Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

包帯クラブ

2010-05-17 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 2007年/日本 監督/堤幸彦

「人の痛みなんてわかるわけないさ」


そんなの当たり前じゃないか。辛いことも苦しいことも他人が100%共有できるなんて、ありっこないよ。その前提を了解した上で、何とか役に立ちたい、笑わせてやりたい、って思うのが人間同士なんだよな。と、つい青臭いことを屋上で叫びたくなるようないい映画でした。これは、めっけものです。

何か吹っ切れたような柳楽優弥の怪演っぷりがとにかく最高です。変な関西弁をしゃべる自傷癖のある暴れん坊ですが、人生にやさぐれているという役どころだけでなく、こりゃもう演技がヤケクソです。どうにでもなれと言った感満々で、その開き直り具合が感動的ですらあります。

そして、手すりや鉄棒など、無機質な物体にひらひらと白い包帯が舞う。その映像がとても美しい。包帯を巻くシークエンスが、モノが感情を持ったような、命が吹き込まれたような瞬間に見えるのです。このアイデアはすばらしい。原作がすでに映像的なんでしょうか。読みたくなりました。

ネット社会の中傷などどんよりした展開になるけど、サバサバした演出で観賞後も爽やかな後口が残ります。ちょっとスネた役どころゆえ、石原さとみちゃんのタラコ唇もバッチリ合ってて、実にキュート。天然キャラの貫地谷しほりも愛らしく、若手俳優陣が生き生きとスクリーンを駆け回っているのが心地よい。初めて堤幸彦作品で面白いものに出会えました。


のんちゃんのり弁

2010-05-13 | 日本映画(な行)
★★★★ 2009年/日本 監督/緒方明

「はい、次行ってみよー」


<下町育ちの永井小巻は、ある日ダメ亭主に愛想を尽かして娘・のんを連れて実家へ戻る。新しい仕事を探そうとするが、ままならない日々。そんなある時、娘に作っていたのり弁がなぜか周りの注目を集めることに…>

赤ん坊にお乳やりながらキーボード叩き、泣きわめく息子を置いて取材に出かけていた身からすると、ざけんじゃねえよ、自立ってそんなにゃ甘くねーぜって感想になるかと言うと、案外そうでもないんですよ、ハイ。

とても清々しかったです、この作品。ダメな男はさっさと見切りをつけりゃあいいんです。後のこと、考えなきゃ?確かにそうかも知れないけど、そうやって、何もできないワタシ像に縛られる必要もないんじゃないかなあって。「ダメだこりゃ。ちゃんちゃん。ハイ、次行ってみよー!」でいいと私は思う。そのノー天気さを世間が認めてくれたら、DV夫から離れられない妻ももう少し減ったりしないだろうか。

ノー天気主婦を演じる小西真奈美の弾けっぷりが気持ちがいい。猪突猛進して大ゲンカ。今までの清楚な役どころとは違った面が見れてなかなか良いです。お気楽主婦に渇を入れて、ピリッと引き締めるのが岸辺一徳。岡田くんはだめんず演じるのが巧いよなあ。

子どもの頃は我が家ものり弁ばっかで、カラフルな友だちのお弁当を覗いては隠すように食べてたっけ。のり弁=手抜きの概念を覆す前半だっただけに、弁当屋は最後までのり弁で突っ走って欲しかったです。