像で始まる。これが復讐物なの?というのどかさ。そしてその後のナチスの残虐な村人皆殺し行為。コントラストが強烈。妻の死体を見た夫が頭の中で殺された瞬間を想像するシーンを入れるというのもユニーク。鑑賞者も夫と共に復讐の思いをたぎらせるのだ。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021-10-13 | 外国映画(た行)
★★★★☆  2021年/アメリカ 監督/キャリー・ジョージ・フクナガ

賛です。ダニエルボンドのフィナーレとして大いに堪能。3ヶ月ぶりの映画館ということもあり、大画面で聞くあのテーマソング、めくるめく世界美紀行、リヌス・サンドグレンによるバチバチに決まったショットに大満足。とにかくダニエルクレイグお疲れ様!のための167分ですね。

ボンドという人間の一生を5部作のラストとしてよくぞまとめたなと感心。パロマもマドレーヌもそれぞれの美しさを存分に発揮。ラミとボンドの最後のアレはウルトラセブンオマージュ?と思ったのは私だけでしょうか。豪華ディナーいただいたようで満腹。おいしゅうございました。

007スペクター

2021-09-25 | 外国映画(た行)
★★★★ 2015年/アメリカ 監督/サム・メンデス

冒頭アクションが全てな007シリーズ。死者の祭りの大騒ぎ、長回し、大爆発、ヘリコプターの超危険なスタントまでの大迫力で十分満足だが、以降はアクションのために物語が動いている感が拭えない。オーベルハウザーとの幼少期の因縁は必要だったか?盛り込みすぎて消化不足が目立つ。

レアセドゥのボンドガールは今シリーズ最強の存在感。一方、盛り込みすぎの弊害を食らったのはモニカベルッチ。出演シーン少なすぎだし、全く物語に絡まないのはとても不満。クリストフヴァルツは悪の総大将らしさがなく、普通のおじさん。悪役のキャスティングが難しい時代だね。レミマレックに期待。

チェルノブイリ

2021-09-14 | 外国映画(た行)
★★★★★

凄まじいの一言。見応えがあるとか、そんな言葉が空虚に感じられる。廃炉になった原発の内部で撮影されたという事故シーンの圧倒的な恐怖。容赦無く描かれる原爆被害。科学者の苦悩。命を賭けた人海戦術。どこかで目にした「全人類見るべき」に賛同。

「1時間ごとに広島原爆の2倍相当の放射線を放つ」。その恐ろしさを最も実感できるのは我々日本人だ。見ていて辛いのは間違いないが、一方で事実を知らなければという強い思いが込み上げる。セットの作り込みも驚異的。5分ごとに語りたくなるエピソードが連続。今まで見たドラマで最も密度が濃いと断言

大統領の料理人

2021-08-16 | 外国映画(た行)
★★★☆ 2012年/フランス 監督/クリスチャン・バンサン

料理はおいしそうでいいが、宮廷料理界に一石を投じるような展開にはならず。かなりゆるめの展開。確かにプライドの高い男たちが集う厨房でオルタンスの存在は異質なのだが、よくある小競り合いで終始しているのがもったいない。料理の仕方ではもっと面白くなったような気がする。


ドクトル・ジバゴ

2021-08-08 | 外国映画(た行)
★★★★ 1965年/アメリカ 監督/デビッド・リーン

197分の巨編ようやく鑑賞。巨大セットに大群衆エキストラ。歴史に翻弄された男の悲哀が浮き彫りに。原作者の実人生や撮影中の大事故など、壮絶な背景を知るほどに感慨も深くなる。歴史の大波の中で一個人が善に生きることの意義とは。やはり結論、ファッキンイデオロギー。

時の面影

2021-03-21 | 外国映画(た行)
★★★★ 2021年/イギリス 監督/サイモン・ストーン

舞台は大戦前の英国サフォーク州。未亡人エディスと初老の掘削者の心の交流を描く良作。非常に静かな映画だが、全く飽きることがなく引き込まれた。なぜ遺跡を掘り起こすのか。古代に思いを馳せることで、過去と未来が繋がっていく。見終わった時には壮大なテーマが心に沁みる。

作品選びが堅実でこの人が出てたら必ず見るという女優の1人がキャリー・マリガン。本作もすごく良かった。大屋敷の女主人なのだけど、物静かで聡明で。あと、彼女が住んでいる家が本当にステキ!この家を見ているだけでも全く飽きなかった。朴訥な掘削者を演じるレイフファインズも流石の演技。

追憶

2021-01-24 | 外国映画(た行)
★★★★★ 1973年/アメリカ 監督/シドニー・ポラック

左翼思想のユダヤ人のケイティ、キャンパスの花形でセレブなハベル。正反対だからこそ惹かれ合った男女の数十年に及ぶ愛の物語。赤狩りの時代。女は愛より自分の正義を選んだ。別れと再会。あの頃のように、愛しそうにハベルの前髪をかきあげるケイティ。号泣。不朽の名作。

美しい人と政治信条に生きる人。前者を女性で作りがちだが、男女逆転しているのが肝。主張の強いケイティだがその揺るぎなさにハベルは惹かれた。そしてレッドフォード美しすぎる。美しい男を狂おしく求める女の悲劇。そして含蓄に富むラストシーン。いろんな物を諦め輝きを失ったのはハベルでは。辛い。


トマホーク ガンマンvs食人族

2021-01-20 | 外国映画(た行)
★★★★ 2015年/アメリカ 監督/S・クレイグ・ザラー

食人族にさらわれた村人を救うため荒野を追跡する4人の男。土まみれになり、馬を盗まれ、仲違いしたりしてほうほうの体で敵地に向かう。ジョーク飛び交うダラダラ道程は笑いも誘うオフビート感、かと思いきやの凄まじいゴア描写。この独特の緩急ハマる人がいるのわかる。

しかーし!西部劇とゴア描写という自分にとって最も苦手な2ジャンルの掛け合わせ…食人族による殺戮シーンは怖すぎた。半分目をつぶりながらラスト30分を耐え忍ぶ。やはり無理するもんじゃないな…。サスペンスもホラーも好物だが、人体破壊はどうしてもダメなのでした…

TENET テネット

2020-10-05 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン

キップソーン始め名だたる物理学者が監修。素人のツッコミは野暮というもの。科学的にはありうる世界で地球滅亡を防ぐ大スペクタクルアクション映画。時間の前と後から挟み撃ちなんて、よく映像にしようと思うなー。映像はもちろん爆音にも痺れる。可能な限りIMAXで!

時間逆行という難しさは確かにあるが、最終的には愛が人を動かすという超絶ベタな落とし所があるので、そこはあまり気にならない。それに「そいつは●●だった!」という単純な仕掛けが十分面白い。ルドウィグ・ゴランソンの音楽もめちゃくちゃかっこいい。あー楽しかった。

透明人間

2020-07-25 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/リー・ワネル

あの手この手の男性支配に苦しめられる女性を描くフェミニズム映画として秀逸。横移動するカメラに何も映らない映像。こちらの予想の斜め上を行く暴力描写。恐怖演出もキレキレ。 また、見えない物の恐怖はSNSの中傷やコロナウィルスにも当てはめられる。間違いなく2020年を代表する一本。

踏み込んだなと思うのは女性の「まだ子供はいらない」という考えが亀裂の一因になっていること。これはどのカップルでも起きうる案件で女性側としても見る人によっては複雑な感情を抱くはず。 男のあまりに異常な精神的な束縛をあのような形で決着させる。危険な情事の現代版アンサーではとも感じた。

タクシー運転手 約束は海を越えて

2020-07-06 | 外国映画(た行)
★★★★ 2017年/韓國 監督/チャン・フン

ソンガンホ力あっての感動作。
おバカで素直な一介のタクシー運転手が腹をくくって事を成す。その心情の移り変わりに観客が気持ちを乗せる一体感が極上。ラストのカーチェイスはやり過ぎかもしれないが、悲惨な過去の歴史をエンタメとして届けるには必須の展開。日本映画よ、続け。

タイラーレイク 命の奪還

2020-05-21 | 外国映画(た行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/サム・ハーグレイブ

車内から車外へ。人物の後方から前方へ。 猛スピードで縦横無尽に動き続けるカメラが圧巻。物語が凡庸なのは玉に瑕だがスタントマンがカメラを持っているのかという程の凄まじい撮影はぜひ体感すべき。 ダッカの猥雑な街をなぎ倒すようなアクションの連続はまるで007。

シューティングゲームのように人が死ぬ映画は正直好みじゃないんですけど、撮影の凄さは堪能しました。しかし原題がExtractionなのに、なんでこういう長くて変な邦題になるんだ。

魂のゆくえ

2020-05-07 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2018年/アメリカ・イギリス・オーストラリア 監督/ポール・シュレイダー

環境破壊問題に教会の癒着。社会問題に斬り込む重苦しい作品かと思いきや、中盤に神秘体験、ラストはタクシードライバーという離れ技。ポールシュレイダーの作家性が色濃く出た作品。誰にも撮れない独創性。ラストカットも強烈な印象。2019年ベスト10に入れたい。

社会は矛盾に満ちている。それらを正すため一人の人間ができることなどほとんどない。人は無力だ。しかし、正すことができず絶望した人間が行き着く先は破滅しかないのか。直面する問題の大小はあれど、誰しもトラーの胸中に己を重ねることができる。磔刑を望んだトラーはマリアに救われるのだろうか。


タリーと私の秘密の時間

2020-05-04 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/ジェイソン・ライトマン

まさにジェーンスー氏の名言「自分で選んだ道を正解にするしかない」である。子育てで疲弊し空っぽになった自分に一筋の希望を見出すある女性の物語。物哀しくもじわんと心に残る秀作。出産直後の主婦を演じるため激太りしたシャーリーズセロンの女優魂も凄い。

原題は「Tully(タリー)」。超シンプルなこのタイトルが実はとても深い意味を持っている(それに気づいた時の驚きと喜びといったら!)ゆえに、なぜ秘密の時間とか甘ったるい邦題にしたのか。マーロの苛立ちが子育てだけではないことが少しずつ明かされる脚本も秀逸。ヤングアダルトトリオ最高。やっぱ、ジェイソンライトマン好きだな。