Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

クワイエット・プレイス

2019-07-24 | 外国映画(か行)
★★★☆ 2018年/アメリカ 監督/ジョン・クラシンスキー

軍が全く介入しないので極限状態での家族の生き様こそが本作の肝だろう。一度失った信頼を父と娘が取り戻す話であり、命がけで子を産み守り通す母の話であり、耳に障害を持つ長女こそが怪物退治を経てトラウマを乗り越える話と言える。

が、一方これは憶測だが、立派な地下室に様々な備蓄を蓄えているのを見るに彼らは以前町山智浩氏がヴィルヌーブの「プリズナーズ」の解説で言及していたキリスト教原理主義のサバイバリストではないか。避妊しないから妻も身籠ったのだろう。亡くなった子供を取り戻したいという強い思いも音を立てたら死ぬという状況ではあまりに異様だもの。

その生への執着さをサバイバル本能と取るか、気味悪いと思うか、観客を試すよね。私なんぞ、ぶっちゃけ家族しか交流のない世界で生き残ってもそんな人生楽しいかね?と思ってしまう。

果たして地球は彼らに救われるのか、それとも…。示唆に富んだラストだと思う。臆病者の私はあれだけいっぺんに襲って来たら、どんなに対抗策あってもダメでしょと思っちゃうんだが。

上意討ち 拝領妻始末

2019-07-19 | 日本映画(さ行)
★★★★★ 1967年/日本 監督/小林正樹

(WOWOW録画)

大傑作。冒頭、城の外壁を切り取る映像がスタイリッシュで驚く。その後も全カットがきりりとコントラストの効いたモノクローム映像で構図もバチバチに決まっている。物語にもハラハラしてさすが橋本忍。カメラ、美術、脚本、チャンバラ。全部最高で非の打ち所なし。

殿様の意向で人生を左右される悲哀は現代社会にも十分通じるし、特筆すべきは女性映画としても申し分ないこと。男社会の勝手でモノ扱いされるいち(司葉子)の存在は大きな比重を占め、かつ彼女がしっかり自分の主張を通す女としてキャラ付けされていることに驚く。1967年製作とはとても思えない。

それに三船敏郎&加藤剛の「うちの嫁最高!」な言動がたまらん。2人のフェミニストっぷりは泣く。全ての男たちにこうあって欲しいわ!と大興奮。三船&仲代の関係はBL視点でも十分楽しめるし、決闘シーンの殺陣はさすがのひと言。どこからどう見ても完璧。「切腹」より断然ハマった。

新聞記者

2019-07-17 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2019年/日本 監督/藤井道人 

(映画館)

視線の映画だ。杉原と吉岡。追いつめられてなお愚直に正義を貫こうとする彼らのまっすぐな横顔に引き込まれる。ラストは互いの正面を捉えるショット。2人の視線は交わるが、横断歩道に挟まれてしまう。視線の向こうを観客も共に凝視し続け、ラストまで高いテンションで鑑賞した。

現政権の暗部を描いたことでも話題だが、不正に向き合う人間の真摯な姿を描く作品としても見応え抜群。個人的には当事者本人の出演シーンで興をそがれたのが残念。役者の中に混じると違和感が生まれ、作品への没入感がサッと引いてしまった。あの討論番組は役者を使って撮影して欲しかったな。それでも、実際の事件が今なおその真相がくすぶっている中で本作を作った意気込みは評価に値する。

あとね、とにかく松坂桃李がすばらしい。ちょっとした仕草や表情で苦悩や躊躇、決意を表現していて驚いた。表情の演技がここまでうまいなんて。彼が出演することによって、若い映画ファンが来てくれることの意味はとても大きいと思う。

デトロイト

2019-07-16 | 外国映画(た行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/キャスリン・ビグロー

閉鎖空間での手持ちカメラが不安を煽り、見る者を手汗をかきそうなほどの緊張に引きずり込む。冒頭、無防備な黒人を背後から撃つシーンを見せているだけに、全く状況が好転するとも思えず鑑賞にはかなりの体力を必要とした。いやあしんどい…でも見るべき作品。

人種差別主義者の白人警官を演じたウィル・ポールター。黒人を殴りまくる役があまりにつらくて撮影現場がしんどかったそうで。作品内でもそこまでクズになりきれてない印象を受けた。いい人っぽさがちょっとにじみ出ているというか。偶然居合わせた黒人の警備員ディスミュークスの存在が物語を動かすキーになるのかと思ったんだけど、それが特になかったのは残念だった。でも、白人女性であるキャサリンビグローが監督したということにも意義のある作品だと思う。

マル秘色情めす市場

2019-07-09 | 日本映画(ま行)
★★★★★ 2017年/日本 監督/上田慎一郎

長年見たかった念願の1本をついに鑑賞。紛う事なき大傑作。芹明香から醸し出されるエロスと聖性は目眩を覚える。釜ヶ崎ゲリラロケにおけるロングショットに溜息、爆発シーンのアバンギャルドさに興奮、そして突然のパートカラーで世界が変わる。田中登の才気が炸裂した1本。自分のロマンポルノ鑑賞歴で間違いなくNo. 1。

レディ・バード

2019-07-08 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/グレタ・ガーウィグ

(Amazon プライム)

ワガママ自己中女子高生が大人の階段を一歩上る青春物語の秀作。大学進学を機に子供を送り出した親なら共感ポイント満載だ。娘への愛を素直に表現できない母の意固地さがリアル。そしてラストで意味を持つタイトルが秀逸。変な邦題にしなくて本当によかった。

主人公のBFをティモシーシャラメが演じるが、ファンとしては出演時間が短いのがやや不満。とはいえ、陰謀説を唱えたり、プロムには興味なかったり、ちょっと斜に構えた感じが面白いキャラ。元カレがゲイであること含め、94分と短い尺で彼らのキャラは掘り下げていない。リストラされて鬱病になった父親も同様。ただ案外、そのサラッと感がこの作品には合っているのかもしれない。

犬ヶ島

2019-07-05 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ウェス・アンダーソン

(WOWOW録画)

ニッポンカルチャーってこんなにスタイリッシュでカッコいいんだね。我が政府主導のクールジャパンなんて金ばっかり使ってダサいのなんの。ウェスには日本政府から勲章授与すべき。それにしても画面の隅々まで行き届いた美術がすごい。すさまじい執念とこだわりなんだけど、それが全くこれ見よがしでなく、あっというまにどのシーンも駆け抜けていく。ワンカットワンカットをポストカードにして飾りたいほどの作り込みようである。何度見直しても見落としがありそうなすさまじい情報力。このセットは置いといてミュージアムにすればいいのになあ。メイキングも見てみたい。


未来を花束にして

2019-07-03 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2015年/イギリス 監督/サラ・ガブロン

見るのがつらくて何度も途中で停止。数日かけてようやく鑑賞した。
女性達が集会しているだけで警官にこん棒で殴られ、収監される。こんなの酷過ぎる。日本とイギリスと舞台は違えど、先人の女性達が勝ち取って来た選挙権を無駄にしてはならないと思う。当たり前のことは彼女達の人生を懸けた壮絶な闘いで得られたものだから。しかし、この邦題のセンスのなさと的外れ感には脱力しかない。

ナミヤ雑貨店の奇蹟

2019-07-02 | 日本映画(な行)
★★★ 2017年/日本 監督/廣木隆一

(WOWOW録画)

林遣都が見たくて鑑賞。彼は美しいお顔をそのまま美しく出すのがお好みではないようで、汚い方汚い方へともっていくのはなんでなの?
1980年の売れないミュージシャン設定とはいえ、ボサボサ頭と無精髭でなければいけない理由があまりわからない。がんばって習得したというハーモニカと歌が聞けたのはよかった。

さて、映画の方だが、登場人物は多いし、時系列はあっちこっち行くし、とっちらかってるなあというのが正直な感想。さまざまな出来事や人と人の縁が次々とつながっていくわけだけど、ピースが合わさったカタルシスがあまり感じられない。各エピソードが繋がってはいるけど、だからどうしたみたいな話になっちゃってるのがもったいない。