Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

モンタナの目撃者

2022-01-11 | 外国映画(ま行)
★★★☆  2021年/アメリカ 監督/テイラー・シェリダン

森林消防隊員の女性と少年の逃避行を描く人間ドラマ。少年の父が殺された理由はマクガフィンでやさぐれたアンジーと森林火災の恐ろしさを堪能すべしな1本。テイラーシェリダンだと鑑賞前のハードルが上がるしグロリアとか刑事ジョンブックとか既視感のある作劇がやや物足りなし。

ミッドサマー

2021-04-13 | 外国映画(ま行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/アリ・アスター

序盤はモンド映画的な面白さや美術デザインに引き込まれた。夏至祭の描写もよくも大真面目にやったもんだと笑いつつも感心。しかし、作り込みが凄ければ凄いほどだんだん不快に。家族の喪失を克服する物語より、単に奇祭で酷い目に遭う映像表現が優先されているよう。好みではなかった。

一度に家族を亡くすという悲劇が、単に物語の導入、フックとして存在しているよう。なぜこの設定なのか合点がいかない。夏至祭の間、家族の亡霊は見るが、ダニー自身がどう家族と関わってきたかは一切語られないからだ。彼氏との関係始め、全てのエピソードが有機的に融合せず違和感ばかりが残った。

ミナリ

2021-04-04 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/リー・アイザック・チョン

希望を持ち新しい何かを始めようとする人々へ贈る賛歌。家族の絆と地域の繋がり。物事を片方から判断しないこと。人生の小さな教訓が詰め込まれている。何かを失いながらも人は前を向いて生きていく。アメリカで生きると彼らは選んだ。選んだ道を正解にするしかないのだ。

とにかく長男のデイビッドがかわいい!かわいすぎる!この子の愛らしい演技で元は取れたと思えるくらい。見知らぬ土地に連れてこられ、不安だろうに、彼の一挙手一投足に釘付け。生意気でやんちゃだけど、許してしまえるそのさじ加減が絶妙。

アジアンおばあちゃんあるある満載でかなり笑った。口の中に入れたものを孫に与える。良からぬ遊びを教える。孫の親、つまり自分の娘の言うことを聞かない。自然体で演じたユンヨジョンがお見事。余計な事しちゃだめ〜というラストの展開に至るまで、我が母を思い出さずにはいられなかった。

メイキング・オブ・モータウン

2021-03-24 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/ベンジャミン・ターナー ゲイブ・ターナー

新しいサウンドを生み出しただけでなく、自社で作詞作曲家を抱え、スターを育成し、マーケティングを行い、流通販路を拡大した。その発想源は何と自動車工場。 政治的な志向は避け、ヒットをとことん目指した男の一代記。偉大なる才能が一時代に集結した奇跡と軌跡。

黒人音楽の歴史を知るにも格好の一品。「マレイニーのブラックボトム」「あの夜、マイアミで」「ザファイブブラッズ」など、黒人映画の秀作たちと続けてみると色々繋がってくる。しかしこれだけの才能が集まれば、そりゃいざこざも起きましょうて。本当はもうちょっと揉めた話も盛り込んで欲しかった。

胸騒ぎのシチリア

2021-03-23 | 外国映画(ま行)
★★★ 2015年/イタリア・フランス 監督/ルカ・グァダニーノ

ルカグァダニーノによる「太陽が知っている」のリメイクだが、まあみんな裸、裸、裸。ティルダスィントンの足おっぴろげのプールサイドカットに仰天。避暑地の恋愛模様と殺人。気怠いムードがいかにも欧州的だが人物のキャラが立ち過ぎてギクシャクした感じ。それも本作の個性か。

しかし、ルカグァダニーノは本当にティルダ・スィントンが好きなんだねー。元ロックスターという設定(それもどうなのと個人的には思うが)でデビッドボウイみたいな舞台衣装からハイブランドのリゾートウェアまで、全編ティルダのファッションショー。その着こなしはさすが。衣装はすごく楽しめた。

マ・レイニーのブラックボトム

2020-12-21 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/ジョージ・C・ウルフ

ほぼ地下のリハ室で展開するミニマムな構成。黒人差別の現実をラップのように畳み掛けるセリフの応酬で魅せる。チャラ男のようで心に闇を抱える男をチャドウィックボーズマンが好演。レコーディングという短い時間内に差別の根深さ、やり切れなさを凝縮させた1本。

ビオラデイビスのビジュアルがあまりにインパクト大きく、完全に音楽映画だと勘違いしていた。これから見る人は戯曲の映画化ということを知っておいた方がいい。例えば「真夜中のパーティー」などが近いスタイル。個人的には音楽を扱うなら、ライブシーンなど動きのある映画的な作品の方が好みだな。



Mank/マンク

2020-12-17 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/デビッド・フィンチャー

Mankはなぜ市民ケーンを書くに至ったか。市民ケーン同様の語り口と映像を駆使して描く。フェイクニュース、クリエイターの矜持、創作物は誰の物か。まさに大統領選あり、映画館の行く末危ぶまれる2020公開に意義を持つ1本。映画創作を問う作品がNetflix出資という皮肉までが構成要素だ。

市民ケーンの背景について知らないと、何の事かわからないシーン多数。それは一部ファン向けというより、市民ケーンを通じて映画創作のの危機感をあぶり出す目的だろうか。出資者と配給会社が公開を牛耳る様子はコロナで来年公開作が揉めに揉めている現状と気味が悪いほどに重なる。

マザーレス・ブルックリン

2020-11-19 | 外国映画(ま行)
★★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/オリビア・ワイルド

エドワードノートン演じるトゥレット症候群の探偵が実に魅力的。突発的に「イフ!」と奇声を発したりして周囲からは変人扱いだが、そんな彼が政治の闇に迫るハードボイルドサスペンス。全てがユニーク。50年代NY、ジャズ。大好物でしかなかった。

ブルースウィルス、ウィレムデフォー、アレックボールドウィンとキャストが豪華。エドワードノートンはこの難役を演じるだけでも大変なのに、脚本・監督もこなして凄いよ。ジャズクラブのシーンはウィントン・マルサリスがやってるって言うし、主題歌はトムヨークじゃん。公開時なんでスルーしたんだ…

皆殺しの天使 

2020-06-26 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 1962年/メキシコ 監督/ルイス・ブニュエル

ブニュエル初期の痛烈ブラックコメディ。晩餐会を楽しむ貴族たち。なぜか帰る方法を忘れ(!)客間から出られなくなる。罵り合い、マトモな打開策も出せず、死人まで出るのにブルジョワたちは思考停止。笑って見てたけど、現代日本人もこんなもんじゃないのと背筋が寒くなってくる。

警察が屋敷を取り囲むが家には入れない。(ちなみに鍵はかかっていないし、バリケードが張ってあるわけでもありません)そして、貴族が「帰る」という概念を思い出すというシュールすぎるオチ。よくもまあ、こんな話を思いつくもんですわ。さすがブニュエル。

マーベラス・ミセス・メイゼル シーズン3

2020-06-18 | 外国映画(ま行)
リッチ!リッチ!リッチ! セットも美術も音楽もセリフも目に入るもの耳に入るもの全部がリッチ! フェミニズムの文脈を追いながら、1950年代のエンタメ界をゴージャスに見せてくれる。なんと豊かな世界。一瞬の通行人まで行き届く衣装や身なりが完璧。

コメディアンとして認められたミッジはベガスやフロリダへ巡業に。ほんと美術が凄くて圧倒される。黒人歌手シャイがミッジと同じホテルに泊まれないのはグリーンブック見てたからわかる。ミッジの衣装も相変わらずどれもこれもステキだし、こんな楽しいドラマ他にはないね。シーズン4が待ち遠しい。

モリーズ・ゲーム

2020-05-26 | 外国映画(ま行)
★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/アーロン・ソーキン

140分という長尺を飽きさせないアーロン・ソーキンの手腕はさすがだが、稼げる以外にそれほどメリットのないポーカー運営になぜモリーはそこまで取り憑かれたのか。その心理描写が弱い。この手の映画ってハラハラしてナンボでしょ。もっとエモくさせてくれよって感じで消化不良。

波乱万丈の人生をそのまま映像化するとつまらないってことがままある。本作でも父娘の確執は何度も描かれるが、それがどれほどの影を落としているのか、全然見えて来ない。140分もあるなら、そこをもっと見せて欲しかったな。ケビンコスナーだからシュッとしてるけど、まじでクソ親父なんだもん。

マリッジ・ストーリー

2020-05-08 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ノア・バームバック

主演2人の見事な演技。意外な面白さはNY派vsLA派の構図。両者の価値観の違いで夫婦の埋めがたい溝がわかると同時に何もかも違う2人がひかれあった恋のすばらしさも伝えてくれる。孤独でも仲間と仕事があれば生きていけるNewyokerの矜持を感じさせるアダムの歌声にしびれた。

監督自身の離婚経験が元ネタということだけど、後悔と反省を経てラストのBeing aliveで自己肯定に至る物語と私は感じた。しかし、互いの傷のえぐり合いもなかなかなので、これまでの恋愛経験によって感じ方は人それぞれだろう。あと、私は広さ自慢のLAより孤独を愛せるNYが好きだなー。

マイ・ブックショップ

2020-03-24 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2017年/スペイン 監督/イザベル・コイシェ

イギリスの海沿いの街や石造りの屋敷をカメラは美しく捉える。ウィリアムモリス風の部屋や女性たちの衣装も実に素敵で惹き込まれる。だからこそ、本を通じて生まれる美しい関係性とそれを冷ややかに見つめ妨害する地域社会の落差が胸に迫る。生き方を問う作品。

観賞前は田舎町の書店経営に挑む戦争未亡人のサクセスストーリーかと思ってたんだけど、実にビターな展開で予想外の結末へ。美しい風景に美しい屋敷、美しい洋服をまとっていても、生き方が最低な人間は醜い。なぜかこういう役どころ、パトリシアクラークソンぴったりで貫禄の演技。

乱れる

2019-10-31 | 外国映画(ま行)

★★★★★ 1964年/日本 監督/成瀬巳喜男

結婚後たった半年で夫が戦死。その後18年間も夫家族のために働き続けるが、スーパー経営を機に家族から追い出される女の話。現代女性が見るとしんどすぎる話である。マジでしんどい。結婚して半年って、たぶんろくに夫婦生活も送ってない。

そして、究極のバッドエンディング。あの後、礼子はどうするのか。それを観客に想像させるために全てがあるように感じる。礼子の表情が最高だ。

こんなクソみたいな話に惹かれてしまうのは高峰秀子の抑えた演技がすばらしいのはもちろん、彼女を取り巻くどうしようもない家族が淡々と描かれているから。対象者に入り込まず、引いて描く人間ドラマが好きだから。自分で意思決定できない義母、いけずな妹、ぼんくらなくせに好きとか言う弟。みんなほんっとうに口ばっかり。いるよ、こういう人。悲しいぐらいにリアル。



未来を花束にして

2019-07-03 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2015年/イギリス 監督/サラ・ガブロン

見るのがつらくて何度も途中で停止。数日かけてようやく鑑賞した。
女性達が集会しているだけで警官にこん棒で殴られ、収監される。こんなの酷過ぎる。日本とイギリスと舞台は違えど、先人の女性達が勝ち取って来た選挙権を無駄にしてはならないと思う。当たり前のことは彼女達の人生を懸けた壮絶な闘いで得られたものだから。しかし、この邦題のセンスのなさと的外れ感には脱力しかない。